表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白銀妖精のプリエール  作者: 葵 嵐雪
第五章 潰える王国
85/86

第五章 第一話 ネベロング王国

 零れ日が差し込み朝の到来を告げるかのように鳥達の声が聞こえてくるとエランは目を覚まして瞳を開く。少しだけ意識を遅らせて覚醒すると動き出して上半身を起こす。すると布団がめくれた為かハトリも目を覚まして起き上がってくるとエランは口を開く。

「おはよう,イクス,ハトリ」

「おはようですよ」

「おはようさん」

 朝の挨拶を交わしてから寝台を下りたエランはそのまま窓の所まで行き,光を遮る布を開き,そして窓を開くとのどかな景色が広がっていた。そんな景色を見ながらエランは新しい一日が始まる事を実感しながら景色を見るのだった。

 エラン達が居るのはネベロング王国の王都に近い宿場村だ。ネベロング王国は穏やかな気候に恵まれており農作物が多く採れる土地であり,周辺国家とも盛んに貿易をしている為に国庫に恵まれている国でもある。国土はそれ程に広くはないものの採れる果物や野菜は国中に行き渡り,穀物や肉類も同じように国内外へと行き渡っていた。そんなネベロング王国に来たエラン達はそのまま旅路を続け,今日のうちに王都へと行く予定を立てていた。

 鏡台の前に座って自らの髪を梳くエランはすぐに終えて鎧を身に着けていく。その間にハトリも鏡台を前に髪をツインテールに結ぶと荷物をまとめ始める。そうこうしているうちに身仕度が調ったエラン達は部屋を出て下の階にある食堂へと向かった。そこで朝食を済ますと宿代の会計をする為に受付向かうと,受付の愛想が良いおばさんがエラン達に話し掛けて来た。

「おや,出立かい,何処に行くつもりなんだい?」

「王都」

 エランが短く答えるとおばさんは顔色を変えて説得するかのように話を続ける。

「あんたみたいな,若くて綺麗な娘さんが今の王都の行くのは止めな。今の王都は,今は国中が大変な事に成っているんだからね」

「ここら辺は穏やかなものですよ」

「そりゃあ,ここから王都へは近いからね。反乱軍も無視して通り過ぎるって訳だね」

「反乱軍?」

「あぁ,その通りだよ。まああたし達も気持ちは分かるってもんだけど,この国は幾つもの重税で苦しんでるからね。それに今の王様は,っとあんまり言うとあたしがしょっ引かれちまう。とにかく王都へ行くのは止めな」

「詳しく話してほしい」

 エランがそう粘ると最初は拒絶していた宿屋のおばさんだが,エランの前に根負けしたようで,エランの為だと言いながら語り出した。

 今のネベロング王国は各地で反乱の手が挙がると,その勢いは強く各地の軍事基地を略奪しながら快進撃を続けて今では王都の何処かに潜伏しているとまで言われている。その発端と成ったのが二つの出来事,一つは先程おばさんが言った通りに重税だ。

 別に国難に成っている訳ではなく国は幾つもの税を民草に掛けており,その殆どは王都の上位に居る貴族達の懐に入るという訳だ。よくある話と言えばそれまでだが,稼ぎが悪い者達や扶養者が居る者達は致命的で今日を生きるだけで精一杯だという。幸いにこの宿屋は稼ぎが良いので食材をそう言った知り合いに分ける程の有様だ。それ程までに税が国民の生活を圧迫している。そしてもう一つの理由は王に有るという。

 現ネベロング王ボンベイ=ネベロングは女好きで知られており,それだけならまだしも国民達に関わりのないように聞こえるが,実際は各地から女を誘拐しては自分の寝所に連れ込むという行いをしている。つまり正妻や愛人だけではあきらたらずに市井の女達にも綺麗だと評判があれば誘拐されて,そのまま囚われるという訳だ。この二つの要因で遂に市民の一部が立ち上がると次々に同市を増やして今では正規軍に増す程の勢いと数が居るらしい。

