★TIPS★
怪人は体内に特殊な機構を持っており、本来は食事・睡眠を必須とする生き物ではない。
だが、地球に降り立った怪人たちは、思いのほかこの星の生活によく馴染んだ。これは、それまですぐに滅ぼしてきた九十九の惑星と違い、地球では長期滞在を行ったためといえるだろう。
食べる。眠る。遊ぶ。エトセトラ。
人間の営みを見て、怪人たちは多くを学んだ。
美食。快眠。娯楽。エトセトラ。
生命活動に必要はないが、あればあるだけ【好くなる】もの。
特に、ボーグ直下の四人、中でもかわいいルゥルゥの順応ぶりはすごかった。
もともと戦いを好かない彼は、ボーグのアジトの一室を娯楽部屋に改装。最新ゲームと各種漫画、六百リットルの冷蔵庫を備えた楽園を作り上げた。コントローラーは四つ買ったが、同僚は誰ひとりと彼に付き合わなかったので、やがてルゥルゥの主戦場はもっぱらMMOになった。
その後、一年にわたる地球生活は、ルゥルゥを一人前のオタクに成長させていった。
そして、彼を生まれつき与えられていた使命……【破壊】とは真逆の性質、【創作】に目覚めさせたのだ。
ルゥルゥはいつからか、怪人たちと戦隊の地球を巡る戦いを、客観的に見るようになった。存亡の危機を懸けたケンカなどクソ食らえだが、これがフィクションの出来事なら、さぞ楽しく、面白かろうと……。
それからのルゥルゥは、戦隊の行動を観察しては記録した。同僚たちはその行為を、「力がないのを分析力でカバーしようとしているのだな」と感心していたようだが、なんてことはない。ただのオタクメモである。
結局、彼は最後まで、滅亡の戦士としてボーグに報いることはなかった。
生みの親……ボーグが戦隊に倒され、すべての戦いが終わったあと、ルゥルゥはかねてから(ゲーム内で)交流を続けていた人間のもとに身を寄せた。
そして、その人がたまたま特撮番組の関係者とコネがあった奇縁から、経験を活かし『コズミックフォース』の脚本家の仕事を得た。筆名は【瑠璃山ルイ】。今はタワーマンションの最上階に住みながら、件の友人と仲良く悠々自適に暮らしている。
好きなものは、昼寝。嫌いなものは、アーチーとゲーム内イキりキッズ。最近気になっているのはフランス産の美少女アニメ。ちなみに、アイゼンバッツとは当時も今も仲がいい。