第二章 第二十八話
ディアコス国の北端にある要塞の一つであるゼレスダイト要塞は攻め入ったハルバロス兵で溢れかえっており,降伏したディアコス兵を牢に入れてハルバロス兵達は勝利に歓喜していた。
ハルバロス軍の総大将であるケーイリオンも要塞内に入って戦後処理に勤しむと勝利の余韻に浸っていたハルバロス兵に次々と命令が下って今度は慌ただしく戦後処理の為に動くハルバロス兵。そんな両国の事情を捨て置くかのようにエラン達はゼレスダイト要塞内で割り振って貰った部屋でイブレとスレデラーズに関する会話をしていた。
「それでイブレが見付けたスレデラーズは何処に?」
エランがその様に尋ねると慌てないと言うかのように紅茶を口にするイブレにエランを始めイクスとハトリも黙っていると,ようやくイブレは紅茶が入った茶器を置いた。明朝には出発すると明言したエランだからこそ今だけは焦らずにゆっくりとした方が良いと示す為にイブレは時間を掛けた。そしていつまでも黙ってはいられないのでイブレは情報を得たスレデラーズに付いて話し始める。
「前にも言ったと思うけどスレデラーズはこのタイケスト五国の何処かにある事だけは分かっていたんだ。そして見付けたのが,タイケスト五国の最南端にあるブラダイラ王国,しかも厄介な事に成っているんだよ」
「スレデラーズに関する事なら厄介なのは当然だろ」
イクスがその様に当然の事だと言ってのけるが,イブレは疲れたように息を吐くと会話を続ける。
「分かったのはスレデラーズの所在と所有者がスレデラーズの使い手としてはかなり上だという事だけだよ。しかもそのスレデラーズの使い手がブラダイラ王国の切り札として居座っているから厄介だと言ったんだよ」
「つまり背後に王族やら貴族やらが付いているですよ?」
ハトリがそのように尋ねると正にその通りと言わんばかりにイブレは頷いた。
確かにその様な背景が有るとエランとしても安易にスレデラーズの使い手に交渉も戦いも仕掛ける事が出来ない。だからこそイブレは厄介だと言ったのだとエランは判断した。それを踏まえてエランは会話を続ける。
「それでイブレ,打開策は?」
「今のブラダイラ王国は隣国で今回相手にしたディアコス国とは同盟を組んで不可侵条約すら結んでいる。そうする意味はもう一つの隣国で有るフライア帝国がブラダイラ王国と戦争状態にあるからだよ」
「要するにフライア軍に入れて貰ってスレデラーズの使い手を引っ張り出してですよ。そして戦場でその使い手を倒して手に入れようという算段ですよ」
「ははっ,流石はハトリだね,要約的な説明をありがとう」
「どういたしましてですよ。そうなると次に向かうのはフライア帝国ですよ?」
「そうなるね。エランもそれで構わないかい?」
「うん,それと聞きたい事がある」
「なんだい」
「どのスレデラーズ?」
スレデラーズはイクスを含めて三十本ある。エランはその中でどのスレデラーズなのかを尋ねたが,イブレは首を横に振ってからエランの問い掛けに答えてきた。
「残念ながらそこまでは分からなかったんだよ。僕はここでいろいろと情報を集められるだけ集めたけど,ブラダイラ王国も戦争の切り札と成っているスレデラーズの使い手に関する情報までは手に入れる事が出来なかったんだ」
「つまり行ってみねえと分からねえって事だな」
「イクスの言う通りだけど,ここで殆ど情報が得られなかったからね。フライア帝国に行っても有力な情報を得る事は難しいかな,それだけブラダイラ王国がスレデラーズの使い手に関する情報が漏れないようにしているんだからね。その点だけでも厄介と言える程の頭と権力を持っている者を相手にしないといけない可能性が出て来るからね」
「行き当たりばったりですよ」
「そう言われると今回ばかりは仕方ないとしか答えようがないね」
全く悔しがるどころか面白そうに微笑むイブレがその様に答えると,愚痴が通じなかった事でハトリが少しだけ不機嫌に成ってエランがハトリの頭を優しく撫でる。そうなると仕方ないとばかりにハトリも機嫌を直すしかない。そしてこれからの事を話し始める。
「だからイブレは私達と一緒に行くと言い出した?」
「その通りだよエラン,次のスレデラーズに関しては全く情報が無いのと同じだからね。僕も同行してその場で対処した方がエランもスレデラーズを手に入れ易いと考えた結果だね」