 王国軍も抵抗しているらしいが,数と勢いを前に連敗が続く中で逃げ出す者や暴徒と化して略奪に走る者まで出ている程だ。それでも未だに軍として機能しているのはそれだけ甘い汁を吸っているからだ。充分過ぎる見返りが有るのだから,早々に兵隊の心も軍属から離れないという仕組みだ。そんな話を終えると宿屋のおばさんは大きく溜息を付いた。それからエラン達との会話を再開する。

「分かったかい,悪い事は言わないから王都へ行くのは止めな」

「分かった」

 短く答えるエラン,そんなエランの返事を聞いて安堵するおばさんにハトリは呆れたような視線を送るがおばさんは全く気付いてはいない。ここで反論してもお節介で言ってくれているおばさんに対して筋が通る訳がない,なら素直に諭された振りをするのが無駄な口論をしなくて済むという訳だ。そんなエランの意図が分かっているからこそハトリは何も言わずに会計を済ませる。

 宿屋を出たエラン達はそのまま村の店を見て回り,旅に必要な物を調達しているとハトリがエランに向かって口を開く。

「それでエラン,どうするつもりですよ」

「予定通り」

「やっぱり面白い事に成っているからには行かねえとな」

「まあイクスの感性が分からないのはいつもの事だからいいですよ,それはそうとエランなら絶対に目を付けられるですよ」

「その時はその時」

「まあ,衛兵殺しと成ると結構大変だが,何とかなるんじゃねえか」

「殺す事を前提に話しやがるなですよ」

「けど話を聞いていた限りだと,随分と荒っぽい事に成ってるじゃねえか。相手の出方次第だと思うがよ,最後にはエランも俺様を抜くしかなくなると思うぞ」

「そんな所に自ら赴く意図は何ですよ?」

「旅の醍醐味」

「絶対に違っていると思うですよ」

 話をしているうちに旅支度の買い物を終えてエラン達は宿場村を出て王都へと向かい出す。流石に王都へと続く道は石畳に成っており歩きやすくなっていた。なので順調に歩みを進めるエラン達,途中で王都から出て来たであろう荷馬車と擦れ違うと荷台が空に成っていた。

 明らかに商売帰りとは思えない荷馬車にエランとハトリは,これが重税による結果だと理解する。荷馬車に乗っていたのは税を納める金か物品が乗っていたと思われる。それを全て持って行かれたのだから荷馬車に乗っている者達の顔も浮かないのが良く分かる。ここまで来ると既に商売は成り立たない事を示していた。そんな荷馬車達と行き違うとエラン達は更に歩を進めた。

 途中で改造沿いに出て草原の上で昼食を取るエラン達,しっかりと甘味まで味わってからエランは立ち上がって再び歩き出す。すると徐々に王都が見えてきた。流石に王都と言われるだけ有って立派な建物が遠くからも見える。そんな王都は三方を山で囲まれて残りの一方も少しだけ草原が続くがすぐに切り立った崖がそびえ立っている。王が居る都としては立地は悪くない為にこの場所が選ばれた事が良く分かる。そしてエラン達は王都の城門へと辿り着いた。

 城門は開けっぱなしに成っており,見張りの兵も仕事をするどころか昼間から酒と賭け事に興じている様だ。これだけでもこの国の治世が成り立っていない事がよく分かるというものだ。だからエラン達はそのまま城門を通り抜けて王都へと入るとそのまま城下町を覗く事にした。

 ハッキリと言ってしまえば王都は明暗がしっかりと分かれている。貴族に寄生して甘い汁を吸ってる店は立派な店構えをしており,後ろ盾が無い店は廃れていると言った感じだ。その中で益々目を引くのは町中には男性しか居ないという点だ。やはり宿屋のおばさんが言った通りに誘拐が起きているからには町中の人が対策を立てているのが目に見えるという事だ。そんな中をエラン達は平然と歩いて行く。

