第二章 第二十二話
第三軍の出立が遅かった事もあるが,それ以上に破城槌の移動速度が遅いので第三軍の進軍速度は遅かった。それだけに破城槌と進軍している者達もゆっくりとした足並みで進軍しており,それはエラン達に同じ事が言える。そしてモラトスト平原の本陣から数時間後には辺りが暗くなり始め,空は焔に焼かれると進軍を停止して休息に入る為に簡易的な天幕を張るように命令が行き通りヒャルムリル傭兵団も自分達の天幕を張り始める。
他の者が今夜の寝床を作っている間にエランとハトリは少し離れた所にまで歩を進めていた。タイケスト山脈から反対側に見えている沈んで行く太陽を見ながらエランの髪で遊ぶように風が白銀色の髪を揺らす。風が遊ぶのをそのままにエランは隠れていく太陽を見ながらふと口を開く。
「……甘味」
「残念ながら今日は非常食ですよ,目的地であるゼレスダイト要塞に着くまでおあずけですよ」
「……残念」
「少しぐらいは我慢するですよ」
「うん,分かった」
「まったくですよ,どっちが年上なのか分からないですよ」
「ハトリ」
「違うですよっ! そして断言しないで欲しいですよっ!」
「……おしい」
「おしいどころかかすりもしないですよっ!」
「ってか何でいきなり漫才をしてるんだ」
「甘味が恋しいから」
「エランが訳が分からん事を言ってるぞっ!」
「まあですよ,ヒャルムリル傭兵団に期待だけはしておくですよ」
「うん,かなり期待してる」
「それはそうとだな,エランよ,何でこんな所に来たんだ?」
イクスが問い掛けるとエランはすぐに答える事はなかった。ただ沈みゆく夕日を見ながら黙り込んだのでエランが言葉を発しないからイクスとハトリはただただ黙ってエランの言葉を待っているとやっとエランが言葉を出してきた。
「夕日が,綺麗だから」
「それだけか?」
イクスが問い掛けるとエランは言葉を選ぶように少しの沈黙を置いてから話を続ける。
「日は沈まない,見えなく成るだけ。日の光がなければ何も見えなく成る,光が届かない暗闇の方が落ち着く時がある。それだけ」
「スレデラーズか?」
「うん,見えないけど少しだけ焦りと心地良さもある」
「確かにですよ,今は騒がしくても居心地は良いですよ。それでも後戻りは出来ないですよ。あそこには何も無いですよ」
「うん,だから,そう感じると思う」
『……』
黙り込むイクスとハトリ。今まで旅をしてきた,とは言っても長い間と言える程に旅をしてきた訳ではないエランだからこそ,旅をしている間に自然と出来た強い絆に葛藤している。その事に戸惑いが生じているが,それ事態が悪い事ではないのだがエランにはスレデラーズを手に入れるという目的が有るからこそ次の戦いが終われば別れが待っている。その別れにほんの少しだけ後ろ髪が引かれる心境だ。
初めて感じる別れる事が分かっている感覚,強い絆が出来たからこそ心地良さを感じていつまでも居たいと思うが,早くスレデラーズを手に入れる為に動きたい。そんな二つのモノがエランの中で交互に揺れ動いていた。とはいえ最終的な結果に何ら変わりはないのはエランがその為に旅をしているからだ。
言うなれば一時的な感情に自分が揺れているのだと気付いたエランは右手を斜め上に挙げて声を出す。
「イクス」
「あいよ」
エランの心が分かっているからのようにイクスが反応して鞘から一気に飛び出るとエランがイクスを握る。それからエランはイクスを上に振り上げて一気に空を斬り裂いた。それから少しの間だけイクスを振り下げた態勢を取り続けるエランは気が済んだように自然体に戻ると再びイクスを握った右手を斜め上に挙げてイクスに言葉を投げかける。
「イクス,ありがとう」
「気にすんな」
短いやり取りをした後にエランはイクスを握っている手を開くとイクスは再び宙を舞い鞘に収まる。斬り裂いた事でエランは瞳の奥で雲間が切れる,差し込む光がエランが決めた道を指し示す。そしてエランは再び静かに佇んでいるとレルーンの声が聞こえて来た。
「エラ~ン,探したよ~,そろそろ夕食だよ~」
声が聞こえた方へと振り向くエランとハトリ,馴染みとなった和やかな笑顔で向かって来るレルーンが来たのでエランは返事をする。
「分かった」
