第三章 第六話
戦いの開始が宣言されると巨漢兵は金棒を振り上げながらハトリに向かって一気に駆け出して距離を詰める。それでもハトリは一歩も動かないどころか全く動かないで迫って来るのを待っているように見える。そして巨漢兵が充分に距離を詰めた途端に金棒を振り下ろす為に走りながら真上に構える。
駆けた勢いのままに金棒を一気にハトリに向かって振り下ろす巨漢兵に対して，ハトリは左手を自分に振り降ろされる金棒に向ける。そして次の瞬間には巨漢兵の金棒はハトリの左側に有る地面を砕くように振り下ろされ，ハトリの左手からは少し大きなマジックシールドが斜めに展開されていた。
ハトリはマジックシールドで受け止めるのではなく，受け流す事にしたのが見て取れる。つまり巨漢兵の金棒がハトリのマジックシールドに当たった途端に真下に振り下ろされた力を横にずらさて，後はマジックシールドに沿って振り下ろされただけだ。そしてハトリは反撃とばかりに右手に手の平よりも少し大きいマジックシールドを二重に展開すると口を開く。
「これだから体格だけで全てを決めるのは困るですよ，少しは技量というモノを知って欲しいですよ」
言い終わった瞬間にハトリは右手を一気に前方，斜め上に向かって突き出したら再び口を開く。
「終わりですよ」
次の瞬間には巨漢兵は大きな衝撃を受けたように後ろへと弾き飛ばされ，そのまま地面に向かって仰向けのまま落ちて行く。地面に叩き付けられた巨漢兵は叩き付けられた衝撃で一度だけ跳ねた後は全く動かない，そのうえ胸と顎に何かが当たった後が残っていた。
ハトリの動きはそんなに速くはないので見ているフライア兵達にも何が起こったのかが分かった。ハトリが右手を突き出した途端に一つ目のマジックシールドが放たれるように飛び出して巨漢兵の鳩尾に当たり。一つ目が放たれた途端に二つ目が放たれて巨漢兵の顎を下から打ち上げるようにマジックシールドを当てたのだ。
弩のように飛び出して巨漢兵に当たると消えたマジックシールドの衝撃は，弩とは比べものにならない程の衝撃だった事は地面へと倒れている巨漢兵が物語っている。倒れている巨漢兵を見ても勝敗は明らかで，試合だからこそ巨漢兵に意識が有るのかを遠目で確かめるスノラト，意識を失っている事が確認出来ると時間の無駄と判断したのでスノラトは判定の声を挙げる。
「それまでっ！ 勝者ハトリっ！」
「当然ですよ」
勝利が決まると大いに勝ち誇った態度を取るハトリに，周囲を取り巻いているフライア兵達からは驚きの声が上がっていた。それを聞いたハトリは上機嫌に成りエランの元へと駆け寄って合流する。こうなる事が分かっていたエランは特に何も言わないのでハトリから話し出す。
「分かっていたけど勝ちですよ」
「うん，見てた」
「当然の結果だな」
ハトリの勝利に喜びもしないエラン達。まあ，エラン達から言わせれば戦う前から結果が分かっていたから喜ぶ必要すら感じない，と言った方が正確だ。それとは逆にエランはスノラトが自分達の名前をしっかりと覚えた事に少しだけ興味を抱いた。
白銀妖精との異名を持っているエランの名前と流浪の大軍師と呼ばれているイブレの名前なら覚えるだろうけど，エランの連れとされているハトリの名前までしっかりと覚えていた事にエランはスノラトという人物に対し少しは知りたいと思った。なにしろフライア軍から見ればエラン達は名が知れた傭兵に過ぎないのだが，そんな人物の名前を一度だけ名乗っただけで覚えていたのだから，そこにエランの興味が向いただけだ。
エランがそんな感じでスノラトを見ていると，スノラトはすぐに巨漢兵を訓練場から連れ出す事を命じており，スノラトから命令を受けたフライア兵の中から何人かが出て数人で巨漢兵を担ぐとそのまま訓練場から出て行った。一部始終を見ていたスノラトがエランの方へ視線を向けると声を掛ける。
