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白銀妖精のプリエール  作者: 葵 嵐雪
第三章 バタフライフェザーカノン
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第三章 第三十話 片隅の戦争が決着する

 イクスが新たなスレデラーズの姿,スネークリンバの姿に成るとエランは一気に動き出してフェアリシュリットの力で今度はイズンとの距離を一気に縮めてくる。そんなエランの動きを察したイズンはニードルフェザーを放ってくるが,エランはフェアリシュリットの力で上空へと逃れて更にイズンとの距離を詰める。そんなエランにイズンは魔力弾を放ってくるが,イクスの長さでは届かないのにエランはイクスを振るうと魔力弾が爆発するのと同時にイズンは新たなイクスの姿を目にする。

 イクスの刀身は深紫色に成っており形状が鞭のように伸びている。イクスの刀身は数十個にも分割されて刀身と同じ深紫色の鋼糸こうしで繋がっている為に,一振りの剣と言うよりは鞭のように伸びている。そんなイクスを握っているエランがイクスを引くように動かすと分割された刀身と鋼糸が一気に動き出し,次々と刀身同士が繋がって鋼糸が縮まり元の形状へと戻って行く。

 上空から再びイクスを振り出すと,勢いに乗って再びイクスの刀身が切り離されて鋼糸がしなりながらイクスの刃が地面を抉りイズンへと迫る。後方へと跳び退いてイクスを避けるイズン,その間に地面に下りたエランが再びイクスを引くとまたイクスは一振りの剣へと戻って行く。そう,これがスネークリンバの能力だ。

 鞭のように使う連刃剣のように伸縮して中距離からの攻撃を可能としている。更に元から長いイクスが更に伸びるのだから,その長さはかなりのモノで今のエランでは切っ先まで制御が出来ない程に伸びるのだから間合いはかなり広がる。もちろん,それだけではなく鞭のように振るった刀身を制御する事が出来るので蛇の様に蛇行しながら敵へと向かって行く事が出来る。だが,先程も述べた通りにエランは未だに伸びた刀身の制御が出来ていない為に先端の方が何処に向かうのまでは思い通りに成らない。つまり未だに使い熟せていない剣という事だ。

 使い熟せていなくても全く使えないという訳ではない,中途半端な状態でもこれだけの威力を出せるのはスレデラーズだからと言えるだろう。少なくともエランはこれで反撃の手段が強化された事は確かで,その威力にイズンを動かした事がそれを証明している。つまり今まで遠距離戦で不利だったのが,これで対等に戦えるとエランは判断した結果だ。そして今度はエランから攻勢に出る。

 フェアリシュリットの上空足場からイクスを振るうと,再びイクスの刃がイズンを斬り裂こうとするがイズンも今までの動きから多少の動きは予測できるのでニードルスピアでイクスの刃を叩いて起動を変えるが,エランが別方向へとイクスを振るうとそれに応じる形でイクスが軌道を変えて再びイズンへと襲い掛かった。

 しつこいと思いながらもイズンは光の槍でイクスの軌道を変えるとニードルフェザーでエランを狙ってきた。だが,この程度の事も予測の範囲内だったエランは上空足場から足場へと移動してニードルフェザーを躱した。けど攻撃続行は不可能と判断したエランはイクスを戻すと今度は地面へと降り立った。再び対峙するエランとイズンだが,ついでだからとイクスが喋り出す。

