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平穏

 高瀬のマンションの玄関に光があふれる。

「ただいま」

 高瀬は軽い調子で告げる。その声にリビングから来栖とアリスが玄関にやってきた。

 ズタズタに切り裂かれ、血に汚れた革スーツ姿で玄関に現れた高瀬を見て、来栖は悲鳴を上げる。

「リオ、タオルー」

 アリスが濡れタオルとゴミ袋を渡す。高瀬はジャケットとシャツを脱いで上半身裸になるとタオルで体を拭く。

「ンー、キレイにナオってるネー。サスガ、リオ」

「当たり前だ。アリスだって綺麗に治っただろ」

 高瀬はタオルを首に掛けて脱いだ革ジャケットを広げる。

「あーあ、結構気に入ってたんだけどなーこのスーツ。こりゃ上下ダメだよなー」

 ため息をつきながら高瀬はジャケットを丸め、アリスに渡されたゴミ袋に放り込む。

「あー、下脱ぐんだけどさ、見たい?」

 高瀬が来栖に言うと固まっていた来栖は顔を赤らめて左右に激しく振る。その後アリスの手を引く。

「エ、アタシ、ミタイんダケど」

「行きますよ!」

 来栖はアリスの抗議の声を無視して引っ張ってリビングへ移動していった。


 高瀬は自室でスウェットに着替え、リビングへ移動する。リビングには来栖、アリス、エリヴィラがいた。

「おやおや、だいぶやられたみたいだね」

 エリヴィラが高瀬の肩を軽く叩きながら言う。

「まあね。ま、とりあえずはなんとかなるでしょう。問題は、愛生、だな」

「あー、そうだろうねえ。さて、と。あたしゃ帰るよ」

「え?」

「あんたが帰ってくるまでの間のお守りだからねえ。あたしの魔石(セービングボックス)はあんまり大きくないんだ。そろそろ燃料切れになる」

 エリヴィラはそう言うと左手にはめられているバングルを撫でる。

活性化(アクティベート)

 バングルから白い光が溢れる。

「じゃあまたね、格闘家(グラップラー)。さっさとひ孫の顔を見せておくれよね」

「おいこら!」

 高瀬の言葉の途中で光が爆発し、エリヴィラの姿は消えていた。

「あの妖怪ばばあめ……」

 高瀬が小さく悪態をつくとアリスはクスクスと笑う。

「で、ケッキョクドウなるノ?」

「さあ。これで手打ちだろ。来栖はAEGISに逆らえなくなった。そういうことだ」

「アー、ウン、ソウね」

 アリスは頷く。来栖は首を小さくかしげ高瀬を見ている。

「どこまで話したらいいものかな……今回来栖は俺たちと友好関係にあるとあるグループAの下部組織Bを取り込んだ。AはBを組織から切り離し、俺たち対する敵意はないと示した。こっちはこれで完了でいいだろう。愛生には関係のない話だからな」

 来栖が頷くのを見ながら、高瀬は続ける。

「問題になるのは俺たちと来栖とBの関係だ。BはAから裏切り者として切り離され、その上虎の子の知性魔法装置インテリジェントマジックデバイスを一つ失った。来栖はそれなりの賠償を求められるはずだ。来栖は我々への出資者の一人ではあるが今回の対立でその関係は微妙になる」

