腐った大地
「ヴァルハラに・・・・・・いられなくしてやる? どちらが生意気な」
チュールは剣を背中に背負ったまま、廊下を足早に歩く。
「それより、ハルカが気になって仕方ない」
チュールは廊下の中央で立ち止まり、しばし策を練った。
一方でハルカは、荒廃した大地の真ん中へ放り出され、面食らってしまっていた。
土は乾き、水たまりと思いしものは、油田であった。
草も、木も、――緑がひとつもなく、空を仰げば化学汚染された光化学スモッグが、雲となって漂うばかり。
「そんな・・・・・・ばかな」
ハルカはここで、教師に教わった言葉を想い出す。
『三十世紀には、大地が荒廃し、飢饉が・・・・・・』
ということは、とハルカは息をのむ。
「まさかここ、三十世紀!?」
「そのとおり」
声がしたので驚くハルカ。
「びっくりさせて、ごめん。僕はファブリツィオ。リッツでいい」
「リッツ・・・・・・。ここホントに三十世紀の未来なの?」
ぼろぼろの一軒家にハルカを招くリッツ。
その部屋には何もなかった。
「僕はこの世界でたったひとりの人間なんだ。僕のほかには誰も生きちゃいない」
「水や食料は、どうしてるの」
リッツは首を横に振った。
「飢えそうなんだけどね・・・・・・」
『どうやって飢饉を乗り越えたか、なんだが・・・・・・』
ハルカは悔やんだ。
教師の言葉を最後まで聞かなかったこと。
もし聞いておけば、少しは役に立ったかも知れない、と。
「リッツ、畑を作って耕すことも無理?」
「掘ってもでてくるのは、油田だけだ」
ものは試しとハルカは、おかれたままの鍬で大地を掘ってみた。
しかし、鍬にこびりつく、真っ黒などろりとした物質。
腐敗したオイルだった。
「だからいったろ・・・・・・」
ハルカは自分が飢えて死ぬのかも知れないと、急に不安になってしまう。
「私のいた時代は、なんとよい時代だったのか・・・・・・」
ハンバーガー、おにぎり、冷凍食品、ファストフード!
生活は電気、ガス、水道となんでもある。
そんな時代にうまれ、育ったハルカは、『飢え』というものをまるで知らなかった。
「私をもとの時代へ帰して!」
と、リッツに泣きついても見たが、それがムダであることをわかっていても、ついやってしまう。
人間は愚かだと、倫理の時、教師が言っていたっけ。
わかっていても、行う行為があると。
それが、ぎりぎりの精神で行われる――戦争と呼ばれるもの。
「まさか」
ハルカはこの様子で思いつくことがあった。
「リッツ、もしかして世界がこんなになったのって・・・・・・」
リッツはハルカが思った通りの答えを言った。
「核戦争が、あったんだ・・・・・・」
核戦争が世界を滅亡に至らせた・・・・・・。
戦争は悲しい行為と言うことを、伝えたかったんですが^^;
なんか失敗しちゃってた前作(苦笑。
今度は失敗しなきゃいいな・・。汗