第二章 第二十六話
罠だと分かっていても進むしかないエラン達を待ち構えていたディアコス兵はかなりの数が揃っており,気構えしていたカセンネ達も自然と足が退がってしまう程に圧倒される程だ。そんなヒャルムリル傭兵団に危機感を覚えたカセンネがエランに小声で話し掛ける。
「悪いが残ってもらえるかい。あたし達でこの数を相手にするのは負担が大きすぎるからね,下手をすりゃあたし達は全滅だよ」
「分かった」
「悪いね」
謝意を述べるカセンネの本心を言えば,ここで自分達は残ってエラン達を先に行かせたい,だが現実は自分達では相手が出来ない程の数をディアコス軍が揃えたからにはエラン達の力を借りるしかないのが現状だ。それをエランが理解したからこそすぐに肯定する返事をした……が,そんなエラン達の後ろから多くの金属音が大きく鳴り響くとディアコス軍とヒャルムリル傭兵団が警戒態勢に入る。
エラン達も後ろから来るのが味方とは限らないので厳重に後ろに注意しながら,しっかりと前方の敵にも警戒している。仮に敵だとしたら確実に挟撃される態勢と成ってしまう,前に居るディアコス軍だけでも確実にエラン達が居るヒャルムリル傭兵団より数倍の数が揃っているのだから挟まれたら撤退も考えないといけないとエランは決断していた。そして金属音が鎧が出す足音だと気付く頃にはすぐそこまで迫っていた。
「エラン殿っ! 大丈夫ですか!?」
開かれた大きな扉から重装装備で胸にハルバロス帝国の国旗を貼り付けたハルバロス軍が現れるのと同時に声からラキソスが率いて来た部隊だと分かった。思い掛けない援軍にカセンネも驚いているとハトリが叫ぶ。
「突破するのに敵が多いですよっ! 助勢を頼むですよっ!」
「分かりましたっ! 味方に加勢して道を作れっ! 突撃だっ!」
『おぉ―――っ!』
ラキソスの号令で一気に雪崩れ込んでくるハルバロス軍に押さえる形でヒャルムリル傭兵団も勢いを得て臆する事なく敵へと向かって行く。その間にエランは道を開けるように右端にまで移動すると両軍がぶつかり合うのを目の当たりにしながら突き進む隙を狙う。
ラキソスの援軍が加わって狭くなった舞踏場より広い部屋でぶつかり合うハルバロス軍とディアコス軍。流石にこんな奥で待ち受けていたのだからディアコス軍は精強を揃えたようで怯む事無く,勢い付いているヒャルムリル傭兵団とラキソスの部隊を相手に互角の戦いを繰り広げていた。そしてその事がエランに何かを気付かせる。
「何か変」
「んっ,いきなりどうしたんだエラン?」
戦闘に加わっていないエラン達だからこそ呑気に会話が出来るとも言えるが,あえて戦闘を避けて考えているとも言えるのでエラン達は会話を続けながら考えを整理する。
「ラキソス達が来るのが早い」
「制圧を優先したのではないですよ?」
「それでも早過ぎる,何かディアコス側にあった」
「何かって何だ?」
「分からない」
「なら確かめるしかないですよ」
「だな,その為にとっととしようや」
「うん,イクス,ハトリ,行くよ」
会話を終えるとエランはイクスを両手で構えると一気にディアコス軍へと突撃した。両手に持っているイクスが放った最初の一振りで数人のディアコス兵を斬り伏せて,両腕を振り終えたら手首を返してイクスの刃を反対に向けて次に備えるとエランに斬り掛かってきたディアコス兵が逆に斬り刻まれた。
ラキソスが部隊を率いてここに来た事が最も大きいが,やはりエラン達の活躍も多大な為に精鋭を揃えていたディアコス兵達が少しずつ数を減らしていくとカセンネがエランに向かって叫ぶ。
「ここは任せてあんた達は先に行きなっ!」
「司令官をお願いしますっ!」
「分かったっ!」
カセンネとラキソスがエラン達に行かせようと叫んだのは白銀妖精と呼ばれているエラン達なら,この先にどのような敵が待ち構えていようと突破する事が出来るのは明白だ。だからこそカセンネとラキソスは出来るだけ兵数を減らして足止めをしている間にエラン達に指揮官を討たせた方が,今回の戦いを終わらせる事が出来ると判断したからだ。そのエラン達が先に行って一気に戦いを終わらせようと判断のもエランが二人の考えを理解して二人の意思を汲んだのでイクスとハトリに声を掛ける。
