第二章 第二十五話
エランはブレイクスレッドホースと化したイクスを振り上げながらゼレスダイト要塞の前庭で敵の侵攻を防ぐ為の防御柵を築いて備えているディアコス軍に向かって舞い降りていく。途中でディアコス兵の一人がエランの影に気が付くが遅かった。
既に巨大になったイクスの間合いに入ったのでエランがイクスを振り下ろすと幾人かのディアコス兵と防御柵を斬り弾き,その衝撃でエランが着地した付近のディアコス兵は砂塵と衝撃で動けないうえ防御柵の幾つかも吹き飛んだ。
空から攻撃が来ないと思っていたディアコス軍なだけに何事かと呆気にとられているとエランが跳び出して来てディアコス兵を一気に薙ぎ払った。勢いに乗じて一気に数を減らそうとエランは考えていたが,城壁から降りてみると改めてディアコス兵が上から見ていたよりも多い事を実感する。それでも敵を減らさないと味方のハルバロス軍とは合流する事が出来ないのでエランはハルバロス軍が打ち破った城門の方に居る敵へと斬り掛かる。
「敵が既に入っているぞっ!」
ゼレスダイト要塞の前庭に展開しているディアコス軍から敵襲を知らせる声が轟くと一気に全員が警戒態勢を取り,周囲を見渡すとディアコス兵を斬り弾くエランの姿を見付けるのに時間は掛からなかった。そして当のエランは見付かった事だけは全く気にしていない。
敵に見付かるのは時間の問題なので最初から問題にも入らないがエランは思うように進めていなかった。なにしろ予想外な物がエランを意外な程に邪魔をしていた為にエランは思わず口から言葉を出す。
「この柵邪魔」
「そうは言っても確実に壊していくしかねえだろ」
「分かってるけど」
「まっ,レルーンの姉ちゃん達にはハトリが付いてんだから確実に行こうや」
「うん,分かった」
慌てていた訳ではないがイクスの言葉を聞いて進む事よりも,その場に居る敵と防御柵を壊す事に狙いを切り替えたエランはイクスを左から横に振り出すのと同時にイクスの進行方向へと跳んだ。その時には既に着地地点を定めて足場を作っており,エランはイクスを振り回すように一回転すると足場に吸い寄せされるように移動して片足で着地した途端に次の足場を作る。
一時的だが停止したエランにディアコス兵が殺到して武器を振りかざしてくるが,エランがイクスを右横に構えた瞬間に誰も見えない足場からエランが跳び出すのと同時にイクスを振るった勢いで身体を持って行かれる。その状態でしっかりと体幹で重心を維持しながら迫って来たディアコス兵を斬り払い邪魔な柵を破壊すると次の足場へとエランの身体が引っ張られる。そしてまたエランは片足で足場へと着地する。
予想通りにかなりの数がゼレスダイト要塞内には控えていたようで,エランの周囲にはかなりの数に達する程のディアコス兵が居るが一斉には攻撃が出来ない。ここで自分達が敵の進軍を阻む為に築いた防御柵が邪魔に成ったからだ。エランとしてもここまで予想して読んでいた訳ではないが,好機展開と成った事でエランは一気に攻勢に出る。
次々と防御柵にディアコス兵と破壊して斬り裂いていくエランとイクスにディアコス軍は何とか防御柵を活かして戦おうとするが,頼りにしていた防御柵ごとイクスに斬り裂かれて無意味な代物と成ってしまっている。そのような戦場でエランはハルバロス軍が突破したと思われる城門の方へと徐々に進んでいた。
足場で動きが止まったエランに突き進もうとディアコス兵が動き出そうとするが,後ろから黄色い物に身体を貫かれて血を流しながら立ち尽くす。そして黄色い物が引き抜かれると力が抜けたように地面に倒れた途端にハトリが一気に突っ込んで来てエランと合流する。
「あの火はやり過ぎですよっ!」
いきなり愚痴の言葉を出してきたハトリにエランはイクスを振り回して,その場で一回転すると向かって来たディアコス兵を一掃した後にハトリとの会話を続ける。
「丁度あったから」
「あったからじゃないですよっ! こっちは進むのが大変だったですよっ!」
「それで?」
「私とヒャルムリル傭兵団は炎の中を突き進んできたから向かえば合流する事が出来るですよ。ハルバロス軍もやっと消火が終わって突入してきたですよ」
「分かった」
文句を言ってもエランが聞くとしっかりと状況を伝えるハトリ,二人にしか分からない信頼関係が有るからこそ連携と言える。それからエランとハトリは周囲の敵をより多く片付けてから距離を取り会話をする。
