第四章 第五話 ぶつかり合う白と黒(後編)
エランのフェアリシュリットとイクスのフレイムゴースト,そしてユウリエが全力を出す為に使う特殊技攻。これだけ揃えばエラン達とユウリエ達が全力でぶつかり合うのは必然で,それはエランとユウリエの二人には分かりきっている事だが,笑みを浮かべているユウリエはあえてエランに話し掛けた。
「初めて見るスレデラーズね」
「旅の途中で手に入れた」
「そう,旅の成果は有ったみたいね」
「うん,これから実証する」
「それは楽しみね」
短い会話を終えたら今度はお互いに動き出す。イクスとガンギ,それぞれを握っているエランとユウリエが一気に距離を詰めると,エランから動き出す。フェアリシュリットで足場を作り出したエランが空中へと舞い上がり,そこから縦に一回転して一気にイクスを振り出してきた。それに対してユウリエはガンギでイクスを受け止めようとするが,フレイムゴーストの能力でガンギに当たった部分が溶けるように無くなりイクスはそのままユウリエへと迫る。
流石にこのような事態を想定は出来なかったようで,ユウリエは迫って来るイクスを前に思いっきり踏ん張ると地面を蹴って後方へと跳んだ。何とかイクスを避けたユウリエだが反撃に転ずる前にエランからの追撃が来ると,受け止める事は出来ないとすぐに判断したユウリエはガンギを左に振るって一気に移動する。なのでイクスがユウリエに届く事はなかった。それでもフレイムゴーストの能力が油断成らない事だけは伝わった事だけをエランは知ると攻勢に出る。
再び距離を詰めるエランに対して対策を考えているユウリエは回避に専念するのは間違ってはいない,なにしろフレイムゴーストは防御不可の剣だからこそ先程の様にガンギでイクスを受け止める事が出来ない事が分かったからには対策が必要だ。なので防戦一方になるユウリエに対してエランは攻勢に出るのを止めた。ここでフレイムゴーストの能力を教え続けるのも良くないと判断したエランは一度ユウリエから離れて距離を取る。
優勢だったエランから退いた事が,ある意味では挑発とも捉えられるがエランがその様な安易な行動には出ない事が分かっているユウリエはエランの意図を察すると動きを止めてお互いに動かずに膠着状態と成る。そんな中でユウリエはエランが放った最初の一撃について考えていた。ガンギを通り抜けるように斬り込んで来た一撃,その意味をユウリエは考えると一つの結論に辿り着く。確かにイクスのフレイムゴーストは防御不可の剣だが,逆に防御が出来ない剣でもあると結論を出す。なのでユウリエはあえて攻勢に出る事にした。
動き出すとすぐに一回転して勢いと速度を付けるとユウリエは一気にエランへと迫ったら,またすぐにガンギを一回転させて更に勢いと威力を上げるとエランに胸辺りに向かって一気にガンギを振り出す。それに対してエランは足場を形成すると上へと逃れるのと同時に縦に一回転して勢いを付けると一気にユウリエに向かってイクスを振り出した。そんなエランの動きを見てからユウリエは動き出す。
既に振り出したイクスの軌道を大きく変える事は出来ないので,ユウリエは少しだけ身体を右にずらしてイクスの軌道から逸れた地点へと移動すると左に一回転してからガンギを振るい出す。だがここでユウリエには想定外の事が起こった。イクスとガンギがぶつかり合ったのだ。
ユウリエの推測ではフレイムゴーストの能力では防御する事が出来ないと思っていたが,現にイクスとガンギがぶつかり合っている。そこでユウリエは有る事に気が付く,それはイクスが炎を纏ってはいない事に。そう,フレイムゴーストは炎の量で通り抜ける硬さを変えられる,逆に言えば炎を無くす事でガンギを防ぐ事が出来るという訳だ。そこでエランはすぐに場所を変えて,ガンギの軌道上から移動するとイクスが再び強大な炎を放ちガンギを通り抜けてユウリエへと迫る。
考えるよりも早くユウリエの身体は動いていた。迫って来るイクスにガンギを振り抜いて移動するユウリエにイクスの炎と切っ先が微かに触れると肌白いユウリエの肌を微かに斬り裂き炎で焼いた。またしても傷を負ってしまったのでユウリエは鎧に魔力を注いで傷を癒やす。掠り傷程度だったので少量の魔力で傷は癒えたが,かなり厄介な状況は変わっていないがユウリエの本領を発揮するのはここからだ。
