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mission 4 契約

泣き止んだノアは何故か帰らず、肌触りの良い高級な敷物に上がり込んできてしまった。

メイド達がテキパキとノアの分のお茶も準備してしまう。

・・・・・何で?


ノアは私にピッタリとくっついて微睡むクロエを羨ましそうに眺めている。






「お兄様はどうして私の事、イジメていたんですか?」

「・・・・別にイジメてない。」

「は?」

「あっ・・・・いや。ちょっとイジワルな事を言っただけだ!」


イジワルな事を言ったりやったりすることを「イジメる」というのでは?

まあ本人としては、ほんのちょっとイジワルな事しちゃっただけ、と言いたいのだろうけど。


「おま・・・シアがいるから、お父様もお母様も僕にあまり構ってくれない。1歳しか年が違わないのに。」


ん?今お前って言いかけた?

ま、いっか。

記憶が戻ってくるにつれて、ノアがシアにイジワルするのはまあそんな理由じゃないかなとは思っていた。


お父様もお母様も、末っ子で体調を崩しやすいシアには甘い。

どろどろの甘々だ。

対して1歳年上のノアにはかなり厳しい。

跡取りだという意識もあるだろうし。

ノアの時には「もう〇歳でしょ!!」って言っておきながら、私が〇歳になっても「シアはまだ〇歳だから良いのよ~」みたいなことも何度もあった。

いつどんな世界にもあるのね。


ノアはお父様やお母様がいる前ではイジメてこなかったけど、やっぱり報告がいくのかシアの事を良く思っていないのが分かるのか。

それで余計に厳しくしてしまうようだった。


これも良くあるよねー。


「それはお父様とお母様に言ってみてはどうですか?」

妹をイジメてなんかいないで。

とは言わない。

もう許したしね。グチグチは言わないことにする。


「言えるか。」

「どうして?」

「・・・・言ってもムダだ。」


・・・・・・・・・・・うーん、確かに。

うちの両親は悪い人ではない。

真面目で優しい良い人たちだ。

でもノアをちょっと完璧に育てようとしすぎなんじゃないかな。



でもさ。

「でも、言いましょうよ。言ってもダメだったらお父様たちのせいじゃないですか。言わなかったらお兄様はただのいじめっ子ですよ。」

まあどっちにしろいじめっ子ではあるけれど。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

「私も一緒に言ってあげますから。そうしましょ。言ってダメなら恨みましょう!」

「恨みましょうって。・・・ダメだろ。」

「まあとにかく言いましょうよ。お父様とお母様に抗議です!私だってとばっちりでイジメられて良い迷惑なんですから。」



「・・・・・・・・・・・・ゴメン。」

「いいよ。」


よし!スッキリ解決だ。


まあお父様とお母様に言ってどうなるかは分からないけれど。

私としてはもう結果はどうでも良いような気分だった。






キュゥ! キュゥ! クゥーー!


気を取り直して日向ぼっこの続きをしてしばらく経った時だった。


近くの茂みから小さな鳴き声が聞こえた気がした。

ちなみにノアはまだいる。

一緒に日向ぼっこしていると言って良いのかは微妙だけど、同じシートに座り、お茶を飲み、ゴロゴロして、たまに思いついたことを少し話したりしていた。

たまにクロエの事をツンツンと触ってみたりもしている。



「何か聞こえたか?」


ノアにも鳴き声が聞こえたみたいだった。



穏やかに見守っていてくれていたメイド達が一斉に警戒して私たちを取り囲む。

どこからともなく護衛達も現れた。

護衛さん達の精霊獣もチラホラいる。


・・・・子供二人が日向ぼっこするのにこの人数が動いていたとは驚きだ。



でもこれだけの人数が警戒するような鳴き声に聞こえなかったのだけど。

それになんだかとっても聞き覚えのあるような、懐かしい鳴き声だった。


「・・ねえ!傷つけないでね!!」

不安になって、護衛の人たちに訴えた。


「分かっておりますよ。念のため警戒しております。ご安心ください。」

この中で一番責任者っぽい護衛さんが、わざわざ振り向いて親近感のある顔で笑ってくれた。

普通のオジサンみたいで、とても強そうには見えないけれど、それが逆に安心させてくれる。


そうだよね。

小さな精霊獣とかかもしれないし。

いきなり攻撃はしないよね。

クロエも警戒していないし。


・・・でも魔獣もいるようなこの世界で、正体を見定めるまで警戒をするのがどう考えても正解だろう。



クゥーー!クゥーー!