「うん,ありがとう」
素直にお礼を言うエランに対してハトリが口を挟んでくる。
「それならイブレも貰うはずの報酬金をこちらに分けるですよ,なにしろエランがこの要塞を落としたようなものですよ。それなりに出す物を出すですよ」
「ハトリは手厳しいね」
「堅実と言って欲しいですよ」
「まあ,そこは僕の旅費は僕が出すという事で手を打って欲しいかな。エランがゼレスダイト要塞を落としたからこそケーイリオン将軍も出し惜しみはしないからね。なんなら僕がその事を保証するよ」
「こいつ分かってて言ってやがるな」
「その前に私達に幾ら入るのか分かっていやがるですよ」
「イクスもハトリも何を言っているのか分からないな」
「とぼけるなっ!」
「とぼけるなですよっ!」
イクスとハトリが同じ意味の言葉を叫ぶように吐き出すとイブレは可笑しそうに微笑み,エランは例の如く首を傾げるだけに終わるのだった。そしてイブレが満足するまで笑うと思い出したように話を切り出した。
「そうそう,今夜には祝勝会が開かれるからね。エラン達もゆっくりとして今日だけは楽しむと良いよ」
「うん,分かった」
「この前みたいなどんちゃん騒ぎはごめんだけどな」
「そこはイクスに同意するですよ」
「その心配はないよ,なにしろケーイリオン将軍が主催する祝勝会だからね。前回のように無礼講とは行かないさ」
「それを聞いて安心したですよ」
「それじゃあ僕は失礼するよ,旅立ちの支度をしないといけないからね」
「うん,またねイブレ」
エランの言葉に見送られて席を立ったイブレはそのまま部屋から出て行った。それからエラン達はのんびりと紅茶とお喋りを楽しんで少し時間が経つとエランは待っていたかのようお風呂へと向かった。イブレが用意してくれただけの浴室だけあって更衣室もかなり広い。
既に鎧だけは外しているエランは着替えを置くと着ている白い服を脱ぎ去り,一糸まとわない姿に成ると浴室へと入った。真っ先にエランの身長より高いところに設置してある糸湯の蛇口を回すと幾つもある小さな噴出口から適温のお湯が出てエランを頭から濡らしていく。
全身が濡れると一度糸湯から離れて浴室に置いてあった専用の石鹸を手で泡立てて,泡が付いた手で身体を擦るように洗うエラン。そして身体を洗い終えると再び糸湯の下に入って石鹸の泡を丁寧に洗い流すと今度は少しだけ糸湯から離れた為に下半身だけにお湯を浴びている状態に成る。
エランは髪質を整える薬液が入った洗髪剤をこぼれないように左手に貯めると一気に頭に持って行った。エランの頭に洗髪剤が広がり頭皮を撫でるように両手の指を動かすと次第に洗髪剤が泡立ち始め,その泡が徐々に広がってエランの頭を覆うと白銀色の髪とエランの身体に沿って落ちて行く。それから後ろ髪までしっかりと洗ったエランは再び糸湯の下に入ると髪に付いている泡を綺麗に洗い流す。
身体と髪をしっかりと洗い終えたエランはお待ちかねとばかりに浴槽へと身体を沈めた。お湯の心地良さがエランの身体を走るのと同時に足を伸ばしてもまだまだ余裕がある程の浴槽にエランは一度だけ身体の全身を伸ばすと肩までお湯に浸かり,のんびりと入浴時間を過ごして行くのだった。
通常運転のエランが二時間程の入浴を終えると今度はハトリが入れ替わるようにお風呂へと入って行った。なのでエランはイクスをすぐに手が届く距離で円卓に立て掛けると紅茶を煎れて風呂上がりの新鮮さと気だるさを堪能していた。するとドアが軽く叩かれたのでエランは気楽に入室を許可した。
既に要塞はハルバロス軍の物と成っているので警戒をしていても油断はない,それにディアコス側の人間がわざわざドアを軽く叩いたりしない。部屋の割り振りは終わっている筈なので,ここにエランが居ると知っての来訪だと言う事は確かだからこそエランは気楽に返事をしたという訳だ。
「失礼するぞ」
そんな言葉を共に入って来たのはメルネーポだ。いつもより鎧が少ないのはメルネーポなりに少しだけ警戒を解いている証だ。その割にはいつもよりも深刻そうで鋭い目付きをしていたメルネーポがエランの元まで歩み寄ると座りもせずにエランに向けて口を開く。
「最初に伝令だ。祝勝会でエランとヒャルムリル傭兵団を代表してカセンネ殿が表彰されるのと同時に報酬を渡すとの事だ」