「次，出てもらおうか」
「僕の番ですね」
指名されてイブレがいつものように杖を手にして前に進み出る。イブレが進み出た事でスノラトは周囲のフライア兵に向かって声を挙げる。
「次っ！ 誰か試合に出たい者は出ろっ！」
スノラトの声を聞いて一人の魔法兵が進み出るとスノラトに声を掛ける。
「私が出てもよろしいでしょうか？」
「構わん，戦いたいのなら存分に戦え」
「承知致しました」
律儀な性格をしているのだろう，わざわざスノラトに確認してからイブレと対峙する魔法兵。見た目はイブレと同じような体格だが，イブレと同じように杖を持っているのは魔法を使う者なら常識だ。剣士が剣を使うように，魔法兵も杖を使う。そうする事で魔法の威力を上げたり，素早く魔法を発動させる事が出来るからだ。つまり自分の力をより強く発揮する為の道具という点では剣も杖も同様だ。そんな魔法兵が少しだけ微笑みながらイブレに話し掛ける。
「イブレーシン＝シャルシャ殿，貴方は幾つもの異名を持っていますね。その中で大魔道士という異名を持っている事も私は知っているので胸を借りるつもりで挑ませてもらいます」
「随分と仰々しい異名を出してきましたね。私自身はとても大魔道士などとは思っていませんが，そんな事を言われたら尚の事負ける訳にはいきませんね」
「それでこそ挑み甲斐があるというモノです，それではよろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします」
お互いに一礼する所などは二人の性格が似ているようにも見えるが，内心では全くの真逆である事をイクスとハトリは知っている。そして準備が終わったかのように魔法兵がスノラトを見て頷くとスノラトが声を挙げる。
「両者構えっ！」
戦闘準備の声を聞いて魔法兵は右手に持っている杖を前に出して，左手では印と呼ばれる略式魔法を組み，口からは詠唱をしている。そんな魔法兵とは正反対にイブレは特に何もしていない，と見えるだけだ。そして魔法兵の詠唱が終わるまで待つのは贔屓だと感じだスノラトが再び声を挙げる。
「始めっ！」
戦いの開始が宣言されると魔法兵はすぐに詠唱を止めて前に出した杖に貯めた魔力を魔法という形にして，形成された魔法を放つ為に名を呼ぶ。
「フレイムスピアシュートっ！」
杖の先から一気に魔力が流れ出ると一瞬で魔法兵の周囲に炎の槍が三つ形成されると矢のようにイブレに向かって放たれた。三本の槍と化した炎がイブレに迫るが，イブレはいつもの微笑みを浮かべながら静かに口を開く。
「アップラフトウォール」
イブレが魔法の名を出した瞬間に空気が一気に流れ出す，イブレの前方から吹き上げるように空気が動く。上昇気流が壁のように成ってイブレの前に形成されると魔法兵から放たれた炎の槍は三つとも気流の壁によって防がれてしまった。なので魔法兵は次の魔法を発動させる為に詠唱に入るが，その前にイブレがまた静かに口を開く。
「ダウンバーストウエイト」
イブレによって上空に貯まっていた空気が一気に魔法兵に向かって落ちる。上昇気流を使った防御と下降気流を使った攻撃の二段構えに成っている魔法に魔法兵は立っている事が出来ずに地面へと伏せる。それでも諦めずに何とか立ち上がりながら魔法の詠唱を続けようとする魔法兵を見てイブレが感心したように声を出す。
「ここまで受けて動けるなんて大したものですよ。けど，殺してはいけない決まりですからね，もう少し強めますね」
