表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

52/57

mission 45 ミーティング

その日、大変珍しくミッションのメンバーが全員勢ぞろいしていた。


学園組は毎日会えるが、流石に結婚式の準備に忙しい公爵家嫡男や近衛騎士団副長とはそうそう捕まらない。


アラン王子だって、マリウスだって、伯爵家嫡男のノアですら、学園に通う以外の時間は勉強に社交にと大忙しなのだ。




しかし学園のシールドが、何者かが解除しようと試みた跡があるとか何かで点検の為に急遽休みになった日、奇跡的にウェスリー様の非番が重なったのだ。

それにキーン様が予定を合わせてくれた。



最近は大体昼食の時に学園組で、どのミッションを誰がこなすか相談して、大人組とは書簡や魔法通信で連絡を取り合う程度だった。



せっかく全員が揃うという事で、迷ったが闇の暗殺者、レンも誘う。


レンの目的はアラン王子とシアに取り入って、信頼を得てからの暗殺なので、王宮図書室で一緒に自習でもしないかと誘えばあっさりと付いてきた。








集まって最初に、レンに対してごく軽く転生とミッションの説明をする。流石に目を少し見開いて驚いた様子だが、相変わらず何も言わない。


どうせ一度の説明で全てを理解する事は無理だ。一緒にミッションに誘って行動しているうちに徐々に様子が分かるだろうと、その後はレンを気にせず通常通りのミッション会議を行った。



「光の魔力が上がるミッションを優先的にこなしているけど、あまり効果はないですね。」

マリウスが難しい顔をして言う。



「光のミッション自体、数が少ないのよね。あとは自分の得意魔力を底上げすると、全体的に他の系統の魔力も少しずつだけど上がるから、そっちをどんどんこなした方が速いかも。」


光の魔力を得意とする者は、闇と並んでとても少ない。

世界中を探しても、少し使えるかな、程度の者が数人いるかどうか。

だから乙女ゲームでも、転生した光の聖女・勇者が大変重宝されるのだ。




ちなみに、今のところ一番光の魔法が使えるのは、才能の塊ことメインヒーロー、アラン王子様である。

次にその他の攻略対象者たちがそこそこで、シアやノアやセオはどれだけ頑張ってもほぼ伸びない。

ほんの少しでも、使える時点ですごいことなのだが。




意外なのはアラン王子にも才能では負けないルーカスが、全く、一切光の魔法を使えないことだ。



「ルーカスが光の魔法を全く使えないのは不思議だな。火の魔法は光に1番近いのに。・・・・というか、他の系統の魔法も一切使えないのだろう?」


そう発言したのはウェスリーだ。

多くの部下を指導しているが、このような例はみたことがないという。



「それについては心当たりがあるんですが・・・・。」

キーン様の言葉に、全員の視線が集まる。



「通常、魔力が体内にある状態の時は、まだ系統など関係ない、純粋な魔力の状態です。この魔力自体は、魔法が使えないものでも、ある程度は持っている。それを外に放出できるかどうかが魔法を使えるかどうかの差になるわけですが・・・。」



全員が軽く頷く。貴族の中では常識だし、学園でももっと詳しく習うので、シアでももちろん知っている。


「貴族はその、体内の魔力を外に出す訓練を幼いころからやっていくので、魔法を使えない者はほぼいません。更に家庭教師などに、色んな系統を試されて、伸ばしていく方法もごく自然に習っていくので、得意不得意はあれ、一応全部の系統の使い方は分かる。」



そう、その通りだ。

しかし不思議と誰もが得意な系統は1つで、そのうちその得意系統だけを練習するようになっていくのだ。

得意系統以外の魔法を練習しても、効率が悪すぎるから。



「平民の中にも、当然膨大な魔力を体内に秘めている者もいる。何かの拍子に偶然魔法を使えるようになるかもしれないし、一生気が付かないかもしれない。ルーカスは、子どもの頃に偶然使えるようになったんですよね?」