「ハトリ,カセンネは?」
「まだ城門の方だと思うですよ」
「分かった,窓からじゃなく真正面の扉から入る」
「攻城戦はそう派手じゃないとなっ!」
「やれやれですよ,分かったから行くですよ」
イクスの言葉を聞いて少しの間だけ呆れた表情を見せたハトリだが,すぐに戦場に立つ者として相応しい鋭い目付きに成ると足場から跳び出したエランを追って戦闘が激化しているゼレスダイト要塞正門に向かって行く。
炎の中を進んで来たヒャルムリル傭兵団の突撃力は凄まじく,すぐにディアコス軍は押されてしまったが兵力に余程の余裕が有る為かすぐにディアコス兵達がヒャルムリル傭兵団を取り囲むように集まってきた。
カセンネ達は侵攻を停止して踏み止まる事にした。その理由として後方での消火活動が終わりそうな気配が有るのでハルバロス軍が突撃してくるのが時間の問題なのと,エラン達の姿が見えないので援軍に来てくれると期待したからだ。そして踏み止まったヒャルムリル傭兵団を救援する為じゃないがイクスがディアコス兵と防御柵を斬り弾くとエランとハトリがヒャルムリル傭兵団と合流する。
合流したがすっかり囲まれていたのでエランはまずヒャルムリル傭兵団の周囲に居る敵と防御柵からイクスを振るい始めた。先程の戦況とは一転して一気にヒャルムリル傭兵団がディアコス軍を押す形と成る。カセンネを始めとするヒャルムリル傭兵団もここまでやられて退く程に脆弱ではない。それどころかエランが合流した事により一気に活気づき今まで以上に攻め始める。
敵を串刺しにする為の防御柵が次々とエランによって壊されるとヒャルムリル傭兵団はここぞとばかりに押し出す。更に後方からやっとハルバロス軍も突撃して戦闘に加わったので一気にハルバロス軍が押す形に成るが,要塞を攻略する為に中へと入るには正門へと辿り着かない事は誰もが分かっている。それはゼレスダイト要塞を守っているディアコス軍も重々承知しているので正門にはかなりの兵が集まって密集陣形を執っていた。それを確認したカセンネが思わず愚痴をもらす。
「要塞に入るには厄介だね」
「城門はこちらに落ちましたから攻め上がりましょう」
突如として後ろから聞こえて来た声にカセンネは驚きながらも振り返ると,そこには突撃をしてきたラキソスが兜の前を開けて顔を見せていた。それを見てカセンネは笑みを浮かべると会話を続ける。
「簡単に言ってくれるね,こっちは最初に突撃したからかなりの負傷者が出てるってんだよ」
「なら後方に,こちらが負傷者を運びますので」
「頼むよ」
「はい」
ラキソスの返事を聞いてカセンネは負傷者をゼレスダイト要塞から出すように団員に命じると何人もの負傷者が肩を借りながら,何かに寝かせながら後方へと運ばれて行った。突撃して来たラキソスは負傷者を後方へ移す為にしっかりと退路も用意していたからこそ迅速に負傷者を運べる事が出来た。だが前に進めていないのが現実で,こちらを何とかしないとハルバロス側の数が減るだけだ。それが分かっているからこそラキソスはカセンネと共に攻め上がる事を提案してきた。
負傷者を運び終えるとカセンネは前線で戦っている者以外を集めてラキソスの部隊と合流する。そして一度密集すると一塊と成って再突撃をする。負傷者がいない為に突撃の速度が落ちる事は無いが,やはりというべきか防御柵に阻まれてしまい待ち受けていたディアコス兵と戦闘に成るが,後方から巨大な一撃が振りかざされるとディアコス兵を斬り払い防御柵を破壊した。そんな事が出来るのはたった一人とカセンネとラキソスはエランの姿を確認すると再度押し進める。
カセンネは途中でレルーンの部隊とも合流して負傷者を後方に運ばせると数を増やして密集隊形を執る。それは正門を守るディアコス兵達にも見えていた為にお互いにこのままぶつかると思っていたが,カセンネ達はある程度進むと足を止めてその場に踏み止まった。その事に正門を守る為に密集していたディアコス兵達が訝しむと突如として攻撃を受けた。
密集して大盾で周囲を固めていたのにも関わらず正門前のディアコス兵達は巨大な何かで大盾と鎧ごと兵が斬り弾かれた。その後には神秘的な輝きを放つエランが片足で見えない足場に着地すると先程出来た空間に新しい足場を作ってイクスを振り出しながら足場から跳び出すと,回転しながら足場に引っ張られる。そして次の足場に片足を付いた時には正門前を固めていたディアコス兵達を半分程に減らしていた。