 一先ずは宿を探す事に決まったエラン達はそのまま宿屋と酒場が密集している方へと歩いて行く。そんな時だった,思いっきり脅すかのようにエラン達に声を掛けて来た者達が居たのでエラン達が振り返ると,そこには手本のように悪役の顔をしている衛兵達の姿が有った。武器を見せびらかせながら歩み寄ってきた衛兵達の態度から自分達が何をしても許されるという勘違いが伝わってくる程だ。そんな衛兵達がエランを見ながら口を開く。

「そこの綺麗な姉ちゃんよ,ちょっと俺達と来てもらおうか」

 エランを指差しながらそんな事を言ってきた衛兵に対してエランは短く答える。

「断る」

「あぁん,俺達を誰だと思ってんだよ,この国の王家に仕えている衛兵だぞ。そんな俺達に無礼な態度を取っていいと思ってんのか」

「昼間から酒浸りに成っている暇人の間違いだと思うですよ」

「ガキは黙ってろやっ! まあ,見た目は悪くないからな数年後には一緒に来てもらうぜ」

「お断りですよ,その前に自分達の態度を改めた方が良いですよ。まあ,言っても無理だと思うですよ」

「あぁ,無理だぜ」

 言った後に衛兵達はエランを取り囲むように広がると脅迫するように威圧を掛けて来るがエラン達は平然としてる。そして何時までも動じないエランに衛兵の一人が手を伸ばした途端,エランはその場で一回転すると手を出してきた衛兵を掌底の一突きで吹き飛ばしてしまった。

「お前っ!」

 衛兵の言葉を無視してエランは右手を右上に伸ばそうとした途端に威勢の良い声が響いた。

「ヒャッホーっ!!」

 声が響いた途端に衛兵の一人が斬り裂かれて燃えた。その直後にもう一人の衛兵が後から斬り裂かれて崩れ落ちたのでエランは右手を戻して状況を見守った。すると燃える剣を持っている赤髪で赤い瞳をしている青年が言葉を出し始めた。

「相変わらずの女狩りとは飽きねえな,そんなに相手が欲しいのなら俺様が相手をしてやるぜ」

 威勢の良い言葉を出してきて戦う気が有る事を威勢良く示すとエラン達の後,ハトリが警戒する向こう側で衛兵を斬り殺した短い双剣持っている灰色の髪に青い瞳をしている女性が口を開く。

「隊長,任務を忘れないでください」

「大丈夫だっての,それに噂の白銀妖精なら心配すら必要ねえだろ」

「だからこんな所で堂々と言わなくても」

「いいだろエイン,さっさとこいつらをやっちまうぜ」

「私の名前まで,分かりましたよテルキネス隊長」

「お前らっ! は」

 言い終える前に衛兵はエインと呼ばれた女性に斬り裂かれてしまった。それを合図にテルキネスと呼ばれた青年も炎の魔剣を使って次々と衛兵を斬り裂いていく,そして瞬く間にエラン達を囲んでいた衛兵達を斬り殺してしまった。最後にエランが吹き飛ばした衛兵を斬り殺すとテルキネスがエランの方へと歩み寄って口を開いてきた。

「お前が白銀妖精だよな」

「その呼ばれ方は好きじゃない」

「なら名前は?」

「エラン,エラン=シーソル」

「俺様はテルキネス=リンドス,っで,そっちのチビが警戒しているのがエイン=ヘリル。そして俺様がこの国で噂に成っている反乱軍の軍隊長様だ。そんな訳でエランだったな,俺様達と一緒に来いや,いろいろと優遇してやるぜ」

「分かった,行くからハトリ,その人は今のところはあまり警戒しなくても良い」

「分かったですよ。まあ,血生臭いのは我慢するですよ」

「おっ,随分と鼻が利くじゃねえか」

「犬のように言わないでほしいですよ」

「それよりも連れってくれると言った」

「あぁ,そうだったな,なら来な」

 エランに催促される形で炎の魔剣を鞘に収まるテルキネス,それから視線をエインに送るとエインが頷いたのでテルキネスは付いて来いとばかりに振り返って歩き出すとエラン達も歩き出し,その背後にはエインが挟むように歩き出した。テルキネス達からも疑われているのだろうエラン達が逃げないように歩き続けるが,エランには全くその気はなかったので全く気にする事なく後を付いていく。