それだけを言ってレルーンと合流しようとするエランとハトリ。いつものが当たり前と成った賑やかな心地良さを感じながらエランはヒャルムリル傭兵団の簡易天幕に向かって歩き始める。そして今だけはこの感じを楽しもうとエランは瞳の奥で小さな輝きを灯すのだった。
ゼレスダイト要塞,ディアコス国とハルバロス帝国の国境近くにあるディアコス国に取っては国防の要と成る砦の一つである。そのゼレスダイト要塞では多くの兵が行き交って慌ただしい有様だ。なにしろモラトストの戦いで撤退した兵に加え,負傷兵も数多く居るので元から要塞に常駐していた兵達も負傷兵の手当や撤退兵を世話したりと大忙しだ。それでも手際良く熟しているのは要塞司令官ファウビス=レムスの手腕によるものだ。
ファウビスはカンドからの伝令が届くとすぐに負傷した兵が押し寄せてくると読んで備えただけではなく,撤退戦だからこそ兵が疲れ切っているので多くの兵が休める場所を用意した。それと同じくハルバロス軍が侵攻してくる事も充分に予測が出来たので既に物見の斥候を放っている。だが予想外な事もあるのも現実だ。
撤退してきた兵が多過ぎた。確かにゼレスダイト要塞は防衛の要と成り得る程に大きな要塞だが撤退してきた一万近い兵を受け入れる程の大きさはない。だからこそ騎馬隊の馬を馬車の馬にして動かしても大丈夫な負傷兵や戦えない兵を馬車に乗せて後方へと送っている。数が数だけに荷馬車にまで兵を乗せて後方へと送る程だ,それだけで馬車の数が足りなそうに思えるがファウビスはカンドからの第一報を聞いて近隣の村や町,商人から馬車を買い揃えて兵を後方へと送っては戻すのを繰り返している。
騎馬隊の馬を馬車に当てた時点で籠城戦を決めている事はファウビスの直臣達にも分かっていたので,既に首都への援軍を頼む程の手筈は済んでいる。後はどの程度ハルバロス軍の攻撃を堪えきれるかだ。とは言ってもモラトスト平原からゼレスダイト要塞まではかなりの距離がある。実際にまだ要塞に辿り着けていないディアコス兵も多い,それを追うようにハルバロス軍が進軍してくるのなら時間を有意義に使いたいとファウビスは考えていた。
ゼレスダイト要塞の最上層にある執務室で机の上に大量の書類を山積みにしながら羽筆を走らせる人物,茶色く少し長い髪に赤い瞳をしており三十代前半に見える男性こそがファウビス=レムスである。
若くしてゼレスダイト要塞の総司令に選ばれただけあって山積みの書類を手早く処理していく。書類の内容は負傷兵の容態と処置,疲労している兵の引き揚げに馬車の運行と熟す仕事は多い。それでもファウビスは的確かつ正確に熟してくので現場の動きは速かった。このような激務を熟しているファウビスも一人の人間なので当然ながら疲れが溜まっているから休憩とばかりに羽筆を置いて背もたれに寄り掛かりこれからの事を考える。
カンド将軍が敗れた知らせが来てからたった一日,こちらが援軍を出す準備をしている間に決着が付いてしまった。それだけモラトストでは何かが有ったのだろう,戦況が一気に動く何かが。そうなると援軍を要請するのが遅かった気もするが悔やんでも仕方ない,このゼレスダイト要塞を預かっているからこそ何が有っても渡す訳にはいかない。そうなると……今は最大限の兵力に頼るしかないか。そうは言っても要塞の外に兵を出しては見殺しにするようなもの,打てる手は……一つか。
攻める予定が攻め込まれるのが目に見えている,ファウビスはこのような心境を持っていた。モラトストの戦いで膠着状態だと聞いていたからこそファウビスは援軍を出す手筈をしていたのだが,逆に要塞を守る為に守備を固めなくてはならなくなった。カンドの戦死を聞いてから一気に事態が転じたのでモラトストで何が起こったのか分からないままにファウビスは出来うる限りの事をするしかない現状にもどかしさを感じるのだった。
翌日,エラン達の第三軍はゆっくりと行軍していた。荷物となる破城槌もあるが重装備を主力としてハルバロス軍だけに身軽なエラン達とヒャルムリル傭兵団からすれば遅い進軍となるのは当然だ。そのうえ平原なだけに代わり映えのない景色に飽きてきたイクスが声を発する。
「こうも平野続きだと見飽きてきたな」
「エランに背負われている剣は黙っているですよ」
