表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白銀妖精のプリエール  作者: 葵 嵐雪
第二章 戦場の白銀妖精
39/84

第二章 第二十四話

 破城槌に並んでハルバロス軍がゼレスダイト要塞に向けて進んでいる。ハルバロス軍の特徴とも言える重装装備の兵達が全身を覆える程の大盾を持ちながら,ゆっくりと進んで行く破城槌の横に長く並んで進軍している光景は味方から見たら圧巻とも言えるだろうが敵であるディアコス軍には脅威でしかない。

 ディアコス軍は当然の様に破城槌に警戒をしているが,横に長く展開している布陣を見てゼレスダイト要塞,総司令官のファウビスはハルバロス軍の総大将であるケーイリオンが破城槌に注目させて城壁からも攻めてくると判断した為にゼレスダイト要塞の城壁に居る弓兵はハルバロス軍に合わせるように横に長く広がって大盾を持っている兵士に備えていた。それが囮だとファウビスには全く気付かずにハルバロス軍は進軍を続けて近づいてくる。

 ゆっくりと動き続ける破城槌の上に居るエラン達は下に居る者達が必死に成って押しているのに,そんな事を全く気にする事なく愚痴を含んだ会話を始める。

「それにしても遅いですよ」

「まったくだな,ちっとは気張りやがれってんだ」

「あまり遅いと敵が状況に慣れて緊張が解けるですよ」

「それも有り得るな」

「それは無い」

 ハトリとイクスの言葉は短い言葉で否定してきたエランに当然の様に質問が出て会話が続く。

「どうしてですよ?」

「大きな盾は矢を防ぐ為じゃないから」

「んっ,他にどんな意味があるんだ?」

「分かったですよ。破城槌の為に密集して行軍しているですよ,大盾で後ろが見えないようにしているですよ。それで敵に策があると思わせるですよ」

 正解とばかりに頷くエランを見てハトリは嬉しそうな表情を見せると補足説明とばかりにエランは口から言葉を出す。

「それと陣形の変化に気づかせない為」

「陣形の変化ですよ?」

「うん」

 短く答えるエランが破城槌の上から周囲を見回したのでハトリも同じように周囲を見てみる事にした。確かに先にハトリが言った通りにハルバロス軍は密集しており,そこに大盾を持っているから後方が見づらい。それはハトリが言った通りだが少し遠くまで見るとエランが言った意味が分かった。

 実際にハルバロス軍の陣形は横に広げる横陣に見える程に戦力の殆どを前面に出しているが実際には少し違っていた。両翼が少しずつ歩みを遅くしている為にハルバロス軍の陣形は横陣というよりも矢印のような鋒矢ほうしの陣へと変化を続けている。その事にディアコス軍が気付かないのは陣形を自ら崩して横陣に見せているケーイリオンの指揮による所が大きい。なにしろ進軍中に陣形を変えるという発想と実行を行う為には実力は元より対応力も問われるので,その二つを兼ね備えているケーイリオンが総指揮を執っているからこそ成せる技だ。

 破城槌に大盾とディアコス軍が注目する要素が多く,そこに侵攻途中に陣形の変更が加われば見破るのはかなり難しい。つまりケーイリオンの策は,最初は横陣に見せて城門からも攻めると思わせてゼレスダイト要塞に攻撃を仕掛ける時には鋒矢の陣に成っており破城槌を先頭に戦力を中央に集中させるのが狙いだ。そうする事がディアコス軍の対応が遅れるのと同時に城壁の弓兵も威力を発揮する事が出来ないという訳だ。

 破城槌の上で周囲が見やすいエランだからこそ気づけた点と言える。なのでイクスとハトリは黙ってハルバロス軍の進軍を見ているとエランが指摘した通りに両翼の両端から少しずつ進軍が遅れていく。その間にエランは後方を確認すると当然の様にケーイリオンが居て総指揮を執っているのだが,破城槌から真後ろに居るケーイリオンにまで辿り着くにはかなりのハルバロス兵を倒さない程に破城槌の後ろには多くのハルバロス兵が何層にも成って厚い陣形と成っていた。

 ケーイリオンがこのように中央突破に適した陣形を執った理由がもう一つある。それは破城槌が門を破った時にケーイリオンの前に居る主力と呼べる兵達が一気にゼレスダイト要塞に雪崩れ込む事が出来るようにする為だ。その先陣を任せられたように破城槌のすぐ後ろにはヒャルムリル傭兵団が付いている。先駆けなだけに危険も大きいがそれだけに役目をこなせば大金が保証されるのは傭兵だから当然の様に望むとして,エランが真っ先に突っ込んで敵を混乱させて危険が減ると読みんだ事もあるがエランへの信頼が大きいからこそカセンネは大功を挙げる為に先駆けを選ぶ判断をさせた。

