幼馴染を救いたい
始めて小説を書きました。
拙い文章で、読みづらいところが多々あるかと思いますが、
御一読頂ければ、最高の喜びに感じます。
俺の名前は伊藤樹。特に秀でた所もない普通の高校二年生。親の転勤を理由に転校を余儀なくされてしまい、再びこの町に戻ってきた。というのも俺は昔、小学校三年生まではこの町に住んでいたのだ。
といっても、この地にいたのは小学校三年生までだったので、交友関係はほぼ無に等しいといえる。
(不安だ…)
俺は教室へと入る扉の前に立っている。緊張と不安で心臓の鼓動が速くなるなか、俺は先生の合図を待っていた。教室の中からは「えー誰だろう」、「女子だといいな~」、「きっとイケメンの男の子だよ~」などという声が聞こえてきた。勝手にハードルが上がっているみたいで、さらに俺の鼓動を早くさせた。
「じゃあ、はいっていいぞ」
先生の合図を聞いて教室の中に入る。興味深そうにこちらの顔を覗いてくる何人かの生徒と目を合わせ、教卓の横まで移動する。俺は過度な緊張で頭が真っ白になり、何をしていいかわからず呆然と立っていた。
「まずは、自己紹介からお願いしようかな。」
すると、先生から助け舟が出され、俺は心臓の鼓動を落ち着かせて自己紹介を始める。
第一印象は大切だからな。抜かりなくやらなくては。
「東京から引っ越してきました。伊藤樹です。見ての通り緊張してますが、これから少しづつ慣れていけたらなと思っています。よろしくお願いします。」
特に面白みのない普通の挨拶を終えると、拍手が返ってきた。我ながら、面白みに欠けすぎていないかと少し心配になったが、周囲の反応を見るに、どうやら杞憂だったらしい。
初めの挨拶なんてこんなものだろう。
「じゃあ、そうだな、一番後ろの空いている席に座ってくれ。」
「あ、はい。」
先生が拍手を遮るようにしてそういい、俺は席と席の間を通って後ろの窓側の席に座る。
「樹君、よろしくね。私は佐藤茜。茜でいいよ、わからないことがあったら私に何でも聞いてね!」
席に座ると、隣の席の見るからに活発そうな女の子に話しかけられた。彼女は佐藤茜と言うらしい。容姿は、茶色がかったショートヘアに、膝上まで上げられたミニスカート、スカートだけではなく、他のところもいろいろと着崩しており、脚なり、胸元なり、色々と目に毒だ。彼女は八重歯を見せながらニカニカと笑顔を向けている。
「ありがとう、困ったことがあったら是非そうさせてもらうよ。」
「も~硬いなぁ。もう、同じクラスになったんだからもっとフランクでいいのにぃ~」
茜さんは少しすねたような表情をして言った。
俺はそんな踏み込みの激しい茜さんに少し苦笑していると、クラスの誰かが
「おーい、また茜が人困らせてるぞ~」
という揶揄うような声が聞こえてきた。
「っな!失礼な!あたしはただ、不安そうな樹君に元気だしてもらおうとしてただけだし~!」
彼女がそういうとクラス内がどっと笑顔で溢れた。「うそつけ」や「転校早々に疲れさせるなよ」などの揶揄う声ばかりではあるが、皆、仲がよさそうで俺は内心ほっとしていた。
クラスに馴染めるのもそう遠くはないだろう。
「ん?」
教室内が和気あいあいとした空気で満たされる中、一瞬、背筋が凍るような冷たい視線を感じた。周りを見回してみると、こちらを鋭い目つきでこちらを見ている少女が、美少女がいた。不愛想な表情をしているが、それでも端正な顔立ちがはっきりと分かり、座っているままでも抜群のスタイルの良さが見て取れる。腰ほどまで伸びている黒髪が、少女の冷徹的な雰囲気に拍車をかけているように感じた。
(転校して早々、俺は何か嫌われるようなことをしたか…?)