「はい。魔物に襲われかけて、必死で攻撃しないとと思ったら、気が付けば火魔法で攻撃していました。」



その話はシア達もかつてルーカスから聞いたことがある。無事で本当に良かった。



「それからも、火魔法だけを使っていた?」

「はい。魔法を使える事は他の人に内緒にしていたので、城壁の外でこっそり魔物を狩るくらいにしか使わなくて。」

「他の系統は試したことは無かった。」

「・・・・はい。」


キーン様が、ルーカスに色々と聞きだして、やはりなというように頷いている。


シア達と出会った時には、ルーカスは既にある程度攻撃魔法を使えていた。

その後はミッションで、ルーカスの得意系統であろう火魔法を中心に練習していったので、他の系統を試してみたのは、闇の竜対策で全員が光魔法を試し始めた時からだろう。




「原因はそれですね。他の系統の魔法の使い方を、勉強して頭では分かっても体が感覚を掴めていない。火魔法は光魔法に一番近い。ルーカスも一度感覚を掴めばアラン王子と同じくらいには光魔法を使えるようになるはずです。諦めないで光魔法の練習を続けていきましょう。正直に言って、ルーカスを伸ばすのが、一番希望がある。」



それはこの場の全員が思っている事だった。

ルーカス以外の者は、今でも十分頑張って光の魔力を伸ばしているし、どれだけミッションをやればどのぐらい伸びるのか、もう大体分かってしまっている。


5年程度では絶望的に、闇の竜を浄化するのに足りないことも、分かっている。

今、光の魔力がゼロのルーカスだけが、未知数の希望だった。



「・・・・・はい。なんとしてでも、使えるように、頑張ります。」



力強く応えるルーカス。本人が一番もどかしいだろう。ルーカスがどれだけ努力をしているか、皆は分かっていたのでそれ以上言葉を掛けることはなかった。








「ところで、ずっと聞きたかったことがあるんですが。」


ミッションメンバーの頭脳・・・いや、国家の頭脳とも言えるキーン様が、話を切り替えるようにハイ、と手をあげる。ちなみに、結婚も決まり、からかう人もいなくなった今、垂れ下がっていた前髪もさっぱりと切りそろえられ、国一番の美形の称号をほしいままにしている。


美形が小さく手をあげている。可愛い。




「そこのレン君の所属している暗殺者組織を壊滅させないで、泳がしているのは何か理由があるんですか?」


「ちょまっ!ちょっ!!キーン様?」


所属している暗殺者組織って!!レンが暗殺者なことは、気が付いていない振りでここまできているんですけどーーー!!!


「どうせ、口止めの魔法を掛けるのでしょう?気が付いている事に気が付かれても支障はないんじゃないですか。」


「それはそうですけど。」

言われてみたら、とあっさりと納得するシア。


キーン様、合理的過ぎてたまに常人とは感覚がズレている。


恐る恐るレンの方を見てみると、さすがに驚いたのか、真っ赤な顔をして、金魚のように口をパクパクさせている。

しかし、やはり何も話さない。

相変わらず無口だなーとシアは思った。



「えーっとですね。ちょっと待ってください。・・・・・・うん、暗殺者組織の壊滅ミッションはまだないですね。ゲームでも、5年後の予定ですし。」


「いえ、ミッションとかじゃなくて。普通にこの戦力ならいつでも壊滅させられると思うんですが。レン君も、あっちでもこっちでも口止めの魔法を掛けられて、何も話せなくて大変そうですし。」



「・・・・・・口止めの魔法、あっちでもこっちでも???」


え、どういうこと?とレンを見る。

相変わらず口をパクパクしているものの、何もしゃべらない。というか、しゃべれない???


学園メンバーはハッキリ言って攻撃と防御に振り切っていて、あまり探知探索には向いていない。

それ系が得意なセオの方を見ると、重々しく頷いて肯定している。




「当然、暗殺者組織の方でも、レン君が捕らわれた時のために、複数の口止め魔法を掛けていますね。組織の事を話そうとすると自爆する物騒なものです。これじゃあ、いつ爆発するのか怖くて、普通の会話も出来ないでしょう。」

「ええええ~。」


無口だと思っていたら、まさかのあっちでもこっちでも口止め魔法多重掛け!!!可哀そう!!



「セオ!!!あっちの口止め魔法、解除できる!?」

「・・・・やってみます。とりあえず、こちらの魔法を解除してもらえますか?」



こちらの魔法とは、一緒に行動している時に、暗殺者組織に報告されたら困る事があると、悪いけど情報を漏らせないようにさせてもらっている誓約魔法だ。

主にシアが掛ける事が多い。

何度か掛けた事がある誓約魔法を、一つ一つ丁寧に、全て解除する。


アラン王子とマリウスも、何やらちょちょいと解除する仕草をしている。


「・・・・こっちの誓約魔法だけで、結構な数掛けてたんだな。」

アラン王子が気まずそうにしている。



「では、暗殺者組織側の魔法を解いていきますね。」


そう言うと、セオはレンの前に向き合って座り、集中し始めた。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