1/4
希望に満ちた世界
世界は、広くて狭い。
僕たちは、喜びや楽しさよりも、息苦しさや孤独を感じながら生きている。
ある人は多くの富を手にして幸せを得る。
またある人は、家族と過ごす時間に幸せを見出す。
それぞれが、一雫のような幸せを掴むために、毎日を生きている。
けれど、そんな世の中の現実を知らない僕は、すべてが幸せに満ちている世界だと信じて生まれてきた。
目を開けると、見たことのない景色が広がっていた。
正面には、泣きながら笑う母の顔と、期待と希望を胸いっぱいに抱いた父の顔。
二人は声をそろえて言った。
――「生まれてきてくれてありがとう、雨音」
僕にできることは、ただ笑うことだけ。
だから、二人に向けて精一杯の笑顔を返した。
1〜2週間後、母と僕は退院した。
病院を出ると、母や父のような人、年老いた人、子どもたちが道を歩き、楽しそうに話していた。
赤ん坊の僕は思った。
――この世界で、たくさん話したい。
たくさんの景色を見てみたい。
それが、やがて本音さえ言いにくい社会の苦しさへと繋がるなんて、今の僕は知る由もなかった。




