第三章 第二十二話 夜駆け
エラン達が奇策の為に眠りに付いてから日が暮れるとブラダイラ軍内で動きがあった。とは言っても特別なモノではなく,ブラダイラ軍内では定期的に夜に将達を集めて軍議を開くのは通例と成っているからだ。何故,夜に集まるかというと一つに余程の事が無い限りでは敵は攻めてこない,二つ目に夜だからこそ周辺に多くの篝火が焚かれるので侵入者を察知しやすいし,それが出来る程の兵を見張りと哨戒に出す事が出来るので軍議の内容は外に出ずらい。例え外に漏れたにせよ,それを行った人物がかなり絞れるというのが理由だ。
ブラダイラ軍ではいつも通りに行われる軍議なのだが,今回ばかりは勝手が違うようで軍議の場ではたった一人の者が喋り続けている。話す内容も議論以前の報告に近い形で進んでいた。
「以上が死傷者数です。敵軍は東の森で上に下にと罠を張り丈が高い木の上に陣取り矢を射かけてきますが下からでは視界が悪く反撃すら出来ない有様です,トジモ将軍が少数精鋭を集めて一度出陣しましたが,結果として数人の負傷者を出して引き返す程ですので東の森にはかなりの仕掛けが有る思われます」
「次は私から少数による威力偵察ですが,森を避けるように本陣中央付近から敵陣へと向かいましたが反応はありませんでした。テリング将軍の申し付け通りに敵陣近くの森まで向かいましたが敵軍からの攻撃は無く,かなり森へと近づいても同じでした。こちらは森へと入っていないので全員が無傷で帰還できましたが,相手の思惑は未だに分からないのが現状です」
「最後に私から,ここまで敵軍は情報を漏らさず攻撃をしてこない事から不動の策を用いているのかもしれません。不動の策とは自ら動く事なく備え,敵が攻め込んできたところを一気に迎撃で殲滅する策の事です。憶測ですが,敵軍には余程の物資をロミアド山地に持ち込んでいると思われます。ですので下手に動くのは下策と言いたいのですが兵達には何時までも動かない我らに不満を漏らす声が出始めています。なので,このままでは兵達の士気が落ちる可能性があります。私からは以上です」
「……」
他に報告するべき事は有るかと黙り続けるテリング,だがその場に参加している将達は全ての報告が終わったのでテリングの言葉を待っている状態だ。そして少しの静寂が過ぎ去るとテリングが話し始める。
「まず士気を落とさない為にこちらからも動き出す。先にこの地を敵軍に取られたからには東の森は我らにとっては何の益もない,よって数日以内に風を見て焼き払うモノとする。その為に今日から油の搬送をしている事を全将兵に伝えよ,それを聞けば士気を落とさず,敵軍に多少の打撃で動きを見る事が出来るだろう。そこに多少の情報が有るのは確かだからこそ,その後は得た情報を元に作戦を展開する。それとトジモ」
「はっ,火矢を大量に用意しておきます」
「ふっ,それで良い。他の将,特に右翼の将達はいつでも火攻めが出来るように準備を怠るな。それと不満の声が出ているのなら今すぐにでもこの情報をすぐに全将兵に伝えよ,中には敵の入り込んでいるやもしれぬが構わん。自分達が火炙りされる姿を想像し怯えさせる事こそが重要だ,特に右翼の将兵達にはこれで不満の声は消えるだろう。まずは一石,こちらから打つ事を全軍に伝えれば士気は維持できるうえ今となっては邪魔な森まで消えるのだから士気は上がるかもしれん。これが儂の考えだ,意見が有る者は述べよ」
異論が出る隙もない,それどころか軍議に参加している者達は口を揃えてテリングを賞賛しているのは,今まで動いていないと思っていたテリングがここまで考え動いていた事に驚き行動が予想も出来なかった程の上策だと思えたこそだ。その中でトジモだけが当たり前とばかりに静かに頷いて自分が命じられた事に闘志を燃やすのだった。
何かが近付いてくる気配がした,それは段々と近付き覗きこもうとした瞬間,エランの右手が反射的に動いてそれを殴った。その反動でエランの意識が段々とはっきりとしていくと聞き覚えの有る声が聞こえる。
「いた~いよ,エラン~」
「ぎゃはははっ! 顔のド真ん中だったなっ!」
