ティワズの魔法
空腹を満たしたあとは、健やかな眠りが訪れる。
これが、動物としての人類の本能だったが、しかしじつは、もうひとつ存在してもいた。
「俺たちはたったふたりで、これから先も生きなければならない。子供が欲しい」
「冗談やめて。なんで私があんたと子供つくらなきゃならないの」
ハルカはリッツを振り払い、逃げだそうとするも、リッツの腕力にはかなわず、ハルカは必死に叫んで、助けを呼んだ。
チュールはハルカを助けに、中へ飛び込みたくてたまらなかったのに、それができなかったのは、神は人間の前で姿を見せたらいけない、という掟があったからだった。
「ゆるせ、これも決まりなんだ・・・・・・」
そのかわり、チュールがひとつだけ行える行為があり、それは、間接的にリッツに攻撃をくわえることだった。
つまり、魔法である。
『ティワズ!』
とチュールは、ゲルマン読みした自分の名前を唱え、ルーン文字を空中に描き、するとハルカの身体に力がみなぎり、リッツを突き飛ばし、逃げ出すことができた。
「それにしても、いったい誰があの水と言い、今のあの力だって・・・・・・」
ハルカは首をひねるばかり。
陰からこっそりハルカを見守るチュール。
リッツは痛めた頭を押さえ、ハルカを捜すために銃を手にした。
「あのやろ〜。ハルカにあんな力があるとは想えねえ。きっと誰かが・・・・・・そうか、水を創ったヤツだな! あいつら、グルになって、オレのことバカにしやがって」
思いを遂げることのできないことがリッツにはストレスと化して、ハルカへの気持ちはやがて、殺意へと変貌する。
チュール、と読む場合と、ティワズ、ティウと読む場合があります。
スペルは『Tur』。
ちなみに勇気のルーンと呼ばれるのは、『↑』これですね。
これを彫ってもっていると、試合や裁判とかで勝てるらしい・・。