「一気に突き抜ける」
「おうよっ!」
「はいですよっ!」
エランの言葉に返事をしたイクスとハトリの声を聞いてから,エランは部屋の奥で微かに見えている扉に向かって駆け出す。全く後ろを気にする事なく一気に突き抜けようとイクスを振りながら駆け続ける。
当然ながらディアコス側も黙ってエランを通す訳がなく,突き立てられるだけの剣と槍を繰り出してくるが,エランは透明な足場で攻撃を回避するのと同時に距離を詰めてイクスで次々と敵を斬り裂いていった。その後を続いているハトリも後方から来る剣や槍をマジックシールドで受け止めると髪が浮き上がり,マジックシールドを通る事で同じ硬さに成り先端が鋭い為に意図も易く敵を貫いた。
舞踏場よりも広い部屋なだけあってエランも出来る限り急いで出口とも言える扉を目指して行くが,それを阻むディアコス兵が多いだけではなくてエランの攻撃に慣れてきたのかエランが両手に持っているイクスの一振りでは倒せない敵も出て来た。だからと言って元の長さに戻しても部屋を出た後に困るだけなので今はこのツインプレロブレイドで行くしかない。それが分かっているだけにもどかしさを感じるイクスとハトリだがエランは敵を斬り裂きながらも何かを見付けようとしていた。
崩れ落ちるディアコス兵の後ろから味方を犠牲にしたかのように何本もの槍がエランに向かって突き出された。咄嗟に腰を落として身体を沈めるエランの目に天井の物が映るとすぐに攻撃をしてきた敵に視線を戻した。先程斬り裂いたディアコス兵は床へと落ちているので邪魔には成らない,だからエランは足場で一気に距離を詰めて槍を突き出してきた敵に向かって五回程イクスを振るうと七人のディアコス兵が斬り刻まれて血飛沫を上げる。それから何度か反撃をして周囲を威圧するとエランがハトリに向かって叫ぶ。
「ハトリ来てっ!」
「はいですよっ!」
エランに呼ばれてハトリは自分を取り囲むように円形のマジックシールドを展開させると周囲の敵を一掃してからエランの元へと一気に駆け進んだ。エランが何かをしようとしている事は明らかだ,それが何か分からないが思惑通りにはさせまいと阻止しようとエランに攻撃が集中してくる。するとエランはイクスでディアコス兵の攻撃を逸らして最低限の反撃だけで凌ぐとハトリと合流する。
一気にハトリを抱き抱えたエランはそのまま上へと跳び上がる。ディアコス側はそこまで予想していたみたいで一番外側に陣取っていた弓兵達が跳び上がったエラン達に向けて矢を向ける。だがエランも外側に弓兵が居る事はこの部屋に入った瞬間に分かったので今まで上に跳ぶ事はしなかったが,それを打破する為にエランはあえて上に跳び上がる事にした。
弓兵が一斉に弓を引くがエランは既に足場を作っており,エランの身体は引き寄せられるように空中を移動すると豪華な飾り照明の上へと片足で着地した。上からの光と部屋を彩る為に造られた装飾が邪魔と成りエラン達に攻撃が出来ない弓兵達,なにしろエランが着地した照明には一つの光を中心に幾つもの光が灯るような造りをしており,その周囲には光を彩る為に硝子が連なって垂れ下がったり硝子に彫り物がされている物まで同じように垂れ下がっている。
照明の明かりだけでも狙えないというのに下手をしたら照明を落として下の味方を巻き込みかねない。そんな思考が両側に居る弓兵の隊長に攻撃を躊躇わせるので,その間にエランは再び足場を作ると倒れるように身体を倒し,ハトリを抱えたまま身体が前に直角へと成った瞬間に弾かれるようにエランは跳び出した。
出口とも言える扉の近くまで高速で降下してきたエラン達の前にマジックシールドが展開されると,まさか自分達の元へ来るとは思っていなかったディアコス兵をマジックシールドで押し潰しながらエランは床の真上に作った足場に片足で着地するとハトリを降ろした。
このまま一気に部屋を飛び出しても良かったのだが,部屋の外にもディアコス兵が居たら厄介なのでエランは周囲を確認すると扉付近に居る敵に向かって一気に跳び出した。そして両手に持っているイクスを同時に振るうと四人のディアコス兵が血飛沫を上げながら後ろに倒れて行く。その間に判断が速いディアコス兵が後ろからエラン達に迫るがハトリに阻まれ貫かれて,こちらも血飛沫を上げながら前に倒れて行く。
