表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白銀妖精のプリエール  作者: 葵 嵐雪
第二章 戦場の白銀妖精
30/82

第二章 第十五話

 戦場の近くで休んでいるとはいえ,すっかりのんびりとした雰囲気に成った休息所でエランは少なくなった桜桃を指で拾って口の中に放り込むと程良い甘みが広がり,エランは瞳の奥で満足さを満たすとふと思った事を口に出す。

「イブレ,敵の総数は分かる?」

 いきなりそんな質問を投げかけてきたエランにイブレは少しだけ考えると答える。

「ディアコス軍は両翼を投入していないからね。戦力的にも多くは減っていないと思うよ」

「そう」

「それでエラン,何で僕にそんな事を聞くんだい?」

 今度はイブレからエランに問い掛けると,エランは桜桃を一つ摘まむと口の中へと放り込んで甘みを堪能してから答える。

「敵の人数が多いのなら次の戦いが始まる前に仕掛けてくる可能性がある」

「なるほどね,けどそれは無いと僕は考えるよ。このモラトスト平原は奇襲に向いていないしディアコス軍が撤退する場所が限られているからには下手に仕掛けてくる事は無いよ」

「分かった。それでケーイリオン将軍は攻め取るつもり?」

「だろうね。だからここでの仕事を終わらせれば,しばらくは旅費に悩ませずに済むよ」

「なら頑張って稼ぐですよ」

「どうやらエランに乗ったのは正解みたいだね」

 ハトリの言葉を聞いてカセンネがそのような言葉を発すると,心強いとばかりにメルネーポは頷いた。そんな中でレルーンだけがまったく話を聞いてはおらずハトリの髪をいじくっていた。その為にとうとうハトリから苦情が出る。

「それはそうとですよ。そろそろ人の髪で遊ぶのを止めて欲しいですよ」

「え~,いいでしょ。それにしても不思議だよね,ハトリの髪ってこんなにも普通なのに堅くなったり浮いたりして。なんで?」

「……話したくないですよ」

「じゃあ聞かないよ~」

「んっ,随分とあっさり引くじゃねえか,レルーンの姉ちゃんよ」

 イクスがそんな声を発すると,やっとハトリの髪から手を離したレルーンがイクスに向かって手を扇ぎながら口を開く。

「私だって,そこまで無神経じゃないよ~」

「無知の間違いじゃないか」

「イクス酷いよっ!」

 イクスとレルーンの会話に自然と周囲から笑い声が広がる。そんな雰囲気を引き締めるかのようにカセンネは話題を変える為に口を開く。

「レルーン,そろそろ遊びはそこまでにしときな。ここからは時間が戦いの勝敗を決めるようなもんだからね」

「へっ,どういう意味ですか~,団長」

「時間が掛かればカンドを取り逃がす」

「エランの言う通りだよ。この戦いはエランがカンドを討ち取れるかに掛かってる,それを補佐してるあたし達がエランに付いて行けないようじゃ話にならないって事だよ」

「うむ,確かに」

 カセンネの言葉を聞いてメルネーポがその通りとばかりに頷くのを見たレルーンは笑って誤魔化すと,ハトリとカセンネは思いっきり溜息をついた。そしてこの戦いでは主役ともいうべきエランは右手で一気に桜桃と取るとかじるように口にしていた。そんな中で疑問が頭の中に浮かんだメルネーポがイブレに向かって話し掛ける。

「そういえばイブレ殿,ディアコス軍が撤退していると言っても,何処まで撤退すると思いますか?」

「丘の上から南西に向けて撤退しているのが見えましたからね。まず間違いなく,ゼレスダイト要塞でしょうね」

「やはりそうですか」

「んっ,メルネーポは敵がそこに行く事を予想してたの?」

 会話に割り込んできたレルーンの質問に対してメルネーポは頭を横に振ってから答える。

「いや,私ではなくケーイリオン将軍はそこまで考えていたらしい」

「そこまでって?」

 立て続けの質問にメルネーポはどう答えようか迷い出すとエランが口を開く。

「ハルバロス軍も意味無く戦争はしない」

「というと?」

「質問ばかりしないで少しは自分の頭で考えて欲しいですよ」

「ハトリの言う通りだね」

「あははっ……」

 質問攻めばかりしていたレルーンに対してハトリが斬り込み,カセンネが同意する言葉を発すると再び笑って誤魔化すレルーン。そんな光景にイブレは軽く笑うと今までの質問をまとめて答える。