「初めて見せた能力なのに,ここまでやるとはよ。随分と姉ちゃんの対応が速えじゃねえか」

「それはどうも,とは言ってもあんたみたいな剣に褒められても嬉しくはないわね。どうせだったらいい男に褒められる方が気分が良いわね」

「そりゃ残念。まあ,俺様もお前みたいな奴には使ってほしくないと思っているから,お互いに思ってるのは同じみたいだぜ」

「何処をどう考えたら,そんな結論に成るのかしら」

「ここをこうか?」

「おちょくるのもいい加減にしてもらいたいわね。まあ,これが終わったら精々良い値段を売らせてもらうから覚悟だけはしておくのね」

「そいつは無理な意見だな。なにしろ俺様を使えるのはエランだけだし,この戦いに負けるつもりもねえからな」

「なら黙ってこいつを……受けなさいっ!」

 イズンが構えるとニードルスピアとニードルフェザーが同時に多数,一気に連射してくる。流石にここまでの弾幕とも言える攻撃にエランは上空へしか逃れる術はなかったので,そのエランからイクスに言葉が飛んで来る。

「イクス,挑発も程々に,さっきのはやり過ぎ」

「そいつはすまなかったな。まあ,あの姉ちゃんもまだまだやる気だからこちらも付き合ってやろうぜ」

「イクス……折檻」

「……すみませんでしたっ!!」

 言葉のやり取りをしながらも撃ち続けてくるイズンの攻撃を避け続けるエラン。地面に立っているのとは違って,上空だと命中率が格段に落ちるのはイズンには経験が無い事も有るが,上空を素早く移動するエランに対処が出来ないからこそ撃ち続けてるとも言える。だからと言って避け続けては手詰まりになるのでエランはイクスを振って対応する。

 蛇腹のように伸びたイクスが激しく撃ち続けてくるイズンの攻撃を斬り裂くが止める事は出来ない。だからこそエランはイクスを二度三度と振ると少しずつイクスの刃がイズンに近づくが,今度は攻撃をしながらイズンが動いたのでイクスの切っ先は抵抗が無くなり地面を斬り裂いた。それでもイズンの猛攻は止まらないので,エランはイクスを伸ばしたままにイズンが放ってきている弾幕を斬り裂く。

 上空を高速で移動しながらイクスを振るうエランに,攻撃を放ったままにエランを狙い撃ちしようとしているイズン。両者の攻防は互角に見えるが,エランからしたら一進一退を繰り返しているのと同じだ。イズンの攻撃を遮ろうとしてもイクスはイズンに届く事は無く,自分はイズンの攻撃を避けるだけで動きを制限されている。未だに使い熟せていないスネークリンバの能力もこれでは半分も出せているかも怪しい。そんな状況でも持久戦に成れば好機はあるとエランは攻撃を避けながらイクスを振るい続ける,そんな時にふとイズンの攻撃が止まる。

 エランは上空からイズンの様子を見るが,疲れた様子は見えないどころか未だに平然とエランを見上げてくる限りでは,あのまま攻撃を続けても当たりはしないと判断したように見える。そんなイズンがバタフライフェザーカノンを掲げるとニードルフェザーが生成されて真上へと放たれたが,そのニードルフェザーが上空で軌道を変えるとエランに向かって飛んできた。

 足場から足場へと一気に移動するエランだが,ニードルフェザーは速度を落とす事無く旋回して再びエランに向かって突っ込んでくる。おそらくこの数が操れる限界,と思考の結果を出すのと同時にイクスを振るって一つずつニードルフェザーを叩き落としていくが,全てを叩き落とす前にイズンが動いてきた。

 再び無制御のニードルフェザーを連射してきたので,エランは後方に一回転しながら次の足場へと移るのと同時にイクスを振るってニードルフェザーを斬り裂くが,残っている制御式のニードルフェザーが三本ほど突破してエランに迫る。エランは咄嗟にイクスを横に振って自分を中心に円柱のように刃の防御壁を作ると,ニードルフェザーはそれに斬り裂かれた。全てのニードルフェザーを斬り裂いたのでエランはイクスを引くと円柱に渦巻いていたイクスの刀身が戻って行き一振りの剣へと戻る。