「俺様には足がねえから仕方ねえやな」
「無駄に威張るなですよ」
「けどイクスの言う事も最もだよね~」
「ほらですよ,変なのが乗ってきたですよ」
「変なの呼ばわりっ!」
「なら頭の中が狂ってる奴だ」
「イクスまで酷い事を言ってきたっ!」
「レルーン」
「んっ,エラン何?」
「五月蠅い」
「エランもちょっとは会話しようよっ!」
「断る」
「即答で拒否されたっ!」
このような調子で進軍中とは思えない賑やかさに為るエランの周りだけは和やかな雰囲気になっていた。こうなるのもある意味では仕方ないとも言えるのは予想通りに敵襲が無いからだ。元より撤退した兵を再び出すのには時間が掛かる上に,ここもモラトスト平原なのだから見晴らしが良いので奇襲は出来ない。それにディアコス兵は味方を逃がす為に多数の負傷者を出しているのはハルバロス軍も確認しているからこそ,無駄に兵力を割かないと読んでいる。それはエランも同じで最低限の警戒だけに留めている。
エラン達が居る第三軍の進軍速度が遅いので後続部隊が追い付くと思われたが,それも無く夜を迎えた。行軍途中という事もあり,組み立てが簡単な簡易式の天幕が張られてエラン達はヒャルムリル傭兵団の所で疲れていない身体を休めていた。簡易式の天幕なだけに壁とも言える仕切りがなく屋根となる天井の布地が張られた下で鞘に収まったイクスの切っ先を地面に付けながら座っているエラン。その両脇にハトリとレルーンが居た。
「それにしても,まだ着かないよね~」
今日も歩き続けた事に愚痴をこぼしてきたレルーンにハトリが正論を述べる。
「目的地に辿り着く為に歩いているですよ」
「そうだけどさ~,ゆっくり過ぎない」
「こちとら重装備の方々と破城槌まであるんだから仕方ねえやな」
お喋りとなれば参加したくなるイクスも声を発する。
「いつになったら着くんだろうね~」
「明日」
「あっ,エランが断言した」
「予定なら聞いてた」
「あ~,そんな事を誰かが言ってたね~」
「そんな事すら忘れるですよ」
「それでこそレルーンの姉ちゃんだ」
「む~,ハトリもイクスも酷いよ~。それはそうと破城槌にはエラン達が付くんだよね?」
「うん,城門を破るまでハトリが守る」
「へっ,エランは?」
「城壁の敵を斬る」
「どうやって?」
「登って」
「登れるの?」
「……」
「へっ,エラン?」
いきなり黙り込んだエランに困惑の表情に成るレルーン。そんなレルーンに向かってエランが言葉を放つ。
「質問が多過ぎる」
「ごめんなさいでしたっ!」
別にエランは怒ってはいないのだがノリで思いっきり謝るレルーンに周囲から軽く笑いが起こる。そんな周囲を全く気にする事無くレルーンは話題を変える。
「そういえば進むのが遅いから後続部隊が追い付くと思ったよ~」
「第四軍にはケーイリオン将軍がいるですよ,この第三軍より慎重に成っても不思議ではないですよ」
「それに荷物もある」
「荷物って?」
エランが発した言葉に疑問を得たレルーンが問い掛ける。
「水や食料,それに替えの武器に備品」
「あぁ~,荷駄隊が居るんだね~」
「それぐらいは想像が付くですよ」
「それが出来ねえからレルーンの姉ちゃんは面白いんだよな」
「イクスは酷すぎるよっ!」
「現実で真実だな」
「過酷すぎるっ!」
「どうやっても漫才になるですよ」
『違うっ!』
イクスとレルーンが同時にハトリの言葉を否定する。それでもハトリの言葉に同意するかのように周囲のヒャルムリル傭兵団員からは抑えた笑い声が聞こえる。そんな楽しげな雰囲気に成っているとカセンネが戻って来るなりレルーンに向かって口を開く。
「レルーン,夕食の配給が始まったから取ってきな」
「えぇっ! 何で私なんですかっ!」
「昨日今日とサボりすぎだよ,ちっとは副団長として働きな」
「は~い」
副団長という立場を出されては従うしかないレルーンはゆっくりと立ち上がると屋根だけが天幕内を歩き出したので,エランも夕食を取りに立ち上がろうとするとカセンネに止められた。
「エラン達は休んでて構わないよ」
「随分と好待遇をするですよ」
「なに,エラン達と一緒に戦えばこちらが楽に儲けられるからさ」
「納得ですよ」