「随分とご丁寧な事じゃねえか。でも,メルネーポの姉ちゃんがここに来たのは別な理由が有るんだろ」
イクスが指摘した通りだと言わんばかりにメルネーポは一度だけ頷くと再び話し出す。
「イブレ殿に明朝にエラン達が旅に出ると聞いたから来たんだ」
「相変わらずイブレの奴は口が軽いな」
「どうやら本当みたいだな」
「うん,だとしたら?」
「エランとイクスに頼みがある」
「話を聞くだけなら大した苦労じゃない」
「エランらしい言葉だな」
エランの返答を聞いて少しだけ表情が和らいだメルネーポ。それでも手に力を入れて拳をしっかりと握り締めてからメルネーポは口を開いた。
「エラン,私と―」
これこそがメルネーポの希望する事だ。それを必死に訴えるかのようにメルネーポは静かな口調でエランとイクスに頼んだ。それを聞いていたエランはいつも通りに無表情のままだがメルネーポの言葉が終わるとエランが言葉を発する。
「分かった」
それだけの言葉だがメルネーポはエランの返答を聞いて自分の頼み事を受けてくれたと理解したので,安心した為に自然と身体から力が抜けていくと表情も自然と和らいで見慣れたメルネーポの顔付きに成っていた。そんなメルネーポから会話が続く。
「エラン,イクス,感謝する」
「構わない」
「まっ,俺様としても祝勝会の余興みたいなもんだから気にすんな」
「その言葉もイクスらしいな」
その様な事を言って微笑みを浮かべるメルネーポにエランも頷いて見せた。そして約束をしたメルネーポは用件が終わったとばかりに振り返ると歩き出す。
「では今夜」
「うん,約束通りに」
「あぁ,約束通りに待っている」
それだけの会話をしてメルネーポは部屋から出て行った。するとイクスが声を発してくる。
「どうやらメルネーポの姉ちゃんは出世しそうだぜ」
「そうなの?」
「断言は出来ねえよ。ただエランと俺様の事を理解したうえであんな事を言い出す奴なんてそうは居ねえよ。そんな事をやるだけでも武人として秀でてるって事だな」
「イクス」
「なんだ?」
「最後しか分からなかった」
「……あぁ,うん,そうか」
イクスの言葉に首を傾げるエラン。メルネーポが武人として秀でている事しかエランには分からなかった。そんなエランに適当な言葉で流すイクスだが,ここにハトリが居ても同じだ。こうなったエランにしっかりと理解させるには数時間どころか数日程の時間が必要だからだ。なのでイクスが黙り込むとエランは再びのんびりと紅茶を堪能するが先程のメルネーポを見てエランはある決断をしていた。
「流石に大きな要塞だから豪勢なお風呂ですよ」
風呂上がりのハトリがその様な言葉を発しながら髪を結ぶと,椅子に座って冷めた紅茶で身体を少しだけ冷ます。そんなハトリにエランは暖かい紅茶で喉を潤すと話し掛ける。
「祝勝会の前にレルーンに会いに行く」
『っ!』
エランの発言に驚くイクスとハトリ。先程レルーンと会った時には明らかにエランの言葉に動揺していた様に見えたうえ,その理由さえもイクスとハトリは理解していたからこそ驚いた。だからこそハトリが確かめるようにエランとの会話を続ける。
「会ってどうするつもりですよ?」
「言うべき事を言うだけ」
「エランは本当にそれで良いですよ?」
「……うん,これが私の決めた道の途中だから」
「けどですよ」
「そんくらいにしとけや」
水を差すようにイクスが声を発すると冷静さを失っていた事に気付いて黙り込むハトリ,すると今度はイクスが会話を続ける。
「旅に出てからこんなに関わった奴らはいなかったからな,だから感情が動くのは仕方ねえ。けど情に流されて決めた目的を忘れる事なんて出来ねえだろ,ならケジメはしっかりと付けた方が良いに決まってら」
「うん,イクスの言う通りだと思う」
「……エラン」
「私は大丈夫,ハトリは?」
「少し時間をくださいですよ」
「分かった」
それから沈黙の中でエランとハトリは時折紅茶を飲みながら時間を過ごす。ハトリには紅茶が少し酸っぱいように感じたのは心が揺れ動いたからだ。そしてハトリもその事をしっかりと理解している。だから会いたくなかったのだが,傍目から見てもここで会わないよりも会った方が良い事は分かっている。そう頭では理解が出来ていても,やはり心では受け入れるのは難しい。