 制御式のニードルフェザーまでも通じないと思ったイズンは少し悔しそうな表情で唇を噛むが,そんなイズンとは対照的に凌ぎきったエランは当然の様に平然としながら上空よりイズンを見下ろしていた。そんなエランが今度はこちらの番と言わんばかりにイクスを振るい出して,再び鋼糸で繋がれたイクスの刀身がイズンに迫るが,この程度と言わんばかりにイクスを避ける。するとエランは足場を解除して一気に地面へと舞い降りた。

 上空だからこそ立体的に攻撃が出来るという利点が有る,だがイズンから見れば見通しが良いだけに対処がし易いという欠点も有る。だからこそエランは地上に降りる事を選択したのはいいが,その分だけイクスを制御をする事がしづらい事は確かでもあるがイズンも攻撃が単調に成りやすいと読んだからだ。真正面から対峙しているからこそイズンの攻撃は前からしか来ない,もちろんながら制御式のニードルフェザーを除いてだが,その制御式も最初は前から来るので対処がし易いのだ。これらの欠点がバタフライフェザーカノンを完全には使い熟せていないという証でもある。

 遠距離特化の剣であるバタフライフェザーカノンは威力,攻撃速度は非常に高いと言えるが遠距離特化である為に攻撃が敵に届くまで時間が有るという穴が存在する。その僅かな時間が有るからこそ攻撃が読み易い,特にイズンの場合は真正面にしか攻撃が出来ないのが大きな欠点と言える。その欠点が有るからこそエランはイズンの攻撃が読み易いと判断して地上戦へと切り替えた。

 加えて今のイクス,スネークリンバの力なら完全に操れなくても攻防が出来るとエランは判断した。そんなエランに対してイズンは真正面から攻撃してくる。再びニードルスピアとニードルフェザーが連射されるとエランはイクスを左右に振って刀身を切り離しながら伸びて行き,蛇行するような動きでエランが完全にイズンの攻撃を斬り落とした。そこからエランは攻撃へと移行する。

 イクスを一気に振り上げると連なっている鋼糸と刀身が一直線に天を衝く,エランはそこから一気に振り下ろすと長くなっているイクスが一気に地面に叩き付けるように地面を抉り石礫が散乱する。流石にここまで大胆な攻撃には対処が出来ないとイズンは移動して石礫を警戒しながらエランの攻撃を避ける。無事にエランの攻撃を避けきったイズンだが,その時にはエランの次なる攻撃が始まっていた。

 イクスを地面に叩き付けた直後にエランはイクスを右へと振って伸びきっているイクスを縮めながら,ある程度の勢いが付くと次は反動を利用して左にイクスを伸ばしながら振り抜いた。攻撃の動きを一度止めた事で動きが重く遅くなるが,その分だけ威力と速度が上がる。そして今までに無い横薙ぎの攻撃だからこそイズンの対応をしっかりと観察するエラン。イズンもイクスがスネークリンバに変わってから警戒している為にしっかりとイクスの動きを見ている。

 空気を斬り裂きながらイズンへと迫るイクスの刃だが,イズンはなかなか動こうとはしないのは機を見ているからだ。そんなイズンにイクスの刀身が届こうかという瞬間にイズンは一気に身を沈めて大勢を低くすると,そんなイズンの上をイクスの刃が通過する。

 スネークリンバの動きを見て最初から避けてる態勢を取っていては軌道が修正されると判断したイズンは,あえてイクスを引き付けてから避けた。確かに今のエランならイズンの動きに合わせてスネークリンバの動きを変える事が出来るが,あそこまで引き付けられたらどうしようもない事も確かだ。攻撃を引き付けてからの回避,それをやられてはエランといても次の手を打ってる暇はない。

 態勢を戻したイズンはすぐにニードルフェザーを連射してきたので,エランは横に動きながらイクスを振るってイズンの攻撃を凌ぐ。エランが動いたのは空中なら狙いやすいが地上なら狙いを定めるのが難しいと判断したからだ。それにエランには未だにフェアリシュリットが有るので一回の移動が素早く,狙った位置にまで跳べるので更にイズンはエランを狙いづらくなっている。そしてその狙いづらさがエランの思惑通りにイズンに気付かれずに追い詰めていく。