レルーンとイクスの声が聞こえ完全に目が覚めたエランが身体を起こし始めると,隣で寝ていたハトリもイクスの声で目覚めたようでエランと同様に動き始めるとエランはしっかりと座ってから口を開く。
「もう時間?」
「まだ大丈夫だけど~,そろそろ準備をする時間かな~」
「分かった」
「待つですよ」
立ち上がろうとしたエランをハトリは腕を伸ばし,肩を押さえるとエランは何かと思いながらも座り直したらハトリは自分の荷物に向かって歩き出して,荷物の中から何かを二つ取り出した物の一つをレルーンに向かって投げた。それを受け止めたレルーンはそれを見ながら首を傾げるとハトリが,簡単に説明する。
「エランはこういう時に髪を直さずに行くですよ,だから手伝うですよ」
「喜んでっ!」
ハトリがレルーンに投げ渡したのは櫛だ。それと先程の言葉を聞けば何をすれば良いのか分かる為にレルーンは喜び……というよりも歓喜しながらエランの後に回るとハトリの隣に座る。エランとしては大丈夫と言いたいが,こういう時のハトリは決して退かないので仕方なく,二人の手が髪を梳かしているのを感じながら座り続ける。
「はぁ~,やっぱりエランの髪は綺麗だね~」
「まったくですよ。それなのに大事にしないのはもったいないですよ」
「うんうん,分かる分かる~」
「大事にしてる……つもり」
「つもりで時々忘れるですよ」
「あははっ,それは駄目だよね~」
「分かった,後は自分でやるから貸して」
「駄目ですよ」
「そうそう,このままじっとしてて」
「っ……ちょっと恥ずかしい」
珍しくエランの顔に少しだけ恥じらいが表れ,頬が少し赤らむ。まあ,それも仕方ない,なにしろ天幕内で全ての視線がエランに集まっているのだから。そして小声で本当に綺麗とか私もやってみたいとか凄く艶があって滑らかそうとか,あちこちでエランの髪に関する事が囁かれているのだからエランが照れるのも無理はない。
エランの髪が整ったところでハトリがレルーンが持っている櫛を強制回収するとやっと終わったとばかりにエランは立ち上がって鎧を着け,最後に今まで黙っていたイクスを背負ったらやっと人心地ついた。
ハトリも準備は終わっており,いつの間にか普段の装いに髪までしっかりと束ねている所はハトリらしいと言える。そしてレルーンはというと櫛を取り上げられた時にあっさりと諦めて夕食を取って来るとだけ,言葉を残して既に目に見える所には居なかったのでエランは近くの団員に時間を聞くと,深夜の少し前と言った時間だと教えてもらった。
意外とよく寝ていた事に気付くが,それ以上に今の状態が作戦に影響が出ない事をしっかりと確認する事が出来た。なにしろ今夜はもう眠る事が許されないうえ,作戦が始まればエランはイクスと共に突っ込むのだから今の状態をしっかりと確認するのは重要な事だ。そんなエランとは正反対にイクスがやっととばかりに喋り出す。
「今夜は夜通しだからな,しっかりと備えておけよ」
「イクスがまともな事を言い出したですよ」
「っはん,派手に俺様達が暴れ回るから当然だろ」
「せいぜい加減を間違えてエランに迷惑を掛けないようにするですよ」
「ってか,そういうお前も一緒に行くんだろ,足手纏いになるなよ」
「はいはい,寝起きだから今は駄剣を吠えさせておくですよ」
「喧嘩を売ってんなら喜んで買ってやらあ」
勃発する口喧嘩,まあこれがイクスとハトリらしいと言える。口喧嘩が始まって少し時が過ぎるとレルーンが夕食を手に戻って来たので口喧嘩は収縮すると,エランとハトリは夕食をそれぞれ取るのと同時にカセンネが天幕の中に戻って来て周囲の状況を見ながら言葉を発する。
「どうやら準備は大丈夫そうだね,後は皆しっかり食べてこの後に備えな」
『はいっ!』
カセンネが立てた作戦は戦いに大きな転換点を打つには団員なら全員が知っている事だからこそ,皆が揃って返事をして気概を示すとカセンネは満足げに笑みを浮かべるとエラン達が居る所まで歩を進め,いつもの定位置に腰を下ろすとレルーンから夕食を受け取った。そしてカセンネを待っていたかのようにエランとハトリが言う。
