ドルイドの導き
少年と少女はすくすく育ち、なんと一年のうちで十歳は成長してしまっていた。
ハルカはあまりの成長の早さに、呆然としていた。
「神と人の間に産まれた子供というのは、恐ろしく成長が早い、けれども二十歳を過ぎた頃から急激に遅くなる。あの子たちはそれだよ」
「あなた・・・・・・」
たった一年で、大地をほんの少し蘇らせたが、まだ水だけは完全ではなかった。
うかつに掘れば油が出てくる。
チュールの魔力も限界に達し、魔力に変わる何かが欲しいと、チュールは悩んでいた。
「お父さん。僕知ってるよ」
と息子のロッドが言った。
「賢者の石って言う石をつくれば、きっと水はできる」
「賢者の石、だって!?」
ロッドはとんでもないものを創り出そうとしているのだろうか。
そんな不安にかき立てられ、父親は憔悴する。
「危ないから、そんなことやめなさい」
賢者の石に必要なものは、すべて危険物だったため、チュールは目をつり上げて賢者の石造りを反対した。
「お父さんは魔力が足りないって嘆いているじゃないか。僕はとうさんの子だよ。何とかしたいと思うのは、ヘン?」
チュールはここまで言うロッドを、もはや止めることはしなかった。
というより、止めようとしてもムダであると理解した。
「そのかわり、命に関わるようなことはするな」
とだけいって、チュールは賢者の石造りを認めてしまったのだった。
「そうか、お前オーディンにやられたのか」
土色のフードをかぶったあやしい男が、リッツの前に姿を見せた。
「哀れな」
鼻であしらうその男は、ドルイド僧だった。
「我らドルイドはかのローマ宰相、ユリウス・カエサルの時代まで勢力のあった一族じゃ。ドルイドの言葉は皇帝さえも屈服させる。・・・・・・言いたいことが、わかるか?」
「ああ。神さえも屈することができると、そう言いたいんだろう」
「ご明察」
続いてドルイドは、こうリッツに持ちかけた。
「子供らは成長し、今では十歳半ほどに育っておろう。さらってきて喰ってはどうじゃ」
「いや、もう飢えることがないから、それはよす。その代わり、さらってきたら人質にして、ハルカをおびき出せ」
ドルイドはうなずき、喉をならす。
「未練がましいのぉ」
「うるさい、あんたはオレにいわれたとおりのことを、すればいいだけだ」
この世に存在する女は、ハルカだけ。
リッツは両手をくんで祈る格好をする。
「あいつがオレのものになってくれれば、それでいいんだ」
ドルイドは握りしめた小瓶に詰めている粉薬を確認したあと、
「お前にもコイツをやろう」
といって瓶から粉を数グラム取り出す。
「媚薬だよ。こいつがあれば、ハルカという小娘だって、お前に首っ丈になる」
「ヘッ。いいね」
・・・・・・ただし代償は高くつくがね、と言うドルイドの言葉など、耳に入らない。
それほどまでにリッツの感情は、たかぶり始めていたのだった。
このあたりから大どんでん返しとか!?
ドルイド突然出てきたなぁ・・・・・・。
コイツが出てくるとろくな目にあわなさそう;