俺は、初めの挨拶が良くなかったのだろうか、などと彼女に不愛想な表情を向けられている理由を考えていると、目が合っていることに気が付いたであろう少女が慌てて目を反らす。
(不愛想な表情を向けられた上に目まで反らされた…)
何か、転校初日から悪印象を与えてしまったことは間違いなさそうだ。何かこの先、この少女とトラブルにならなければいいが…。触らぬ神に祟りなし、できるだけ、この少女とは関わらないようにしよう。俺は純粋にここでの学生生活を楽しみたいだけなんだから。
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ショートホームルームが終了し、一時間目の授業が始まった。この学校で始めての授業は歴史だ。歴史の授業は何かと板書が多いので、俺はあまり好きではなかった。眠くなるし。
さらに、窓から入ってくる日差しと心地よい春風がさらに俺の睡眠欲を搔き立てて…
(………っは!!いかんいかん、転校初日にして居眠りするところだった。)
転校初日だし、目立つのは仕方がないが、悪目立ちだけはなるべく避けたい。居眠りをしないようになるべく気を付けよう。しかし、気を付けるといっても眠いものは眠いのだ、昨日は新しい学校への編入が心配であまり寝付くこともできなかったし。
(何か居眠り対策はないものか…)
腕を組み、板書もせずに思案する。そういえば昔、誰かから聞いた話だが、ヒツジを数えると寝付きやすくなるのは海外での話で、理由はヒツジの英語のスペル「sheep」は複数形になっても「s」が付かないため、発音がしやすく、寝るときに数えると安眠しやすくなる、というものらしい。日本語で数える場合はあまり意味がないどころか、寝つきが悪くなることもあるらしいのだ。
(やってみるか。)
俺は板書をしながらヒツジを数える。
(ヒツジが一匹、ヒツジが二匹、ヒツジが三匹…)
俺はさらにヒツジを数え続ける。
(ヒツジが五十一匹、ヒツジが五十二匹、ヒツジが五十…)
…俺はさらにヒツジを数えようとするが圧倒的な睡眠欲の前では、完璧だと思われた策もむなしく、徐々に自分の睡眠欲に負け、意識が薄れていった。体が船を漕いでいる自覚が有るにも関わらずそれに逆らうことができなかった…
「…つき君。」
どこからか名前を呼ぶ声が聞こえる。
「樹君。い~つ~き~君~!」
名前を呼ぶ声は徐々に大きくなり、それに比例して、俺の意識も鮮明になってきた。
「ん…んあ?」
「んあ?じゃないよ!ちゃんと板書しないとメっ、だよっ!」
重たい眼をあけ、声のした方を向く。そこには、人差し指を立て、腰に手を当て説教をしてくる佐藤茜いた。これは完全に俺の偏見だが、天真爛漫で、かつ、服装が色々とあれな茜はあまり授業に積極的に取り組まないタイプかと思っていたが意外とそうでもないらしい。綺麗に板書し、授業の要点をまとめられたノートから普段の授業の態度が垣間見えた。
が、そんなことはどうでもよく、俺は、説教する茜が、茜の顔が、俺の鼻先20cmほど先の近距離にあることにめちゃくちゃ動揺していた。
「もう、ちゃんと聞いてるの!」
さらに数cmほど顔を近づけて説教をする茜。この距離から改めて見ると唇には潤いがあり、肌は雪のように白く、幼げな顔が何とも可愛らしい。彼女は説教こそすれど、本気で怒っている様子はない。むしろ、その童顔ともいえるフェイスで怒り顔をされても愛らしさすら感じてしまう。
「あ、ああ、ごめん、ちゃんと聞いてるよ。」
俺は彼女から気持ち少し距離を取り、謝罪する。ついでに、俺の意識もいよいよ完全に覚醒し、眠気もすっかりなくなった。
「もう、樹君って意外と不良さんなのかな?」
茜は困った顔をして言う。
「い、いや、たまたま寝不足で寝てしまっただけで、いつもはこうじゃないんだ」
俺は事実をそのまま伝える。が茜は信用していない様子で「ほんとうかなぁ」と、揶揄うようにニヤニヤとした表情を浮かべる。
「もしかして、新しい学校が楽しみで眠れなかったとか」
「いや、むしろ不安で眠れなかったんだ」
「どうして?」
茜は小首を傾げて言う。
「新しい学校だし、友達ができるかとか、いじめられないかとか、色々不安だったんだよ。」
俺は、解せていない様子の茜に本音を伝える。
「ふふっ、不安で眠れなかったんだね、樹君は素直でかわいいなぁ」
茜は上品に口元に手を添えて笑い、可愛らしい微笑みを浮かべてそんなことを言う。
俺は、女の子にかわいいと言われてしまい、どこか心地の悪さを感じながらも恥ずかしくて照れてしまう。