イクスの事を理解したユウリエはそのまま攻勢に出る。更に回転してユウリエは態勢を立て直すとそのままエランに斬り掛かるが,エランは少し退がってガンギの間合いから出ていた。だがユウリエはそのままガンギを振り出すと途中でガンギを手放した。ユウリエの手甲から伸びている鋼糸が思いっきり伸びてガンギを更に遠くにまで間合いを伸ばしてきた。
ユウリエの手甲から伸びている鋼糸はそれだけ頑丈であるのと同時に伸縮性も帯びていた。なのでユウリエが手放しても鋼糸がしっかりとガンギを支えていた。そして再びイクスとガンギがぶつかり合い,重低音な金属音が響き渡すとユウリエは手甲の鋼糸を縮めて再びガンギを握る。最初はガンギだけの威力だったが,そこに飛んできたユウリエの勢いまで加わったのだからガンギは遂にイクスを弾き飛ばすのと同時にエランの左腕に切っ先が届いた。
フレイムゴーストの力でかなり接近戦を仕掛けていたエランだからこそ,ガンギの一撃が微かに届いた。それでもエランは接近戦を止める事無く,鎧に魔力を注いで傷を癒やしながらイクスを振るい続ける。ユウリエもフレイムゴーストの能力に気を付けながら接近戦を続ける。
何度も振り出されては交差し,ぶつかり合うイクスとガンギの攻勢が続く。エランとユウリエもお互いに退く事なく連続で攻撃をぶつけ合う。何時までも続くかのようにエランとユウリエの接近戦は続くが,突如としてユウリエが離れた事で接近戦は幕を閉じたが,それは新たなるユウリエからの攻撃を意味していた。
―特殊技攻 飛翔剛剣―
ユウリエは一回転するとガンギを手放し,勢いのままにガンギがエランに向けて投げられた。大胆すぎる攻撃にエランは上に逃れるとユウリエはガンギと繋がっている手甲を退いて鋼糸を一気に縮めると,飛んでいるガンギが大きな円を描いてユウリエの元に戻り再びユウリエに握られる。
近距離から遠距離に切り替えたユウリエに対してエランは近づこうとフェアリシュリットの力を駆使して距離を縮めていく。迫って来るエランに対してユウリエは再び大きく一回転すると飛翔剛剣を繰り出すと,再び飛んできたガンギの間合いから一気に出たエランは再び距離を縮めようとするが,すぐ隣にユウリエの手甲から延びている鋼糸に気が付くとすぐに上に跳んだ。
エランの下をガンギが回りながら通過する。ユウリエの手甲から伸びている収束手甲が有る限り,ガンギを手放しても必ずユウリエの手に戻って来るという訳だ。それでもエランはユウリエをイクスの間合いに入る為に前進を続ける。そしてイクスの間合いに入る手前で一回転するエランは勢いを付けてイクスを振り出し,ユウリエはガンギが戻った勢いを利用して一回転して勢いと威力を上げる。
イクスが思いっきり炎を吹き出しながらガンギと交差する,だが途中でユウリエの姿が無い事に気付くエラン。そう,ユウリエは回転した勢いを使って移動しており,エランに向かって右足を伸ばす。
―特殊技攻 円蹴刀―
ユウリエの足から刃が飛び出すとエランに向かって行くが,その前にエランは自ら跳ぶ事でイクスを振りながらも移動する事が出来たが,無理な移動をした為に態勢が崩れてしまうがすぐに足場を形成して態勢を立て直す,そこに再び一回転して勢いと威力を増したガンギが迫っていたのでエランはその場で一回転してイクスを振り出してガンギにぶつける。だが勢いはガンギの方が強かったのでイクスは打ち負けて押し戻されるがエランはそのまま弾き飛ばされる事にした。
自らも後方へ跳ぶ事で弾き飛ばされた時の勢いを軽減,態勢を崩される事なく移動する事が出来た。何とか凌ぎきったエランは再びイクスを構えるとイクスから炎が猛るように燃え上がる。そんなエランに対してユウリエは少し後方へと退がって様子を見ているかのように動かずにいた。そして二人は同時に動き出す。