「いただきます」
「いただきますですよ」
エラン達が夕食を食べ始めるとカセンネは確かめるようにエランに向かって言葉を出す。
「エラン達も頼りにしてるよ」
「……うん,分かってる」
「おうっ! 俺様達に任せときな」
イクスまで,というよりは食事が特別なイクスにとってはエラン達が食事をしている時は暇を持て余している。だからだろう,カセンネ達が食事をしていても勝手に喋り出すのは。
「それにしても団長さんよ,随分と俺様好みの作戦を進言したじゃねえか」
「別にイクスに合わせた訳じゃないよ,敵さんはかの名将テリングだからね。だからふんだんにあると思ったから毎日見張っていたって訳だよ」
「毎日とは随分と勤勉じゃねえか」
「そうでもないよ,なにしろ集める場所は一つしかないからね」
「んっ,またそりゃどうしてだ?」
「……南東の森」
イクスの問い掛けに丁度口に中が空になったエランが答えるとカセンネが頷いたのを見てイクスは納得したように再び喋り出す。
「なるほどな。あちらさんにとっては邪魔でしかねえって事か」
「そういう事ですよ,こちらが南東の森を取っているからには無理に攻める必要はないですよ。それにロミアド山地から離れているから風向きは一定ではないですよ,あちらとしては火攻めをするのが一番効果的だと判断してもおかしくはないですよ」
「詳細な説明をご苦労さん。それにしても,それぐらいならイブレも考えていてもおかしくはねえのに,今回ばかりは何で何もしねえだ?」
「……確信が無いから失敗を考慮した結果。この作戦には全軍を動かす必要がある,だから失敗は出来ないし慎重にならざるえない。それにイブレも同じ事を考えていたけどカセンネの方が早く作戦立案をしたから,そのまま使っただけ」
「つまり団長様は上手くイブレを出し抜いたって事か。ぎゃはははっ,あいつの顔が見てみてえものだな」
「見たところで笑って誤魔化すだけですよ,そんな事よりも最初は事を静かに運ばないと行けないからそろそろ黙るですよ」
「それが分かってるから今喋ってんじゃねえか」
「なら黙るですよ。ごちそうさまですよ」
「ごちそうさま」
「ごちそうさん」
「美味しかったよ~」
揃って夕食を食べ終えた事にイクスも反論の余地が無いと気づき,仕方なく黙り込むと夕食の食器を集めて出て行くレルーンを追うようにエランも天幕から出て行こうとしたのでハトリもそれに続く。
天幕の外はすっかり暗くなっており周囲の篝火のおかげでエランは本陣に作られた門へと向かい,開け放っている門から先へと辿り着くと先の森を観察する。横に置かれている篝火のおかげで少しだけ見えるが,深い森だけあって殆ど先が見えない。
「流石に殆ど見えねえな,エラン足下に気を付けろよ」
「うん,分かってる」
「そういうイクスこそ敵に悟られないように黙っているですよ」
「わ~ってるよ」
「それにしてもこんな暗い中をどうやって進むつもりですよ?」
「あそこ」
疑問に答えるかのようにエランがある一点を指差すとハトリはその場所に目をこらしてみると,微かながらに小さな点が有る事に気が付く。それは小さな光を放つ照明器具でブラダイラ軍には見えないように六面の内,五面を鏡で作られている照明灯だ。とはいえ元の光源が少ない為に良く見ないと分からない程の光しか放ってはいない。
ハトリは他にも光が有る場所を探すが一つしか見付からないのは,道標となる光がこちらを向いていないか,かなり離れた所にあり光がここまで届かないとハトリは結論づける。まあ,寝る前に作戦の詳細を聞いたからこそ詳しい事はカセンネに任せた方が早いという考えも有ったから思考を放棄したとも言える。
エラン達がこれから行く闇を前に立っていると次々と見覚えがある面々,ヒャルムリル傭兵団が集まってくる。だが灯りを持っているのは数えらるだけしか居ないのはブラダイラ軍に悟られない為だ。続々と団員達が集まってくるとやっとレルーンがやって来て団員達をまとめだした。そんな光景を離れてみているエラン達はレルーンが副団長だという事を再認識する。