 それぞれの思惑と読みが交錯しながらもゼレスダイト要塞攻略戦は始まっている。エラン達が乗っている破城槌がそれなりにゼレスダイト要塞に近づくと,いよいよとばかりに城壁に居る弓兵達が矢を番える。それをしっかりと見ていたエランがハトリに話し掛ける。

「ハトリ,来るよ」

「分かっているですよ,しっかりと破城槌を守るですよ」

 言葉を発したハトリが両腕を前に出した。その間にもハルバロス兵は破城槌を押し続け,ディアコス兵は矢に火を付けていた。そしてディアコス側の準備が整ったようで,城壁の指揮官が大声で叫ぶ。

「放てっ!」

 言葉の後にゼレスダイト要塞の城壁から一斉に火矢が飛んで来るとハルバロス側でも大声が轟く。

「盾上げっ!」

 その声を聞いて最前列以外が盾を上に挙げて降り掛かる火矢から自分と最前列の兵を守る。そんなハルバロス軍に火矢が降り掛かる,多くの火矢が大盾に弾かれて地面に落ちると踏まれて火が消えた。そして破城槌はハトリが前面に大きく展開したマジックシールドで止まっている火矢の火が消えると地面へと落ちて破城槌の車輪と押している兵達に踏み付けられる。

 巨大な要塞だからこそ敵に放つ為の矢が,かなりの数を揃えてあるのは当然と事だと言える。だから火矢は途切れる事無くハルバロス軍に降り注ぐが全くと言って良い程に損害は出ていない。なにしろディアコス軍はハルバロス軍に合わせて弓兵を広げてしまった為に大盾で防げない程に攻撃が集中する程ではなかったからだ。

 策略通りに事が運んでいるのでハルバロス軍の進軍速度が落ちる事は無いので,エラン達を乗せた破城槌は順調にゼレスダイト要塞の城門へと迫っていく。それを阻止しようと破城槌に攻撃が集中してくるが,ハトリは前面だけではなく両腕を開く様に横に持っていくと両側面にも大きなマジックシールドを展開したので破城槌の表面に塗りたくった泥が役に立つ事無く,全ての火矢がハトリによって防がれていた。

 順調に進軍するハルバロス軍だがディアコス軍に慌てた様子がエランには見て取れなかったので要塞内に相当な数が控えている事が分かった。だからこそ攻撃を受け続けている破城槌の守りをハトリに任せてエランは時を待つ。

 破城槌を完全に守り切る程の巨大なマジックシールドを張り続けるというだけでハトリも普通ではない事を示していたが,味方としては完璧な守りをしてくれるハトリを頼りにハルバロス軍は破城槌を進めて行く。降り止まない火矢を阻みながら破城槌がゼレスダイト要塞の城門付近へと迫るとエランはイクスに言葉を掛ける。

「イクス,行くよ」

「あいよっ! 派手に暴れてやろうぜっ!」

 気合いが入ったイクスの声を聞いてからエランは破城槌の上を走り出し,前が無くなると跳び上がった。傍から見るとただ破城槌の上から跳び下りただけに見えたが,エランの中で抜かれた剣のフェアリシュリットがここで能力を発揮する。再び跳び上がるエランに後ろで見ていたハルバロス軍にも驚く者が居るが,エランが白銀妖精と呼ばれるスレデラーズの使い手という事に慣れた事もあり動揺までは広がらない。そしてエランはまるで空中に足場があるように片足で着地するような動きを見せると身体を倒して前に上にと次々と跳び上がっていく。

 これこそがフェアリシュリット能力だ。簡単に言えば空中に見えない足場を作る剣と言えば分かるだろうが,それだけでスレデラーズに選ばれる程の力とは言えない。それはエランの動きを見れば分かる。エランが跳び上がるとまるで引き寄せられるように前に上に進み空中に片足を付けて着地するような瞬間があるとエランは身体を傾けて角度を決めると弾かれたように跳び出す。つまり膝を曲げてはいないからこそエランの動きに特徴が出る。