「もう、照れてるの?本当にかわいいなぁ…このこのぉ~♡」
茜は俺の肩を人差し指でつつき、恥じらう俺に追い打ちをかけるようにしてそう言う。茜は、最初の印象こそ幼く感じたが、意外と弟を揶揄うような姉気質なところもあるのかもしれない。恥ずかしがりながらもそんなことを考えていると
「こら!茜!転入生と早々に仲が良いのは結構だが、授業はちゃんと聞きなさい。」
と教師に注意されてしまった、茜が。
「なっ!、なんで私だけなのさぁ~!!」
茜は勢いよく席を立ち、机に両手をついて抗議するように声を上げた。しかし、周りは慣れているのか一種の茶番劇を見るようにして皆、一様にげらげらと笑っている。
「どうせお前が先にちょっかいかけたんだろぉ?」
「ま~た茜が困らせてるのか」
「こりないねぇ」
教室内が笑いで溢れる中、茜に対して、何人かの男子生徒から呆れたような声が聞こえてきた。茜もこれには堪らず、溢れる感情を抑えずに顔を真っ赤にして言う。
「なぁんでなんでなんで!!!喋ってたのは私だけじゃないのにぃい!!!」
茜の大きな怒りの声が教室の中にこだまする。俺はその声を聞いて、唯、苦笑した。
時は流れ、現在は昼休み時間、俺は家から持ってきた弁当を食べ終え、次の授業を行う場所を確認する。どうやら次も同じ教室内での授業になるらしい。
「いつき君、そういえば転校してきたばかりでまだ学校の案内とかはまだだったよね?」
次の授業の準備をしている俺に茜が問いかける。
「あぁ、そういえばパンフレットなんかで内装を確認しただけで、案内はまだされていなかったな」
「良かったら、今から私が案内しようか?」
茜が目をキラキラと輝かせて言う。世話を焼きたくてうずうずしているといった感じだ。
「じゃあお願いしようかな。」
「やったー!」
茜は嬉しそうにして言う。俺は移動教室の時などは他の生徒と一緒に行けばいいし、そうしているうちに内装もわかるだろうと思っていたが、茜が案内をしたくて堪らないといった様子なのでまぁ良いだろう。
「じゃあ早速!!」
と茜が勢いよく俺の腕を引き、学校の案内に勢いよく駈け出そうとする。が、それは、
とある闖入者により止められる事となった。
「茜さん、彼の案内は私が請け負うわ。」
気温が低くなった、と錯覚してしまう程の冷徹な声。その主は冷たい目で、俺の腕を抱いて椅子に座っている茜を見下ろしている。まるで雪女を想像させるような冷徹な雰囲気を持ち、腰まである髪は艶のある黒色をしている。その子は、先ほど、俺が自己紹介を行った後に睨み付けてきた女子生徒だった。
「い、いや、でもわたしが案内するって……」
茜は突然のことにおどおどしながらも、案内役を譲りたくないのか、頼りない声で反論する。
「………………」
少女は大きく、たわわに実った果実を腕を組んで支えた。
そして、何も答えず茜を睨み続けた。
「う、うぅ…」
茜はその視線に恐れをなしたのか、それとも胸の迫力に敗北感を感じたのか、徐々に、瞳に潤いが増していく。
「うわあああぁん」
そして、とうとう泣き出してしまい、茜は教室から出て行ってしまった。教室内は「なんだなんだ」といった様子で、一部始終、すべてを目撃していた人はいなかったのか、今はそこまで大事には捉えられていないらしい。後で大きな問題に発展しないといいが…………
「また、茜の癇癪か。」
「若いねぇ。」
………………問題は無さそうだった。だが、後でメンタルケアだけはしておこう。
さて、問題はこの何か俺に因縁があるらしい少女だが。
「来て。」
俺は、謎の少女に突然腕を引っ張られ、教室の外に連れ出されてしまう。出る直前、クラスの生徒からご愁傷様です、といったような哀れなものを見る目で見られたが、俺は一体どうなってしまうのだろうか。
「ちょ、ちょっと、速いって!」
俺は、勢いよく風を切って進む少女に問いかける。しかし、少女は我関せず、といった様子で唯、ひたすらに進み続ける。今、気が付いたことだがこの少女、かなりデカい。俺の身長が175cmくらいで、それよりも明らかに大きい。180cmくらいはあるのではないかと思う。
俺は、スタイル抜群の少女に突然教室から連れ出されたことに嬉しさなど感じれず、むしろ怖くなってきた。
「あ、あのぉ、これからどこにいくんですか?」
「……………」
俺は、再度問いかけるが、やはり少女は答えてくれない。
これはもう、身を任せるしかないらしい。
俺は、途中すれ違う生徒から珍しいものを見るような視線を向けられながらも、しばらく廊下を進み、突き当りにある階段を上がって外に出た。