カセンネの言葉に甘えて再び座り直すエランにカセンネはゼレスダイト要塞での戦いについて問い掛ける。
「それで,さっきもレルーンが聞いていたみたいだけど城門を突破するのは簡単そうだね。それを含めてあたし達にやって欲しい事はあるかい?」
自分達の役目は何かとエランに投げ掛けるカセンネにエランは少しだけ考えてから口を開く。
「城門が開いた直後が一番危ない。けど,安全が確認出来れば敵しかいない」
「つまり破城槌の後ろに付いて行けって事かい」
「重装備のハルバロス軍では侵入が遅い」
「なるほどね,真っ先にあたし達が当たって道を作れって事かい」
「ハルバロス軍を行かせるよりかは早く攻められる」
「それもそうだ」
「とはいえですよ,ディアコス軍が要塞の外に出ていないと要塞内で待ち構えているですよ」
「うん,なるべく切り崩す」
「つまり俺様達が大暴れをすれば良いって事だなっ!」
「また駄剣が騒ぎ始めたですよ」
「このガキはわざわざ言ってくるんじゃねえっ!」
「はいはいですよ,分かったですよ」
肩をすくめてイクスの言い分を受け流すハトリにイクスは何かを言うとするが,先にカセンネが発言をする。
「要するにエラン達が先に入って引っかき回すって事で良いかい?」
「うん,そうするつもり」
「あいよ,ならあたし達は崩れた敵を倒していくとするかね」
「夕食を持って来ましたよ~」
話が一段落したところでレルーンが配給された夕食を持って来たので会話が終わるのと同時に大板の上から各自の夕食を取っていく。流石に行軍中なので布陣している時のようにしっかりとした夕食ではなく,保存食と乾物をお湯で戻した物だけだが栄養は充分にあるので味は二の次と成っている。それでも夕食には変わりないのでエランとハトリは手を合わせる。
「いただきます」
「いただきますですよ」
味気ない食事を終えるとレルーンが干した果物を出してきたのでエランは真っ先に手を伸ばし,ほのかな甘味をしっかりと味わった。それから束の間に会話が弾むが明日も行軍の為に歩き続けるので早めの就寝と成った。
翌日も隊列が整うと行軍を始めて歩き出す。エランは昨日までは破城槌の近くに位置取っていたが,ここまで敵襲が無いという事は敵がゼレスダイト要塞に立て籠もっている事は明白なので今日は隊列の一番外側を歩いていた。理由は簡単で周囲の景色を見たかったからだ。
エラン達が歩いているのは未だにモラトスト平原なので多少の起伏がありながらも草原地帯が広がっている。特にエランはタイケスト山脈とは反対側を歩いているので右を見れば草原の地平線が見える程に広大な草原が広がっている。これだけ広い草原があるのだから馬の育成が盛んなのが良く分かる。そんなモラトスト平原をそよ風が駆け抜けるとエランの前髪を揺らし草が波打つ光景を見ながら行軍は続く。
目的地と成るゼレスダイト要塞が近いのか昼食は歩きながら食べられるようにパンと布製の水入れが配られた。なので行軍を止める事なく,各々にパンをかじり水を飲みながら行軍を続ける。そんな昼食を終えて少しだけ日が傾くと塔の先端みたいな物が見え始め,歩き続けると徐々に全貌が見えて要塞だと一目で分かる。あれこそが目的地のゼレスダイト要塞なのは言うまでもない。
周囲を高い城壁に覆われて大きな城門が二つ見えるが,角度から言って二つしか見えないが東西南北に一つずつ有るようだ。その奥には要塞と言うより城とも言える立派な建物がそびえ立っていた。そんなゼレスダイト要塞から離れた所にハルバロス軍の旗が翻り,先に発ったハルバロス軍が陣営を築いていた。なのでエラン達が居る第三軍もそこを目指して歩みを進めて合流する。
陣営に到着すると同行したハルバロス軍とヒャルムリル傭兵団はすぐに自分達の天幕を張り始めたので暇になったエラン達は陣営内に入れられた破城槌の元に居た。その破城槌を後ろにしながらエラン達は見えるゼレスダイト要塞について話し始める。
「要塞と言うより城ですよ」
「随分とご立派な事だな」
「防衛の要だから」
「確かに普通なら落とすのに苦労しそうですよ」
「イブレの野郎,それも含めて俺様達を押したんだろうぜ」
「イブレがやりそうな事ですよ」
「けど落とせる」
「まっ,俺様達なら当然だけどな」
