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十字架屋敷の殺人  作者: 藤村
第二章 謎編②
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第十二話 二人目

これにて第二章は終了です。次話から第三章、謎編③に突入します。

 僕たちは、置時計の針が(9)を示したところで解散した。


 僕は自室のベッドに横たわり、「フー……」と溜息を漏らす。


 まさかだ。まさか、ジョンが自らのイタズラを認めるだなんて。


 ジョンは年のせいかどこか頑固な部分がある。故に、自分がしていないことは意地でも認めない。


 半ばこじつけのような僕の推理。

 だが、ジョンが白状したことにより、その推理は決定的なものとなった。


 僕の願望は真実だった。

 この十字架屋敷の中に人を殺すような人間はいなかった。悲しいことだが、ユキの死はただの事故に過ぎなかったのだ。


 そこにジョンのイタズラが重なった。

 そのせいで、僕たちは連続殺人が起きるのではないかと、そんな錯覚に見舞われたのだ。


「なんだそれ」


 まるでバカみたいな話じゃないか。

 こんな偶然に翻弄され、僕たちは互いに疑心暗鬼に陥っていたのか。


 それどころか僕は、この屋敷に招待してくれたレインとザクレイさんに少なからずではあるものの、猜疑の眼差しを向けてしまった。


「最低だな僕は」


 一度自己嫌悪に陥ると、そこからは泥沼だった。

 蟻地獄に飲み込まれていくかのような、そんな感覚が続いた。


 

 でも、なんだろう。

 なにか違和感が残っている。なにか、なにかを見落としてはいやしないだろうか? 


 些細なことでもいい。この胸の突っかかりを解消してくれるような光明。この不信感を取り除いてくれるなにか。


 僕は、一体全体なにに違和感を覚えているんだ?

 

 見落としているものがあるとするならば、それはなんだ? 


 本当にこれで解決したのか? 

 本当にこれで終わりなのか?


 時計の針は、気付けば(10)に差し掛かろうとしていた。

 

「もうこんな時間か」


 そろそろ眠るとしよう。

 もうなにも考えなくていい。これで全て終わったんだから。


 

 そんな僕を何者かが嘲笑う。

 まだ終わってなどいない。

 いや、むしろ。


 これからが始まりだ。

 そう言わんばかりのタイミングだった。


 ドォォオンッ!!

 と、大きな音が響いたのは。

 同時に、僕の部屋が微弱ながらに揺らめいた。


「……ッ!!」


 僕はガバッ、と勢いよく起き上がる。


「なんだ、今の音」


 まさか。

 いや、しかし……。


 扉を開け、ゆっくりと部屋を出る。

 

 同じタイミングで二つ隣の部屋、3の部屋からアランが顔を出す。僕たちは互いに顔を見合わせ、ゆっくりと頷いた。


「いいか、俺が先に出る。お前はなにかあった時の為に備えておけ」


「了解です」


 言いながら、僕たちは廊下を進んだ。

 一歩ずつ、最新の注意と警戒心を払いながらゆっくりと。

 そして大広間に到達した時――。


「ああっ!」


 それを目撃したのだった。


 消されたはずの大広間の電気がどうして煌々と照らされているのか? その謎は一旦横に置いておこう。

 

 まずは目の前の現実に向き合わなければならない。


「……ダメだ」


 アランが首を振る。

 だが、そんな言葉を投げ掛けられるまでもなく。

 「ダメだ」などというのは一目瞭然なのだった。


 腕も、足も、本来は曲がり得ない方向に曲がっている。――否、圧し折れている。


 顔の半分は潰れ、体の内部が僅かに露出していた。かなり強い衝撃を受けなければこうはならない。例えば……。


 僕は上方向を仰ぎ見た。

 部屋はなく、ただ絵画を飾るだけの回廊と化した二階部分と三階部分。


「あの高さから落下したなら、こうなってもおかしくはないですね」


「ああ、間違いないだろうな」


 言いながらアランは上着を脱ぎ、ただの肉塊と化したそれに、つまりはジョンの死体に。そっと、それを覆い被せたのだった。


 丁度そのタイミングで、音を聞きつけた彼女らが大広間へとやってきた。


「何事です!?」


 すっかりと怯えた様子のアリスを抱きかかえながら、アディは険しい表情を浮かべている。


 そして僕の左手方向、十字架の軸木北部――7番と8番の部屋から、レインとザクレイさんが焦燥感溢れる様相で駆けつけたのだった。


「今度はなんですか」


「……血溜まり、ですか。今この場に居ないのは」


 聡明なザクレイさんはすぐに答えを導き出した。


「なるほど、ジョン様にございますか」


「見ない方がいい」


 僕はアディとアリス、殊更アリスに向けて言い放つ。

 

 死体の様相はユキの比ではなかった。

 破壊の限りを尽くされ、もはや物体としか形容できない有り様なのだ。


「そん、な。どうして?」


 アリスが頭を抱えてしゃがみ込む。


「全部、ジョンのイタズラだったんでしょ!? 自分で言ってたじゃない、あの藁人形はいたずら、だった……って……」


 言葉の途中で、僕はあっ、と目を見開いた。

 そして、大急ぎで例の場所へ。


「……嘘だろう?」


 レインが取り外し放り捨てたはずの藁人形。

 長机の上にあったものも含め、全て処分したはずの藁人形。

 

 それが再び、この場所に磔になっていたのだ。

 蝋燭時計を置くための、あの壁面の出っ張り部分に。


「どういうことですかこれは?」


 僕を追ってきたレインが困惑の表情で問う。

 だが、それに対しての解答を僕は持ち合わせてなどいない。


 まるで意味が分からないと。

 今言えるのはただそれだけだ。


「とにかく今は現状保存を。そして全員、今夜はこの大広間にて眠りましょう。誰一人として怪しい行動を取れないように」


 ザクレイさんの指示に従い、僕はアランたちの……死体の方へと小走りで向かった。そして事情を説明した。


 最初、アリスは怖がっていた。死体がある場所でなんて眠れないと泣きじゃくっていた。しかしアディが(なだ)めてくれた。


「私がいるから大丈夫」


 そう言って抱きしめると、アリスは静かに頷きを返し「うん」と応じたのだった。

!!作者からの大切なお願い!!


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