2泊めホスピタル
あれから数日後の、残業中。
どうにも怠い。咳もしょっちゅう出る。
空腹だが、食欲が沸いてこない。それより、少しでも早く帰りたい。だのに。
電車がまた不通。悪天候で折り返し運転。
会社の最寄りから7駅、他社線の乗り入れ駅までしか動かないのか。
俺の家は乗り入れ駅からまだだいぶ向こうだ。
迷った挙げ句、彼に電話を掛けた。都合が悪くなければ、一晩泊めてもらえないか聞くつもりで。
「こんばんわ。あのさ、今日、」
言いかけて俺がごほごほ咳き込むと。
「大体判ったから、泊まりに来い。さっさとな」とだけ彼は言い、一方的に通話が切られた。
ぶっきらぼうながら、向こうから泊まるよう言ってくれたのだ。それに甘える。
ふらふらしながら彼の家にたどり着く。
「すまん」
「熱測ってさっさと寝とけ」
挨拶もそこそこに、彼は居間の方へ、俺は先日の寝室に引っ込んだ。
また、寝巻きなど一式きちんと畳まれて置いてあった。
除菌シートと体温計、水のペットボトルもベッドサイドにちょんと置かれてある。なんと用意周到な。
体温を測ると37.7℃の嫌な熱。
「意外に熱高いな。食えるか?」
と出されたのは、小鉢に半熟卵、椀に薄い出汁、深鉢に梅干しの白粥。
パーフェクトな病人食。
量は少な目で、俺の体調でも完食できた。
何より、どれも味が美味しくて、疲れも風邪も吹き飛んだ。