最終話
「さぁて、そろそろお喋りはお終いさせてもらおうかな。また邪魔が入っても困るからな。次に目覚めた時は俺の解体場だ。へへへっ、ロボットをバラすのは初めてだからな。たっぷり楽しませてもらうぜ?」
下衆め! 解体する事に快楽を見出してやがる!
こんな奴にパパとママが……絶対に許さない!
でも、その前に確認しておかないといけない事がある。
「まだだ! まだ店主との関係を聞いてない! 何故、店主はお前に銃を作ったっ!?」
「ああ、それか。何て事はないよ。操っていたからさ。あのおっさんはお前と一番交流が深かったからな。だから俺様の身代わりはあいつにしようと決めたんだ。一番親しい人が両親の仇なんてドラマチックな演出だろ? ひゃはははははははっ!」
最低の発想だ! 狂っていやがる!
人間どうやったらこんな下衆に育つんだ!?
「接客中のあいつの隙を見て、このナノマシンを取り付け、それを介して奴を操っていたのさ」
「店主を操るなんて……どんな命令したっ!?」
「このナノマシンはまだまだまだ開発中だからな。あんまり多くの事を命じると人間の脳や神経が負荷に耐えられないんだよ。出来る命令は3つだけ。一つ、お前の身体を貫ける銃を俺に造ること。二つ、俺の身代わりになって嘘の自供をすること。三つ、俺のことをお前に漏らさないこと。それ以外は奴の自由にさせてやったよ。あんまり行動が変わって警戒されても困るからな」
「嘘の自供……じゃあ、店主はお前に加担していなかったんだな?」
「そういう事だ。奴が元軍人なのは本当だが、そこまでヤワな身体じゃなかったらしい。それでどうよ? 一番親しい人を撃ち殺した気分は? ひゃははははははっ!」
……そうか。店主は犯人じゃなかったんだ。それどころか私のせいでこんな奴に操られて……ごめんなさい。
本当にごめんなさい、店主。
「さぁて、今度こそおしゃべりは終わりだ。大好きな店主の下に送って……」
「いや、店主の下には行けない。だって、お前の行き先は地獄だからなっ!」
気魂しい発砲音を上げながら、愛銃は憤怒の炎を吐いて、文字通り魂のこもった弾丸がバラシヤの腹を貫通した。
普通の弾丸なら腸で弾かれるが、この50口径は優に人体を貫通する! なめんじゃないぞ!
「ぐぶおぁ! ば、ばかな……お前は、確かに6発撃った……弾切れのはず……だ」
「生憎だったな。私の愛銃は7連発なんだよ。あの時、お前にも言ったろ? 7って数字が好きなんだよ。だから店主に頼んでシリンダーの総弾数を6発から7発に換えてもらったんだ」
「な、7連発だと……? う、嘘だ……ロボット共との戦いでも6発……ごとにリロードして……いた……」
「TacticalReload。店主にいつも言われていたんだ。『とっておきは大事にしろ』って」
「そ、そんな……この俺様が……てん……さいの俺様が……こんなロボット如きに……」
「違う。私じゃない。パパとママが私の命を助けてくれた。そして、店主の教えがお前を倒したんだ! パパとママの無念、それと店主の怒りを噛み締めながら、じわじわと迫る恐怖に怯えて地獄に堕ちろ!」
腹を撃たれたバラシヤはすぐに死ぬ事ができず、長い時間悶え苦しんだ後に死んでいった。
終わったよ、パパ、ママ。そして……
「店主」
念願だった復讐を果たした私の心は弾倉と同じように空っぽだった。
気分はちっとも晴れず、虚しいだけ。
復讐の終わった私には何もない。
両親の無念を晴らすためだけで生きてきた私は、それを遂げた後には何も残らない。
「これからどうしよう……こんな時、店主がいてくれたらなぁ」
「ふん。少しはマシになったかと思えば、いつまでも尻の殻がとれないヒヨッコめ。言いたい事があればさっさと言え!」
「うん。あのね、これから私って……えっ?」
私の視覚センサーがあの人の姿を捉えた。