女神に召喚されたサメが異世界を無双する
夏休み真っ只中の海水浴場は大勢の人で賑わっていた。家族連れが多く、子供たちのはしゃぐ声がビーチに響き渡っている。
そんな中、一組のカップルがビーチボールを脇に抱えて、海の中に入っていった。浅瀬に近いところで、カップルはビーチボールで遊び始めた。
その様子を一匹のサメが遠くから眺めていた。腹を空かせたサメはゆっくりと海中を泳ぎ、静かにカップルに近付いていく。
カップルは遊びに夢中でサメの接近に気付かない。海面から飛び出したサメは大きな口を開け、カップルを食い千切った。血飛沫が飛び散り、海を汚す。
「きゃああぁあ!」
サメに気付いた子供が甲高い悲鳴を上げる。子供の悲鳴で異変に気付いた人々は叫び声を上げて逃げ始める。海水浴場は瞬く間に混乱に陥った。
「きゃああぁああ!」
まだ悲鳴を上げている子供にサメは腹が立った。方向転換し、子供に襲いかかり、丸呑みにする。
「いやぁあああ!」
女性の金切り声が海水浴場に響き渡った。サメはチラリと女性の表情を伺い、丸呑みにした子供の母親だと察する。
「殺してやる!」
女性は血走った目で叫びながら、サメに向かってきた。一直線で突っ走る女性など何の脅威でもなく、サメは頭に噛み付いて引きずり回した。首が千切れて、胴体が海面に浮かび上がる。
海水浴場のあちこちから悲鳴が上がった。
サメは再び人に襲いかかろうとしたが、突如として眩い光に包み込まれた。一瞬でサメは海水浴場から姿を消した。
海水浴場の客たちは何が起きたのか理解できず、呆然とした表情で、サメが消えた位置を眺めるだけだった。
☆☆
サメは気が付くと、真っ白な空間にいた。目の前には金髪のウェーブヘアに黒色の瞳で、白色のローブに身を包んだ女性が立っている。
「私は女神。あなたを異世界に召喚した当事者です。あなたの脅威から海水浴場の人々を守るために、異世界に呼び寄せたのです」
女神は喋っていたが、サメはそんな話に興味がなかった。人を襲う楽しみを奪われたのが許せず、サメは女神の右腕を食い千切った。
「ぎゃあぁあ! な、何をするのです!」
女神の表情が強張った。サメは続いて左腕に噛み付き、引き千切る。
「ひぃい!」
女神は苦悶の表情を浮かべて白目を剥いた。
サメは後退る女神の頭に噛み付き、ゆっくりと咀嚼していく。
真っ白な空間に血の海ができ、女神の全身を隈無く食べ終える。次の瞬間、サメは紫がかった海に浮かんでいた。
一瞬、元の海に帰ってきたのかと思ったが、辺りに漂う雰囲気が異なっていた。
サメはしばし考えた末に海中に潜る。海中には見たこともない生き物――魔物が多くいた。
二本の渦巻き状の角が生え、体が鱗に覆われ、長い尾を持つ魔物が近くを横切った。
サメは後を追い、尻尾を食い千切る。人間とは違った食感の肉で、なかなかの美味だった。
尻尾を食われた魔物はサメを睨み付け、襲いかかってきた。爪が体に当たったが、痛くも痒くもなかった。
サメは魔物の肩を思いっきり噛み、半月状に抉り取る。肩から流れた血が海の中を漂い、魔物は甲高い鳴き声を上げる。
逃げようとする魔物に体当たりを決めて一時的に動きを止めた後、追い打ちをかけるように、傷付いた肩に噛み付く。
「キィイイイ!」
魔物は甲高い鳴き声を上げて暴れ出す。続いてお腹に歯を突き立て食い千切る。胴体の一部を失った魔物は、上半身と下半身に分かれて、動かなくなった。
サメは残りの体も食べ尽くすと、海面に向かって泳ぎ出す。
☆☆
海面へと浮上したサメは、辺りを見渡して、次なる獲物を探す。
液体状の一本角を持つ四枚の翼が生えた魔物が低空飛行しているのが見えた。
サメは勢いよく海面から飛び出すと、魔物を丸呑みにする。液体状の一本角は不味くてげんなりした。
「貴様、私の友達を食べたな! 許さんぞ!」
ドスの利いた声が聞こえ、サメは視線を向ける。砂浜に長くて尖った耳が特徴的な魔物が仁王立ちしていた。銀色の長髪に、茶色のローブを身に纏っている。
「貴様が何者かは知らないが、エルフを甘く見るなよ。風魔法“風玉破斬”」
魔物――エルフの手のひらから圧縮された球状の風が連なった刃が放たれる。勢いよく放たれた刃はサメの体を傷付けた。
体に傷が付き、我を忘れたサメは猛スピードで海中を突き進み、エルフの元に向かっていく。
「く、来るな!」
エルフは震えた声で叫び、続けて風魔法“風玉破斬”を使ってきた。
サメは魔法で攻撃されながらも、スピードを緩めることなく、突き進んでいく。
海面から勢いよくジャンプしたサメは、目を見開いて棒立ちするエルフを食い殺した。砂浜が瞬く間に血で染まった。
その後もサメは本能の赴くままに、多くの魔物に襲いかかり、食い殺していった。
やがてサメは――異世界の食物連鎖の頂点に立った。