「ここは…」
俺は、外に出た途端、強い日光に照らされ、目を顰める。
「屋上よ」
先ほどまで腕を引いていた少女が振り返り、そう言う。そして、俺の傍を通り過ぎ、屋上の扉を閉める。扉を閉める際に鈍い音が響いた。俺は少女の謎の行動に一瞬理解が追い付かなったが、第六感が逃げろと訴え、一歩後ろに下がった。俺はもしかしたら、今日、死ぬのかもしれない。
「………たかった。」
少女が屋上の扉を背に、俯きながら何かを呟いた。俺はもう一歩後ろに下がる。
「ずっと………」
少女は何かを呟いているようだが構いはしない。
「ずっとあいたかったぁ!!」
突然、少女は顔を上げ、涙を浮かべてこちらに走って来た。俺は突然の事に驚き、硬直していると、彼女の豊満な体に勢いよく包まれてしまった。顔が胸に埋まっており、息が苦しい、
俺はこれで死ぬのだろうか。そんな事を思っている間も、少女は「寂しかったぁ!!」と抱きしめる力を弱める気配は無い。
「待って!止まって!」
俺は、余力を振り絞って何とか声を出した。これが少女に届き、抱きしめるのを辞めてもらった。
「あ!ごめんなさい、つい嬉しくて………大丈夫?」
地面にへたり込む俺に、少女は申し訳無さそうに言う。どうやら悪気はないらしい。
少女は見下ろすような形で前かがみになり、左手で、長い髪をかき上げている。
………殺されかけたが、やっぱり綺麗だ。
「は、はい、大丈夫です。」
「そっか、よかったぁ」
彼女は胸を撫でおろし、心底安心したように言う。
「ごめんね、久しぶりに会えたのが嬉しくって、その…つい抱きしめちゃった。」
少女は恥ずかしそうにしながら謝罪の言葉を口にした。が俺はその言葉に引っかかる、
“久しぶりに”、俺はこの少女と会ったことがあるのだろうか。それに、先ほどの「あいたかった」や「寂しかった」も気になる、初対面の相手にするような発言ではない。
「あの、失礼ですがどこかで会いましたか?」
俺は、恐れながらも目の前にいる少女に問う。また先ほどのように抱きしめられてはたまったものではない、慎重に、なるべく、相手を刺激せずに情報を聞き出す。
「え、嘘、私の事覚えてないの」
突然、空気感が変わった。また気温下がったように感じる。目の前の少女はまた、最初に見たような、雪女のような冷たい表情に変わっていた。
「え、いやその…」
「小学生の頃、あんなに仲良かったのにもう忘れちゃったんだ。」
唯、たじろぐ事しか出来ない俺、一歩距離を詰める少女。
「ま、まって!今、思い出すから!」
俺は、凍り付いた無表情のまま、詰め寄ってくる少女が恐ろしく、一心不乱に過去の記憶に検索を掛ける。小学生の頃仲が良かった…身長が高くて、雪女みたいな雰囲気を持った女の子…駄目だ、何も思い出せない。
「結婚の約束までしたじゃない。」
結婚の約束!?これは流石に覚えていても良さそうなものだが、俺が小学生の頃に結婚を約束した相手か……………いた!確かに俺は小学校6年生の頃に当時好きだった女の子に、
生意気にも告白を、結婚の約束をしたんだった、しかし、一つ疑問なのは、目の前にいる
少女と、俺が告白した女の子とでは似ても似つかないことだ。
「もしかして、日葵…か?」
間違っていたら何かヤバそうな雰囲気だが、俺は一か八か、心当たりのある少女の名を口にする。
「…………」
少女は名を聞いた途端足を止めた。この反応は正解と不正解どっちなのだろうか。
俺はその結果次第ではこの屋上から落とされそうで気が気ではない。
「もぅ、やっと思い出した。そうだよ、日葵だよ。もっと早く気づいてよ。」
その言葉を聞いて俺は安堵する。どうやら正解だったらしい。
日葵は中々思い出してくれなかったことに悪態をつきながらも、指で長い髪をいじりながら頬を綻ばせている。どうやら、覚えていたことが嬉しかったらしい。
「いや、本当に悪かった。小学生の頃とは見た目も、雰囲気も全く変わってたから気づかなかったよ」
実際、日葵は小学生の頃とは見た目は勿論のこと、雰囲気というか、印象が変わっていた事で全く気が付かなかった。まあ、俺が最後に日葵を見たのは小学生の頃だったし、当然の事かもしれないが、それにしても先ほど見せた冷たい表情や、教室での態度には驚かされた。
今見せている柔らかい表情、雰囲気こそ昔の活発な日葵に変わりがないように思う。
日葵は小学生の頃はとても明るく、元気で健康的な女の子だったのだ。
「そんな樹はあんまり変わってなさそうだね」
日葵がニヒヒと笑う。