言ってから微笑むイブレを見た魔法兵は格どころか次元が違う事を思い知り，天から落ちてきた岩に潰されるよな感覚が走るのと同時に意識を失った。イブレからも魔法兵の意識が落ちた事が確認する事が出来たので，魔法を止めると荒れ狂うように吹き荒んでいた風が止まったら周囲は静まりスノラトも身体で受け止めていた風が止まるのを感じると倒れている魔法兵に駆け寄る。
手首から脈拍がある事と微かに聞こえる呼吸音で魔法兵が生きている事をしっかりと確認したスノラトは驚きの表情をしている。イブレによって操られた空気が風と成り，荒れ狂うような勢いで魔法兵を踏み潰したとも言っても良い程だが，見た目以上に負傷をしていない魔法兵にイブレの力量を見せ付けらた事をスノラトは感じていた。
その様に感じただけでもスノラトが魔法を使えない事が分かる，魔法を使う者ならイブレが使った魔法がどれだけ凄いのか見ただけで分かるからだ。そんなスノラトでも勝敗が決したと判断したので自分の役目を果たす為に再び中央に戻ると判定の結果を述べる。
「勝者イブレーシンっ！ 誰か倒れている者を天幕へ運んでやれ，身体への負傷は殆ど無いから強い衝撃を受けて意識を失っているだけだ」
魔法兵の容態をもしっかりと告げて倒れている魔法兵を数人のフライア兵が運んで行くと，スノラトは側に居た側近に顔を向けて頷いたので側近が頷くのを確認するとスノラトは再び声を挙げる。
「次で最後だ，エランは前に出ろ」
言った後にスノラトは中央から歩き出して，入れ替わるように先程の側近がスノラトが居た位置に立つとエランと対峙する位置に立つスノラトを見てエランが口を開く。
「これはどういう事？」
「何，どうという事は無い。噂にも成っている白銀妖精と呼ばれているエランとは私が直に剣を交えたいだけだ」
「そう，分かった」
「いやいや，エランよ，本気で将軍様とやり合う訳にはいかねえだろ」
「うん，だからこのままの本気で勝つ」
「あぁ，そういう事かよ」
「話は決まったようだな。判定役はそこの兵がやってくれるから全力を見せてもらおうか」
「それは無理」
「誤解が無いように言い直すとだな，全力を出すと絶対に殺しちまうから全力は出せないという意味だぞ」
「なるほどな，どうやら全てが噂とは言わない訳か」
イクスの説明を受けて納得するスノラトがそんな事を言ってきたのでエランは少しの間だけ首を傾げる事に成った。そんなエランを放っておいてスノラトは早く始めようと言わんばかりに言葉を出してくる。
「では始めて構わないな？」
「……分かった」
「両者構えっ！」
少しの間を開けてエランが考える事を捨てて承諾する言葉を出すと判定役の兵が戦闘準備をするように言い出したので，スノラトは腰に差していたブロードソードを抜くとエランは右手を斜め上に向けると鞘からイクスが飛び出してエランはイクスを握り締める。エランはそのままイクスを右下に構え，スノラトはブロードソードを真正面に構えて両者の準備が完了すると判定役の兵が口を開く。
「始めっ！」
戦闘開始の声が轟くが相手は白銀妖精と呼ばれているエランだけあって慎重になっているスノラトから仕掛けて来る事は無かった。エランも最初はスノラトの出方を見ようとしていただけに両者とも動かなかったが，動かないならとエランはイクスを右後ろにするように駆け出して距離を詰める。
遅い，とスノラトが思う程にエランの動きが見て取れる程の速度で迫るエラン，通常なら身の丈に合わないイクスを使っているのだから当然と言えば当然だ。それでもイクスの間合いに入るとスノラトからは届かない距離でイクスを一気に振り上げるが，スノラトのブロードソードとイクスが交わり音高い金属音が鳴るとスノラトは反撃に出る事が出来なかった。
