ある昼休みの光景
開け放たれた窓に青空が広がる。校庭に面しているため遮蔽物がなく、どこまで青々しい。そして点在する雲。
遠くに浮かぶ雲に気を取られていると、笑い声が上がった。
「それであの爺さん、指を舐めてプリント配るから文句言ったら、『分かった』って言いながらまた指を舐めるワケ。耄碌にもほどがある。俺、席が前だからスゲー嫌。汚ねーじゃん。爺さんにとっくに定年過ぎてるだろ!? 辞めればいいのに」
そしてペロっと指を舐める仕草をした。
呼応する声があがる。僕も頷いた。
昼休みに話される内容などワイドショー並の誹謗と話題性があれば十二分に足りる。たとえ何度も繰り返された話であっても、その毎意識を共有し団結してゆく。
それに僕は相槌で答える。
僕の口元には使い古された革製品のように馴染んだ微笑が形づくっているのだろう。
害意のない人工物。
悪意がない証に僕は笑いながら昼休みを過ごしている。