 エラン達はそのまま城門通りから外れて貧民街へと足を踏み入れた。そこから更に裏路地の入り組んだ所を進んで行くと,とある家屋への扉を開けてそのまま中に入ると普通の居間みたいな光景が広がるのを通り過ぎて奥の部屋へ続く扉を開けると,そこには地下へと続く通路が掘られていた。

 テルキネスが魔道具の照明装置を持ちながら地下へと下っていく道を進む,流石に民家の地下から掘り下げた道だけあって道幅は狭く一人がやっと通れるぐらいだが高さは確保しており,圧迫感はあまりない。それに地下に下り続けていくと道幅は広くなり高さも安定してくると足下の道も整備されて歩きやすくなって行った。するとそろそろいいだろうと思ったイクスが喋り出す。

「なあ,エランよ,そろそろ俺様に付いても話しておいた方が良いんじゃねえか」

 突如として響いたイクスの声に驚くテルキネスは振り返り,剣を抜いて構えるエインは思いっきり警戒されている中でハトリが話を続ける。

「イクスがいきなり喋り出すから思いっきり警戒されているですよ」

「このままだと何時までもほったらかしだと思って喋り出しただけだぜ」

「まあ,私も名前も聞かれていないからいいと思うですよ」

 イクスとハトリがそんな会話をしているとテルキネスは驚いたようにエランが背負っているイクスを指差しながら聞いてきた。

「その剣が喋ってんのか?」

「あぁ,そうだぜ。俺様はイクスエス,最強のスレデラーズの一本だ。まあ,気軽にイクスと呼んでくれや」

「ついでに名乗っておくですよ。ハトリ=シーソル,エランと共に旅をしている者ですよ」

「あははっ,まさか剣が喋るとはな,流石スレデラーズだぜ。エイン,剣をしまえ」

「了解した,隊長」

 エインは抜いていた短剣を腰の後ろで固定している鞘の中に収めた。するとテルキネスは再び振り返って歩き出すとエラン達もそれに続いた。そしてイクスが再び喋り出す。

「ってか,テルキネスの兄ちゃんだっけ。その剣も相当な業物だぜ」

「おっ,随分と見所か有るじゃねえか。こいつはフレイルファング,スレデラーレの最高の弟子と名乗っているグルレアが作った剣だ」

「聞いた事がない名前ですよ」

「お子様にはまだ早い話かもな」

「見た目だけで判断していると痛い目を見るですよ」

「あははっ,そうかもな。グルレア=ハルヴァナ,間違いなく今では最高の鍛冶師だがスレデラーレを心底尊敬しているみてーで,今でもスレデラーレの最高の弟子と名乗る程の変人だ」

「次は変人呼ばわりと偏見がすぎるですよ」

「そこは事実だからな。まあ,スレデラーレも生きてんのか死んでんのか分からねえから,グルレアもそう名乗ってるのかもな」

「すごくどっちでもいいですよ」

「俺様も同意見だ。だが間違いなく仕事は一級品,このフレイルファングもとある仕事で手に入れた逸品でな。今では重宝している程だからな,噂ではスレデラーレが作った剣は最強だが,グルレアが作った剣は至高と呼ばれる程だ」

「至高か,まあ俺様には遠く及ばねえな」

「流石は最強の剣だな,言う事だけは最強ってか」

「はんっ,機会があったら俺様達の力を存分に見せ付けてやるよ」

「そいつは楽しみにしておくよ」

 その後もイクスとテルキネスは気が有ったのか会話を続けながら地下道を進み続けると前方に光量が違う程の光が見えてきた。エラン達は更に進み続けてそこに入ると大きな空間が広がっており,外側には三段構造に成って他に通じる道が掘られていた。広すぎると言える程の部屋と言うべき物が有る中でテルキネスはとある人物を見つけると声を掛ける。