声はどんどん近づいてきている。

甘えるような、何かを訴えかけるように変わってきていた。



ガサガサッ ガサッ


ついに茂みから、その鳴き声の持ち主が姿を現した。



「フェネック!!」

「フェネック?何ですか。それは。」


現れたのはフェネックの精霊獣だった。

「キツネの仲間の精霊獣だよ。可愛い~!!」

「・・・何か弱そうな精霊獣だな。」


ノアがそう言うが、私もそう思う。

でもこの子の価値は強いとか弱いとかではない。

この圧倒的な可愛さにあるのよ!


「モモちゃ~ん。可愛い~~~。」

ゲームでの相棒の名前が思わず出てきてしまう。

こちらの世界に来てからもう二週間以上経っている。

つまりそれだけの期間相棒のモモちゃんに会っていないのだ。

寂しかった。



キュイッ!


「あはは。返事した?モモちゃん。」


キュイッ!


「モモちゃん?」


キュイッ!


「え?ホントにモモちゃん?」


キュイッ!


「・・・・・・・・・・・・・モモちゃん!!」


キュイッ!!!




お互いに走り寄ってギュッとそのフェネックを抱きしめる。

実際に抱きしめたのは初めてだ。

フッカフカで気持ちが良い。

初めてのはずの温もりが、なぜか懐かしい感じがした。


護衛の人たちも、危険がないと判断したのか、好きにさせてくれている。



まさかのこの反応。

モモちゃんだ!確信する。

喋れない小精霊獣だけど分かる。



「モモちゃん~会いたかったよ~。」

ああ、ダメだ。涙が溢れ出てくる。

苦楽を共にしてきた私の相棒。

他の人にとってはただのゲームのキャラクターでも、私にとっては本物の相棒。

まさかこの世界で会えるとは思えなかった。

どういう理論で私はこの世界にいて、ゲームにいたモモちゃんと出会えたのか?


分からないけどそんな事はどうでも良い。

会えた事が嬉しいから。







でも何だか違和感がある。

モモちゃんと繋がれていない感じがする。

あ!そうか。今契約していない状態なのか。


「モモちゃん、契約しよ!」


キュイッ!


モモちゃんがペロリと私の涙を舐めると、私とモモちゃんを中心に淡く優しい光が包み込んでくれる。

精霊獣と人が信頼関係を結び、お互いに了承し合ったら契約することが出来る。


契約できたことこそが、モモちゃんである証明だ。

初対面の精霊獣と契約することは難しいだろう。


「え!契約したのか!?良いのか!?」

ノアが一生で1回しかできない契約を見て驚いている。

良いのよ。


大体精霊獣との契約は誰でもが出来るわけじゃない。

まあゲームだったらプレイヤーは100%できるだろうけど。

それこそゲームに出てくる精霊獣持ちは、貴族とかメイン的なキャラクターだけで、庶民のNPCノンプレイヤーキャラクターには小精霊獣でも契約していたら珍しい方だ。


使用人の様子などを見ていても、ゲームと事情は変わっていなさそう。


貴族はレベルの高い精霊獣と契約している人が多いようだけれど、令嬢なんかはペット感覚で可愛さ重視で選んでいる人もいる。

伯爵家の次女なら好きにできるだろう。


ノアもそう思ったのか「・・まあ良いのか。」と納得している。



モモちゃんとも会えたし、ノアとも仲直りできた。

今日はいい日だな~!





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