エラン達が一気に部屋の奥,出口付近で戦い始めた為にディアコス軍を指揮していた者は入口から来たハルバロス軍と出口付近のエラン達と二方面を同時に処理しなくてはいけなくなり,そうなると当然判断が遅くなる。その隙を突くかのようにカセンネとラキソスが一気に攻め上がった為にエラン達の方が対応が遅れて手薄に成る。もちろんエランもこの隙を見逃すはずがない。
「イクス,扉」
「任せなっ!」
戦闘中なのでそれだけの会話で意思疎通したエランが一気に扉へと迫る。エランが両手に持っているイクスを一気に振ると扉は何度も斬り裂かれたように崩れ去った。エランとイクスが斬り残した破片はハトリのマジックシールドによって押し出されて一気に道が開いた。幸いにも扉の向こう側にはディアコス兵が居なかったのでエラン達はそのまま部屋から駆け出る。
後ろからエラン達が出たと叫ぶ声が聞こえて来たが,取り敢えずは戦場から離れるのが先決とばかりにエラン達は咄嗟に向いた方へと駆け続けた。そして追撃の兵が来ない事を確認するとやっと止まって現在地を確認するハトリとは対照的にエランは窓の外へと視線を向けていた。そしていつの間にか記入していた間取り図を見ながらハトリが次の階段がある方向を見付けると外を見ていたエランが声を発する。
「ディアコス軍が撤退してる」
「どういう事ですよっ!?」
エランの発言に驚くハトリにイクスが冷静に声を発する。
「外を見れば分かるぞ」
イクスに促されてハトリも窓に近づいて外を見ると確かに荷駄隊を兵で囲みながら,このゼレスダイト要塞から出て行くディアコス軍の隊列を見る事が出来た。これを見ただけでディアコス軍が重要拠点とも言えるゼレスダイト要塞を捨てたと見える為にハトリは疑問を口にする。
「このゼレスダイト要塞は防衛の要ですよ。それをあっさり捨てるなんて驚きですよ」
「……砦だから」
「どういう事ですよ?」
エランが呟いた言葉に疑問を投げ掛けるハトリの声を聞いて,やっと窓から視線を外したエランがハトリを見ながら会話を続ける。
「砦を取る為には多くの兵が必要」
「それは当然ですよ,普通なら三倍から六倍の兵が必要なのが兵法では定石ですよ」
「うん,だから今のうちに退く」
「それこそ重要拠点を相手に送るようなものですよ」
「取られたら取り返すだけ」
「っ!」
ここまでの会話でハトリはやっとエランが何を言いたいのかを理解した。だからこそ驚いたとも言える。そして確認も含めてハトリは会話を続ける。
「つまりですよ,ディアコス軍は後でこのゼレスダイト要塞を取り戻す為に兵力温存まで考えて撤退しているですよ。ハルバロス軍が本格的にゼレスダイト要塞に兵力を入れる前に温存した兵力で攻め込む為ですよ?」
「そうかもしれない。けど,私達はこのゼレスダイト要塞さえ落とせば良い」
「確かにですよ」
「まっ,後の事なんて俺様達には関係ねえからな。今はさっさと先に行こうや」
「うん」
「はいですよ,この構造だとこっちに階段が有るですよ」
ハトリが来た方向とは別方向を指差しながら,そのような言葉を出してきたのでエランは一回だけ頷くとハトリが指し示した方向へと駆け出した。その後をハトリもしっかりと付いて行く。そしてハトリが予測した通りに上に上がる階段を見付けるとエラン達は一気に駆け上がった。
途中で少人数ながらも待ち受けていたディアコス軍を斬り捨てながらエラン達は一気に駆け進んだ。あの大勢で待ち受けていた部屋を出てからは大人数を相手にする事が無かったのでエラン達は一気に最上階辺りまで一気に駆け上がると遂には人の気配すら感じなくなった。その為にエラン達は立ち止まって周囲を警戒してイクスも注意を向けるが何も感じないのでイクスが声を発する。
「おいおい,誰も居ねえぞ,こりゃあ逃げられたんじゃねえか」
愚痴のような事を言い出すイクスにハトリが口から言葉を出す。
「断言する前に調べるのが先ですよ。なにしろこの階も広いですよ」
「わーってるよ,けどここまで何にも感じないと逃げたとしか思えねえんだよ」
「イクスはこう言っているけどですよ,どうするですよ,エラン?」
「……」