「失礼な、俺だって色々変わっているはずだ。」
俺は曖昧に言う。自分にも変わったのかなどわからなかったからだ。
「はずだ、って結局自分でもどこが変わったのかわかってないじゃない。」
図星である。
「まあ、そんなことはどうだっていいんだ。大事なのは何故俺は屋上に連れてこられたのか、だ。」
俺は雲一つ無い、よく晴れた空を見つめて言う。
「あ、話そらした~」
日葵がジトっとした目で俺を見る。なんだか、この日葵とのやり取りが懐かしい。
俺と日葵は小学生の頃、家が隣同士で、平日も休日も学校でもよく遊んでいた。
昔のやり取りを思い出してなんだか感慨深くなる。
「それで、俺は本当になんで屋上に連れてこられたの。別に再会を喜ぶなら教室でもよかっただろうに。」
「それは…………」
俺が、屋上に突然連れてこられた理由を問うと、日葵は暗い表情をして俯いてしまった。
何か深刻な理由でもあるんだろうか。
「何かあったのか?言いたくないなら言わなくてもいいが。」
俺は慎重に尋ねる。日葵が言いたくなさそうだったからだ。
「………実はね」
俺は日葵から今回の行動に至った理由を聞いた。話によると日葵は小学生の頃、俺が転校した後、その寂しさを埋める為、積極的にクラスの生徒たちと関わるようにしていたらしい。
日葵は元々活発で、評判も良かったため、男女ともに仲良くなることは容易だったのだろう。
しかし、それをよく思わない一部の女子からいじめを受けるようになったらしい。理由は、
そのいじめっ子のリーダー格の女子が気に入っていた男子とも仲良くしていた、という浅ましいものであった。この事がトラウマで、日葵は人と関わりすぎることを嫌い、クラスで孤立するようになり、そして、いつしか冷めた態度をとるようなった。
日葵は、また人と積極的に話したり、関わったりしているところを周りの生徒に見られることで、いじめられる可能性を危惧していたのだ。
「そんなことがあったのか……」
俺にはそれしか言うことが出来ず、黙ってしまった。こういう時、どういった言葉を掛けてあげるのが正解なのか、咄嗟には分からなかった。力不足である。
しかし、確かに思うのは日葵のトラウマを何とかしてあげたい、ということだった。
日葵自身もこのままではいけないと思っているはずだ。
「日葵、一緒にそのトラウマを克服しないか」
「えっ」
「お前だってこのままじゃ駄目だって、そう思っているはずだ。」
俺は、少し言葉を強くして言う。
「で、でも」
日葵は頷かない、俺がやろうとしていることは俺自身のエゴなのかもしれない。
日葵が現状に満足しているなら、行動を起こそうとしないなら、
口を挟むべきではないのかもしれない。
それでも、昔の活発で、明るい笑顔を振りまく日葵を見ていたいと、そして、
そんな日葵を皆にも知ってほしいと強く願う。
「怖いなら、俺が付いてるから、いじめられたら助けるから、一緒に頑張ってみないか。」
俺は、日葵の目を真っ直ぐに見て言う。日葵は、顔を赤くして反らしてしまった。
俺の安いセリフが恥ずかしかったのだろうか、しかし、俺にとっては確かな誓いであり、
覚悟であった。
「樹はどうしてそこまでしようとしてくれるの、会ったのだって数年ぶりだし、私のことすぐに思い出してくれなかったのに………」
日葵は顔を赤く染めたまま、痛いところをついてきた。しかし、答えは決まっている。
「日葵は、笑顔が似合うから。できるだけ、そうあってほしい。」
そう言うと日葵は、
「ッ…ふふっ、あはっ、あっははははは!」
腹を抱えて大笑いした。
「笑うな!人が真剣に答えたのに!」
俺はもう、恥ずかしくて、体が熱くなっていた。おそらく耳も、顔も真っ赤だろう。
「いやぁ~ごめんごめん、ふふっ…やっぱり樹は昔から変わらないね」
「まだいうか。」
日葵は、やっとで笑いを止め、心の重荷を取り払ったような、清々しい表情をした、
そして、
「樹が付いているなら、私、頑張る。」
そう宣言した。ならば、俺も日葵の手を取り、一緒に頑張るだけである。
先ほどの自分の力不足への悔いは、これで挽回する。
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俺と日葵は作戦会議を行うため、日を改めて、再度お昼休みに屋上に集まった。
「さて、日葵のトラウマを克服するための会議を始めたいと思うが……」
俺は、ハンバーグを箸で挟んで俺の方に向けている日葵を見る。
「あの…何か…」
「ま、まず会議を始める前に空腹を満たしておいた方がいいと思うわ!