徐々に列を成していくヒャルムリル傭兵団,隊列が完成する頃にはカセンネも手に照明灯を持って合流すると間もなく隊列が完成する。そしてカセンネが団員達に向かって檄を飛ばす。
「さぁて,ここからはあたし達の独壇場だよっ! でっかい手柄だから皆気を引き締めなっ! こちらが配置につく前に見付かったら終わりという事をしっかり頭に叩き込み夜の森を進むからねっ! そして夜明けと共に奇襲で一気に敵陣を燃やし尽くすつもりでやりなっ! 分かったかいっ!」
『はいっ!』
「よしっ! なら出発するよっ!」
『はいっ!』
カセンネらしい檄が飛んだ後にレルーンが楽しげな足取りでエランの元にやって来ると一緒にカセンネと合流して歩き出した。一番先を行くのはカセンネ自身という所もらしいと言える。そんなカセンネに付き従うようにエラン達とレルーンが進み,その後を団員達が列を成して進軍を開始する。
出立してからしばらくは道沿いに山を下りるとすぐに左に折れて森の中へと足を踏み込む,これだけの暗さなので目を慣らさないと暗がりで混乱が起きても不思議ではない事を考慮したうえでの進軍経路だ。それはエランも同じであり,やっと目が夜の森に慣れてきた所で森の中に入ったからイブレも作戦に加わっている事を確信する。なにしろここまでの気遣いが出来るのはイブレしかエランには思い付かないからだ。
カセンネも考えていただろうが夜の暗闇すら計算した進軍経路を導き出すだけの実力は無く,イブレを頼るのは必然というよりもイブレの方から提案してきたと考えた方が筋が通るとエランが考えているとカセンネが口を開いてきた。
「ここからは少しずつ行くよ,ついでだから作戦の詳細を確認しとくかい」
「必要ないと思うですよ,けどエランの背中に居るのは必要かもしれないですよ」
「このガキが,こんな時でも口が減らねえな」
流石に声量を落としてイクスも反論するとやかましくなる前にカセンネが作戦の詳細を勝手に話し出した。
「あたし達はかなり大回りしてブラダイラ軍の横っ腹,奴らが火攻めに使おうとしている油が集められている場所へと向かってるのさ。大回りになるのはフレイア軍が多くの罠を南東の森に仕掛けたからだよ」
「味方が作った罠にハマったら笑えないですよ」
「その通りだよ,そうならないように木の上にはフライア兵の斥候が罠の外側に沿って灯りをこちらに向けている。あたし達はそれを頼りに進むという訳さね」
「そうは言っても団長~,一つしか見えないよ~」
「ブラダイラ軍に悟られる危険性は少ない方が良いからね,一つの光に辿り着くと次の光が見えるようにかなりの距離を取って配置しているからだよ。まあ,そこはイブレ殿が手配してくれたからね。問題は無いさね」
「むしろそれぐらいはやって当然ですよ」
「ブラダイラ軍とはかなり距離を取っての進軍だけど,相手もそう甘い相手じゃないからね」
「ブラダイラ軍,軍務将相テリング」
「そうさね,手堅い戦をする奴は守りに強い。まあ,こいつはあたしの経験から勝手に言ってくる事だがね,テリングを相手にするのなら慎重に慎重を重ねた方が良いという訳だよ」
「だから俺様達は遠回りで敵の横っ腹に突っ込むって訳だ」
「敵の火薬庫ならぬ油庫の場所はしっかりと把握済みだからね,だからエラン達が真っ先に突っ込んでもらうよ」
「イクスの力を使って油壺を破壊しながら火を付けるなんてよく考えたですよ,そして私も周辺の天幕を切り裂いて油壺を見つけたら後続が次々と火を付けるですよ。まさか火計を企んでいた自分達が火計を仕掛けられるとは思ってもいないですよ」
「ハトリの言う通りだけど火計だけだと足りないというのがイブレ殿の意見でね。肝心なのは火計を行う時,だから朝方で敵が混乱しやすい時を狙って一気に火を付けて広げるのさね」
「寝ぼけた頭で正確な判断は出来ないですからね~。それはそうと団長~,何でまたこんな話を始めたんですか~?」
「今はまだ暇だからだよ」
『……』
予想外が行き過ぎたカセンネの返答に思わず言葉を失う,とは言ってもエランは最初から何かについて喋る気は無かったのでいつも通りに無言を貫いているだけだ。とはいえ,森に入ったばかりでブラダイラ軍とは程遠いから今は気にしなくて良いという理由でこのような話を始めたカセンネに揃って呆れたので,そこからは無言で歩き続ける。