 このような特徴が出るのはもちろんフェアリシュリットの能力を使っているからだ。それは空中に見えない足場を作り出して,足場がエランを引き寄せる引力とエランを突き放す斥力せきりょくを持っている。更に足場はエランにも見えないが感じる事が出来るので感覚だけでも自由に動けているのは足場がエランを引き寄せる事も理由の一つだ。もう一つ上げるなら足場はエランが作っているからで何も無い空間から自由に作れ,かなり遠くの空間にまで足場を作る事が出来る。そんなフェアリシュリットの力を使いながら空中を移動し続けたエランはゼレスダイト要塞の城門に迫った。

 城門よりも少し高い所まで迫ったエランがイクスを振り上げるとイクスが一気に燃え上がる。そのまま重力に従って落ちて行くエランはしっかりと瞳で目標を狙う。そしてエランが城門にまで落ちてくるとイクスを一気に振り出して二つの城門の隙間にイクスを斬り込ませた。まるで城門を斬るかのようにエランが燃えているイクスと共に落ちてくる。そして城門の要と成るかんぬきを斬った感触を得たエランは足場を少し後方の地面近くに作り,イクスは燃え上がっている炎を消した。

 城門の端は鉄で覆われる造りに成っているので燃え上がる事は無いが,エランがイクスで斬り裂いた閂は燃えて今頃は城門の内側では大騒ぎだ。そして後方に作った足場に引き寄せられるように身体を引っ張られたエランが片足で足場に着地すると,身体を後ろに少し倒して足場を後方に傾けると今度は弾き飛ばすようにエランの身体が宙に舞う。白銀色の翅が背中から生えているように見えるからこそ神秘的な姿を見せるエランが空中を舞いながら優雅な姿で破城槌の上へと舞い降りた。

「ハトリ,行ってくるからここはお願い」

「分かっているですよ,エランも気を付けるですよ」

「うん,イクス,行くよ」

「あぁ,最大の見せ場にしてやろうぜっ!」

 短い会話を終える頃には破城槌がかなり城門に迫っていたので,城門を守る為に要塞内のディアコス兵達が騒いでいるのが聞こえてくる。それでも城壁からは依然と火矢の雨が続いているのでエランは破城槌から再び跳び出す。高い城門を敵からの目隠しにして左の城壁に狙いを定めて,空中に作った足場に着地したエランは前方左に傾けると足場から跳び出した。そしてすっかり下に気を取られて城壁で矢を放っている弓兵の上を取ると,エランは真上に足場を作り出すしてエランの身体が反転すると片足が足場に付いて角度が決まった途端にエランは一気に降下した。

 突如として斬り伏せられるのと同時に燃え上がったゼレスダイト要塞の城壁に配置していた弓兵達。まさか城壁のよりも上から敵が来るとは思うはずがない,それをやってのけたエランが次々とイクスで火矢を放っていく城壁の敵を斬り伏せていくとやっとディアコス側も攻め込まれた事に気付く。

「て,敵」

 敵襲と叫ぼうとしたディアコス兵が他数人と一緒にイクスによって斬り伏せらながら燃え上がる。流石に大きな要塞だけあって城壁の上もかなり広いので,エランは周囲を気にする事なくデスティブと呼ばれるいつもの戦い方で一気に弓兵を殲滅していく。イクスも常に燃え上がっている訳ではないので,エランが振るって敵を斬る瞬間に一気に燃え上がる。そうする事で敵の鎧を液状化で通過して肉だけを斬り裂きながら燃やす,そして敵を全て斬り終えると炎が消えるのは軽装のエランがしっかりとイクスで防御が出来るようにする為だ。

 念の為というよりこれが正しいフレイムゴーストの使い方なのでエランとイクスは次々と弓兵達を斬り裂いていく。ここまですんなりとエランがイクスを振るって弓兵達を斬り伏せていけるのはケーイリオンの策で弓兵が城壁の左右に大きく散っていた事も有るので,エランは破城槌に攻撃を仕掛け易い弓兵だけを斬り伏せると急に空中に足場を作って片足を付けると今まで斬り進んで来た所を戻るように跳び出して城壁の上に着地する。死体が散乱する中で振り返るエランにイクスが問い掛ける。

「どうしたんだ?」

「城門の上が気になってた」

「何でだ?」

「何かが有る様に高くなってる」

 エランの言葉を聞いてイクスは城門の方に気を向けると,既に破城槌が城門を攻撃しているのが重い音が聞こえるのと同時に城門の高い部分には城壁の上に居るからこそ分かる扉が付いていた。エランは最初から何か有るから気付いていたがイクスは今に成って気付いたからこそエランに声を掛ける。