いいアイデアを出すには大切なことよ!」
日葵は若干頬を赤く染めながらも箸はそのままで最もらしいことを言う。
一理あるが、それにしても箸を向ける相手が違うと思う。
「確かにそうだな、でも箸の向きは自分に向けるべきだと思うぞ。」
「私のハンバーグを食べなさい!」
なんだか、必死な様子でハンバーグを近づけてくる日葵が怖い。
「いや、でも俺、自分の弁当持ってきてるし、お前の食べる分が減ったらそれこそ良い
アイデアが浮かばなくなるんじゃないか。」
「いいから私のハンバーグを食べなさいよ!」
どうして、こんなにも必死になって食べさせようとしてくるのだろうか、
何か毒でも入っているんじゃないだろうか、とバカなことを考えて小さく苦笑する。
「私のハンバーグには集中力を高め、いいアイデアを出しやすくなる効果があるわ…」
毒が入っているなんて我ながらバカな考えだなと思っていたが、
やっぱり、毒でも入っているのかもしれない。
「いや、怖いよ、何が入ってるんだよ」
俺がそういうと日葵は箸をゆっくりと下げ、暗く俯いた。
「昔はこういうのよくやったじゃない、久しぶりに会ったのよ、私の小さな願いを叶えてくれたっていいじゃない…」
日葵は、瞳を揺らし、まっすぐに俺の目を見て訴えた。俺は、昔からこの手の日葵からのお願いに弱かった。
「わかった…食べるからそんな目で俺を見ないでくれ。」
「やった!はい、あーん」
日葵が俺の口元にハンバーグを運ぼうとする。が、しかし、高校生にもなって、ましてや彼女でもないのに、「はい、あーん」とは如何なものか。
「いや、自分で食べるから……」
「私の願いを……」
日葵は、再び瞳を揺らした。少し恥ずかしいが、もうこうなったら従うしかない。
幸いここは屋上で、人が来る気配も無い。人に見られなければそこまで恥ずかしいものでもないだろう。
「はい、あーん」
日葵は、笑顔で再び俺の口元にハンバーグを運んだ。それを、受け入れ咀嚼する。
不安そうにこちらを見つめる日葵。
「うん、美味しい美味しい」
「やった!」
日葵は、ガッツポーズをし、分かりやすく嬉しさを表現した。
満面の笑みである。
「…ん?」
日葵が口を開き目を瞑った。まるで、親鳥からの餌をまつひな鳥のように。
お返しが欲しいのだろう。
「ほらよ」
俺は、ハンバーグの対価として、えびふりゃーを日葵の口元に運んだ。
満足そうに咀嚼している日葵。こんなところを誰かに見られたら赤面ものだと思う。
そして、俺たちは弁当を食べ終え、やっとで会議を始める。
「さて、気を取り直して会議を始めたいと思う。」
「はーい」
やる気の無さそうな声で日葵が返事をする。日葵の為の会議なのでもっとやる気を見せてほしいものだ。さっきはやる気み満ちた表情で「頑張る」と宣言していたのに。
「おーい、日葵やる気だせ。トラウマを克服したかったんじゃなかったのか」
「うーん、それはそうだけど~食べてお腹一杯になったら眠くなっちゃって…」
そう言いながらも、ウトウトしている日葵、段々と船を漕ぐようになり、やがて、
俺の、胡坐をかいた脚の上に頭を預け、寝た。
「赤ちゃんかな。」
でも仕方がない、腹が膨れたのは確かだし、何より天気が良い。眠くなるのも必然的なものだろう。
「ん~樹ぃ~どこいってたの~」
日葵が寝言を呟いた。はっきりとしすぎた寝言に俺は、咄嗟に吹き出してしまった。
俺はすぐに笑いを堪え、日葵を起こさないように注意する。この状態では、会議もできそうにない。昼休みが終わる5分くらい前まで寝かせてやろう。
「どんな夢、見てるんだろうな。」
「ずっと寂しかったのよ~」
…日葵はさっきも寂しかったと言っていた。俺は、日葵と仲が良かったのに小学生の頃、
特に別れの言葉も交わさずにすぐに引っ越してしまった。それは、今思えば、最後の最後で顔を合わせてしまったら、この土地を離れる決心を鈍らせてしまうと感じていたのかもしれない。しかし、それが結果的に日葵に寂しい思いをさせてしまった。
自責の念を感じてならない。
「裸だと風邪ひくわよ~」
裸!?本当にどんな夢を見ているんだろうか…いや、まてまて俺と日葵は小学生の頃に仲が良かったんだ、今思い返せば、若気の至りで裸になったような気もする。
きっとその時のことを思い出しているんだ。
「もう、高校生にもなって…」
俺は、奇想天外な日葵の夢に絶句した。
願わくばこれが正夢になりませんように。
静かに目を閉じ、仮眠した。
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昼休みが終わり、俺は、一人で教室に戻っている最中だ。寝起きはいい方だったので、
宣言通りに5分前には起き、同時に日葵も起こした。誰かのよだれのせいで、制服のズボンの股の辺りがつやつやになっているが、まあいい。俺と日葵、それぞれ教室に戻っているのは日葵の意向である。一緒に教室に出て、戻る、これが仲が良さそうに見られて
またいじめられないかが不安らしい。
「結構深刻だな。」
歩きながら呟く、始め、トラウマ克服会議などという会を立ち上げたが、俺は正直、日葵がクラスに慣れるのは容易だろうと踏んでいた。まだ転校して初日ではあるが、茜と皆のやり取りを見て、いじめが起きそうなクラスだと思う人間は一人としていないだろう。
しかし、その風景を日常的に見ているのにも関わらず、怯える日葵。
これはもう、日葵が完全に心を閉じているに他ならない。周りを見ていない。
……俺も、本腰をいれて解決策を編み出さなければ。
教室の扉を開け、中に入る。その途端、周囲の視線が俺の方に集まった。
異様な空気にしばらく立ち尽くす俺。…なんだ?
