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mission 42 怪しいセオ

「セオさんなら今日はまだ戻っていませんよ。」






「・・・今日はまだ?」


ある日の事。学園から帰ったシアが、何気なくセオはどこ?とメイドの一人に聞いた返事がこれだった。



「どこに出かけているの?今日はってことは、今日以外もどこかへ行っているのかしら。」


何気なく聞いたけれど、実際にはそこまで気になっていなかった。

ただ、まだ戻っていないというから、あらどこに出かけているの?と聞いただけ。





イーストランド家の執事見習いで、今ではほぼシアとノアの専属になっているセオだが、四六時中一緒にいるわけじゃない。

シアとノアが学園にいる間はイーストランドの家の仕事をすることもあれば、もちろん休みの日だってある。


買い物にでも行っているのかな?と気にもしていなかった。


「あ!・・・・い、いえなんでもございません。失礼いたしました。」


メイドが慌てた様子で言葉を濁し、逃げるようにしてそそくさと仕事へ戻って行くそれまでは。






「ん?セオは結局どこに行っているんだろうね。まあセオの自由だけれど。じゃあまた後で、シア。」


ガシリ。

自分の部屋へと向かおうとするノアの腕を、力強くつかむ手。


「・・・・・なにかな?」

「セオがどこに行っているのか、探るわよ!ノア。」









*****








使用人たち何人かに軽く聞いた結果、セオの出かけ先を教えてくれる者はいなかった。


本当に行き先を知らなさそうな様子の者もいれば、話題を変えて去って行く者もいる。

シアが強く命令すれば教えてくれるだろうが・・・・・。



シア達の休日には、調べ物やミッションで常に一緒にいるので、出かけているのはシア達が学校に行っている間と考えて良いだろう。



こうなってから考えてみると、最近セオがなんとなく疲れている様子だった気がする。

シア達が学校へ行っている間、何か疲れるようなことをしているのだろうか。

セオも相当体力と魔力が上がっているはずなのだが。




「いっそ、1日ぐらい学校休んで付いていこうかしら。」

「シアが学校休んだら、セオにはすぐにばれると思うよ。」

「そーなのよね~。」


ノアの部屋で美味しいお茶を飲みながら作戦会議だ。

話を聞いてくれるノアも、大概シアには甘い。


一緒に勉強しているということになっているので、学校の教科書も持ち込んでいる。



シアは勉強があまり得意でない。

1歳年上のノアが普段からたまにこうして勉強を教えてくれているので、怪しまれることはないだろう。



「でも気になる!ノアは気にならないの?」

「ならないと言ったらウソになるけど。」

「まさか、彼女とかできた!?」

「・・・それは、ないと思うよ。」


シアの思いつきを、妙に真剣な語調で否定するノア。

「そうなの?」

「うん。セオに彼女ができたということはないよ。」


ハッキリと否定してくれるノアの言葉に、妙に安心する。

少し落ち着いて、お気に入りのフルーツティーに口を付ける。

ここまで断言するからには、きっと根拠があるのだろう。



「・・・・あんまり、詮索しない方がいいのかな。」


一口お茶を飲んで落ち着いたら、今度は気持ちが少し落ち込んでしまった。

セオだってもう立派な青年だ。

秘密にしたいことの一つや二つあるだろうし、一生シア達の面倒を見てくれるわけでもない。


ノアは否定しているけれど、彼女だっていつできてもおかしくはない。


考えれば考えるほど、段々と気分が沈んでいってしまう。



「うーーーーーーーーーーーーーーーーーーん。」



落ち込んだ様子を見て、ノアが珍しくお行儀悪く、椅子に深々と背中を預けて、唸る。



「・・・どうしたの、ノア。」

「そりゃ詮索するのは良くはないけど。秘密にされて出かけているなんて気になるのは当然だし。・・・・どうせ秘密にするなら、こんな風に中途半端にバレずに、出かけていることすら気が付かせないようにしてもらわないとね。学校からの帰宅時間までに帰っていなかったセオのミスだよ。」


「そうかしら。」

「それにシア、彼女と会っているとか言い出すし。・・・まだ疑っているでしょ。」

「本当に彼女が出来たなら、セオが内緒にする必要ないとは思うけど。・・・彼女じゃなくても、まだ付き合ってないだけで、最近仲が良い人とか・・・・いつそういうことがあってもおかしくないかなとは、思ってる。」


「うん。シアがそのまま疑ったままでいるの、良くないと思う。」



前世ではとっくに成人過ぎていたシアだけど、こちらに来てからはどうにも精神も体に合わせて若返っているようで、ちょっとしたことで落ち込んだりするし、逆にちょっとしたことではしゃいだり喜んだりもしていた。


そのせいだろうか。今日はノアが、いつもより大人に見えた。


「だから、詮索してしまおう。セオが何をしているか。協力するよ。」









さて、どうやってセオの行き先を探るか。

「やっぱり学校に行くふりをしておいて、途中から早退して後をつけるのが良いんじゃないかしら。モモちゃんに見張っていてもらって、セオが出かけたら教えてもらうの。」

「うん、それもありだけど。もう少し何とかならないかな。早退したら家に連絡が行くし。それなのにシアが中々帰ってこなかったら、家の者も心配するだろう。もしかしたら、セオにも連絡がいって、慌てて帰ってきてしまうかも。」


「じゃあお父様とお母様に事情を話しておくのは・・・。」

「早退するぐらいなら、セオにどこに言っているか話せっていうだろうね。・・・というかシア。モモちゃんに見張っていてもらって、もうそのままモモちゃんに、セオがどこに行ったかついていってもらったら?」

「あ、それいい!!モモちゃーん。」



さっそくモモちゃんを呼び出す。



キュイッ!!