お互いに距離を詰めていくエランとユウリエ,そしてお互いに右に一回転するとイクスとガンギを振り出す。イクスは炎を纏っているからにはユウリエはイクスがガンギを通過して攻撃してくるだろうと予想したが,外れてイクスとガンギはぶつかり合う。エランとイクスも既にユウリエがフレイムゴースト能力を分かっている事は承知しているのであえてガンギとぶつかり合う前にイクスは炎を消してガンギとぶつかり合う事にした。そしてそこからエラン達の攻撃が始まる。
力押しの拮抗状態に成っていると突如としてイクスが炎を猛らしたら,突如として抵抗が消えた事で前に出て来るユウリエとガンギ,そのガンギを通り抜けてイクスが突進してくるがユウリエは前に出た勢いを利用して地面を強く蹴ると上に跳んでイクスを避ける。それに対してエランはそのままイクスと共に進ませると左に半回転して勢いを殺すと振り向くと同時にユウリエも地面に足を付けて振り向いた時にはお互いに対峙する形と成っていた。
仕切り直しとばかりに再びイクスを構えたエランが距離を詰めて来る。だがユウリエは飛翔剛剣,つまりガンギを投げてきた。その為に右に一回転をする事でエランはガンギを避けるが戻って来る事は分かっているので,そのままユウリエに向かって一気に距離を詰める。ユウリエの手甲から出ている鋼糸が音を立てて一気に縮まっていく前にエランは足場を作って上に跳ぶとイクスは思いっきり炎を纏い,エランはそのまま縦に一回転して勢いを付けるとユウリエに目掛けてイクスを振り下ろす。
エランがイクスを振り下ろすのと同時にユウリエは地面を蹴っていた。
―特殊技攻 飛翔加速―
ユウリエの腰にある鎧の部分から魔力が推進力を生み出す力へと変わって一気にユウリエの身体を押し出していく。そしてエランの横を通り過ぎるとガンギが丁度戻って来たのでガンギを握ったら振り向きざまにエランを狙う。だがエランは既に察しておりユウリエから離れるように前へと出ていた。なのでガンギは空を斬るだけだがユウリエは面白そうに笑う。その一方でエランは半回転して振り向くとユウリエと距離を取る為にそのまま後退しながら地面へと足を付けた。そしてユウリエもエランとは距離を取った所で着地する。
対峙するエランとユウリエはお互いに次の一手を考える。ここまで戦いが長引く事はお互いに良く知っているので当たり前に思っているのはユウリエがエランの姉として剣技を教えてきた事もあるだろう。けど,それ以上にエランが成長していた為にユウリエとしても決め手を欠いていたのは確かだ。だが,それがユウリエにとっては嬉しくもあった。
エランもユウリエに近づき,そして最強の剣と成る為に常に努力をしている。だから昔は全く歯が立たなかったユウリエに対して研鑽を積み重ねてきた結果として,今は対等に戦えている。その事実としてユウリエと比べても全く遜色がないほどに実力を得る事が出来た。剣の楽園では決して届かなかったユウリエに少しは届くほどに成ったのだから,どうしても決め手に欠けるのは当然の事と言えよう。
互いに思う事がありながらも,戦いでは次の一手が打てないのも事実。だがユウリエには更に隠しているモノがあるので,それを出す事にした。それはエランも知っているからこそ対抗してくるだろうが,ここまで戦えるのなら全ての手を出す事がエランの為になるのだからユウリエは戸惑う事なくガンギを構え直す。
腕を伸びしてガンギを目線から少し下に構えるとガンギの鍔が回り始める。それが何を意味しているか分かっているエランはすぐに動き出した。
―特殊技攻 飛連剛刺―
ガンギの鍔に空いている穴から針が飛び出すと峰のへこみ部分を進み一直線に撃ち出された。それは一回だけではなく鍔が回り続ける限り撃ち続けるので,連続で幾つもの針が撃ち出される。なのでユウリエはエランの動きに合わせてガンギを動かすだけで針はエランを襲い続ける。対してエランもそれが分かっているので動きを止める事なく動き続ける。
エランが動き続けているのにガンギから飛び出ている針が途切れる事はない,それはそういう風にスレデラーレが作ったからだ。ガンギの鍔は三段構造に成っている。一番内側は針を撃ち出し,二層目は針を装填して,三層目は魔力で針を作り出している。つまりユウリエが魔力供給を止めない限りは針は撃ち続けられるという訳だ。
