十七話馬は繊細
馬を被ってる人に馬車と馬二頭を借り、アスカを旅立った。
「馬は穢れを嫌う生き物だから清潔にするヒヒーン、あと強いニオイのものを近づけると暴れるヒヒーン」
と見送られた。
そして俺は馬車が動き初めてすぐに酔った。
俺は乗り物に弱いのを忘れていた、自分でこいだブランコで酔うくらい弱いとだけ言っておこう。
「酔ったわ……」
「水飲んだら治るって聞いたことあるし口開けて!」
「あーー」
「【ウォーターシャワー】」
「おぼぼぼぼぼ……多い多い多い」
腹の中には大量の水が、でもちょっとましになったかも、眠くなったのですやすや
目が覚めると隣で半ケツの滝汗と、魔王様が寝ていた。馬車が止まってるし外は暗い、どうやら中継地の北の村についたようだ。
滝汗の半ケツはこっそりなおしておきましょう。
『ゆうたさん、おはようございます』
「おはようって夜中やぞ」
外には気のせいがいた、さっきの見てないですよね? まあこんな様子だと見てないだろうけど。
それでこいつは昼間のうちも馬車の上で周囲を警戒してくれていたのに夜までやってくれている、働きすぎです。
労働基準法に引っ掛かって処刑されるぞ。
「寝てもいいんやぞ」
『寝たいのですがこの村のまわりに狼さんの群れがありまして、念のために起きてるのです』
「村の警備の人らもいるやん、そやし大丈夫ちゃう?」
『それはそうなんですけど少し心配で』
「ほんじゃ、俺が見張っとくから気のせいは寝とけ、なんかあったらすぐ起こしたるし」
『わかりました、ゆうたさんを信じます……すやすや』
寝るのはやい、俺レベルやな。
さーて、なにをして暇を潰すか
寝てる魔王様を目に焼き付けておくか
「じーーーーーー」
やっぱり魔王様はかわいいな、ってあんだけ寝たのに眠気が……がまん! がまん! がま……
すやすや
『じーーーーーー』
気のせいは俺を見つめている、寝たふりするしかないよね。
「おはよう!」
『見張りするから寝ていいよと言って寝たゆうたさーん! 朝ですよー!』
はっきり聞こえてる、気のせいの嫌味が
「まあなにも起こらなかったんじゃからいいじゃろ」
『それはそうなんですけど』
「というかそろそろ起きたほうがいいぞ、これから峠越えじゃからすっごく揺れるぞ」
「はい、起きます!」
揺れる=死、なんですが……
道が舗装されてないので縦横にすごく揺れる。
ものすごい吐き気がする、あと一回揺れたら吐く
『ゆうたさん、大丈夫ですか?』
「無理、げろげろげろ」
俺は口から激臭の液体を吐き出した。
「なにこのにおい、わいまで吐きそう」
『うーん、いいにおいですね~』
「くっさいのじゃ、すぐ片付けるのじゃ」
一人鼻が曲がってるのは放っといて第二波が
「げろげろげろ、ぐわっ!!」
ちょうど吐いたタイミングに今までで一番大きな揺れが
「ぬわっ!! 暴れるな、止まるんじゃ! ってぶつかるーーー!! ガシャーーーン!!」
「生き返れ!」
「はっ、ってなんじゃこらーーー!!」
俺たちが乗っていた馬車がでっかい木にぶつかってぺっちゃんこだ。どうやら俺は潰れて死んだみたい、酔いが覚めてるしさっき暗黒世界が見えたからね。
「さてどうしようかのう」
「というよりどうなってこうなったんですか」
「馬が暴れおって木にどーんじゃ、たぶんおぬしのあれのニオイで興奮したんじゃ」
ということは俺がげろげろしなければなにも起こらなかったと……
『とにかく二頭のおうまさんを追いかけましょう、借り物なので返さないといけないですからね』
「そうじゃな、二頭じゃから二手に別れて追いかけるぞ」
魔王様とその他で別れた、魔王様は確実に捕まえられるが俺たちにできるかな?
『残念なお知らせがあります』
「どうしたん?」
『狼さんがたくさん、そしてその中心におうまさんと女の子がいますね』
「へ?女の子?」
「ん、どうしてこうなった……」
超絶方向音痴の獣人の少女は北アスカ村からサカイに行こうとしたら、森の中で迷い子になってしまった。
しばらく森の中を彷徨っているとなぜか狼の群れに追いかけられた馬がやってきて……
狼に馬と共に囲まれてしまったのだ。
「運悪すぎ……」「ヒヒーン……」
しかし少女は剣を取り出した。
「ん、馬、守ってみせる!」
「ホンマや……」
俺と同い年くらいの獣系少女が数匹の狼と戦っている、なんというギリギリな戦いだ。俺たちは草むらから覗いているので気づかれてないようだ。
「見てんと助けんと!」
「そうは言われても、あっ!!」
少女の剣が食われた、やばい、助けないと……
『どうするんですかーー! あのままじゃまずいですよ』
少女は拳で狼と戦っている、あまりに無謀な戦いだ。
『ゆうたさん、こんなときは弓ですよ』
そうか、もらいたての魔法弓か。お試しにしては難易度が高いがあの子を助けるためにやらないとな、よーく少女の剣を持った狼を狙ってーー
「シューーーバンッ!」
「ヒッヒーーーーーーン!!」
馬にかすってしまった、すまん
まあ狙いの狼に当たったしいいや!?
馬は大暴れし狼を蹴りまくる、馬つえーーー
「わいもやる!〈滝汗〉レーザー」
滝汗は両手からすごい速さで水を出した、これで何匹かは倒せただろう、それでは助けに行こう。
俺はアスカ丸を振り回しながら走り出した。
『では私もぴっかりーーーんMAX!!』
「うっわ、まっぶしーー」
気のせいの光のおかげで狼は退散したようだ。
それと数匹の狼が魔核を落として倒れている。
「おーい、なにがあったんじゃ!?」
魔王様が馬を持ち上げて飛んできた、力持ちだ。
『それがですね──』
「まあよい、とにかく馬を返してくる、ここで待っておくのじゃぞ」
魔王様は馬を二匹持ち上げて飛んでいった……
そして橙色の髪に獣耳が生えた少女が話しかけてきた、手に怪我をしている。
「助けてくれてありがとう」
『それよりゆうたさん、なにかすごいのが来ますよ!?』
「ん、なにこいつ……」
『私は気のせい、それより「ワオーーーン!!」』
「「!?」」
なんや今の声は? ものすごく嫌な予感がする。