イクスを振り抜いた勢いを利用してエランは既に宙へと舞い上がっていたからだ。そこから更に身体だけを先に一回転させて，身体をねじるように力を貯めると今度は真下に居るスノラトに向かってねじった身体を戻して貯めた力を解き放つかのようにイクスを振り下ろす。
再びイクスとブロードソードが金属音を轟かせるが，エランの攻撃を受け止めたスノラトは攻撃の威力が上がっている事に気付く。だが遅い，地面へと降りたエランは下に振り下ろした勢いを殺さないように左に向けると，そのまま左に一回転するのと同時にイクスを振り出す。しかも最初の攻撃とは比べモノに成らない程の速さでだ。
三度イクスを受け止めようとするスノラトはブロードソードをイクスが来る左側に向けると，何とか間に合い反撃にも出られる態勢を取るスノラト。そしてイクスとブロードソードがぶつかり合う。
倒れないが右に蹌踉けるスノラトの両手は痺れており，握っていたブロードソードは既に握ってはいなかった。そんなスノラトにトドメとばかりにもう一回転してイクスを振るうエランはスノラトの首元でイクスを止めた。時を同じくスノラトが握っていたブロードソードが地面へと突き刺さった。
剣を抜いたエラン達なら誰の目にも見えなかっただろうが，剣を抜いていないエランの動きは周囲を取り巻いているフライア兵達にもしっかりと見えた。三度目のぶつかり合いでイクスを受け止めたスノラトだが，威力が強すぎてブロードソードが弾かれてしまった。
たった三回の攻撃でエランはスノラトからブロードソードを奪い，勝利も得る事が出来た。その事に周囲のフライア兵達は驚いているが，当のスノラトはイクスが首元にある事が分かるとエランに向かって微笑んだのでエランはイクスを引いて少しだけ距離を取る。
「……それで？」
既に勝敗は決したと言わんばかりにエランがそんな言葉を口にすると，スノラトは気分が晴れたように少しの間だけ目をつぶる。未だに痺れている両手をお互いに庇うように手を組んだら目を開けたスノラトがエランに向かって声を掛ける。
「エランの勝ちだ，そして私の完敗だ」
自ら完全敗北を口から出したスノラトにフライア兵達は驚きの声が上がってくるが，当のスノラトは充実感で満ちていた。決して手など抜いてなかった，油断などはなかったが三回だけの攻撃で負けた事には違いないと弾かれた愛用のブロードソードが教えてくれる。だからこそスノラトは未だに痺れている両手をそのままに微笑んでエランに向かって声を掛ける。
「流石に噂に成るだけの事はあるな，ここまで圧倒的だとは思わなかった」
「私達の全力はこの程度じゃない」
「そうか，先程の言葉はそういう意味か。これが戦場だったら私は死んでいたな」
「うん」
速攻でスノラトの言葉を肯定する返事をしたエランにスノラトは呆気に取られた表情を見せるが，すぐにまた微笑むと判定役の兵に向かって満足げに頷き，判定役が黙ってその場から退くのを見届けてから今度はエランに向かって会話を続ける。
「実力はしっかりと見せてもらった。結果としては，こちらから願い出たい程の実力を持っているからには拒む理由は無い，と言ったところだ。さて，それでは詳細な契約内容を決める為に私の天幕へと来てもらうか」
「分かった」
「それと未だに腕が痺れているからな。誰かっ！ 治癒魔法で私の腕を治してくれっ！」
イクスを受け止めた時に生じた衝撃が未だに残っているかのようにスノラトの手は痙攣を起こしていた。そしてスノラト自身が一番分かっているのが，組んだ手を外してしまえば腕まで痙攣が広がる程にイクスの衝撃がもの凄いという事だ。なのですぐに魔法兵の一人がスノラトに駆け寄ると痙攣を起こしているスノラトの手に魔法を掛ける。