「そもそもハルバロス軍がここまで大規模な軍勢で進軍したのはディアコス領を得る為なんですよ。それを向かい討つ為にディアコス軍も軍を発して,このモラトスト平原で両軍がぶつかりました。ディアコス軍としてはハルバロス軍を撃退するだけで良いのですけど,ハルバロス軍としてはディアコス領を得る為の足がかりとして城砦の一つでも落とさないと攻め入った意味が無いんですよ」

「あぁ~,なるほど」

 イブレの言葉にやっと納得したレルーンに対して,ここまで言われないと分からないのかと大袈裟に溜息をついたカセンネに対してもレルーンは無視する事にしたようだ。そんな事をしている間に最後の一粒となった桜桃を口に放り込んで甘味を堪能したエランが突如として立ち上がったのでメルネーポが尋ねる。

「エランどうした?」

「休憩は終わり」

「んっ,……どうやらそのような」

「さて,ここからは急がないとカンドを取り逃しちまうよ。全員準備をしなっ!」

 カセンネがそのような檄を飛ばすと察したヒャルムリル傭兵団とヘルメト隊が一斉に動き出すが,レルーンだけが何なのか分からずに戸惑って声を挙げる。

「へっ,えっ,皆どうしたの」

「まったく,あんたは時折間が抜けているのをどうにかしな。まっ,すぐに分かるよ」

 そう言われてもという顔をしているレルーンに質問をさせないかのようにエラン達の元へ駆けてくる甲冑の足音が聞こえて来て,レルーンがそちらに顔を向けると一人のハルバロス兵がこちらに駆けてくるのが見えた。そしてエラン達の元へ辿り着くとハルバロス兵は口早に言葉を出す。

「伝令っ! ケーイリオン将軍から白銀妖精を始め,ヘルメト隊とヒャルムリル傭兵団は戦線に復帰せよとの事ですっ!」

 しっかりと休んでいる全員に聞こえるように声を轟かせる伝令のハルバロス兵にメルネーポが応答する。

「承知した。ケーイリオン将軍に急いで最前線に戻るので,その旨を伝えよ」

「はっ,了解しました」

 伝令のハルバロス兵は敬礼をすると去って行く。するとイブレも立ち上がってエランに話し掛ける。

「さて,僕も戻るとしよう。エラン,ここでカンドを取り逃してしまうと次の戦いは相当な苦戦を強いられる事になるからね」

「分かってる,確実に斬る」

「心配は無用って事だね。それじゃあ僕は山積みに成っている仕事を片付ける為に戻るよ」

「そもそも仕事を山積みにしているのに来るなですよ」

「先に山積みの仕事を片付けろよ」

「ははっ,イクスとハトリの意地悪を聞いた事だし,さっさと戻るとしよう」

 いつもの微笑みのままにイブレは歩き出してエランに見送られると,今までのんびりとしていた雰囲気が一転,一気に慌ただしくなりエラン達の後方では再出撃に向けて準備をしていた。それに今までの話が聞こえ伝わっていたようで,ここからは時間が大事だという事が全員に伝わっていたかのように,急ぎながらも確実に準備をしている。

 メルネーポとやっと状況を理解したレルーンがいつの間にかそれぞれの部隊を指揮して準備をしているのを,今はやる事が無いエラン達はただ静かにゆっくりと待っていると自分だけの準備を終えたカセンネが再びエランの元へと戻って来ると話し掛ける。

