4話 ヒーローさんドンマイです
昨日投稿出来ませんでした!毎日投稿するはずなのに申し訳ありませんでした
ある国で歴史上、類を見ないほどの未曾有の大災害が起こった。
倒壊するビル。それに押しつぶされ、ミンチになる人々。轟々と燃える街に、津波に呑まれた街。さながら地獄そのもの。
そんなところにあるヒーローが現れました。そのヒーローは呼吸すらままならない炎の中に自ら飛び込み、人命を救い、荒れ狂う海原をその拳一つで諌めた。
その者こそが、正義のヒーロージュピターなのだ。
ね?化け物でしょ?
ジュピターの英雄戦技は雷神。雷を浴びせたり、雷の速さで動いたりできる。されど、能力が分かっていてもその力の上限は未知数で、本気を出せば、世界を征服できるとか、出来ないとか。
そして、彼が戦いに赴く場所は決まって夜になると言われているが、夜になっているように見えるというのが正解だ。彼の並々ならない力が時空を歪ませ、光の侵入を拒み、太陽が沈んでいるように見えるのだ。
何を言ってるかわかんないだろ?そのくらい規格外なのさ。
そんな偉大な化け物様が、今、目の前にいる。
この男、推定年齢45歳にも関わらず、若々しく、中性的な顔立ちをしていて、瞳孔はライムイエローと一風変わった見た目をしている。服装はだいたいパジャマで今回はストライプ柄のパジャマだ。
「ん〜?んんん〜?」
俺の顔をまじまじと見つめてきた。まっずいなこれ。
「ん!誰かと思ったら悠里くんじゃないか!?大きくなったね〜」
そう言って俺の頭を撫で始めた。念を押して言うが、ジュピターは俺の宿敵だ。
「ん?どゆこと?」
京介がきょとんとした顔で俺の服の袖を引っ張る。苦笑いで答えた。
「突然、いなくなったからどこに行ったのかと思ったら、なに?警察になったの?ハハハ」
「あ、あのジュピター様?こ……これは?」
老刑事の質問にジュピターは、
「この子は私の元弟子でね?どうしても私を殺したいようだから、ある女の子と一緒に連れ……おっと、私の家にご招待したのさ」
「へ、へぇぇ」
まるで恐ろしいものを見るような目で俺を見ないでくれ。そいつの方が化け物だろ。
「そうそう私の研究室から一匹、モルモッドが逃げ出してしまってね。その子、なんだが……渡してくれるかな」
ジュピターが少女を笑顔で指差す。
「ははっ!一般人に人体実験してんのバラしていいのか?」
「まったく、悠里くんは相変わらず私のことが嫌いなようだね……君が心配しなくともこの話を聞いた一般人はいないよ」
指をパチンと、鳴らすと同時に、雷鳴が轟く。雷のクセに、主人の元に寄り添うように、ジュピターの周りを円形に囲む。
「自分からバラしといてそれかよ。変わんないな」
「ハハハハハハ。これが私のスタイルでね。ああ、それと……その子は特別製でね、私の雷に耐性があるから安心して、逝くといいよ」
そう言うと、円形は一秒で倍に、またさらに一秒で倍に、加速度的に勢力を広げる。俺と京介はチルドレンを担ぎ、勢力から逃れるために走った。
老刑事を助けようか迷ったが、二秒後には炭になってしまったので、選択肢がなくなった。
「ひゃははははっ!おいおいアンダードッグはあいつんとこの研究者じゃねーのかよ!ってかどこまで逃げりゃいいんだこれ!!」
女の子を担ぎ、轟音の中、叫ぶ京介の額には汗が滲んでいる。
「分からんが、おそらく、この河川敷は明日には綺麗さっぱりなくなってるだろうな!とにかく街まで逃げるぞッ!」
アンダードッグを担いでいる俺の肩が、なんだか湿っぽい、それに臭い。俺は疲れていないので、汗ではないだろう。
「おい……お前、まさか」
