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告白のゆくえ

 ジノとマルセルの決闘はすぐに決着がつくかと思っていたが、お互いに一歩も譲らずに決着がつかない。

 イザベラは二人の決闘を見守る。


「マルセルって強かったのね」

「知らなかったんですか?」

「ええ。リリは知っていたの?」

「一応、婚約者ですから」

「そっか」


 最初の頃はマルセルに関心のなさそうだったリリだが、いつの間にか仲良くなっていたようだ。マルセルだって全然話せなかった頃からは少しだけ話せるようになっている。イザベラが知らないだけで二人は婚約者として仲良くやっているのだろう。


「なんかごめんね。勝手に決闘とか、婚約破棄とか言って」


 リリがこの決闘について何も言わないのに焦り、ぺらぺらと口から言葉が出てくる。


「リリの気持ちも考えずに、私の考えで動いて迷惑だったよね」


 イザベラは自分の理想を相手に押しつけようとしていた。リリのためだと言いながら、相手のことなど考えていなかった。


「婚約破棄だって最初からしないって言ってたし、プレゼントもリリのこと全然考えてなくて、迷惑になっちゃったし、今だって私が許せないからって理由で決闘を申込んで……」


 イザベラは自分が情けなくなり制服を強く握りしめる。


「私だって、リリのこと、きちんと助けられなかったのに……」


 そこまで言うと堪えきれなくなった感情が目から溢れ出る。


「そんなことないです」


 リリの優しい声に顔をあげる。


「イザベラはいつだって私のことを考えてくれてます」


 人形のような整った顔がいつもより柔らかいような気がする。


「でも」

「いつも私の代わりに怒ったり笑ったりしてくれて感謝してます」

「本当?」

「もちろんです」


 表情はいつも通りだけれど、なんとなくリリが笑った気がする。


「リリっ大好き」


 思いっきりリリに抱きつく。

 

「私もです」


 耳元でリリの穏やかな声が聞こえる。嬉しくて思わず腕に力を入れると「苦しいです」と抗議される。すぐに力を緩めると試合終了の合図が聞こえてくる。

 二人して合図のした方を向くと、すでにジノとマルセルがこちらへと向かってくるところだった。リリとの話に夢中で決闘を見ていなかったのだが、どちらが勝ったのか。今さらジノが負けていたらどうしようと不安になる。そして、なぜ不安になるのかと不思議に思う。


「ちょっと話しても良いかな?」


 話しかけて来たのはマルセルだった。


「もちろんです」


 リリが返事をすると、マルセルはその場で片膝をつき、リリの手をとる。イザベラは二人の邪魔をしないようにそっと離れる。


「俺はリリ・ユハスのことを愛している。どうかこの俺、マルセル・バラージュと結婚してくれませんか?」


 昔話に出てくるような愛の告白に周囲がざわめく。王子様のような見た目のマルセルがやると様になっており、まるで物語の一場面のようだ。


「謹んでお受けいたします」


 リリの澄んだ声はお姫様のようだった。マルセルがリリの手の甲に口づけると、どこからともなく拍手が湧き起こる。イザベラもまた泣きそうになりながら手をたたき、ジノにお礼をしようと振り向くが先ほどまでいた場所にジノの姿はなかった。

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