ハトリの質問にすぐに答えないエランは未だに周囲を確認するように集中していた。それでもエランも何も感じる事が出来ないが,下で戦いが続いているからにはやるべき事が有ると知っているエランはやっとハトリの質問に答える。
「警戒しながら上に行く。最上階でディアコス国の旗を降ろす」
「まっ,そうすりゃあハルバロス帝国の勝ちだからな」
「旗はしっかりと預かっているから安心するですよ」
「うん,早く終わらせるから走るけど,警戒していくよ」
「あいよ」
「はいですよ」
イクスとハトリの返事を聞いてから駆け出すエランは全力ではなく,通常と比較したら速いがエラン自身はゆっくりと駆けながら進んで行きハトリが続く。それでもエランとイクスは気配を感じる事が出来ない。ここまでの上層階だと上級階級の軍人や世話人が居てもおかしくはないのだが,その様な気配を感じる事は全く無かった。そしてここまで登ってくると次の階段を探さずとも位置が予測が出来るのでエラン達は同じ速度で駆け上がりながら次の階へと登って行く。
階段を駆け上がってもエランとイクスは何も感じ取る事が出来ないのでイクスは面倒臭そうに声を発する。
「こりゃあ逃げたとしか思えねえぜ,一気に最上階まで行ってやる事をやっちまおうぜ」
「この駄剣はまた無責任な事を言い出したですよ」
「誰が無責任だっ!」
「ならエランを見習うですよ,警戒しているのは私にも分かるですよ」
「そうは言ってもな,見た感じだけでここが軍の上層部が使っている区域だって事が分かるだろうが。そんな所に誰も居ない事自体が逃げたか罠が有るかもしれねえが,こんな所に罠を仕掛けるとは思えねえんだよ」
「……イクスのくせにまともな事を言っているですよ」
「くせにってなんだっ! くせにって!」
「はいはい,悪かったですよ。だから今は集中するですよ」
「くっ,急に下手に出やがって」
「ならエランはどうすれば良いと思うですよ?」
「このまま行くよ」
「はいですよ」
「あぁ~,はいはい,分かったよ」
ハトリがエランに最終的な決定権を譲ったのでイクスも渋々ながらも周囲を感知するように気配を探り続ける。それでもエランとイクスは人の気配を全く感じる事が無いので邪魔をされる事もなく進む事が出来た。そんな事が何階も続き最上階近くの階にまで上がるとエランが駆ける速度を上げたのでハトリも同じく駆ける速度を上げる。そしてとある扉の前でエランが止まったのでハトリも止まって扉に目を向けるとイクスが声を発して来た。
「中に誰か居やがるな,しかも一人とはどういう事だ?」
「分からない。けど……私を待っていた気がする」
「どうしてそう思うですよ?」
「分からない,だから入る」
「相当な覚悟みたいだな,面白くなりそうだ」
「エラン,気を付けるですよ」
ハトリの言葉に頷いたエランは扉の取っ手に手を掛けると,両開きに成っている片方の扉を開いていく。そして扉の向こうには謁見室とも言える広い部屋の奥に豪勢な造りをしている椅子が置いてあり,その椅子を前に一人の男が立っていた。
エランが躊躇いなく部屋に入ると男は振り返ってエランをじっくりと見てくる。その間にエランは歩を進めるが男が動く気配が無いが,腰には剣を差しているからには戦う意思が有ってもおかしくはないので間合いの外でエランは足を止めた。すると男の方から声を掛けて来た。
「貴方が白銀妖精ですね?」
「貴方は?」
「これは失礼,私はゼレスダイト要塞の総司令官ファウビス=レムスです」
「つまりお前を斬ればこっちの勝ちって事だな」
「まあ,そうなりますね」
イクスが喋ったというのにファウビスは驚きもしないどころか平然と言葉を返した。その事にハトリは警戒するがエランにはもっと別な事が気になっていた。その為にもエランは会話を続ける。
「何で私が白銀妖精だと気付いたの?」
「最近では貴方は噂に成る程ですからね。それにスフィルファだけではなく,カンド将軍まで戦死している。尋常ではない事が起こっているのは分かりますから調べたら白銀妖精がハルバロス軍に加わったとの情報を得ただけですよ」
「そう,なら言っておくけど。私の名前はエラン,白銀妖精と呼ばれるのは好きじゃない」
「それは逆に言うと嫌いにもなれないという訳ですね」