何時までの避ける為に動き続ける訳にはいかないと分かっているエランはフェアリシュリットの力で足場を形成すると,上下移動も加えて動き続けて少しずつユウリエへと迫る。そんなエランの動きにユウリエは気付いていたが,あえてそのまま針を飛ばし続ける事にしたユウリエ。そしてエランが間合いを詰めて来ると一回転してイクスを振り出してきた。
イクスの刀身から炎が噴き出すように燃え上がるとユウリエを完全に捉えたように思えたが,すぐに後方へと跳んでいたユウリエを捉える事が出来なかった。それでも充分と察したエランはすぐに後方へと退がると可能な限り距離を取ってユウリエが動き出す前にイクスに告げる。
「イクス,スネークリンバ」
「一気にいくぜ」
イクスが白銀色の光りに包まれるとイクスの刀身が紫色に変化するのと同時に線が幾つも入る。そして白銀色の光が消えるとイクスが変形型の剣へと変わった。そして今度もイクスが変わるのを待っていた様に佇むユウリエはやっと動き出して再びガンギを一直線に構えると再び鍔が回り出す。そんなユウリエ達に気付いたエランは再び動き出す。
再び飛連剛刺が発動しガンギの鍔から針が飛び出してくる。それに対してエランはイクスを突き出すと幾つも分割して鋼糸で繋がった切っ先が飛んで来る針を弾きながら直進する。迫って来るイクスに気付いたユウリエは飛連剛刺を続けながら横へと移動するが,エランがユウリエの動きに合わせてイクスを振るうと切っ先から動いて再びエランに向かって来る針を弾き落とす。
以前に戦ったイズンとの戦いでスネークリンバの戦い方を学んだエラン達は更に研鑽を重ねて,今では完全に使い熟せるまでに至っている。だからエランはイクスの切っ先から鍔元までしっかりと制御が出来る程にまで成っていた。完全制御下のイクスを使って全ての針を叩き落としているエランは距離を詰めるように前に進み出すとイクスの間合いにユウリエが入るまで前進する。そんなエランの動きに気付いたユウリエは飛連剛刺を止めてユウリエからも距離を詰める。
お互いに距離を詰めた事でエランもガンギの間合いに入ったが,エランは後退しながらイクスを振るい出すとユウリエはそんなイクスを止める為の手を打つ。
―特殊技攻 刀身防―
ユウリエは収束手甲で繋がっているガンギを軽く上に投げるとガンギはそのまま落下してユウリエの前に壁となって地面へと突き刺さる。そんなガンギにイクスの連刃が次々に当たるが全てガンギの刀身に弾かれてしまった。ガンギの刀身がユウリエよりも大きい為に完全防御とも言える刀身防によって無傷で済んだユウリエはそのまま腕を引っ張ると収束手甲で繋がっているガンギの柄が倒れ始めて,そのまま一気に倒れてユウリエに再び握られる。
イクスの攻撃を完全に弾かれてしまったエランは一度イクスを引いて元の形に戻すとユウリエが動き出す前にイクスを今度は横から薙ぐように振り出す。振り出された勢いを使ってイクスが再び分割しながら伸びて行く,そしてそのままユウリエに届くが寸前に上に逃れたユウリエは一回転してガンギを振り下ろす。ユウリエが狙っていたのはイクスの刀身を繋ぐ鋼糸だ。だが,それに気付いたエランは素早くイクスを動かすと蛇行するように縮まるイクス。なのでユウリエの一撃は地面を斬り裂くだけだ。
イクスを振って素早く攻撃を切り替えるエランは,イクスを振るう度に切っ先から蛇行して蛇の様にユウリエへと迫った。そんなエラン達に対してユウリエは移動しながらの飛連剛刺を撃ち出し始める。飛び出して来た針を喰らうようにイクスの切っ先が次々と弾き落としていくのと同時にエランは前に出て距離を詰める。それはユウリエも同じで飛連剛刺を止めて互いに距離を詰めていく。
