お茶会
「キャサリン〜、あなた宛のお手紙が届いてるわよ!」
何故か母上自ら手紙を持って来てくれた。
「お茶会のお誘いかしら?ようやくお友達が出来たのね?」
「え」
手紙を受け取る。封筒の裏を見るも、差出人は書かれていない。
お母さま、きらきらした視線を送るのは辞めて欲しいです……手紙開け辛いです……。
封を破り、中身を見た。本当に、お茶会のお誘いだった。それも、ポーラ様からの。
「まじすか」
「どうかしたの?」
「いえ、何でもないです。確かに、お茶会のお誘いでした」
「あら〜〜!どなたからなの?日程はいつ?」
「んー。あぁ、明日だ。明日です」
「じゃあ着ていくお洋服を決めなきゃ!何がいいかしら?親しみやすい印象がいいかしら、それなら黄色のワンピース?優しい印象の黄緑がいいかしら?」
服は自分で決めさせて欲しいです。
「それで、どなたからなの?」
「アー、えっと、それはですね」
何か、言い難いな。いやこの人は良い人ではあるし、人を無闇に嫌ったりはしない。はずだけど……。
「ポーラ、オリヴィエ、様、です」
母上は、大きな目をぱちくりと瞬かせた。
「まあ」
……?
「まあ〜〜!オリヴィエ辺境伯様の所のお嬢様!あの綺麗な子!あら〜、お会いしたことってあったかしら?いつの間にお友達に?」
と、小首を傾げている。
えらく楽しそうだな……。何か、心配なさそうだな。
「この前、図書館に行った時に、たまたま」
「そうなのね!ポーラさんは、御本がお好き、と……」
何でメモしてるの?
「オススメの御本があったらお贈りしたいからよ。うちの娘がお世話になっております、ってね」
心読むのヤメテ下さい。
実は、たまたま、というのは嘘になる。ポーラ様が図書館によく通っているというのは、ゲーム内で出てきた情報だ。
「楽しみね、お茶会」
彼女は、まるで自分のことのように、嬉しそうに微笑んだ。
服のセンスは微妙だし、時々ダークマターを生み出したりするけれど。
良い母親を持ったのかも知れないな、そう思った。
そんなこんなで、翌日。服はちゃんと自分で選んだ。グレーのクラシックな膝下ワンピースだ。
申し訳無い、母上。今日は特別な日なんです。いくら萎れられても、貴方にお任せする訳には行かなかったんです。
そして突っ込みたい事が一つ。
何でポーラ様と私、二人きりでお茶会をしているのか。遠くの方に護衛の方や侍女さんは立ってらっしゃるけど。
お茶会ってそういうものですっけ。
私は今、オリヴィエ領のバラ咲き乱れる庭園にいる。東屋のようなところで、小さなお上品なテーブルを挟み、お茶を飲んでいる。
オリヴィエ領は遠いが、この世界では空飛ぶ船が運行しているので、そうかからずに行ける。ファンタジーだなぁ、としみじみ思う。そう言えばこれ作中にも出てきたな。料金がそんなに高くないってのもありがたい。
嗚呼しかし、気まずい。
突っ込みたくはなるが、実際に口に出す訳にはいかない。理由は分かりきっているからだ。
いやほんと、早くポーラ様の良さを布教し、彼女の信……いや、お友達を増やさねば。
「パーティーは、いくの?」
ポーラ様が、唐突にお尋ねなさった。
「パーティーでございますね、はい。行く予定でございます。ポーラ様はお行きになられねばならないのですよね?」
「それ、やめて。もうおもしろくないから」
ごめんなさいふざけてた訳ではないんです。ただ、普通に話したのでは、敬意が足りなさ過ぎるように思えまして。でもごめんなさい、貴方様が仰るならば直します。
「パーティーは、いくのね?」
「行きます。ポーラ様がいらっしゃら……いらっしゃるのですから」
「ねえ。どんなドレスがよいかしら」
「ドレス、ですか」
「ドレスよ」
ポーラ様が、このワタクシにご相談下さるなんて……!?なんてことだ、私は今日にでも死ぬのかもしれない。
それで、ドレスか。折角だからこれはチャンスにしたい。
しかし難しいな。余り暗い印象だと敬遠され易いし、かと言って明る過ぎると似合わないだろうし。私もあんまセンスとか無いんだよなぁ、母上のこと言えねぇな。
「そうですね……ライトグレーなどは如何でしょうか。ふわっと軽やかな感じの。髪はアップがよろしいかと思われます」
下ろしてると暗い印象になりやすいし。
「わかったわ」
そういうと彼女は、侍女を呼びつけてドレスを注文するよう命じられた。
いや気が早いと思うのですが。そこはもっとじっくりとですね……。
その後とくに何も話すことも無く、お茶を飲み終えて解散となった。
次に会えるのはあのパーティー。何としても、成功させなくては。そして、今度も、ちゃんと恥ずかしくない格好で参じなければ。