「このやろー,随分と言ってくるじゃねえか」
「この駄剣はそういう挑発にすぐに乗るから困るですよ」
「こっちもこっちで言うんじゃねえっ!」
ファウビスが軽く笑ってみせる。それだけ余裕があるのか,それ以外の事が有るのかエランには分からないが先の戦いでカンドが仕掛けていたように何かが有るかもしれないと警戒だけはしっかりとしていた。それは話してるハトリも同じであり,油断など微塵も無い。それは会話をしているファウビスにも分かるぐらいだ,それでもファウビスは会話を続けてくる。
「それにしてもやられましたよ,まさかこのゼレスダイト要塞がこうもあっさりと落とされるなんてね」
「随分とあっさり負けを認めるじゃねえか」
「負けている事を認められない程に愚かじゃないんですよ」
「そう,それで残った理由は?」
「そうですね……ケジメを付ける為ですかね」
「ケジメって?」
エランがその質問を口にするとファウビスは束の間だけ微笑んだ後に腰の剣を抜いて戦う為の鋭い目付きに成り,姿勢を落としてしっかりと剣を構えるとエランに剣を向けて行動だけで一騎打ちを申し込むようにエランの質問に答える。
「生憎と負けたまま退ける程に器が出来てはいないんですよ。だから,白銀妖精っ! この戦況を作り出した貴方だけは倒すっ!」
「……」
殺気が籠もった言葉を放つファウビスにエランは無言で両手に持っているイクスを前に出すと再び会話をする為に口を開く。
「分かった,その一騎打ちを受けるけど一つだけ聞いておきたい」
「何をですか?」
「仮に私を倒した後はどうするの?」
「……」
今度はファウビスが無言に成った。それだけでエランにはファウビスがここに残った理由がハッキリと理解した。だからこそ,それ以上の言葉は口を開かずに腰を落としてイクスを構える。
後ろから見ているハトリにはエランがいつも以上に本気に成っているのをしっかりと感じており,それはエランと共にあるイクスも同じだからこそハトリは不思議に思った。構えを見ただけでもハトリにも分かる程の実力差がある,ファウビスではエランの相手には成らない。それはエランも分かっているのに,当のエランがここまで本気の殺意を出すのが珍しい事だ。だから尚更にハトリには不思議に思えた。
イクスもエランから伝わってくる殺意をしっかりと受け止めていた。だからこそイクスもいつも以上に真剣になり集中力を高める。そしてエランはファウビスからしっかりと感じていた。ファウビスの心底に有る物を……。だからこそエランは本気の殺意を抱きながらイクスを構えていた。
エランとファウビス,圧倒的にエランの方が強いのは明らかだが気が抜けない雰囲気に成っているのも確かだ。そんな中で両者とも武器を手に動かずに機を待っている。その様子をハトリは後ろで静かに見守っている。そして機が熟したように近くの部屋にある窓硝子が割れる音を合図にエランとファウビスは共に動き出すのだった。
さてさて,後書きです。いよいよ第二章も終わりに近づいて来ましたね~。いやはや,長かった……主に私の持病が原因で……。まあ,そんな事がいろいろと有った第二章ももう少しで終わりですね。第三章のプロットは書き終わっているので,私的には気楽に第二章を終える事が出来ます。
さてはて,現在は第四章の設定を作ったりプロットを書いたりしています。まあ,どれ位の量に成るかは未だに分かりませんからね~。前にも書きましたが第四章は短編集方式でやって行こうと思っております。その為に多くの設定を作ってネタを仕入れないとなんですけどね~。まあ,何話ぐらいやるかは未だに決めてはおりません。思い付いたネタ次第で第五章に行こうと思っております。
さてさて,まあ,あんまり先の話をして期待させても何ですのでこの辺で。それにしても最近は見付ける事が多いんですけど……なんか……一気にPVが増えている日がある。いや~,読んでくれる事は嬉しいのですけどね~。話数以上のPVに驚いている事が有るのですよ。本当に何があったんだっ!! と思ってしまう程ですね~。という近況報告を終えたところでそろそろ締めましょうか。
以上,型遅れのPCパーツを購入交換しないとな~,と思っていても金銭が伴わない葵嵐雪でした。