一つ目の光の下まで進軍すると確かに二つ目の光が見えたのでカセンネはしっかりと行くべき方向を確認してから後続にも指示を出した。未だにブラダイラ軍とは距離がある為か,しっかりと草木が切り払われて歩きやすい道が出来ているので歩きやすい。そんな道を進むエラン達は静かに歩みを進める。
静かにゆっくりと確実に進軍するエラン達とヒャルムリル傭兵団。その歩みは順調で特に問題は無かったが,月がかなり沈んだ頃になると歩みを止める事になった。道標となる光が途切れたからだ。正確に言うのならここからは道標となる兵を置けない程にブラダイラ軍に接近している事を示しているので,カセンネは一旦進軍を止めると照明灯を後続に向かって降るとあちらも振り替えしてきたのを確認してから再び前を照明灯で照らすと今までのように道のようなモノは無く,低木と草が生い茂っている暗き森が広がっているのでカセンネが近くに居る者達に告げるように小声で話し出す。
「さて,ここからがいよいよ本番だよ。ここからは道標も道も無いからね,なるべく音を立てずに森の中を進むから姿勢を低くしな。イブレ殿が言うにはここから真っ直ぐ行けば気に目印を付けてくれたみたいだからね,まずはそこを目指すよ」
言い終えた後に照明灯で足下付近を光で照らし出すと森の中へと入っていくカセンネ,エラン達とレルーンに団員達も後に続く。お世辞にも獣道も言えない所を木を避け,草木を掻き分け踏みならしながら進軍を続ける。そうなると当然の様に進軍速度が落ちるがイブレの事だから,それも計算したうえでの進軍経路だと分かっているからエランからは文句が出ない。それはイクスとハトリの同じ考えだから文句など出ようもない。
レルーンはカセンネの事を信頼しているのだろう。しっかりとカセンネが切り拓いた草木を踏みならしながら歩き続けて後続の為の道を作っている。だからか,エラン達の後に居る団員達も音に気を付けながら少し横に広がり,レルーンと同じように草木を踏みならし後続の為に道を作り出す。
進めば進む程に草木は生い茂り邪魔に成っていく,だからとうとうエランも右手を右上に挙げてから小声でイクスに告げる。
「イクス」
「はいよ」
イクスもそろそろだと思っていたようで同じく小声で答えると鞘からゆっくりと刀身を露わにする。いつものように勢い良く出ないのはそれだけ音が鳴り響く事を考慮したからだ。そしてエランはイクスを握ると刀身を下にして草木で覆い隠すとイクスに告げる。
「イクス,ツインプレロブレイド」
「行くぜ」
イクスの刀身が光り出すとエランは左膝を地面に付けてイクスの切っ先を握るように持ち,イクスが二つに別れて二本の短剣へと姿を変える。そして光が消えるとエランは早速とばかりにイクスを振るうとカセンネの左後ろに有った草木が音も無く,斬り刻まれて地面へと落ちる。
「お~,さっすが~」
小声で賞賛するレルーンに誰もが反応する事は無く,唯々黙って歩みを進めるのと同時にエランが斬り刻んだ草木も踏みならし後続への道とする。それだけ全員がブラダイラ軍を警戒しているという証だ。
全員が陰のように息を潜め辛うじて見える光に従いながら進軍を続ける。先頭を行くカセンネはいつの間にか取り出していた方位磁石を見ながら,周囲を木々に気を付けて進もうとするとエランが先に低木と草を斬り裂くので随分と楽に進めるようになった。そしてカセンネは最初の目的地に辿り着いたように歩みを止めると,目の前にある大木を見上げると大きな矢印が刻まれていた。そしてイクスから小声で話し始める。
「随分と分かり易い目印だな,敵に気付かれずにこれを付けるとはご苦労なこった」
「けどイクス~,おかげで目的地が分かり易いよ~」
「分かり易いのは良いですよ,けどそれだけ敵に近づく事を忘れないで欲しいですよ」
「ハトリの言う通りだよ,ここからは更に慎重に行くよ。時間もそろそろ厳しいけど焦って急ぐんじゃないよ」