「密集しているのはエランに任せるよっ!」
「分かってますっ! 私達はここで前が開くまで後ろの為に踏み止まるのでしょうっ!」
「流石は副将軍,ケーイリオン将軍が見込む事だけはあるねっ!」
「それはどうもっ!」
会話をしながら両刃斧を振るい敵を薙ぎ倒すカセンネに二メートル以上はあるグレートソードを振るい敵を斬り払うラキソス。お互いに敵を相手に倒しながらも短い会話の中で意思疎通する。
エランがゼレスダイト要塞に入る為に密集しているディアコス兵達を切り崩している今となっては下手に突っ込むよりはエランに任せた方が良いと二人とも判断した。その判断は的確で有り,ここで突っ込んでもエランの邪魔に成るだけで唯一の例外で有るハトリだけがエランと共に正門前のディアコス兵を相手に戦っている。そのエラン達はかなり密集隊形を崩す程にディアコス兵を倒しており,既に密集隊形と呼べる程に集まってはいないが周囲にはかなりのディアコス兵が居るのは確かだ。
侵攻経路を築く為にはこの正門を開かないといけないが周囲には多くのディアコス兵がおりエラン達が要塞内に入るのを阻んでいた。そんなディアコス兵がエランとハトリにどれだけやられても次々と武器を振りかざしてくるのは,このゼレスダイト要塞の重要性を理解しているからだ。だからここを取られまいと必死になっているが全て返り討ちに遭っているのも事実である。そしてゼレスダイト要塞を落とす為にもエラン達は絶対にここを開かないといけないのも事実だ。
数で守り切ろうとするディアコス軍にエランも大きな正門を開くだけの余裕が無い,この状況を打破する為に戦いながらも思考を動かして打開策を模索する。その為にイクスを振るう速度が若干ながら遅くなった為に討ち漏らしたディアコス兵がエランへと迫るがハトリによって阻まれた。そしてその瞬間にエランは閃いたので叫ぶ。
「ハトリっ!」
「はいですよっ!」
敵だらけの戦場で声が聞きづらい状況だからこそ,お互いに叫んで会話を成立させようとするエランとハトリはそのまま会話を続ける。
「引き付けるから開いてっ!」
「私がやるですよっ?!」
「そうっ!」
「仕方ないですよっ!」
ゼレスダイト要塞の正門は全て鋼鉄製で頑丈な造りに成っているからこそ,イクスのブレイクスレッドホースで打ち破るのが一番効果的なのだが肝心のエランがディアコス軍を相手にするだけで精一杯で正門を打ち破る時間を取れない。それに後方の味方も正門を破るまでは押し上がってくる気配が無いからにはエラン達で正門を破るしかないのでエランはハトリに託した。
エランがイクスで正門前のディアコス兵を一気に斬り払うとすぐに周囲の敵へと向かって行った。その瞬間に一気に要塞の正門に辿り着いたハトリが門の隙間に両手を付けると力の限りに魔力を手の平に集める。その間にハトリにもディアコス兵が襲い掛かってくるのだが,ことごとくイクスに斬り弾かれてエラン達が居る戦場から命を奪われて追い出される。そして次の瞬間にハトリが一気に動く。
門の隙間に巨大なマジックシールドが二枚も展開されると少しだけ要塞の正門が軋んで揺れた。それは大きな音も出して後方のハルバロス軍にも聞こえて来たので自然と退がっていたハルバロス兵が要塞の正門に注目する。
正門の間に有る僅かな隙間にマジックシールドを展開させたハトリは両腕を開こうと力を込める。これだけ見てもマジックシールドとハトリの手が繋がっている事が分かる。そして少しずつ正門が軋みながらマジックシールドに押される形で開いていくとハトリが一気に両腕を開いたのと同時に正門が勢い良く全開いた。
「一気に要塞内に突撃しろっ!」
正門が開いた事でラキソスがディアコス軍に暇も与えずにハルバロス軍に突撃を命じると待っていたとばかりにエラン達の後方に居たハルバロス軍とヒャルムリル傭兵団が一気に要塞内へと雪崩れ込む。その一方でエランはハトリを抱えると大きく後ろに跳んで距離を取るとハトリを降ろしてイクスに話し掛ける。
「イクス,戻って」
「はいよ。っで,次は?」
「ツインプレロブレイド」
「ならそろそろ最高潮に達しようぜっ!」