「さて,皆の士気も高いままだからね。エラン,遠慮せずに前に進んで構わないよ」

「分かった,そうする」

「それにしても団長さんよ,肝心の頭がエランと喋ってて良いのかよ」

「構やしないよ,あたしが全部指揮しなければ動けない程に無能ばかりではないのさ」

「はいはい,さようですか」

 見事なばかりにイクスが放った意地が悪い言葉を受け流したカセンネは勝ち誇った笑みを浮かべた。すると後方から重たい馬が歩く音が聞こえて来たので,エランとハトリ,そしてカセンネがそちらの方へと向くと,立派な馬と馬飾りにまたがった豪勢な重装備な鎧を身に纏った者がエラン達の元へと馬を歩かせて来た。そしてエラン達の前で止まると兜を取った。

「おいおい,良いのかよ」

「物見遊山にしてはどうかと思うですよ」

「それだけこちらの思惑通りって事だね。だからこそエランを見に来た,って事で良いですかい,ケーイリオン将軍」

 兜の下から現れた顔は確かにケーイリオンであり,カセンネの言葉を聞いて笑みを浮かべたケーイリオンは豪快に笑う。

「がはははっ! 確かにカセンネの言う通りよ。少し訂正するなら,こちらの思惑以上の展開に成っているから,ここまで物見遊山をしに来ただけの事だ」

「味方が戦っているのに余裕ですよ」

「なに,それだけ我が軍の将も無能ではないという事よ。それにメルネーポも頑張っている事だしな,激励を兼ねて来たという事で構わんだろ」

「というか,後付けの理由に聞こえるな」

「そもそもここに来る理由が無いですよ」

「がはははっ! ハトリもイクスも言ってくれるな,なればこそ面白いというモノよ。それでエラン,カンドは討ち取れそうか?」

「今日中に,必ず」

「がはははっ! それでこそスレデラーズの使い手という者だっ!」

 エラン達との会話を確実に楽しんでいるケーイリオンの笑い声が遠くまで聞こえたのみたいで,メルネーポが駆け足でエラン達が居る所まで戻って来ると素早く敬礼をして口早に言葉を出す。

「ケーイリオン将軍,このような所までお越しとは何か問題でも?」

「万事順調よ,なればこそ今日の戦いで主役である其方達の激励に来たまでの事だ」

「そのお心遣いに感謝します」

「うむ,メルネーポよ,儂の事はひとまず置いて自分がやるべき事に戻るが良い」

「はっ! では失礼します」

 再び敬礼したメルネーポがヘルメト隊をまとめる為に再び戻って行く姿を見送ると,ケーイリオンはカセンネに向かって話し掛ける。

「ときにカセンネよ,エランと共に最前線に居るのはどうだ?」

 そんなケーイリオンの言葉を聞いてカセンネは大きな両刃斧を頭の後ろに回して両肩で担ぐと楽しそうに口を開く。

「久々に血湧き肉躍るってところですね」

「なるほどな。ふっ,儂ももう少し若ければ良かったのだがな」

「まっ,これに関しては傭兵で有り,まだ激戦でも戦える者の特権なんですよ」

 そう言ってお互いに笑みを向け合うカセンネとケーイリオンに何かを感じたイクスが声を発する。

「随分と二人とも仲が良さそうじゃねえか,いったいどういう関係だ?」

「なに,あたしが駆け出しの頃にケーイリオン将軍に世話になっただけの事さ」

「ふっ,あの時からお前には可能性を感じたからこそ我が軍へ誘ったのだがな,断られてしまっただけの事よ」

「ヒャルムリル傭兵団,それがあたしが目指していた一つの理想だったからね。あたしがこの傭兵団の団長をやっているのも,そんな事を見てきたからさ」

「それを言われては儂としても言葉が無かったわ」

「……生きるのは戦うのと同じ」

 エランが突如としてそのような事を言うとカセンネとケーイリオンは,その通りとばかりに鼻で笑うとカセンネから口を開く。

「弱さを嘆いても訴えても誰も聞きやしない,だから戦うのさ,生きる為の強さを得る為にね」

「動物とて生きる為に戦う,人も獣と一緒という事だ。戦い,勝って,いろいろなモノを手に入れようとする。その戦いで弱い者が苦しんでいるのを見ない振りをしながら戦いが続けられるのが現実だ」