「う、うるさい!」
「ひゃはは!どんだけ豪快に漏らしてんだ!」
街の方まで来たのだが、なにか違和感が。そうだ、街の灯りがまるでない。
まさか、住人全員の避難をさせてから、俺らのところに来たのか。はなから全員殺すつもりだったと……。無関係の老刑事もまとめてか。
「──クソ野郎がッ!!」
あの人は嫌いだったが、なにも死んで良い人ではなかった。誰だってそうだ。またクソみたいな理由で人を殺しやがって……許せない。
「おい!どうすんだ悠里!もう後ろまで来てんぞッ!」
京介が焦ったように叫ぶ。ううむ……どうしようかな。まだあいつと戦う準備は出来てないから、今あいつと戦っても無駄だしな……逃げる、か。
「決めた」
「なにを……?──ッ!?悠里お前、まさか!?」
「ああ。まあ時間稼ぎにしかならないけど」
アンダードッグを降ろし、準備体操をしているのを見て、察した京介も体操を始めた。
「おいおいおいおいおい!なにやってんだよ!?早く、こいつら連れて──」
「馬鹿野郎ッ!」
京介の肩を掴むやいなや、俺の頬に鋭い痛みが走った。
「ずるいぞお前ばっかり!俺も戦いたいんだよ!」
「痛いんだよ馬鹿野郎!なんで今の流れで俺が殴られにゃならんのだ!?」
「お前になんか考えがあんのかと思って黙ってたけどよ。もう我慢ならん!というか、なんでこんな雑魚能力から──」
ただ戦えなくてイライラしているだけだ。それだけで俺を殴って……やっぱクズだなこいつ。
そうこうしているうちに、雷の壁が目前に迫っていた。耳を塞がないと鼓膜が逝ってしまいそうな轟音が鳴り響く。
「逃げなきゃいけないんだよ!おおるぁぁぁぁッ!!!」
京介が相当我慢の限界だったのか、英雄戦技を拳と共に、迫る雷の壁に放つ。
京介の英雄戦技は簡単に言えば風。到底、雷には勝てないはずの能力に関わらず、目の前の壁には大きな風穴が開いた。
いつ見てもぶっ壊れだと思う。
「こんな能力、バレたら目立つだろうが……」
「──ほほお!素晴らしい能力だねぇ?なぜヒーローにならないのか甚だ疑問だよ私は」
上空からパチパチと、拍手が聞こえた。
「どうだい?君が良ければ私の元で働いてみないかい?警察なんかよりいい値で雇うが」
「魅力的な相談だが……世界一がこんなもんならこの世界ごと潰したほうが楽しそうだぜ」
唾を吐き捨て、中指を立てた京介は、俺を指差し、
「それに、悠里にもまだ勝ててないしな。こいつ倒してからゆっくり考えてみるよ」
ジュピターは目を丸くする。──それもそのはずだろう。ジュピターの知っている俺はなんの能力も持たないただのガキ。
強いて言うなら彼の元で鍛錬を積んだくらいなもの。そんな子供が自分の能力を上回るほどの攻撃をした人間よりも強いのだから驚くのも当然だろう。
「なるほど……なるほどね」
ジュピターは舐めるように俺の体を見てきた。気色の悪い野郎だ。一通り堪能したのか、咀嚼するように何度もうなずき、終いには醜悪な笑みを浮かべ、
「いい!いいよ!悠里くん!やっと、やっと我々の領域に足を踏み入れたんだね!?はあはあはあ。悠里くんが私を……ようやく……。嗚呼!生きててよかった!」
なんで俺の周りってこんなやつらしかいないのかな。類は友を呼ぶって言われたらどうしよ。俺もこんなヤツだと思われたら心外なんだけど。
お気づきの方もいるかもしれないですが、ヒーローに国の防衛を『してもらっている』だけですので、こういう英雄戦技を持った一般人もいます。理由としては、悠里などのような特別な理由ある人だったり自覚していないだけの人だったりですね。基本は特別待遇が受けられるので蹴る理由がありません。