戦いの終わりが近い事を感じているイクスがいつも以上に興奮した声を発すると白銀色に輝き,二本の剣に変化してエランの両手に握られると白銀色の輝きが消えた。それから正門へと目を向けるエランは,既に入口はハルバロス軍が押し入って占領しているように見えるがディアコス軍も必死の抵抗をしているのが見ずとも分かる。それでも要塞を落とす為にエランは声を出す。
「行くよ,イクス,ハトリ」
「さあ最終幕だぜっ!」
「さっさと終わらせて休みたいですよ」
対照的な言葉を発したイクスとハトリの言葉を聞いてエランは一気に駆け出し,ハトリも遅れないように追い掛ける。そんなエランとハトリがハルバロス軍でひしめいている正門を跳び越すとエランは着地をする前に身体を回転させて勢いを付けると玄関ホールとも呼べる場所で戦っていたディアコス兵を斬り裂き,ハトリは大きなマジックシールドを足下に展開させるとディアコス兵を押し潰すように床に叩き付けた。
突如として現れたエランとハトリに警戒心を注いでいくディアコス兵。その一方で突入したエラン達は周囲を見ているとイクスが呑気な声を発してくる。
「思っていた通りに大勢居やがるな」
「取る首は一つで良いですよ」
「うん,一気に要塞の司令官を討つ」
エランが言葉を発すると実行するかのように一気に動き出した。玄関ホールの奥には上に登る為の階段が設置されているので,まずはそこを目指すが当然ながらディアコス兵で定員が一杯だ。ならば排除するまでと一気に突撃するエランは一人のディアコス兵が振り下ろしてきた剣を少し左に作った足場に引き寄せられる事で避けるのと同時にイクスを振るった。
二本になったイクスは元の長さを二つに割った長さよりも短く成っており,このような狭い場所で振るうのに適している。もちろんそれだけではなく,イクスに斬り裂かれたディアコス兵には数本の斬り裂いた後が残っていた。これはイクスが攻撃をする瞬間に相手を傷付ける刀身が一気に増えて,相手を斬り裂くと消える能力を持っているからだ。しかも二本共だ。
イクスを振るい続けてディアコス兵を斬り裂いては階段から転げ落とすエランは確実に階段を登って行く。その後にハトリも続くが後ろからも増援のディアコス兵が来てエラン達は挟撃されそうになるのでエランが一気に登ろうとした時だ。
金属を斬り弾く音と共に一人のディアコス兵がエラン達とは別方向へと飛んで行った。なのでエランが周囲の敵を一掃すると後方を確認する。すると後ろからカセンネとレルーンが率いているヒャルムリル傭兵団が追い付いていた。そしてエランの視線に気付いたカセンネが叫ぶ。
「後ろはあたし達に任せてあんた達は前にだけ進みなっ!」
その声を聞いてエランは頷くと再び前を向いて標的を定めると足場を作って一気に突撃しながら敵を斬り伏せる。ヒャルムリル傭兵団の後押しもありエラン達は一気に二階に上がる事が出来たが,更に上に行くには別の階段を上る必要があるのでレルーンが迷った声を上げる。
「どっちに行けばいいの?」
「敵が居る方」
「わざわざっ!」
「バカ,敵は階段を守っているんだよ」
「なるほど」
短い会話を交わしてディアコス兵が視認する事が出来る方へと駆け出すエラン。続くハトリにヒャルムリル傭兵団も加わり一気に突き進んで行く。死守するディアコス兵を屍に変えながら上へと続く階段を見付けては駆け上るエラン達。一気にエラン達が突出した事でディアコス側としても軍を別けないといけないのでファウビスは突き進むエラン達と玄関ホールで戦っているハルバロス軍を合流されないように兵の配置を命令するが時既に遅し,先に手を打ったケーイリオンの指揮によってハルバロス軍は要塞の一階を占領して要塞の内と外を分断した。
完全に孤立したとも言えるファウビス達の要塞内に居るディアコス軍にファウビスは苦渋の決断を下す。
「総員撤退しろっ! このゼレスダイト要塞は放棄するっ!」
発言に驚きを示すファウビスの周りに居た諸将は自分の意見を次々と出す。
「まだ諦めるのは早すぎます。ここは上層を放棄して下層部の兵と合流しましょう」
「いや,上層の兵を集めて粘るべきだ。ここが落ちない限りは負けではない」
「上層より下層にいる兵が多いのだぞっ! それに負傷兵を治療したくても下層まで行かないと出来ないっ!」
「多少の犠牲は仕方ないっ! ここが持ち堪えている限り援軍が来るまで粘れるっ!」
「ここだけの兵でそこまで保つと思うのかっ! 数で押されるのが目に見えているっ!」
「もう良いっ!」