「ヘルハウン,連れて来たぞ」

 その声を聞いて振り返った青年は赤茶色の髪と瞳をしており髪を短く切っていた。そしてエランを確かめるように見ると笑顔を見せてエランの方へとやって来て大きく頭を下げた。

「ようこそいらっしゃいました。テルキネスは無礼な真似はしていないでしょうか」

「ひでー言い様だな。衛兵達に絡まれてたところを助けた程だぞ」

「それは好都合だったな,テルキネス。それでは改めまして私はヘルハウン=マクベスです。反乱軍へとようこそ白銀妖精殿」

「その呼ばれ方は好きじゃない」

「では何とお呼びしましょうか?」

「エラン,エラン=シーソル」

「分かりましたエラン殿,そしてもう一方は?」

「それだけじゃねえぜ」

「どういう意味です」

「おっ,俺様の事を忘れていなかったな」

 イクスが喋り出して案の定驚くヘルハウン,テルキネスから説明を受けてすぐに理解するとハトリも名乗って自己紹介を終える。するとヘルハウンは側に居る人物を呼び寄せて何かを命じるとすぐにその人物は駆け出した。それと同じく周囲の人達も動き始めて広すぎる部屋の中央に長棹と椅子を用意した。するとヘルハウンはエラン達に座るように促してエランとハトリが座るとヘルハウンとテルキネスも長棹に付くとエラン達の前にハーブティーと甘味が出されてた。どうやらエランが甘味好きという事は調べが付いているらしい。

 待たされるのならとエランは甘味を手に取り口に入れて,ハトリはハーブティーを味わった。どちらも高級品で入手経路が気に成るところだが今のところは何も言わずに甘味とハーブティーを味わうエラン。それからしばらくして部屋から奥に続く通路の一つから足音が聞こえてくると周囲の人々は自然とそちらの方へと視線を向けてエラン達もそちらに目を向けると一人の人物が姿を現した。

 青い髪を少し伸ばしており,同じ青い瞳をもつ青年がやって来ると長棹を取り巻いている人々は自然と道を開けて出来た道を青年がやって来ると長棹に付くとエランに向けて微笑みを向けると口を開く。

「初めまして白銀妖精さん,私はルコレオ=ロゴスと申します。今では反乱軍を率いている立場ですが,よろしくお願いします」

「その呼ばれ方は好きじゃない」

「そうですか,それではエランさんと呼んでよろしいですか?」

「構わない」

「では,早速ですが,ここへ連れてきた理由に付いて説明させてもらいますね」

「大体の見当は付いてる」

「ってか,ここまでの話を聞くだけでも分かるってもんだぜ」

「イクスは余計な事を言いすぎだから黙っているですよ」

「なるほど,聞いた通りに面白い方々ですね」

「それは褒め言葉とは思えないですよ」

「それはすみませんでした。ですが私達としても詳細を知っておいてほしいので,私の話を聞いて頂けますか?」

「分かった,手短に」

「感謝します」

 会話を終えるとルコレオは反乱軍に付いて話し始める。全ての切っ掛けは前王が崩御して現王ボンベイ=ネベロングに王権が引き継いだ事に始まった。ボンベイ王は王座に就く前から正妻が居る立場ながらも多くの愛人がいる事で問題に成っていたが,当時はボンベイしか王位継承権を持っておらず,前王も問題は多くとも我が子に王位を継がせたいと思っていたようで王位の継承に意義を唱える者は居なかった。だが蓋を開けてみれば問題は拡大するばかりだ。

 ボンベイ王は愛人だけに飽き足らず市井の女達を誘拐までして自分の寝所に連れ込む始末です。それどころか誘拐した女達を解放する事はなく,そのまま城に捕らえて何度も寝室で相手をさせる程の外道な行為を行っている。なので城下町の民達は女達を隠して王と衛兵達に見付からないように工夫すると,王の欲望は更に広がり領土で少しでも綺麗だと噂される女達を誘拐する程までに広がり,もちろん拒めばその親族は殺される程の蛮行だ。