「けどこちらの破城槌は一つですよ,それを見れば戦力が一点に集中するのは敵にも分かるですよ」
「敵も数を集中してくる」
「なるほどですよ,こちらが数の優位を捨てて一点に集中すれば敵も戦力を一点に集中するしかないですよ」
「あの総大将様はそこまで考えての作戦だろうな」
「たぶん」
「流石に堂々とエラン頼みと言っただけはあるですよ」
「俺様達だろうが」
「つーん」
「あからさまに無視すんじゃねえ」
「それでエランは具体的にどうするですよ?」
「無視し続けやがったな」
「近くまではハトリと居る」
「なら破城槌が攻撃に入る直前ですよ?」
「うん,イクスもそれで良い?」
「あいよ,存分に暴れてやろうぜ」
「分かってる,一気に終わらせる」
『……』
エランの言葉を聞いて沈黙するイクスとハトリはエランがスレデラーズの事を気に掛けている事に気付いているからこそ黙り込む。スレデラーズを集める事がエランの目的だからこそスレデラーズがある場所が分かれば向かいたい気持ちがある。だが目的を成す為には路銀も必要不可欠だからこそイブレはエランに詳しい事は言わなかった。それはエラン自身も良く分かっているし,イクスとハトリも分かっているから何も言えないのが正しい。だから今は目の前に有る要塞を落とす事だけを考えるエラン達だった。
各地の天幕が張り終わる頃にケーイリオンが居る第四軍が到着して本陣が築かれ始める。そして夕暮れの紅が広がる頃には荷駄隊が居る第五軍が到着するが,周囲が暗くなり始めたので荷駄はそのままにメルネーポの指揮で他の天幕に割り振りられた。そして日付が変わる。
辺りが明るくなるとすぐにハルバロス軍は動き出して本格的に本陣と陣営を築き始める。隠しようのない破城槌は中間地点に置きながらも次々と天幕が張られて荷駄隊に預けていた武器や防具が戻されるのと同時に各設備も設置されていく。そしてお昼にはしっかりとした昼食が配られたのでハルバロス兵も傭兵も,そしてエラン達も含むヒャルムリル傭兵団も満足が行く昼食を取る事が出来た。
その一方でディアコス軍はまったく動く気配は無いどころか目の前でハルバロス軍が展開しているのを静観している。それだけでディアコス軍が籠城を元に援軍を待っているのが誰の目にも明らかだ。だからこそケーイリオンとしても手早くゼレスダイト要塞を落とさないといけないが焦りはなかった。それどころか悠々自適に振る舞い,本営の設置を急がせる事もなかった。なので全ての準備が終わったのは夕暮れ時に成ったのでケーイリオンは翌日にゼレスダイト要塞への攻撃を指示する。
ケーイリオンの命令がエランの元に届いたのはヒャルムリル傭兵団の天幕で夕食を待っている時だ。その命令を聞いてもエランはいつも通りに返事をするだけで特に言う事はなかった。それはヒャルムリル傭兵団員も同じですっかりエランの雰囲気に馴染んでいる。
明日はいよいよ決戦と呼べる攻城戦が開始されるが,エランはいつも通りにレルーン達と夕食を共にして寝床に入るなりハトリを抱き寄せて意識を静かな森の中に入れると寝息を立てる。そして日の光が空を照らすと決戦の朝を迎えるのだった。
え~,PCがいろいろと固まってすっかり更新が遅くなりました。しっかりと動いてくれてたらもう少し早く更新が出来ていたんですけどね~。それと役所仕事はもうちょっと柔軟に対処しろやっ!! と私的な苦情を叫んでみました。
さてさて,いよいよ第二章も終盤ですね~。やっと第二章の終わりが見えてきた事に一安心しておりますが,未だに第三章のプロットが完成していない事に焦ったりもしております。まあ,何にしても文字数を少なくして更新速度が上がっているので,今後もこのペースを保って行きたいですね。
まあ,今週は今まで死んでいた分だけ一気に上げましたが,今後は土曜日辺りに更新が出来るようにやって行きたいです。必ずしもそうなる訳ではないので今後も気長にお待ちしてくださいな。という懇願をしたところでそろそろ締めましょうか。
ではでは,ここまで読んでくださり,ありがとうございました。そしてこれからも気長によろしくお願いします。
以上,今日はこれから第三章のプロットを頑張るかと,意気込みだけはある葵嵐雪でした。




