ハルマゲドンとラグナロク
オーディンはリッツがどのような動きをするか、密かに楽しみつつ酒をあおった。
彼がリッツにわたした剣、じつは『グラム』といった。
このグラムは創造する力を以ており、たいしてバルムンクは破壊の力を秘めている魔法の剣。
ふたつの剣が交わるとき、ハルマゲドンとかラグナロクとか言われている、世界の崩壊が始まるのだ・・・・・・。
「また再び、世界の崩壊が訪れるだろう。そのとき、グラムとロト、バルムンクとロッドの運命が交わる――」
すべては、神の意のままに。
オーディンは失った片目が痛むのをこらえ、蜜酒をがぶがぶと飲み干す。
「痛むなよ、今さら・・・・・・。ミーミルおじの為に失った、この片目」
神になりたいと願う、愚かな人間、リッツ。
オーディンはロトが自分と似ていると思い、グラムを与えたのだった。
オーディンは最強の魔力を欲して、ミーミル叔父の首を話せるようにし、片目を与えることでその欲求を満たすことができた。
しかし今となれば、その失った片目が惜しいと、オーディンは舌を打つ。
「オーディンにそっくりなのね、あのリッツは」
昨日、子供たちを寝かしつけたハルカがいった言葉だった。
「何を言いたい」
オーディンは赤ら顔をしてハルカのほうをむく。
「なにって、つまりあれよ。貪欲そうなとことか、にてるし」
オーディンは頬を膨らませて酒をつぎ足す。
「怒ったの?」
ハルカはニヤニヤ。
オーディンは押し黙ったまま、喉をならしてビールを飲む。
やがて、
「ひとついいか?」
と、オーディンがハルカにいった。
「なに」
「グラムはラグナロク。バルムンクはハルマゲドンを意味している。バルムンクは完全なる破壊が目的で作られた剣。たいしてグラムは、ラグナロク、破壊のあとの創造が目的。だから俺は、わざとリッツにグラムを与えたんだよ。ヤツに完全な破壊をさせないために。あとは・・・・・・ロッドの意志ひとつで、この世界の方針が決まる・・・・・・」
「ロッドが決める? なにを?」
「世界を、破壊したままにするか、それとも緑あふれる大地に戻すか。――創造主になりえるかの試練だな」
「ちょっとまってよ」
ハルカはオーディンの前に立ちふさがって、演説する格好で、
「それじゃあなた、ロッドを神に仕立てようと言うの?」
「だからそれは、ロッド自身が決めればいい」
オーディンは酒をあおる。
「そんな。チュールから授かった、かわいい息子を神になど!」
「お前は親らしくないねぇ。親はきちんと子供の意思を尊重するべきだろ」
グラスをおいて、オーディンがハルカに皮肉そうな微笑みを向ける。
ハルカは唇を噛みしめて、反抗的態度をとっていた。
「なによ。結局あんたも、その他大勢の神様と同じってこと?」
「ロッドが創ったざくろ石――賢者の石だがね。あれはバルムンクにはめ込むと、力が増幅される」
「そんなこと、聞いてないし聞きたくもない!」
「おかあさん!」
起きてきたロッドが、ハルカの背後にたたずんでいた。
振り返るハルカ。
「お前」
「おかあさん! ぼくは神にされたとしても、おかあさんの息子です。だから、急に消えてしまうわけでもないし、何をそんなに怖がるの」
ロッドに言われてようやく気づいた。
この子はチュールの託した希望なんだと言うことに。
そして、神の王オーディンもここにいるじゃないか・・・・・・。
「いいわ。決めた。ロッドにがんばってもらいます。それで満足なんでしょ」
「さあね・・・・・・」
オーディンは酒をあおり、苦笑いしながら親子を見つめていた。
ラグナロクは再生が約束されてますからねぇ。
対してハルマゲドンにはそれがない。
最後の審判というのはあくまでも、神だけの意志で行われるのですが、ラグナロクは神も人も力を合わせて世界復興を望むのです。
――てちょっと、むちゃくちゃな内容かなぁ、これ^^;