ブレールースと呼ばれる世界で使われている治癒魔法は，その者が持つ自然治癒能力を一気に上げるモノだが中には魔力を物質と化して再生治療まで出来る。だが流石に再生治療と成るとかなりの高等魔法に位置付けされており，かなり難しいので使える者が少ない。それに治癒魔法と言ってもそれだけではない。
製薬魔法も治癒魔法に分類されている。製薬魔法は言葉通りに薬を作る為に使われる魔法で様々な物質から薬の材料と成る物を抽出，合成して薬を作る事が出来る魔法だ。こちらは主に病気に対して使われる事が多いが，中には魔力を回復させる薬も有るので様々な所で使われる事が多い魔法だ。
一口に治癒魔法と言っても様々な活用法が有るので，スノラトの治療に当たっている魔法兵も魔力で治療も出来て薬も作れる。軍属に居る者は両方が出来て当然なので，そう言い切れるだけの事だ。
治療が終わると手の具合を調べるように動かすスノラトは問題が無い事を確認すると，魔法兵に礼を言ったら敬礼してから元の集団へと戻って行く魔法兵。それからスノラトは愛用のブロードソードを地面から引き抜くと刀身に付いた砂や埃を払うように一振りしてから鞘に収めて周囲に向かって号令を出す。
「エラン達の実力は皆も見ていたからには，エラン達が我らに力を貸してくれる事に異論を出す者は居ないだろう。よって我が軍はエラン達を加えて予定通りにロミアド山地へと進軍する，各自持ち場に戻って責務を果たせ。私からは以上だ，それでは解散っ！」
スノラトの言葉を聞いてフライア兵達は散っていくように歩き出して各々の仕事へと戻って行く。そして既にイクスは鞘に戻っていてハトリとイブレもエランの元へと合流していた。エラン達に歩み寄ったスノラトは先程までの満足感は既に表情になくて，将軍として凜々しい表情をしていた。そんなスノラトがエラン達に言葉を出す。
「エラン達は私に付いて来てもらうか，私の天幕に案内するので，そこで詳しい契約内容を話し合うとしよう」
スノラト自身がそう言い出したのでエランとしては異論は無いのだがイクスが横槍を入れてくる。
「おいおい将軍様よ，俺様達の実力を確かめたからと言って信頼するのは早すぎやしねえか」
「まだ駄剣が余計な事を言い出したですよ」
イクスの言葉を聞いてハトリも横槍を入れてくるが，イクスが言い返す前にスノラトが会話を続けてきた。
「あまりフライア帝国を舐めない事だな，国境沿いの町だからこそ充分過ぎる程に警戒しているのは当然だ」
「つまり僕達がブラダイラ側に付いて，ここに来ていたら今頃は全軍で僕達を討ち取りに来ていた，そういう事ですね」
「そうだ，ブラダイラとは長い戦争状態にあるからこそ警戒は怠らないのが皇帝陛下の考えでもある。大規模な戦いが起こらない平時だからこそ些細な事まで入念に調べて対処するのが我がフライア軍だ」
「エランも僕も名が知れているからね，ブラダイラに付けば知られるのは既に知られてて今頃は首を取られていたかもしれないね」
「笑えねえ話だな」
「そもそも笑い話ではないですよ」
「いちいち揚げ足を取ってくるんじゃねえよ」
「イクスに足が有った事に驚いているですよ」
「その足じゃねえっ！ このチビガキは言葉が通じねえようだなっ！」
「誰がチビガキですよっ！ 五月蠅いばかりの駄剣に言われたくないですよっ！」
「その台詞したか言えねえのかよっ！ やっぱりクソガキの頭だなっ！」
「頭すら無いイクスに言われたくないですよっ！ あぁ，頭が無いから無能な発言が多いですよっ！」
「なんだとっ！」
「イクス，ハトリ」
数十秒前まで割と真剣な会話だったがイクスとハトリの口喧嘩に変わってしまったのでエランが止めに入る為に名前を呼ぶと，イクスとハトリは仕方ないと小声で短く声を発するとすっかり黙り込んだ。するとエランがスノラトに向かって声を掛ける。
