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彼との彩食  作者: 日戸 暁
第2章 合鍵と家と二人の飯
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【花より】

「明日さ、土曜」

珍しく彼から声をかけてきた。

応じると、

「バイトの連中と花見と飲み会で、俺、昼前からいないから」

まぁ、付き合いも大事だけど。俺とも行こうよ花見。

そう言いたいのを我慢して、

「判った」と返した。

そうなると俺、明日の昼は独りか。


冷蔵庫の惣菜は食っていいって言われてるし、適当に頂戴して済まそうかな。

いや、カップ麺でいいや……。


次の日の朝。

朝食を終えた後、彼が何かこしらえている。

塗りのお重に似せた大きい弁当箱を半分に仕切り、半分に炊き込みご飯を、もう半分には白米をぎっしり詰めている。

白米をさらに半分に仕切って、片方に鶏そぼろと炒り卵、残りには鯛でんぶ。



それから、小さい弁当箱に、菜の花の辛し和え。筍とシイタケ、ニンジン、揚げの炊き込みご飯。さわらの西京焼き。

玉子焼き。うどと蓮根の梅酢漬け。

無茶苦茶きれいなんだけど。


詰め終えて、ダイニングテーブルに運ぶ。

すげえなぁ、良いなぁ、羨ましいなぁと思ってみていたら、彼のスマホに電話がかかってきた。

「ん、そう。お前が言ってたから米だけ持っていく。写真?分かった。送る」

彼が弁当箱を写真に撮っている。ややあって、また電話。

「え?うん。そう。そっちは?」


通話を切った彼は面倒くさそうな顔をしている。

「どしたの」

「花見に、アレと酒しかねぇや」

アレ。あの綺麗な弁当と、飯のお重のことか。いいじゃん、アレがあるなら。



 身支度を終えた彼は、大きい弁当箱と、大きめの水筒を保冷バッグに突っ込んで、玄関に向かった。

あの綺麗な弁当がテーブルに置かれたままだ。

俺は慌てて言った。

「ちっこい弁当箱は!?」

「お前の昼」

言い残して、出て行ってしまう。

え、この、綺麗な弁当、俺のために? 

近くの公園にでも、俺も出かけようか。

彼の弁当持って。

……一緒に花見、行きたかったなぁ。

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