 イズンは連射を止めてすぐに剣を掲げると制御式にニードルフェザーを放ってくると,やっぱりそこまで簡単じゃない,と思いながらイクスを振るうエラン。制御式のニードルフェザーを斬り落とそうとするが落とせたのは二つだけ,残りはイクスを掻い潜ってエランに迫って来た。エランはすぐにイクスを引くと一気にイクスの刀身が戻って来るのと同時に制御式のニードルフェザーを避ける為にフェアリシュリットの跳躍力で一気に真横へと跳び退く。それでも相手が制御式なら厄介だが,イズンからの追撃が無いのがしっかりと見えたエランはイズンが制御に集中していると察する。

 エランの後で旋回して再び迫って来るニードルフェザーに対してイクスを後に振るのと同時に再び跳んで狙いを定めさせない様にするエラン。それでも制御式のニードルフェザーはしつこくエランを追い続ける。移動と反撃を繰り返してイズンに近づかないように対応するエランが半分程のニードルフェザーを斬り落とすとイズンは再び剣を掲げて制御式のニードルフェザーを新たに出してきた。

 これは厄介,そんな事を思いながらエランは別方向からもやって来るニードルフェザーにもスネークリンバで対処する。鞭のような動きをするスネークリンバはエランが振るった軌跡を追うような動きをするのでしっかりと狙いを付ければニードルフェザーを斬り落とす事が出来るのだが,イズンも制御式のニードルフェザーに集中しているので途中で軌道をイクスのスネークリンバを掻い潜りエランへと迫るが,その時には既にエランは遠くへと跳んでいた。そんなイタチごっこのような状態が続く。

 膠着状態とも呼べる状態を変化させるには強力な一撃か策略が必要となってくる。傷を治療したとは言え一度は傷付いているエランに出来る強力な一撃は限られてくるからには使い処が重要だ。イズンも下手に猛攻を繰り出せば利用される事が分かっているからには,制御式に集中している方が追い詰められると考えるのも当然だ。だからこそエランはこのような状態でも観察と思考を止めない。だからこそ見えてくるモノが有る。

 イクスを引いて一気に戻すエランは跳び上がりなら一回転して時間を稼ぐと,エランの下をニードルフェザーが通過して行く。そして地面に足を付けたエランは突くようにイクスをニードルフェザー方に向かって突き出すと,イクスの刀身が外れ鋼糸に繋がれて一直線に伸びてニードルフェザーに追い抜くと,そこからイクスを振るって殆どを一気に斬り落とす。

 速度が速くてもイズンが認識する事が出来る速度しか出せない,そう結論を出して後方から追い抜くという手に出たエラン。だがその結論は確信を突いていた,イズンがどうやって制御式を制御しているのか,それは視認しているからであり視覚に頼った制御の仕方だからこそイズンの動体視力では見えない程の速度では飛ばす事が出来ない。そんな少し考えれば分かる事に時間が掛かったのは戦いで動きながら考えるという事がそれだけ難しい事を示している。何にしても状況が変わったので状態が変化する。

 イズンは制御式を放棄,再びニードルフェザーを連射してきた。対してエランは高く跳ぶと左に一回転しながら攻撃を避けつつイクスを振るうと,イクスが一気にニードルフェザーを斬り落としていく。再び地面に舞い降りたエランはイクスの振り方を少し変えた。今までは雑然と左右に振っていたが高低差を付ける事で,イクスが対応する事が出来る範囲を広げた。更にエランはフェアリシュリットの反発跳躍を利用して,自ら動く事で更に広い範囲でイクスを振るう事にした。