「イクスとハトリが会話を妨げて申し訳ありません」
その言葉を聞いて先程まで凜々しい表情をしていたスノラトは微笑んでエランに向かって会話を続ける。
「謝る必要など無い，面白モノが見られたという事にしておこう。さて，それではそろそろ行こうか。それと私に対してもそこまで丁寧に接する必要はない，普通に接してもらって構わない。契約上では私は雇い主だが，我らと同じ戦場に立つのなら同士だと私は思っているからな」
「分かった」
「随分と私達を買われているのですね」
「そういう性分なのでな」
「なるほど」
「では行こう」
スノラトの言葉を聞いてイブレも横槍を入れてくるが逆に納得させられたのと同時にスノラトが将軍職に就けた理由もイブレには分かった。イブレの考えではスノラトは実力主義者と言ったところだ。実力さえ有れば身分を問わずに対等に接するからこそ慕われる，そう言った素質を持っていたからこそ若くして将軍に成れた。というのがイブレの考えだ。
スノラトが歩き出したのでエラン達もスノラトに付いて行く。訓練場から出ると天幕の群れとも言える場所を通り抜けたら，フライア帝国の旗を入口付近に二つ高々と靡かせている天幕が見えてくる。見ただけで軍隊の中で格上が使用する天幕だというのが分かるので，そこがスノラトの天幕だとエラン達は分かった。
フライア帝国の旗が門のようにも成っている天幕へと入ってくスノラトに続いて，そこに入る事が分かってたエラン達も普通に天幕に入ると天幕内は布を張って幾つかの部屋に別けられているが分かる。
エラン達が入った所にはスノラトが仕事をする為の作業机が設置されていた。そして作業机の前には対面するかのに座り心地が良さそうな長椅子が有る。位置的に急拵えなのが分かるような配置だとエランは気付いたが言う必要も無い事なので黙っておく。
スノラトはエラン達に長椅子に座るように促してきたので長椅子に座るとスノラトは作業机を挟んだ椅子に座ってエラン達と対面する形と成る。これでようやくエラン達はフライア軍に参入する為の話し合いをする事が出来るように成るのだった。
さてさて，後書きです。今更ですが，エランの異名で作品のタイトルにも使っている文字は白銀妖精ですね。まあ，人によってはいろいろな読み方が有ると思ったので今更ながら修正を入れて，ここにも書かせてもらいました。もし，勘違いしていた人が居たらルビ振りが遅れてしまって申し訳ありません。第一章の第一話，その最初の方にこれでもかっ！！ というぐらい……まあ，三つ程ですがルビを振っておいたので確認したい方は確認してくださいな。
さてさて，前回の後書きで書いた通りに今回は更新を早めました。まあ，そこそこの早さで更新が出来たと思っております。なので次の更新はいつも通りに気長にお待ちに成ってくださいな……という言い訳が終わったところで本音を言いますと予定すら立ててないから何も決まってな～い，ですね。まあ，取り敢えずはいろいろとやりながら第四章のネタなども考えながら次を書いて行こうと思っております。
さてはて，それにしても……PSのサービスが凄くなったね～。私は年間のを買っているんですけど，既にスパイダーマン，マイルスモラレスすらプレイが出来るとはね～。入ってて良かったと思う程ですよ……小説を書くという作業を忘れる程に。まあ，それでも何とか頑張って，これからも活動していこうと思うので見捨てないでくださいな。と本音を漏らして懺悔をしたところでそろそろ締めますか。
ではでは，ここまで読んでくださり，ありがとうございました。そしてこれからも気長によろしくお願いします。
以上，どこか遠出をしたいと思いながらも懐の事情から全く出来ない葵嵐雪でした。