「ねぇ、樹君」
俺が呆然と立っていると、小柄で、小動物的な愛らしさのある少女が、恐る恐る近寄って来た。そして、こんな事を言った。
「樹君と、日葵さんって付き合ってるの!?」
一瞬、言葉の意味が理解できず、ぼーっとしてしまう俺。
速く答えを聞かせてと、嬉々とした表情で見てくる少女と周囲の生徒。
「え!?いやいや、付き合ってないですから!」
俺は、焦りながらも、本心をクラスのみんなに伝える。
一体どうして、そんな疑惑が持ち上がるのだろうか。
「さっきね、私が屋上に行ったとき、扉の隙間から見えちゃったの。
樹君と、日葵さんがいちゃいちゃしてるところ!」
「きゃ~~~♡」
恋愛に盛んな少女たちの声が、甲高く俺の耳に届く。まさか、屋上の扉が開いていたとは、
屋上に来るような生徒はいないと高を括っていたが、油断した。
「まさか、あの日葵さんとなぁ」
「くそぉ、俺も狙ってたのに。」
「あの男!〇す!高貴な日葵さんに唾をつけていたなんて!」
教室の奥の方から、羨ましがる声や、物騒な声が聞こえてくる。しかし、不味いぞ、
俺はこの状況に関しては全く問題は無いが、日葵は別である。この状況を見たら
どう思うだろうか。何とか、収拾をつけなくては。
「なあ!みんな聞いてくれ!」
再び、教室中の視線が俺に集まった。ここで何とか説明して、この騒動に終止符を打とう。
「本当に、俺と日葵は付き合ってなくて、俺たちは小学…」
といったところで生徒たちの視線が俺から別の場所に移ったことに気が付いた。
嫌な予感がする。ゆっくりと後ろを振り向くとそこには、青い顔をして立っている日葵が
いた。体を震わせ、表情からは日葵が恐怖していることが見て取れた。
「日葵…」
心配して声を掛ける。日葵は俺の声を聞き、ハっと我に返ったような様子を見せた。
その後、教室内を見渡し、一歩後ろに下がって、突然走って逃げてしまった。
「日葵!」
俺は教室から出て、日葵の小さくなる背中に声を掛ける。全く反応が無い。聞こえているのかも定かではない。一体、この状況をどうすれば良いのだろうか。俺は考える。
考えて、考えて、考えて、考える。そして、答えが出た。
「荒療治になるが、日葵の為だ。」
俺は、考えた結果、クラスメイトと日葵を対面させてみよう、という結果に至った。
ここにいる生徒たちは皆、良い人たちだ、それは日葵も分かっているはず。
それでも、日葵は心を開くことが出来ない、開く機会を避けているようにも見える。
そして、その原因は、過去のトラウマにあるのだろう。
ならば、少し強引ではあるがその心の扉にこちら側から触れてみようではないか、
開くかは日葵次第だが。
「皆、少し話を聞いてほしい。」
俺は教室に戻り、クラスの皆に向けて声を発する。
クラス内の様子は、突然逃げ出してしまった日葵を見て皆一様に戸惑った表情をしていたが、俺の声を聞いて視線を一点に向けた。
「俺と日葵の関係、そして、日葵の幼い頃の話を。」
俺は、日葵との関係、過去、そして今のような状態になった経緯を説明した。
「そんな、過去があったのか。」
「私、悪いことしちゃった…」
「そんな情報、私のデータベースにはなかった…私としたことが…」
やはり、予想はしていたが日葵の過去を話したことによって、皆、自分の今回の行いを悔いる結果となってしまった。皆、何も悪いことはしていないのに何だか申し訳がない。
「そこで、ご相談なんですが。」
俺は、日葵のトラウマを克服させるための作戦を皆に話す。
日葵が心の扉を開かないなら、こちら側から触れてみる、という例の作戦だ。
「…作戦はわかった。上手く話せるかは分からないけど日葵さんの為なら、何とか話してみるよ。」
一人の男子生徒が俺の作戦に同意してくれた。
「俺も、日葵さんがトラウマで苦しんでいるなら何とかしてやりたい!」
「私もよ!」
その男子生徒に続いて次から次へと賛同する声が上がる。やがて、クラス中の皆が日葵のトラウマ克服の為、立ち上がった。日葵、やっぱり、このクラスにお前をいじめるような奴なんていないんだ。俺は再度、確信した。少し、目頭が熱くなる。
「今、日葵は屋上にいるはずだ。皆、ついてきてくれるか」
「「「おう!」」」
俺の呼びかけに皆が答えてくれる。先ほど、日葵が逃げる際に、突き当りを左に曲がったのが見えた、恐らく、日葵は屋上にいるはずだ。今回の俺たちの行動が、結果、日葵の