 対応の変化,エランにとっては特別な事では無い,少し昔に身に着けた能力だ。戦闘中の観察と考察で導き出した結論に基づき戦い方を変えるのは,今のエランなら当然の様にしている。そんなエランとは対照的に同じ攻撃を続けるイズンは自分の攻撃に対応してくるエランに戸惑いと焦りを感じていた。

 通常の敵,つまり軍属の兵士ならこれらの攻撃で充分過ぎる程の損害を与えていたが,目の前に居る敵は自分と同じスレデラーズの使い手だからこそ,内心で自分が劣っている事を認めたくないという自尊心がある。そんなイズンが同じ攻撃を続けているうちに少しずつイクスの刃が近づいてくる。バタフライフェザーカノンは遠距離特化の剣だが広範囲型ではない,というよりもイズンはバタフライフェザーカノンをその様に使おうとはしないからこそ連射で生じる隙間にイクスが入って来るようになっていた。だが,だから言ってエランが有利に成っている訳ではない。

 イズンの攻撃に対応の幅が増えただけで攻勢に転じる隙が有る訳ではない,つまり今でも防戦一方という形に変わりがないからだ。そしてこの展開もエランが織り込んだ計算によるものだ。先程はイクスにお仕置きを宣言しながらも,その会話からエランは策を立て道筋を計算しながら戦いっている。だからエランの動きは少しずつ広くなっていく。

 フェアリシュリットの跳躍力を最大限に活用して左右へと動くエラン,そんなエランに対応する為にイズンはニードルフェザーを連射しながらもしっかりと狙ってくる。だが,その狙いが正確な為にエランからしたら読み易い攻撃と成っているのでイクスを大きく振るって的確にニードルフェザーを斬り落としていく。そこでやっとイズンは気付いた。このような攻撃を続けては意味が無いと。

 エランが最大限に動いているようにイズンも動き出し,ニードルフェザーの射出口を移動させてエランの横を狙ってくるが,その程度ならイクスのスネークリンバでしっかりと対応が出来る。それでも動き続けている限りエランも動きが制限されると察したイズンは動きながらニードルフェザーを連射する。確かに動きながらなら狙い撃ってくる方向が変わる為に今までのように簡単には対応する事が出来ないが,その程度は予測していたと今までと変わらない速度で対応するエラン。

 対応の速さ,というよりも対応してきた事にイズンは更なる工夫が必要と感じ,ただ連射するだけではなく,時折連射を区切り移動してから再開とニードルフェザーの速度に緩急を付けて翻弄しようとするが,エランはイクスを上手く動かして対応してくるどころか連射が途切れた隙を狙ってイクスを振るってくるようになった。

 一見するとイズンが下手を打ったように見えるが,イクスを振るってもその刃がイズンを捉える事は無かった。動き出したイズンに緩急を付けたニードルフェザーに対応していると,どうしてもイズンへの狙いが甘くなってくる。そこに畳み掛けるようにイズンは更に動き出す。

 一度動いて動きを止めると一気に姿勢を静めて光の槍をエランに向けて放ってきた。それだけに留まらず今まではニードルフェザーだけだったがニードルスピアまで織り込んで攻撃を彩ってきた。何時までも決着が付かない状態にイズンは痺れを切らして出来る手を全て出してきたと言えるが,多彩な攻撃が入り混じっているだけにイズンの体力を奪っていく。それに対してエランも少し動きを変える。

 フェアリシュリットで最小限の移動だけに留めて残りはイクスを大きく振るう事で対応する事にした。ニードルフェザーに比べると威力が高いニードルスピアと光の槍はスネークリンバだと一回で落とせないので何度も当てる必要が有ったが,逆に言えばそれだけで充分に対応が出来た。一度で落とせないので,その分だけイクスを当てて後手に回るように見えるが,そうとも言い切れない状態だ。だからこそエランはイクスを振るい続ける。