すぐにフェネックの姿のモモちゃんが姿を現した。

シアのお膝に丸まって、スリスリと幸せそうに頭をこすり付けて、目を細める。


シアはそんなモモちゃんをひとしきり撫でてあげると、話がしたいからフェンリルの姿になってほしいと頼む。



『なにかしらシア。』


フェネック姿は小さくて可愛らしいモモちゃんだが、フェンリルに変身できた時点で大人だそうで、口調は意外とお姉さんだ。


モモちゃんは親と離れて独り立ちするために、こちらの世界で暮らしていたのだそうだ。


この世界に来て人間と契約している精霊獣は、若い者が多いらしい。

なんでも、精霊獣の子どもが大きくなってきて、もうすぐ独り立ちできるという頃になると、こちらの世界に修行というか、経験を積むためにやってくるのだそうだ。



栄養たっぷりのオリハルコンを食べたモモちゃんは、早くフェンリルに成長できたと言って喜んでいた。



「お願いがあるの。私が学校に行っている間、セオがどこかに出かけているみたいなんだけど。どこに行っているのか、隠れて付いていってもらえないかな。」


言葉に出してみると、なんとなく後ろめたい。



『あら。私も気になって付いていったことあるわよ。』

「え!もう付いていってるの!?」


なんとビックリ。頼む前からモモちゃんはセオがどこに行っているか、付いていっていたらしい。


『だってシア達が学校に行っている間、ヒマなんですもの。最近急にセオが構ってくれなくなったと思ったら、クロエまで一緒に行ってしまうし。クロエに聞いても、どこに行っているか、教えてくれないのよ。』


なるほど。

確かに以前はシア達が学校に行っている間は、モモちゃんはクロエと一緒に遊んだり、セオに構ってもらっている様子だった。

それなのにクロエとセオがいなくなって、どこに行ったか分からないとなると、シアより先にモモちゃんのほうが気になるというものだろう。



「それで、セオはどこに行っていたの?」

『王宮よ。』

「王宮!?王宮図書室?・・・ううん。だったら隠す必要なんてないし。一体王宮になんの用事があるのかな。」

『分からないわ。王宮の周りはシールドに囲まれているから。シールドを破って良いなら、いくらでも見に行けるけど。』

「それはやめて。」



王宮のシールドを破るなんて、反逆者として捕まってもおかしくはない。

というか、正真正銘反逆者だ。


王宮は広い。王宮のどこで何をやっているのか。


一歩進んだようで、二歩下がってしまった気分だ。



「もうこれは・・・本当に後をつけるしかないかも。」









*****








計画を練りに練って、ついにセオの尾行を実行する日が来た。

モモちゃんによると、シア達に学校がある日はほぼ、出かけているらしい。

その間のイーストランドの仕事を免除されているということは、お父様やお母さまから許可を得ているのだろう。


もしかしたら、お父様たちになにか頼まれて、仕事をしに行っているだけかもしれない。



あれから気を付けて見ていると、セオは毎日とても疲れているようだった。

時には怪我をしていることもある。

怪しすぎる。


すぐにでも学校をサボって付いていきたかったが、サボっていることをバレたくない。


考えに考えて、ついにシアはこの尾行のためだけに新しい技を開発してしまった。










「何度見てもすごい。どっからどう見てもシアだね。・・・こんな魔法ができるなら、悪用する者が出てきそうだ。」

ノアが感心したような、複雑そうな表情をしている。




「それじゃあ、頼んだわね、モモちゃん。」

『こっちのことは、任せて。』


シアに頼まれて返事をしたのは、どこからどう見てもシアだった。



モモちゃんを、シアの得意な水魔法とほんの少し使える光魔法で作ったシアの幻影で覆う。

そしてその幻影をモモちゃんの膨大な魔力で固定して、動かしている。


魔力に物を言わせた力技の変身だ。

これを応用したら、国の重要人物に成り代わることも出来てしまうのではないか。

もし悪い事に利用しようとする者がこの魔法を使えたら、国の一つや二つ、転覆しかねない。

シアで良かった、とノアは心中胸をなでおろす。



まあフェンリルの魔力と、シアの科学の知識があってこその技なので、他に使える者は存在しないだろう。



ただし、さすがにモモちゃんが代わりに授業で答えたりは厳しいので、座っているだけで会話も最小限にするように言ってある。


昼休みは、今日はアラン王子達とは離れて、ノアとだけ食べることになっている。

そしてなんと、授業中のフォローはイザベラに頼んでいる。


シアがどうしても内緒で出かけたいので、代わりにそっくりな者が学校へ行くので、フォローしてほしいと頼んだのだ。

お昼休みも出来ればノアと3人で食べてくれないかと頼んだら、食い気味に良い笑顔でオッケーしてくれた。


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― 新着の感想 ―
[良い点] セオが彼女作ることは絶対ないけど、シアにはその根拠がわからないからな・・・ そしてまたとんでもないことやってのけてる笑
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