「今となっては俺様達専用の扉だな」

「うん,イクス,行くよ」

「あいよ,何が有るか知らねえが片付けるか」

 扉に向かって一気に駆けるエランは扉に迫りイクスを振り出すと,イクスが燃え上がり扉を斬り弾いた後にエランは残り燃えている扉を蹴り飛ばして中へと入る。そこには巨大な大鍋を火の魔法で熱している魔法兵に多くの油壺に岩,それらを搬入する為に控えていた筋肉が自慢する程に付いている兵が乱入してきたエランに驚いていた。

 ここは敵地で有り城壁内の室内とも言える広い所で,しかも下では味方が頑張っているのだからエランが執る行動は一つだけだ。一気に駆け出したエランはディアコス兵が理解する暇すら与えずにその場に居る敵を一気に斬り伏せた。流石に室内で油壺もあるのでイクスは炎を出さなかったのでエラン達が居る所から出火する事はなかった。それよりもエランが気になったのは魔法兵が熱していた大鍋だ。だからエランが近づくと大鍋の中には大量の油が入っており,かなりの高温にまで熱せられていた。

「揚げ物が一瞬で焦げそう」

「これを見た第一声がそれか」

 エランの言葉に思わず反応して声を発するイクス。それからエランがよくよく見てみると大鍋が揺れていたので,上を見上げると二つの鉄柱が大鍋を支える為に下に伸びていた。大鍋が揺れているのは鉄柱と大鍋を繋ぐ金具が回転式に成っているからで,大鍋の下には破城槌に破られまいと頑張っているディアコス兵達が見えた。

 古い形式の罠で高温の油を突入してきた敵に浴びせる為に魔法兵が大鍋を熱していたようだ。それに岩も有る事から城門を破って突入しても岩が振ってくるという仕組みだったのだが,エランが突入して全ての敵を斬り伏せたので既に意味を成さないどころか逆の意味で使える。だからエランは熱してある大鍋に近づくとイクスを大鍋の上に突き出して声を掛ける。

「イクス」

「ぎゃはははっ! 面白い事に成りそうだなっ! こういうの大好きだぜっ!」

 イクスが一気に燃え上がると炎を広げて大鍋の油を炎で覆う様に燃え広がり,燃えにくい大鍋の油が炎で燃え上がったのを確認したイクスから炎が消える。するとエランはイクスを引き戻して今度は大鍋の端にイクスを突き立てるとそのまま振り上げて大鍋をひっくり返した。

 城門を守っていたディアコス兵に燃え上がった油が降り注いで,地面にも燃えている油が広がり文字通りに火の海へと変わった。突然の事に慌てふためくディアコス兵に城門を指揮している者にも状況と理解が追い付いていない。そして阻むモノが無くなったハルバロス軍の破城槌がゼレスダイト要塞の城門を打ち破る。城門が重たすぎるのか突撃が出来る程に開かないどころか隙間から見える炎にハトリは声を出す。

「イクスはともかくエランもやり過ぎですよ」

 そう言ったハトリは破城槌の攻撃が止まっている事に気付くと思いっきり息を吸い込むと大声を出す。

「攻撃を続けるですよっ! もう少しで城門を突破ですよっ!」

 ハトリの声が聞こえて破城槌の後ろからハルバロス軍とヒャルムリル傭兵団が一斉に声を上げると,何が見えていようとも攻撃を続けなければいけない責務に気付いた破城槌のハルバロス兵が垂れ下がっている木槌を何度か振るい,大きく後ろに振るうと戻って来る勢いのままに城門へと叩き付けた。その衝撃で城門がまた少し開く。それから二回程に攻撃を加えるとハルバロス軍が突入可能なぐらいに城門が開くとハルバロス兵が素早く動いて破城槌の前後から道を下ろす。

 一番乗りとばかりに後ろに控えていたカセンネとレルーンが駆け上がってハトリと合流すると目の前の光景に思わず声を上げる。

「随分と派手な事に成ってるじゃないかい」

「派手どころかこれじゃあ入れないですよ~」

「なに弱気な事を言ってるんだい。せっかくエランが作ってくれた道なんだから進まないといけないんだよ」

「その通りですよ」

「それが炎の道でもだよ」

 カセンネが言った通りに城門が開いて要塞内への道が開いているが,先程エランが上からばら撒いた油が未だに燃え広がっており城門内の道は炎で燃え上がっていた。その事に流石にカセンネ達と同行してきたハルバロス軍も躊躇う。それもそうだ,なにしろ重装備だからこそ足が遅いので,この炎の中を進めば先に身が焼かれる事が分かっているので進めないでいる。その後ろでラキソスが既に消火活動をする様に指示を出しているが,それを待っている程にハトリもカセンネも消極的じゃない。