 蛇の様な動きでイズンの攻撃を的確に相殺するエランとイクスは少しずつだがスネークリンバの扱いが上手くなってきている。訓練での経験値と実戦での経験値では,ここまでの差が出るという証だ。だからこそエランは狙おうとするがイズンがなかなか機を見せないのでエランはもう少し防戦を続ける必要が有ると判断した。そんなエランとは逆に決着を急ぐようにイズンは攻撃と移動を続けている。

 認めたくはないのだ。スレデラーズを持っているという優位に今までの実績から生まれた自尊心がエランよりも自分が劣っている事を。その事が後先を考えずにイズンに全ての手を出させる。だが決め手に欠いている事は自覚せざる得ない,ここまで攻めているのにエランを倒せていない事がそれを示し教えている。この戦いが始まってからずっと攻勢に出ているだけに,その事が心に残り焦りへと転じる。そんなイズンを見通しているかのようにエランは防戦を続ける。

 イクスを振るってイズンの攻撃を斬り落としたエランはイズンが動いた時に生じる隙を狙ってイクスを思いっきり引いて一気に元の形に戻るとイクスに語り掛ける。

「イクス,そろそろ決める」

「あいよ,しっかりと合わせてやるから任せな」

「うん,行くよ」

「おうよ」

 会話を終えた頃には再びイズンからの攻撃が迫っていたのでイクスを振るって対応するエラン。相変わらず速さと重さがある攻撃を連射してくるイズンに対して,エランはイクスを振るう時に回転を加え始めた。左に降ったら左へと回って右に降ったら右に回るという単純な動作だが徐々にイクスの動きが速くなってきた。

 単純な遠心力と反動による反発力が連動してイクスの動きを速めていく,それに今はしなりどころか鋼糸で繋がれている刀身だからこそ動きの速さは顕著に表れ始めた。先程の様に蛇の様な動きはしないが,鞭のようにしなる事で速度と威力を出しているので先程までは一回で落とせなかったイズンの攻撃も一撃で斬り落とせるようになった。

 エランが身体を回転させる度にイクスは少し短く成ってエランの動きに合わせているから完全に最大出力と言える程の威力は出ていないが,イズンの攻撃に対応が出来る程の速さで次々と斬り落としていく。それでもエランは自分の身体を中心に回転を続けて更に速さを上げていく。そうなると徐々にイクスがイズンへと迫るが,イズンはそれに気付いているので徐々に後退しながら攻撃を続けていく。

 完全に攻勢に転じたと思われた状況だが攻防が入れ替わっただけで,戦況は動いていない様に見えるが,イズンは気付かないうちに追い込まれていた。

 突如としてイズンの周囲に有る空気が動き出して,更に奥へと誘うかのように風となって動いていた。そう,後退を続けた為にイズンはイブレ達が張っている竜巻の防壁に近づきすぎてしまった。なので,これ以上は退がれないと察するがエランの攻撃が激しいからには下手に攻撃を止める事は出来ない。それでも,この状況に活路を見出すしかないイズンは思い切って攻撃をしながら前へと突進した。

 捨て身の突撃とも言えるイズンに対してエランは動きを止めるとフェアリシュリットで一気に上空へと舞い上がる,そんなエランは追撃するようにイズンは駆けながら光の槍を束ねて上空にいるエランに向かって放ってきた。

 これで活路を突破したとイズンが思った瞬間に首に冷たい物が絡み付く感覚を覚えたイズンは足を止めて視線を下に向ける。その間にエランはイズンの後方へと降り立ちイクスを肩に担ぐような姿勢で止まる。そしてイズンが見た物は自分の首に巻き付いたイクスだった。

 刃を内側にイズンの首に絡み付いたイクスは刀身の刃をイズンの首に突き立てながら鋼糸と刀身でエランが持っている柄と繋がっている。完全に決着が付いた状態とも言えるが,エランとしては狙い通りに成っただけだ。