諸将の言い合いに痺れを切らしたファウビスが止めろと言わんばかりに叫ぶと流石に静まり返った。そんなファウビスが疲れたように溜息を付くと諸将に向かって諭すように静かに語り出す。
「この戦いは負けだ。要塞内に敵が突入した時点で要塞の利点は大きく失われている他に,守る為に兵力を分散させないといけない。そのような状態で外の味方とは分断され下に逃げる事も難しい,流石はケーイリオンと言ったところだ。この若輩者では敵いようがない相手だっただけの事だ。全ての責任は総司令官の私に有るので私はケジメを付けるが他の皆には味方を連れて後方へと撤退して欲しい。以上だっ!」
最後に強い言葉で言い切ったファウビスは異論を認めないとばかりに席を立つとそのまま部屋を後にしてしまった。残された諸将は戸惑っていたが次々と来る敵の報告に撤退の方針をまとめて兵達をまとめる為に動き出す。
ディアコス軍の内部でそんな事が起こっている間にエラン達は上へと登って行き,ハルバロス軍もエラン達に続くように要塞の各階を占領しながら登って来ている。そんなエラン達がまた階段を上ると通路とは言えない程に長く広い空間に出た。上の階に出た直後に攻撃が来ると構えていたエラン達だったが,ここに出た途端に攻撃を受けるどころか人の気配すら感じなかった。その事にレルーンが言葉を発する。
「うわ~,この先に罠がありますよと言っているようなものだよ~」
敵が居なくて余裕が出たのか喋り方にも余裕が出ていたレルーンの言葉を聞いてカセンネが後ろに続いているヒャルムリル傭兵団員に言い聞かせる。
「いいかい,気を抜くんじゃないよっ! 何処から敵が来るのか分からないからねっ!」
『はいっ!』
カセンネの言葉に一斉に返事をする団員達の声を聞いて大丈夫だと判断したエランが先頭を切って歩き出しハトリ,レルーン,そしてヒャルムリル傭兵団と続く。こんな罠が有りますよと言っている状況で駆ける程に愚かではない,駆けていては何か有った時に動きが取れないうえ反応が遅れるからだ。だからエラン達は周囲を警戒しながら歩みを進めると大きな両開きの扉が待つ突き当たりへと辿り着いた。
「見るからに大勢居ますよって感じだな」
「まったくだよ~」
「それでも行かない訳には行かないですよ,だからお願いしますですよ」
「だそうだよ,開けなっ!」
カセンネの合図でヒャルムリル傭兵団から数人が出ると大きな扉の取っ手を数人掛かりで掴むとそのまま引っ張る。両開きの扉なので中央から開いて中の様子が見えるのが当然だが,開いている扉の隙間から見える奥は真っ暗で何も見えない。その暗さが余計に罠が有ると示している。そして扉が完全に開いた途端に室内の明かりが灯された。
ダンスホールよりも広い室内で多くの照明が室内を照らしているのと同時にそこに控えていた数え切れない程のディアコス兵も照らし出すのだった。
さてさて,後書きになりますが,取り敢えずは佳境に入って盛り上がって来ましたね~。有る意味では最終決戦的な雰囲気が出ていたら良いなと思っている次第でございます。まあ,何にしても第二章もあと少しで終わります。なのでいつものように気長にお付き合いをお願いします。
さてはて,最近ではかなり短い期間で更新が出来ておりますが,まあ調子が良いだけなんでしょうね~。また一気に落ち込んで更新が滞るかもしれませんが,それもご愛敬と勘弁して頂いて気長にお待ちくださいな。という言い訳をしっかりとしておきましょう。まあ,私としてもこの調子で書き続けられたら良いなと思っております。それと更新するまでの期間は決めておりません,私の調子と気分次第で更新しておりますので,最近は定期的に更新しておりますが不定期更新なのは変わりありません。
さてさて,ようやく第二章も終わりが見えてプロットには入れていない部分を入れてしまう程に進んでおりますので,私としても安心して活動している次第でごぜえやす。まあ,第三章のプロットも書き終えているしね。その次の第四章にはネタ出しには苦労していますが,今のところは順調と言っても良い程に進んでいるんではないでしょうか。と決め付けたところでそろそろ締めましょうか。
ではでは,ここまで読んでくださり,ありがとうございます。そして,これからも気長にお付き合いをよろしくお願いします。
以上,録画したアニメが貯まっているな~,と鑑賞消化が終わっていない葵嵐雪でした。