「それじゃあ私はエランと合流するですよ」

「あたし達も行くよ,エランだけを戦わせる訳にはいかないからね」

「あ~,も~う,それじゃあ皆行くよっ!」

 レルーンが自棄になって声を上げるとハトリとカセンネが駆け出したので,レルーンとヒャルムリル傭兵団も後に続いて次々と炎の道へ足を踏み入れる。足下に倒れているディアコス兵達に気を付けながら一気に駆け抜けるハトリ達。そして炎の道が終わると消火活動をしているディアコス兵と出くわした。それでもハトリ達は歩みを止める事はしない。

 ハトリは自分の前にマジックシールドを展開させると髪で敵を貫き,カセンネも愛用の両刃斧で敵を薙ぎ払いながら前へと進み続ける。一方のディアコス側はまさかこの炎を抜けて来るとは思っていなかったのでカセンネ達に成す術が無くヒャルムリル傭兵団が一気に城門を突破して要塞の前庭へと出た。



 城門が破られる少し前,エランは大鍋をひっくり返して油を下のディアコス兵に浴びせた後に来た方向とは別の方向に同じような扉が有る事に気付いた。構造上ではどうなっているのか簡単に想像が出来るのでエランはイクスに声を掛ける。

「イクス,反対側の弓兵を片付ける」

「おうよ,一気にやっちまおうぜっ!」

「うん」

 エランがイクスを振り上げながら駆け出すと扉に向かってイクスを振り出すのと同時にイクスが燃え上がると,火を灯しながら扉は斬り弾かれた。残って居る部分を再び蹴り飛ばすエランにディアコス軍の弓兵達は驚いて手が止まると,ディアコス兵が状況を理解する前にエランが一気に跳び出してイクスを振り抜きディアコス兵を燃やしながら斬り伏せていく。

 いつの間にか指揮官もイクスに斬られており,弓兵達が敵襲だと気付くのが遅れた事もありエランは敵が動けない間にかなりの数を斬り捨てる。そのうちに敵襲だと気付いたディアコス軍は弓を捨てて剣や槍を手にし始める。それを確認したエランは一旦距離を取る為に一気に城門の辺りまで退いた。

 下から突撃してくる声が聞こえて来たので破城槌が城門を破ってハルバロス軍が突入してきたのが確認する事が出来た。こうなると城壁にこだわる必要が無いのでエランはイクスに声を掛ける。

「イクス,下に降りるから,ブレイクスレッドホース」

「んっ,そんなに大きいのが必要か?」

「さっき見えたけど要塞と庭の間に柵が築いてある」

「なるほどな,なら行くぜっ!」

 イクスが白銀色の輝きを放つと一気にその形が変わり大きく成っていく。そして白銀色の輝きが消えるとエランが持っているのが不思議なぐらいに巨大な剣へと変わったイクスにディアコス兵は驚きを示している。それぐらいはエランも予想していた,それも含めてブレイクスレッドホースを選んだのだから。そのエランが敵が居る前ではなく要塞の方へと向かって駆け出して,一気に城壁から跳び下りるのだった。




 さてさて,いよいよ攻城戦が始まりましたね~。何か最初から派手な展開に成っているけど,これがスレデラーズという特別な力を持つ者が戦場に出るとここまでの戦力的な差が出る事が伝われば良いな~,とか思っています。

 さてはて,ツイッターでも報告しましたが第三章のプロットがやっと書き終わったので,今では第四章の設定やプロットを作りながらも第二章を優先的に進めて行きたいなと思っております。まあ,第三章が始まるまでだけどね。それまでの間に更新期間が短くなる,と勝手に祈っております。

 さてさて,第二章は三十話以内に収まりそうな勢いだと勝手に思っていますが……そうなれば良いなっ!! と叫んでみたけど先の事は分からないけどね~。まあ,私の事だから変に長くなりそうだけどね~。それでも第二章も終盤なのでここから一気に盛り上がって行きたいですね~。

 まあ,私自身は盛り退がっているけどね。いやね,何か最近は二度寝をしないと頭が白いだけじゃなく,逆らえない程の眠気に襲われるのですよ。まあ持病持ちだから仕方ない部分もありますけどね,そんな訳で私のテンションは低いですけど物語の内容はハイテンションで送れたら良いなと思っております。と勝手な事を言ったところでそろそろ締めますか。

 ではでは,ここまで読んでくださり,ありがとうございました。そしてこれからも気長によろしくお願いします。

 以上,最近ではYouTubeを見る事が多くてホロライブを推している葵嵐雪でした。お嬢かわ余。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