「あの……お父様は……?」

「何もしていない。警告は与えたがそれだけだ」

 来栖は高瀬の言葉に小さくため息をつく。

「そう、()()()()()()()()()()()()()()からな」

 高瀬は口の端で笑う。

「高瀬……様……?」

《お気になさらず。マスターの悪い癖です》

 ガーランドがコアを点滅させながら言う。

「アリス、デブリーフィングどうするんだ?」

「ナイよー。ア、ソウだった。ブチョーからデンゴン。ゲツヨービからガッコだってイッテたヨ」

「そりゃいいんだけど、愛生とアリスはどうするんだ?」

「ンー、ネンマツ? までコノママみたい」

「はあ⁉」

 高瀬はアリスの言葉に大声を上げる。

「タブン、アオイはもうイエにカエレナイからAEGISでホゴするッテ」

「アリス……少し言葉は選べ」

 アリスの言葉にため息をつく高瀬。俯く来栖。

「AEGISカラ、オカネ、リオにデルね」

「俺に養え、と」

「ソウ。ソノアトはケントー、ダッテ」

「で、アリス、お前は?」

「ンー、アタシはズッとココにイルよ」

 高瀬は右手で右目を押さえてため息。

「なんでだよ」

「アタシはリオのモノだヨ?」

「承認した覚えはない」

 アリスの言葉に来栖が顔を上げ、二人を交互に見る。

「あー、気にするな。アリスが勝手に言っているだけだ」

「ヒドイ。アタシのコト、モテアソンダのネ‼」

「どこでそんな日本語覚えてくる……」

「ンー、Soap opera」

 高瀬は大きなため息をつく。

「あの……」

 来栖がまっすぐ高瀬を見る。

「私も、あなたのものになりたいです」

「……人生をドブに捨てる必要はない」

 高瀬はため息交じりに返答する。

「リオ、ヒドイ! アタシ、ジンセイ、ドブにステてナイ!」

「なあ、アリス。俺らは魔術師だよな?」

「ソウデスよ」

「堕落している時点でドブより酷いと思わんか?」

 しばらくアリスは高瀬を見て、そのあと頷いた。

「ソーネ」

「あの……私は……」

 来栖が小さく呟く。

「ま、そうだよな。自ら堕落したいなんて」

「堕落したいです!」

 高瀬は目を丸くしてからため息をつく。

「いいか、お嬢さん。魔術師なんてえのは望んでなる商売じゃあねえんだ」

《マスター、落ち着いてください》

「覚悟があるなら、脱げ」

 来栖は高瀬の言葉に従い、いそいそと服を脱ぐ。

「あーあーあーあーあーあー、やめろやめろ! 服着ろ! 冗談だ冗談」

《マスター、墓穴です》

「どうしろと言うんだ」

《さあ?》

 ガーランドの言葉に高瀬は盛大にため息をつく。

 来栖は俯いて小さく震える。

「私は……もうここにしか、居場所がないんです……」

 高瀬は来栖の声を聞き、アリスを見る。アリスは小さく首を左右に振る。ガーランドのコアを見る。コアは薄ぼんやりと光るだけだった。

 高瀬は天井を見上げ、来栖に近寄り。そっと抱き寄せる。

「大丈夫だ。ここから追い出しはしない」

 来栖は高瀬を抱きしめ、胸に顔を押し付けているが、高瀬はそのままだった。

「高瀬様……その……」

「様は止めてくれ。そんなに偉くない。諒でいい。俺はお前を愛生と呼んでいるだろう?」

「そう……ですね。諒……」

 来栖は耳まで赤くなる。アリスはそれを見て小さくため息。

「デ、リオ。ドッチにスルの?」

「何の話だ?」

「La Belle et la Bête」

 高瀬はアリスをしばらく見つめる。

「……どっちでもない」

「エー」

「えー、じゃない」

 来栖は抱きついたまま高瀬を見上げる。

「アリスはなんと言ったんですか?」

「……美女と野獣、だな」

 来栖は高瀬の胸に顔を押し付けてふるふると左右に振る。

「ンー、アオイ、そろそろハナれて」

 アリスが来栖と高瀬の間に割って入った。

「そろそろ3時だ。寝るぞ」

 高瀬はそう告げ、リビングを出ようとする。

「ア、リオ!」

「ん?」

「オヤスミのキス」

「……しません」

「エー」

「え、キス?」

 来栖が反応する。

「……しーまーせーん」

 来栖は目を閉じて少し顎を上げて待っていた。

「いいから寝るの!」

《モテモテですね、マスター》


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