「森の向こう側が白んできてる」
エランはそう言って矢印が指している右方向に自分も指差すと,森の奥から微かだが白い光が差し込んでいるのを示した。カセンネもそれに気づいたようで照明灯の灯りを消すと後続にも灯りを消すように指示を出してから矢印の方向へと進み出した。
再び進軍を再開したがすぐに停止する事に成る,何故ならブラダイラ軍の本陣が見えたからだ。空が白んで見やすくなった事も有り,かなりの距離を開けて全員に腰を落として場に身を潜める。それからカセンネが口を開く。
「さて,作戦通りなら目の前の天幕には油壺が大量に有るはずだよ」
「作戦通りならですよ」
「まあそこはフライア軍の計測が問題と訴えれば良いだけさね」
「まあ~,少しぐらいの違いが出ても近くに油壺があるのは確かだからね~,私達はそれを見つけて一気に火を付けていく事だよ」
「俺様達は大丈夫だけど,お前らは自分が付けた火に巻き込まれないようにしろよな」
「そこまで阿呆じゃないよ~,もちろん他の皆もね。それにブラダイラ軍の旗を見れば風がこの森にぶつかって東から西に流れてる事が分かるよ~」
「レルーンにしては珍しくまともですよ」
「砲弾でも降るんじゃねえか」
「イクスもハトリも酷いよ~」
「じゃれるのはそこまでにしときな,後続が整い次第一気に仕掛けるからね。準備が必要なら今のうちにしときな」
「分かった,イクス,フレイムゴースト」
「おうよ」
やっと暴れられる時が迫っている事を感じているイクスの刀身が光り出すと再び一本の剣と成る。それ以外の変化が見られないのがフレイムゴーストの特徴とも言えるだろう。ハトリも改めて髪を縛り直して戦いの時に備える。その間にも続々とヒャルムリル傭兵団が集まってきて次々と隊列を成していく。その間にエランはブラダイラ軍の本陣を窺う。
見張りと呼べる者は居ない,下手に守るとここが重要だと教えているのと同じとテリングは考えたようだ。それに本陣の奥側に有るからこそ,そこまで見張りが必要ではないと定石な考え方をするものテリングらしい。だからこそカセンネはそこに目を付けて,この作戦を思い付いたとも言える。何にしても奇襲が少し楽に成ったのは確かだ。
徐々に集まってくるヒャルムリル傭兵団も完全に戦闘態勢と成っている。カセンネの号令で一気に動ける程の士気をエランは背中で感じていた。森を抜けた天幕の向こうにある空は白んでおり,徐々に青色に染まりつつあった。
夜明けが近い,誰もがそう思いながらカセンネからの合図を待つ,森の奥で息を潜めながら夜が明けるのを待ちながら。エランもその中に居る一人としてイクスをしっかりと握り締めており,そんな隣ではハトリは既に戦場に居る顔に成っていた。そしてエランはというといつも通りに表情からは何も読み取れない顔をしている,またこれもいつも通りという事だろう。
そして……夜が明けた。
さてさて,この時期は花粉の襲来という厄介な事このうえない状態なのに,そこにモンハンという沼にハマったからには一ヶ月ぐらいは空きますよね~。という言い訳,という事でご容赦くださいな。まあ,モンハンも次のアプデまで時間が有るから書きましたけどね。その結果がこれという訳ですよ。
さてはて,まったく関係ありませんがモンハンをPSで買った物だからPSリモートプレイでやろうと思ったら……何故かネットワーク確認中に落ちるという意味不明な状態。ってか,なんでこんな事になってんねんっ!! と叫びたくなる状況なのですよ。ちなみに自分で調べてやれるだけの事はやりましたが未だに出来ない。ってか,最初の一回目は普通に出来たんだけどね。何か知らんけど翌日には出来なくなってたんですよ,これが。もうどないせいって訳ですよ。PSのアプデで使えるように成るのを今はまだまだ待つばかりですかね。と愚痴る場所が無いのでここで愚痴ったところでそろそろ締めますか。
ではでは,ここまで読んでくださりありがとうございました。そしてこれからも気長によろしくお願いします。
以上,何で一回目が出来て二回目が出来ないんだっ!! と心の底から思っている葵嵐雪でした。