空が真っ赤に染まる頃,やっと決心が付いたハトリがエランの顔を見詰めるとエランもハトリの顔を見詰め,ハトリが頷くと飲みかけの紅茶を飲み干して立ち上がるエランとハトリ。エランはイクスを取って背負い後ろ髪に両手を入れると背負っているイクスの後ろから髪を出すように白銀色の髪が広がり夕日に輝く。そしてエランとハトリは部屋を出る為に歩き出し,そのまま部屋を後にした。
少し歩けばヒャルムリル傭兵団が割り当てられた部屋だと近くに居たハルバロス兵に聞いたのでそちらに向かうとはしゃぐような声が聞こえて来た。すっかり聞き慣れた声にハトリは戸惑うがエランはいつも通りの歩調で歩くのでハトリは心の中で気合いを入れ直してエランの隣を歩く。そして部屋に前に付いたエランは戸惑う事もなく部屋のドアを軽く叩く。
「はいは~い」
すぐに部屋に中から返事が聞こえて来ると扉が開いて見慣れた団員が姿を見せた。すると団員がエランが来た事をカセンネとレルーンに告げるとエランは引っ張られるように部屋に中に入り,ハトリはのんびりと部屋に入り扉をしっかりと閉める。そしてエランはカセンネの元にまで歩みを進めると少しの間だけエランとカセンネがお互いの目を見るとカセンネから話し出す。
「何の用だい,って聞くのは野暮かね」
「うん,別れを告げに来たから」
『っ!』
エランの言葉に一斉に驚くレルーンと団員達。そんな団員達とは正反対にカセンネはそうかと微笑みを浮かべて話を続ける。
「それで,いつ経つつもりだい?」
「明朝,朝食後」
「早過ぎるよっ!」
エランの言葉を聞いて黙っていられなくなったレルーンが叫ぶように言葉を吐き出すとエランの元まで歩み寄るとエランに訴えるかのように言葉を吐き出す。
「やっと戦いが終わったんだよっ! 休んでも構わないんだよっ! それなのに何ですぐに別れないといけないのっ! 私はもっとエラン達と一緒に居たよっ!」
「止めなっ!」
自分の感情を吐き出し続けるレルーンに対して厳しい声で制止するカセンネの声を聞いてレルーンは驚いたように言葉が途切れる。するとカセンネは微笑むと少し優しい声でエランとの話を続ける。
「急な旅立ちだからね,理由が有るんだろうけど聞く気は無いよ。それにエランとしても話したくはないだろうからね」
「うん,そう」
「そう言った意味ではあたし達も同じさね。あたし達は傭兵だからね,生きる為に死ぬかもしれない戦場に向かう。エランも目的の為に旅に出る,そいつは当然の事なのさ。それにお互いに生きていれば,また会う事もあるだろうね,エランも時としては傭兵として戦場に立つんだろ?」
「うん,目的の為に戦う事は多い」
「要はそういう事だよ。お互いに戦いに身を投じる生き方だ,ならまた会う事も有るだろうけど,敵としては会いたくはないものだね」
「私も」
「それだけ聞ければあたしは満足だよ。さて,レルーン,あんたも子供じゃないんだから聞き分けな。あたし達にも生きるという目的が有るようにエランにも目的があるんだよ,その為に急いで経たないといけないみたいだからね。あんたの我が儘でエランを引き留めるんじゃないよ」
「けど……だって」
辛うじて言葉を出したレルーンの頬には涙が流れていた。出会って少ない日数だが,絆というのは時間ではなく糸だ。様々な要因という糸が結び合い,織り上げる事で様々な形の絆を作り上げる。それは見た目からでも分かる程に仲良しだったり,傍目から見れば仲が良くなくてもお互いに深い信頼を得ていたりと絆が織り出す形は実に様々なモノだ。
エランとハトリは旅を始めてから一度たりとも強い絆を作る事は無かったのは,それが壊れた時の喪失感を知っているから。けど今回はレルーンを始めとするヒャルムリル傭兵団と深く関わって絆を織り上げてしまったからこそ,しっかりと別れを告げるべきだと決断したからエランはここにやって来てハトリは未だに声が出ない。そんなエラン達を理解しているカセンネが未だに涙しか出ないレルーンに向かって更に言葉を届けるように話し掛ける。
「レルーン,あんたのそういう所は貴重な長所だと思うけどね,時にはそれに流れちまうのがあんたの短所とも言えるんだよ。すぐにとは言わないけど使い熟せるようになりな。それに別れる時はお互いに笑顔で別れるもんだよ,次に会った時にお互いに笑顔で再会が出来るようにね」