イクスの間合いに完全に入ったところでエランが仕掛ける。イクスを思いっきり引いた後に横から薙ぐように振るうと,イクスはユウリエを取り巻くように円を作ったらエランは思いっきりイクスを引いた。一気に円周が縮まるとイクスの刃がユウリエへと迫るが,ユウリエは前に進みながらイクスを意識していないかのように距離を詰めた。そしてイクスの刃がユウリエへと迫って来るとガンギを思いっきり振り上げて,次の瞬間には思いっきり地面へとガンギを突き刺した。
ガンギを地面に突き刺した反動を利用してユウリエは跳び上がると宙へと舞い上がり,イクスはガンギに絡み付くようにガンギに巻き付いた。攻撃がユウリエに避けられた事にイクスを引こうとするエランだが,ユウリエの方が素早く動いた。腕を背中に回してから思いっきり前へと振り抜いたユウリエ,収束手甲で繋がっているガンギがユウリエの動きに合わせて一気に地面から引き抜かれてイクスごとガンギはユウリエの手へと戻って行く。そしてガンギがユウリエの手に戻ると,ユウリエはイクスが絡み付いたままエランに向かってガンギを振り出す。
スネークリンバを完全に封じられた状態に成ったエランはフェアリシュリットの力で幾つもの足場を作り出すと素早く移動,ユウリエの一撃を避けた途端にイクスを引いてガンギからイクスを離していく。対してユウリエはイクスを戻させないと上手くガンギを引っ張りイクスが戻る速度を遅くするのと同時に地面に足が付いた途端にエランに向かって跳んで再びガンギを振るい出す。まさか,こんな手でイクスを封じてくるとは思っていなかったエランは回避に専念する。
ユウリエへと向かって行くエラン,自らガンギの間合いに入ったエランはユウリエの動きを注意深く見る。そしてガンギがエランを捉えた途端に足場を消して一気に地面へと降下するのと同時にエランはイクスを引いてガンギからイクスを引き剥がす事に成功した。なにしろガンギがイクスに巻き付いている状態だとユウリエも回転を加えて威力と速度を出せない状態で,下手に回転を加えると自分がイクスに斬られる事が目に見ているからだ。どうしても速度が出ないガンギならエランは飛び込んでいっても避けらる自信と確証が有ったから,このような動きをした。
イクスを引いて一気にイクスを元の形に戻すとエランはそのままユウリエと距離を取る為に移動し,エランの動きを見ていたユウリエも仕切り直しとばかりにエランと距離を取って次に備える。お互いに距離を取って振り向き様にイクスとガンギを構えると次の一手を考える。少し間だけ静寂が流れるとユウリエから動き出す。
地面を蹴ったユウリエは飛翔加速を発動させて一気にエランに迫ろうとするが,ユウリエが動いた事でエランも動き出していた。イクスを振るって一気にユウリエを狙おうとするが飛翔加速でイクスを避けながら距離を詰めて来る。それでもエランはイクスを振り続けて制御するとユウリエの後方からイクスの切っ先が迫るが,その前にガンギの間合いが近くなると左に一回転して勢いと威力を高めるとユウリエは一気にガンギを振るうが,エランはフェアリシュリットの足場で縦に回転しながらユウリエを追い越すとそのまま後方からイクスでユウリエを狙うが,振り抜いたガンギでそのまま半回転してイクスを叩き落としてしまった。
エランは足場を作る事はせず,そのまま縦に回転してイクスを振るうと今度は下からユウリエへと迫った。イクスの切っ先が叩き落とされたから出来る攻撃にエランは最大限の集中力を発揮するが,ユウリエの飛翔加速は前に進むだけじゃなく後にも進めるので一回だけ地面を蹴る事でユウリエは大きく後退しながら右に一回転すると再びイクスを叩き落とす。これ以上の追撃は無理だと感じたエランはイクスを引き,元の形状に戻る頃にはユウリエは充分な距離を開けたところで地面に足を付けていたので,エランも空中で半回転すると地面に足を付ける。
再びイクスとガンギを構えるエランとユウリエが対峙する。今度はエランから動き出して,イクスを振り出しながら前進する。イクスが蛇の様に伸びて一気にユウリエへと迫るが,飛連剛刺を発動させて針を当てる事でイクスの軌道をずらしていく。それでもエランはイクスを制御しながらユウリエに届かせようとするが,ユウリエは飛翔加速も使いエランに狙いを付けさせない様にする。
