チュールの弁明?
神は人間に姿を見せないもの。
しかし異例もあって、それがオーディンの地上に現れるときの姿。
つまり変装である。
オーディンは実年齢より老けた格好で現れ、腰を曲げて英雄の前に現れ、運命を告げるという。
チュールもいっそ、オーディンを真似て変装し、ハルカに会おうかと考えたが、オーディンに逆らわないチュールは、その代償が恐ろしかった。
代償とは、規則を破った罰である。
「逆さ吊りの刑なんて、俺はイヤだな・・・・・・」
油断していたせいか、急激に眠くなる。
――いけない! 今眠っては、リッツかハルカ、どちらかに見つかってしまう!
チュールは剣を杖代わりにしながら立ち上がると、荒れ果てた大地を見回し、身を隠せる場所がないか探す。
ないと知ると、自ら創る。
煉瓦を魔術で出し、引っ張ってきて、小さなドーム型の小屋を造り、その中に寝転がった。
「ちょっと狭いが・・・・・・」
「アルケミスト・・・・・・」
の声に、チュールは思わず飛び上がる。
「だれだ、ノルンの女神か、それとも、オーディン?」
煉瓦の隙間からこっそりのぞくと、そこにいたのはなんと、ハルカだった。
チュールの心臓は口から飛び出さんばかり。
――どーしよう、バクバク言ってるぜ、俺の心臓!
「あのう」
とハルカが言った。
「助けてくれたの、あなたでしょ。それと水をありがとう」
彼女の声はうわずっていて、どこか恥じらいを見せた。
その様子がたまらなく愛しく、チュールはますます夢中になり、ハルカの声を聞き漏らすまい、と集中する。
「聞いたことがある。あなたは『アルケミスト』、錬金術師でしょ。世界史で習った。古代エジプトが発祥地で・・・・・・だったかなぁ。原子変換させることができる、奇術師・・・・・・」
「違う、俺は奇術師じゃない」
――あっ。
うっかり返答してしまったことに、しまった、とチュール。だが遅かった。
「違うなら・・・・・・誰なの? 私、あなたがたとえ悪魔でもいい。私を助けてくれたことに変わりがないんだから!」
――悪魔と一緒にするな;
チュールはたまりかねて、煉瓦の家を突き崩し、外へ出た。
「やはり外がいい・・・・・・」
這い出してきたチュール、ハルカと見つめ合った。
「白い・・・・・・」
とひとこと言ってから、ひれ伏す格好でぐったりした。
「見たわねっ」
ハルカはスカートの裾を押さえて悲鳴を上げる。
「見るつもりは、なかったんだよぉぉ・・・・・・」
ああ、チュールの弁明(汗。
シリアスはまったく苦手なわたし^^;
絶対どこかで笑いがきますぜ(笑。