トラウマを拡大させることになるかもしれない、なんてったって、人と関わるのを恐れる日葵に対し、直接こちらから関わりを持とうとしているのだから。けど、いつまでも停滞したままではトラウマを克服することも難しいだろう。どこかで、きっかけが無ければ。
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俺は、クラスの皆と一緒に屋上へとやって来た。俺の見立て通り、日葵は屋上にいた。
「な、なんで…皆…」
日葵は困惑した表情をして屋上を囲むフェンスに背中を預けている。
「すまない、日葵。これは、俺が企てたものだ。」
「いつ…き?」
日葵は、以前困惑したままだ。俺がこの行動に至った理由が分からないといった様子である。
「お前に、皆の声を聞いてほしいんだ。」
「声なら、いつも聞いているわ!」
日葵は、少し憤りを感じているような顔をして、大きめの声を発した。
「本当か?本当に彼らの声をちゃんと聞いていたのか?」
本当に彼らの声が届いていたのなら、日葵が拒絶していなかったのなら、トラウマを引きずったまま、学生生活を送ることなんてなかったはずだ。
「どういうこと…?」
解せない、といった表情をする日葵。
「日葵さん、いつも朝早くに学校に来て、お花にお水をあげたり、机を綺麗に並べ替えたりしてくれてるよね、私も朝早いからさ、そんな日葵さんをよく見てたよ。だから…その
…何が言いたいのかと言うと…いつもありがとう!!」
茜が俺の前に出て、解せない表情をしている日葵に日ごろの感謝を伝えた。なんというか、
歯切れの悪い感謝だが、日葵にはこの言葉が届いただろうか。
「わ、私は、クールで、カッコいい日葵さんに憧れていて、ずっと日葵さんとお話ししたいと思ってました!」
また、別の女の子が日葵に対して感じていた憧憬を告白した。
「日葵さん、こんな時になんですが、ずっと好きでした僕と付き合ってください!」
また、坊主がよく似合う少年が、日葵に対して感じていた愛情を告白した。
そして、「おい!野球バカ!なに、どさくさに紛れて告白してんだ!」
「お前みたいな、性欲獣に日葵さんを任せられるか!」と周りのクラスメイトから
罵声を浴びせられる。屋上が賑わう。
「…日葵、お前は積極的にクラスメイトと関わらないようにしてきたんだろう、でも、
皆は想像以上にお前の事を見ている。そして、想像もできないだろうが、皆は、お前のことを当たり前の様に仲間だと思っているんだ。日葵、このクラスに日葵をいじめるような奴はいない。それでもまだ、怖いか。」
困惑した表情をしている日葵、暫しの沈黙が訪れた。そして、徐々に日葵の瞳が濡れ、
頬を涙が伝った。
「ど、どうしたの日葵さん!」
「やっぱり、怖い思いさせちゃった?!」
突然泣き出した日葵を心配するクラスメイト達。気が付けば距離は近づいて、
手を伸ばせば、日葵に触れられる程の距離。皆、あたふたしている。
涙はとどまることを知らず、日葵の顔は涙でぐしゃぐしゃになっていた。
「ううん、もう大丈夫。皆ありがとう。」
日葵は、泣きながらも輝かしい笑顔で、皆に応えた。
俺が見たかった、皆に見てほしかった、輝かしい笑顔で。
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日葵がトラウマを克服して数日が経ったお昼休み。俺と日葵は、教室の中で昼食をとっていた。
「ほら、樹、あ~ん♡」
「な、なあ日葵、それは流石に…」
日葵が俺の口元に箸を運ぶ。日葵はトラウマを克服したことで、リミッターが解除されたのか、人前でも関係なく、これまで以上に積極的に関りを持つようになっていた。日葵がトラウマを克服できたのは、とても嬉しいことだ。しかし、困ったことに日葵は何処にでも付いてくるようになった。トイレでもだ。流石に止めたが。
「ほら、もぅ恥ずかしがっちゃ駄目よ、あ~ん♡」
恥ずかしいのも間違いないが、それ以上にクラスメイトからの羨むような、妬むような
視線が痛くて仕方がない。しかし、食べる以外の選択肢を選べない俺は、観念して、
日葵の箸を受け入れる。
「どうかな…美味しい?」
「うん、おいしいよ。」
俺は、素直な感想を言う。ちょっと言い方が素っ気なかったかもしれない。
「やった!」
日葵の不安そうな曇った顔が、晴れて明るい笑顔に変わる。
やっぱり、日葵は笑顔が似合う。
「樹」
日葵が俺の名前を呼ぶ。目を見て。
「ん?」
「これからもよろしくね」
日葵の満面の笑みが脳裏に焼き付く。これからも、色々と大変なことがあるかもしれない。
けど、この笑顔を守るためなら、俺は何でもしたいんだ。




