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第36話 外遊終了

※この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません

 数日後、全ての外交日程を消化した光二たちは再び機上の人となっていた。


「さすが我が夫だな。見事なデモンストレーションだったぞ。おかげで、あのバイコーンは高値で売れた」


 二人っきりの貴賓室。


 ルインが満足げに言う。


「売ったのか。別に金に困っている訳でもないだろ?」


「まあ、地球で使える個人資産はいくら持っておいても損はないからな」


「そんなことしなくても、俺がいくらでも金を回したのに」


 官房機密費を横流しするなり、公共事業をお手盛り価格で発注するなり、いくらでもルインに資金を還流する方法はある。


「ふっ、コージは清廉なリーダーとして民から人気なのだろう? くだらない見栄で弱みを作ることもあるまい」


 ルインは薄く笑う。


 光二に負担をかけないように気を遣ったということか。ルインのこういうところが好きだが、少し他人行儀で寂しくもある。


 まあ、確かにルインが地球の金を持っていることに対して、万人が納得できる分かりやすい建前もあった方がいいか。


「にしても、ルインもズルいよな。あれって軍用場じゃなくて見栄え重視の儀礼用の馬だろ?」


 異世界の馬を初めてみるお歴々には衝撃だったのだろうが、実はあれはパルソミアの本気を出した兵器ではなかった。


 つまり、仮にサルマン王子があのバイコーンの遺伝子を解析したり、繁殖に成功したりしても、パルソミアの軍事技術が流出することにはならない。


「王族なのだから見栄を張るために儀礼用の馬を持っていてもよかろう。それに現状、地球であの、貴重な宝血――地球的な表現をするなら、遺伝資源か? それを所持しているのは、日本以外にはあの国しかないのだから、貴重なことには相違ない」


 ルインは悪びれることなくそう言い切った。


 彼女の口ぶりだとまるであくどい詐欺のようだが、こちらとしては決して王子を騙そうとした訳ではなかった。儀礼用のバイコーンを使ったのは機密保持の意味もあるが、ガチの軍用場を使うと意図せぬ大虐殺が発生しかねないので、安全のために敢えて格落ちの馬を使ったのである。事実、あのバイコーンですら事故りかけたのだ。もしあの時の咆哮した馬が一線級の軍用馬だったら、少なくとも会場にいた人間の半数は発狂して自死していた可能性が高い。


「とにかく、いーなー、俺も自由に使えるお小遣い欲しいなー」


 光二は指を咥えて物欲しげな顔でルインを見る。


 光二もエキシビジョンとはいえレースに勝ったので、結構な額の賞金を受け取る権利はあった。だが、さすがに外遊先で異世界の馬のジョッキーをして稼いだ金の取り扱いは色々経理処理がめんどくさいので、賞金の受け取りは固辞して現地の慈善団体に寄付するように取り計らった。


「しょうがないやつだ。あとで駄菓子でも買ってやろう。500円以内で」


「それ、バナナはおやつに入るやつか?」


「入らない。バナナはおやつというよりは夜食だろう?」


 ルインが光二に色っぽい流し目を向けてくる。


「下ネタかよ」


「それを決めるのは旦那様次第だな」


 ルインが光二に色っぽい流し目を向けてくる。


 こうして中東外遊は、石油とルインのお小遣いを獲得するという上々の成果を残し、幕を閉じた。

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