「急にそんな事を言われてもどうすれば良いのか分からないよっ!」
叫ぶように言葉を吐き出したレルーンが背を向けると駆け出して部屋から出て行ってしまった。開け放たれた扉からレルーンが駆ける足音が響くが誰もレルーンを追う者は居なかった。例え追い付いても掛ける言葉が見付からないから追い掛けないと言った方が団員達とハトリには的確だ。エランはこれはレルーンの問題だと考えているのでレルーン自身が何とかしないと行けない事を理解している。なので最初はレルーンの背を見送ったが視線をカセンネに戻すと会話が再開される。
「やれやれ,仕方ない子だね。まあ,こればかりは経験で何とかしないとだからね,エラン達は気にしなくて構わないよ」
「うん,レルーン自身が答えを出さないといけないから」
「そこまで分かっているのなら,あたしから言う事は少しだけだね。今回はありがとうよ,エラン達と出会えた事で大いに稼げたからね,そしてレルーンも含めて団員達と仲良くしてくれて感謝してるよ。ヒャルムリル傭兵団の団長として年長者として,そして友人としてね」
「うん,私もカセンネ達には感謝してる。ここまでお世話になったのは一人だけだから嬉しかった」
「そう言って貰えるなら,あたしとしても大満足だよ」
「なら良かった。ならそろそろ失礼する」
「それは出来るものならやってみるんだね」
意地悪な意味を浮かべたカセンネがその言葉を発するとエランが首を傾げる。カセンネが発した言葉の意味が理解する事が出来ないのだが,すぐに理解する事と成った。なにしろエラン達がヒャルムリル傭兵団の部屋から出ようとすると団員達がエラン達を取り囲んで泣きながら別れを告げたり,再開を約束したり,エランの大好物である甘味を差し出したりと団員達もそれぞれエラン達との別れを告げる。レルーン以外は……。
部屋から出るとエラン達への贈り物でエランとハトリの両手には持ちきれないと思える程の大荷物を抱える事に成ったので,エラン達はそれらを整理する為に一度自分達の部屋へと戻る。
何とか扉を開けたエランはヒャルムリル傭兵団の団員達から貰った物を整理し始める,と言っても整理するのはハトリだけでエランは疲れたように背負っていたイクスを円卓に立て掛けると椅子に座って背もたれに寄り掛かっていた。
ここで一息付く為に紅茶が欲しいところだが大荷物を大急ぎで整理しているハトリには頼めない為にエランは未だに少し気怠い身体を持ち上げるように動かして,そのまま紅茶を煎れるとハトリがいつでも飲めるように用意してから自分の分を持って椅子に戻った。紅茶の香りが疲れた心を癒やし,柔らかく心地良い渋味が身体の疲れを癒やすかのようにエランには思えたので自然と身体から力を抜ける。
それからエランは部屋でゆったりとしていると荷物の整理が終わったハトリに紅茶を出して共にゆったりとした時間を過ごす。そして夜の帳が降りる頃にエラン達の元にハルバロス兵が来訪すると祝勝会の場所と始まる事を告げると,エラン達は祝勝会に出る為に部屋から出るのだった。
さてさて,後書きです。ツイッターで予告した通りに更新を一週間程遅らせまいした。まあ,私事なのでいろいろな事が有っただけと言っておきます。
さてはて,第二章もそろそろ終わりですね。もうここまで来たら一気に第二章を終わらせようと思うので,このまま一気に更新を続けようと思っております。まあ,第三章のプロットは終わっているし,第四章のネタは出て来ないし,そのような事があるので一気に更新を進めようと思っている次第でございます。
さてさて,そんな訳で第二章も残り……一話か二話ぐらいですっ!! まあ,プロットと本編ではいろいろと異なりますからね。そんな訳で何とか三十話以内に終わる事は確かなので後は実際に書いてみてですね。そんな訳で一気に更新をするつもりですが,先の事は分からないので気長によろしくお願いします。と先立って言い訳をしたところでそろそろ締めますか。
ではでは,ここまで読んでくださり,ありがとうございます。そしてこれからも気長によろしくお願いします。
以上,ココナラを見て,そのうちエランのキャラデザや挿絵なんか頼もうかなと思った葵嵐雪でした。




