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お転婆狐の後宮勤め〜半妖少女は囚われの皇子を救い出す~  作者: 八星 こはく


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第25話 作戦決行

 大丈夫。今の私は、どこからどう見ても佩芳様よ。


 言い聞かせるように、何度も心の中で呟く。実際、先程見た鏡に映った小鈴は、完全に佩芳の姿をしていた。

 仕草も口調も、飛龍のおかげで本物に近づいたはずだ。


 まずは、梓宸さんを探さなくちゃ。





 鳥たちが教えてくれたおかげで、梓宸を見つけることができた。

 梓宸がいたのは、豊穣宮近くにある小さな池の傍だ。梓宸は佩芳と同じく豊穣宮に暮らしているらしい。


 豊穣宮は、主に皇族の男子が住む場所。そこに住んでいるなんて、かなりの好待遇よね。


「梓宸」


 名前を呼ぶと、梓宸はすぐに振り返った。佩芳に化けた小鈴を見つめ、梓宸が柔らかく微笑む。


「おかえりなさいませ、佩芳様」


 この人、こんな優しい顔もできたの?


 びっくりして目を見開きそうになるが、必死に我慢する。今、小鈴は佩芳なのだ。梓宸の笑顔なんて、見慣れているに違いない。


「ああ」

「翠蘭様とは、いい時間を過ごせましたか?」

「ああ。……翠蘭も、楽しそうにしていた」


 ぼろが出るのが怖いから、あまり余計な話はしたくない。でも、口数が少なすぎると怪しまれてしまうだろう。


「……翠蘭に、飛龍と仲直りしろ、と言われてしまった」


 飛龍の名前を出して、梓宸の様子を窺ってみる。

 今日、翠蘭と佩芳がなにを話しているか知らないのは梓宸も同じだ。この話題なら、嘘だと見抜かれる心配がない。


 翠蘭様が二人を仲直りさせたがっていることだって、嘘じゃないしね。


「翠蘭様が?」

「ああ」

「あの侍女の影響でしょうね」


 間違いなく小鈴のことだろう。動揺を悟られないように、さりげなく梓宸から視線を外した。


「佩芳様。前にも言いましたが、あの侍女はさっさと追い出すべきです」


 大股で近づいてきて、梓宸が佩芳の顔を覗き込んできた。力強い眼差しに気圧されそうになるが、しっかりと見つめ返す。


「いくら、飛龍様や翠蘭様が彼女を気に入っているとはいえ、あの女は危険です。確実にあの女は、なにかあります」


 なにかある?

 そんな言い方をするってことは、私が半妖だって確信してるわけじゃないのかな。


「佩芳様がやりにくいと言うなら、私が追い出してもいいんですよ」

「……いや、いい。あんな小娘、たいした邪魔にもならないだろう」

「佩芳様がそうおっしゃるなら、構いませんが」


 梓宸は不満そうな顔で息を吐いた。


 何も言ってこないってことは、ちゃんと佩芳様を演じられているってことよね?


 とりあえず、作戦は順調だ。だが、ここからが問題なのだ。

 どうにかして、皇帝が倒れた時の情報を聞き出さなければならない。

 佩芳が知っていることを改めて尋ねれば、確実に怪しまれてしまう。自然に、梓宸の口から語らせるしかない。


「そういえば、翠蘭が父上の見舞いにきたいと言っていたな」

「……翠蘭様が?」

「ああ」


 皇帝は意識を失い、現在は一日中部屋で眠っている。中に入ることができるのは、佩芳から許可された者だけだ。

 貴族たちからの見舞いの要望も、基本的には断っていると聞いている。


 翠蘭様が見舞いをしたい、なんて言い出すかは分からないけど……梓宸さんだってきっと、それは分からないはず。


 翠蘭との雑談の中で、二人がそれほど親しくしているわけではないことは確認済みだ。


「どう思う?」

「別に、許可してもいいと思いますよ」


 予想通りの答えだ。

 翠蘭が皇帝に危害を加えるとは思えないし、翠蘭が皇帝の様子を見たところで、病の原因など分かるはずがない。


 でも、私だったらどう?

 ただの人じゃない私に見られても、問題ないって言いきれる?


「あの侍女が、翠蘭と共に見舞いにくる可能性もあるぞ」


 一瞬で空気がかたまった。


「……それは困りますね」

「だろう? 俺も同意見だ。そうなればまずい」


 梓宸の言葉に動揺していないふりをして同意する。だが、小鈴の心臓は爆発寸前だ。


 私がきたら困るってことは、やっぱり梓宸さんが陛下の病に関係しているってことだよね。


「やはりあの女は、始末すべきです」


 躊躇いなく梓宸は断言した。一切迷いのない瞳にぞっとする。


 梓宸は覚悟の決まった目をしている。

 佩芳がやれと言えば、きっとすぐに私の命を奪おうとするに違いない。


「佩芳様が即位なさる前に、憂いの芽は全て抜いておくべきでしょう」


 佩芳様が、即位?

 そりゃあ、今の状況なら、いずれはそうなるだろうけど……。


「その日は、もうさほど遠くありませんよ」


 まるで、陛下がもうすぐ死ぬとでも言っているみたい。

 もしかして、本当にそうなの?


 皇帝は今、意識を失っている。ずっと目を覚まさなければ、そのうち命を失ってしまうだろう。


 でも、梓宸さんが、いつかの未来を言っているような気はしない。

 ……ひょっとして陛下が飲んだ毒は、そのうち死に至る毒なの?


「大丈夫ですか? 佩芳様、顔色が悪いですよ」

「問題ない」

「ですが、早くお休みになられた方がよいのでは?」

「……かもしれないな。ありがとう、梓宸」


 そう答えた小鈴が立ち去ろうとした、その瞬間。

 あの時のように、全身が硬直してしまった。


「まさか、佩芳様に化けるとは。どうやら貴女は、かなりの力を持っているようですね」

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