ロトと魔剣
オーディンがリッツに与えた剣。
チュールの持つ剣とは対照的に、赤い宝石を鍔にはめこんだ、地味な剣だった。
チュールのもつバルムンクの鍔には、真っ青なサファイアがはめ込んであり、そちらは装飾にこっていて、剣のもつ力とてまた、強かった。
しかしリッツはまだ、バルムンクの存在を知らずにいた。
さすがにオーディンも、このことだけは秘密にしていたので、知らずにすんでいたのだが。
「ゴモラを動かせ、ロト!」
リッツは最初、その声を空耳と思い、剣を磨く作業に戻った。
「ゴモラを、創造のゴモラを復活させるのだ」
リッツは今度こそ振り返った。
すると肉の破片が死臭を漂わせて、うねうねとリッツに近づいてくる。
「化けものめ」
「ワシだ、ワシだ」
肉のかたまりは・・・・・・ドルイドで、チュールに斬られたあと、呪術を施し、残った肉片に魂を込めていたおかげで生き残れた。
「ロトって、なんだ?」
リッツは剣をおろしてドルイドに尋ねた。
「ロトとは・・・・・・神の使者、アブラハムの子だよ」
「へえ」
リッツは鼻をこすった。
「俺がロトか? ヘッ。そのアブラハム・・・・・・ってのも俺、よく知らないんだけどな」
「いずれにせよ、ワシに従うのだ、ロト。ゴモラを動かせ」
「ゴモラ? そいつもよくワカラン」
リッツはお手上げのポーズを取った。
「そのロトが町をソドムという巨人でつぶしたあと、ゴモラ、と言う双子の土人形で創造したとされる、つまり神にも匹敵する存在なのだよ」
リッツは神、と言う単語に興味を抱いた。
「神?」
「そう。神だ・・・・・・やってみる価値はあると思うがね」
「やるやる!」
リッツは二つ返事で答える。
「俺が神か、悪くねえな。そしたらハルカも俺のもんか?」
「ハルカどころか世界が手に入る。ふははは」
リッツは鼻をこすると、オーディンからもらった剣を手にして、
「世界が俺のもの。そして俺は神になるのか・・・・・・」
ばかめ、とドルイドの肉片は心で唱える。
「真に神となるのは、ワシだ。支配者にふさわしいのは、このワシだと言うことを思い知らせてやる・・・・・・チュールにオーディン!」
このへんから後半部分のスタートです。
リッツの正体はロトだった?
というより、ロトの子孫という方が正しいのかも知れない。
ちなみにロトはアブラハムの子ではなく、甥と言うことですが、ここでは息子にしておいてください^^;