「……けど,私はある安息を得たい」

 カセンネとケーイリオンの言葉を聞いたエランが呟くように,そのような言葉を発するとカセンネとケーイリオンは驚いた顔をした。まさか今まで誰よりも勇猛果敢に戦っていたエランから,そのような言葉が出るとは思っていなかったからだ。だからと言って二人ともエランの言葉に対して追及するような言葉を発する事無く黙り込んだ。

 カセンネにはカセンネなりの戦う理由,ケーイリオンはケーイリオンなりの戦う理由があり,それはエランも同じであり,戦いを求める理由が有るからこそエランは戦い続けるのだと二人には分かった。それが戦いや戦争とは真逆なモノだとしても……。

 二人がエランの心中を察しているとレルーンとメルネーポが戻って来て,それぞれに言葉を掛ける。

「団長,準備整ったよ」

「ヘルメト隊,いつでも出られます」

 それぞれに報告をするレルーンとメルネーポ。そして報告を聞いていたエランが右手を右上に挙げると瞳の奥に戦いの炎を滾らせると口を開く。

「イクス」

「行くぜっ!」

 気合いが入った声を発するとイクスが鞘の中から一気に飛び出してエランの右手に握られる。イクスをしっかりと握ったエランは続け様にイクスに向けて言葉を放つ。

「イクス,オブライトウィング」

「白銀の斬閃をくれてやろうぜっ!」

 イクスがそんな言葉を発すると,イクスは白銀色に光を発すると先程のようにイクスの刀身から翼が生えて光り輝いていたイクスの光が消える。そのイクスをゆっくりと下ろしてイクスを握った右腕を下に向かって軽く伸ばすようにすると再びエランは口を開く。

「抜刀,フェアリブリューム」

 今度はエランの身体が白銀色の輝きを放つと,解き放たれた魔力によってエランの髪が少し舞い上がるのと同時に背中から翅が生えたかのように作り出される。そしてエランの中で完全に剣が抜かれるとエランを包んでいた白銀色の輝きが弾けるように消えて舞い上がっていた髪もゆっくりと垂れていく。これでエランも戦う準備が出来たので,エランはカセンネの方に向くと口を開く。

「行ける」

 相変わらず短い言葉を発するエランだがカセンネには通じるからこそ,カセンネは頷いてから振り向いて揃ったヒャルムリル傭兵団とヘルメト隊を見た後にケーイリオンに視線を送った。

 あらかじめ打ち合わせていた訳ではないが,カセンネの視線を受けてケーイリオンはエランの後ろに集まった者達に向けて言葉を発する。

「エランと共に戦う者達よっ! この戦いでの主役は間違いなくエランとお前達だっ! エランを信じて突き進めっ! その先にある栄光はここに居る者達に相応しいからこそ自らの手で掴み取るのだっ! さあ,最高の名誉と共に戦場へと向かい戦いを終わらせるのだっ!」

『おぉ―――』

 ケーイリオンの激励を受けてヒャルムリル傭兵団とヘルメト隊が一斉に鬨の声を挙げて轟かせる。その中でエランとハトリだけは静かに戦いが始まる時を待つ。そんなエランの姿を見ていたカセンネは激励を終えたケーイリオンに近づくとエランに付いて話し始める。

「さて,おっ始める前に本気を出したエランを見た感想を聞きたいもんですね」

 そんなカセンネの言葉を受けてケーイリオンは楽しそうな顔を見せる。

「ふっ,年甲斐もなく儂も血が滾っておるわ」

「そいつは残念な事で」

「まったくだ。カセンネよ,メルネーポの事を含めて後は任せるぞ」

「はいよ,しっかりと報酬だけは用意しておいてくださいよ」

「相変わらず報酬に対してはキッチリとしているな」

「傭兵ですからね,働いた分はキチッと貰わないと戦いませよ」

「ふっ,それでこそ頼りになるというものだな。心配するな報酬はしっかりと用意しておく。では頼んだぞ」

 カセンネとそんな会話を交わすとケーイリオンは再び兜を被って本陣へと馬を走らせた。そしてカセンネはケーイリオンが与えてくれた熱が冷める前に揃っている全員に向けて命令を出す。