高速移動をしながら針を連射するユウリエとフェアリシュリットの跳躍力を利用して跳び続けながらイクスを操るエラン。そんな二人の攻防がしばらく続く。
二人が止まったのはこのまま動き続けても変化が無いと気付いた時だ。再びエランとユウリエが止まった事で一旦イクスとガンギの攻防も止まり再び一時の静寂が訪れるが,それを破るかのようにユウリエがエランに向かって話し出す。
「ここまで互角に戦い続けるなんてね,確かに成長しているみたいね」
「もう昔みたいにユウリエ姉さんに頼りっぱなしじゃない」
「そのようね,だからと言って貴方のやった事を許すつもりはないわ」
「私は自分のやった事が最善だと思ってる」
「それは誰しもそうよ。自分の行動が間違っていると思って行動している者など居ないわね,逆にどんなに間違ってようと自分が正しいと思っている者は多いけど」
「なら姉さんは名もなき姉妹達を捨てた事をどう思ってるの?」
「私はエラン,貴方に託したと思っているけど,剣の楽園と共に焼いてしまうとはね。想像も出来なかった事よ。だからエラン,貴方は剣の楽園を出るべきじゃなかったのよ」
「それはユウリエ姉さんの自我」
「……言葉の使い方も上手くなったようね。それでエラン,貴方は剣の楽園を出て何を目指してるの?」
「昔を取り戻したい」
「時間は戻らないわよ」
「分かってる,それでも忘れられない」
「つまり過去にこだわっているという訳ね」
「否定はしない」
「でしょうね,貴方がこの程度の言葉で変わるとは思っていないわ。けど,それに何の意味が有るのか聞いても良い?」
「私にとっては重要,ユウリエ姉さんは何で主に固執するの?」
「私,いえ,私達はそう作られたからよ。エラン,貴方も私も剣の使い手にすぎない。それは私達がガンギやイクスと同じ剣にすぎないって事よ」
「私はそう思えない,私は私の意思で今もここ居る」
「つまり私と戦う事もエランの意思という訳ね」
「それは……」
「黙るという事はその程度の覚悟と決意しか持っていないって事よ」
「違うっ!」
「珍しいわね,貴方がそこまで否定するなんて。ならエラン,私は貴方の意思を尊重するわ。だからこそ,これぐらいは出来るように成っているでしょうね」
「っ!」
「行くわよ。ガンギ,第一同感」
「承知した」
「第一同感,ブラックフェアリ」
ユウリエがその言葉を口にした途端にユウリエとガンギはお互いの心を一つとする。黒耀の光にユウリエが包まれると背中から蝶のような黒い翅が生えるのと同時に美しい紋様を描き出し,ガンギからは黒耀の魔力が視覚化される。これこそがユウリエガンギエスとしての真の姿だ。
ユウリエとガンギの共通意思がある程度に達すると,この第一段階の制御が外れて本来の力を発揮するのが第一同感であり,スレデラーレが作り出した最強の剣としての一本目がこの姿と力である。その力はエラン達も良く知っているからこそ,ユウリエが本気を出してきた事がヒシヒシと伝わってくる。なのでエランもそんなユウリエに備える中でハトリだけが俯いて一雫を落とすのだった。
さてさて……なっが,いやね,書いた作品の最終チェックをしていたら自分でも長いと思うぐらい長く感じたのですよ。まあ,文字数的にはそんなに多くはないのですけどね。バトル回という事も有り,何か凄く長く感じてしまった。まあ,これ位長い方が良いかもしれないと私自身は思っているんですけどね。
さてはて,いよいよ本領発揮をしてきたユウリエとガンギですね。エランとイクスが剣によって変化する変幻型に対してユウリエとガンギはそのままの姿でいろいろと出来る万能型の剣をコンセプトに作られていますので,その両者が激突するとこのような感じに成りますよね~。そして最後にユウリエ達が行った第一段階解除に関しては次回をお楽しみにという事でそろそろ締めましょうか。
ではでは,ここまで読んでくださり,ありがとうございます。そしてこれからもよろしくお願いします。更に評価と感想を心よりお待ちしております。
以上,FiveMでそろそろ拳銃でも買おうかなと思っている葵嵐雪でした。