 地上戦に切り替えたのはイズンに上空を警戒させない為であり,先程エランが上空に跳んだ時にイズンは光の槍を束ねて放ったが狙いを付けていないのでエランの横を通り過ぎるだけだった。その間にエランはイクスを引いて元の形に戻すとイズンの後方へと跳び下りる前に振り返りながらイズンの首を狙ってイクスを振るい,イクスは刀身を伸ばしながらイズンの首へと向かっていきエランが少し引いたので,イズンの首に巻き付く様に成ったのだ。

 イクスが首に巻き付き全く動けないイズンに向かってエランは言葉を放つ。

「終わり」

 その言葉を聞いてイズンは懇願するように言葉を出してくる。

「待って,私の負けで構わないから交渉しましょう」

「それは無理」

「何言ってんのよ,私が言えばブラダイラから思う存分の恩賞が」

「悪いけど姉ちゃんよ,俺達の目的はそんなもんじゃねえんだよ」

「じゃあ,何が欲しいのよ,貴方達の欲しい物なら何でも用意するわ」

「そういうのを何て言うか分かってか,往生際が悪いって言うんだよ」

「待って」

「さよなら」

 言葉を放った後に一気にイクスを引いたエランに合わせて,イクスがイズンの首を削り取りながら元の形状へと戻って行く。そして完全にイクスが元に戻るとイズンは地面へと倒れた衝撃で首が転がり落ちる。そしてエランはイクスに付いた血を振り払うように振ると,イズンの血がエランの横へと勢い良く飛び散る。

 完全に決着が付いたのでエランは振り返って地面に倒れているイズンの元に向かうと,そのままイズンが最後まで握っていたバタフライフェザーカノンを左手に取る。これでスレデラーズを回収する事に成功したので,後はイクスとバタフライフェザーカノンを並べるとイクスが光り輝くと溶けるようにバタフライフェザーカノンに絡み付くとそのまま飲み込まれるようにバタフライフェザーカノンは消え去った。そしてイクスが元に戻ると喋り出す。

「さて,いろいろと言いたいが今は我慢するとして,これからどうするよ」

「まだ余裕が有るからブラダイラ軍に突撃する」

「いや,そうじゃなくて,この竜巻だよ」

「問題ない」

「どういう風に?」

「イクス,戻ってフレイムゴースト」

「はいはい,分かりやしたよ」

 再び白銀色に輝くイクスはその姿を変えていく。そんな最中にエランは横目で地面に伏しているイズンに目を向けるが,その瞳には何の感情も映らない。敵として倒しただけの存在に何かを思う程エランは優しくはないという事だ。そしてイクスの変化が終わるとエランは突風が渦巻く竜巻の壁に向かって行くのだった。




 さてさて,なんか長かった,ここまで来るのが長かった。と,思う程に時間が掛かりましたね。いやね,最初はここまで長くするつもりは無かったんですよ。けど,いつの間にか,というか,いつものように,いつの間にか長くなってました。う~ん,やっぱり文字数を増やした方が良いのかと思う程ですが,それだと更新に遅れが出るので,やっぱりこれ位の文字数が良いのかなと思う次第でございます。ちなみに今は1万字前後を目安に書いております。

 さてはて,ようやくスレデラーズを手に入れたエラン達ですね。けど未だにフライア軍とブラダイラ軍は戦争の真っ只中,ここからどうなっていくんでしょうね。まあ,次回はそこも決着を付けたいですね。それにしても今回は会話が殆ど無くて文章だけだったな~,とか思ってしまいました。いやね,書いた物をチェックするのと,普通の読書では読むという行為が全く違うからね。なんかもう,疲れたわ。という愚痴を言ったところでそろそろ締めましょうか。

 ではでは,ここまで読んでくださり,ありがとうございました。そして,これからもよろしくお願いします。更に感想を書いて頂けると私が大喜びします。

 以上,朝からこれだけの文字と文章をチェックするのはキツイな~,と疲れ切った葵嵐雪でした。



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