 相手に夫や婚約者,恋人が居ても構わずに誘拐しては城に捕らえて辱めるのがボンベイ王がやっている事です。それが更なる問題を生み始めた。ボンベイ王が女達にかまけている間に重鎮の貴族,クレント=セクエンスを筆頭に王政を勝手に仕切り税に税を重ね始めた。もちろん,それが民に還元させる政策が成される事もなく,唯々貴族達の懐に入るだけで民達の暮らしは年々苦しくなってきた。そんな時に反乱を唱える者達が立ち上がり,各地の砦を守る兵達と次々と戦い反乱の渦は徐々に大きく成り,遂に砦を落とし始めて,勢い付いた反乱軍は次々と勢力を伸ばして砦を落として行った。そして重要な砦は反乱軍に落とされて今では王都へと迫る勢いだ。

 今ではこうして王都の地下に身を潜めているが時が来れば一気に城を落として反乱を完遂する程までに押し込んでいる。それ程の勢いが有るからこそ,今は敵を減らし慎重に王都を落とす計画を練っているとの事だ。そんなおりに一人で数千人を相手にしても勝てる程のスレデラーズを持っている白銀妖精が近くにおり,この王都へと向かっているとの情報を得て味方に出来ないかと機を窺っていたが,エラン達から王都へと飛び込んできたおかげで手間が省けたという訳だ。

 説明を終えたルコレオは乾いたのを潤す為にハーブティーを口にすると改めてエランの方を見て話を続ける。

「そんな訳ですのでエランさん達には我らに加わって頂きたい。もちろん,報酬はご用意しております。なのでどうかご協力を」

「その前に一つ聞きたい」

「はい,何なりと」

 エランの言葉を聞いても姿勢を崩さないルコレオはエラン達を引き込むだけの自信が有る表れだ。だがエランが聞きたい事はそこではなく,別の事だった。

「あんた達はこの国をどうしたいの?」

「それは,より良い国へと」

「具体的な方策は?」

「それは王政を取り戻してからでも遅くはありません。今はどうやって今の王政を倒すかを考えているのです」

「そう,分かった」

 短く答えたエランは甘味を一つ口にするとハーブティーを堪能する。そんなエランの態度に少し戸惑うルコレオ,だがここで躊躇っていても何も話が進まないとルコレオは更に押してみる。

「そんな訳ですので,是非とも白銀妖精と呼ばれているエランさんにご協力をお願いしたい。どうか我々に加わって頂けませんか」

 説得するルコレオを余所にエランはもう一つ甘味を口にして食べ終わるとハッキリと答えた。

「断る」

 あまりにも唐突で予想外の答えに驚きを示す反乱軍の面々,そんなエランの隣ではハトリが大きく溜息を付いていた。そんな周囲の反応を余所にエランは平然とした態度で甘味とハーブティーを堪能するのだった。




 さてさて,ようやく始まった第五章ですね。まあ,まだ始まったばかりなので何も言う事は有りませんが,第五章は今までとは少し違ったやり方で書いてみたいなと思っております。まあ,それはこれからの事なので引き続き,ご贔屓にして頂ければ幸いです。

 さてはて,私の中では未だに区切りを付けるべきなのかを迷っておりますが,現在応募しているコンテスト次第で打ち切るかどうかを決めようかと思っております。まあ,今までずっと第一選考で落ちてきたので,そろそろという気持ちが有りますからね。なので,そこを区切りにしたいと思っている次第でおります。と書いた所でそろそろ締めましょうか。

 ではでは,ここまで読んでくださり,ありがとうございます。そしてこれからもよろしくお願い致します。更に評価と感想をお待ちしております。

 以上,今年もいよいよ終わりだね,いい年に成ったとはまるで言えないけどねと嘆いてみた葵嵐雪でした。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