「エラン,皆が付いて行ける速度で駆けてくれ」

「分かった」

「それとメルネーポ,最前線との入れ替えは同じ言葉を使うからエランが突撃する前に大声で叫びな」

「承知した」

「それじゃあ,そろそろ始めようじゃないかっ! あたし達がエランをしっかりとカンドの元へ送り届けるよっ! 皆エラン共に一気に駆け上がって敵の中央に大穴を開けてやろうじゃないかいっ! さあエランが戦いの幕を下ろすまであたし達も暴れまくるよっ!」

『おぉ―――』

 再びエランの後ろから鬨の声が上がるとエランがゆっくりと歩み出し,エランに続くようにレルーンとメルネーポが部隊の先頭を行くとヒャルムリル傭兵団とヘルメト隊の混合部隊は前進を開始すると,すぐにエランか駆け出したので続く者達も駆け出して戦場へと突撃して行く。



 少し遠くの両側で戦っているハルバロス軍を見る事無く,エランは前だけを見て駆け続ける,しっかりと後続が続いているのを確認しながら。ディアコス軍は既に撤退戦に入っていると言ってもよいぐらいに少しでも味方を逃がそうと今まで以上に奮戦しており,ハルバロス軍は噂に名高い白銀妖精が敵総大将を討ち取る為にエランの邪魔をさせない為に猛攻を防いでしっかりとエランが作った道を保っている。そんなエラン達の前にラキソスの姿が見えたのでメルネーポは力の限り叫ぶ。

「ファニールっ!」

 最前線の後方に居た人物が振り返る。兜で顔は見えないが見覚えがある鎧を身に纏っているのでラキソスだとすぐに分かった。そしてメルネーポの声を聞いたラキソスが前に向かって左腕を伸ばしながら何かを叫んだ。それを見ていたエランが前進する速度を落とすとカセンネと合流して話し掛ける。

「最前線が入れ替えやすいように最初は私が一気に行く」

「あいよ,後ろは気にせずにやっちまいな」

「うん」

 エランは短い返事をするとフェアリブリュームで一気に敵に迫れるようにすると,左足で思いっきり地面を踏み込んで前に向かって跳び出した。イクスを左横に構えながら味方のハルバロス軍の上を飛び越えたエランは,撤退を始めようとしているハルバロス軍に食い付いてるディアコス軍の前衛を目掛けてイクスを振るう。

 撤退とすると聞いてもなかなか退がれなかったハルバロス兵達の前に居たディアコス兵が数人程,弾け飛ぶように居なくなると白銀色に輝くモノがハルバロス軍の前に舞い降りた。それを見ただけでもハルバロス軍は白銀妖精が来てくれた事が分かり撤退しようとするが,その前に驚くべき光景を目にする。

 地面に右足を付けたエランは空中で回転した勢いを残したままに再びイクスを振るうと白銀の閃光だけ残してエランの姿が消えた。少なくとも味方のハルバロス軍でさえ,そう思う程にエランの動きは速かった。そしてエランの動きで足が止まっていたハルバロス兵に向かってラキソスが叫ぶ。

「最前線の敵は白銀妖精に任せて撤退しろっ! 後続部隊はすぐ後ろだっ! 冷静になり隊列に間を開けて後退するんだっ!」

 的確なラキソスの命令に今まで激戦を繰り広げていた最前線の部隊が自分の位置を確かめながら一斉に動き出す。そして次はそれを見ていたカセンネが激戦の騒音に消されないように大声で命令を発する。

「隊列を整えなっ! レルーンとメルネーポはしっかりと隊列が整うようにしっかりと見なっ! 後方に居る者達は少しぐらい隊列が乱れても良いから後退してくる味方とぶつからないように突き進むんだよっ!」

 カセンネの声を聞いたレルーンとメルネーポは振り返るとそれぞれの小隊長に命令を発して隊列を整えていく。そしてラキソスの部隊も隊列が整っていくので,レルーンとメルネーポはしっかりと隊列の間に出来た道を進めるように位置を調整する。そんなハルバロス軍にディアコス軍も黙って退かせる訳がない。

 エランが遠ざかった瞬間を見出したディアコス兵がハルバロス軍に食らい付こうとするが,そんなディアコス兵達の前にいきなり大型のマジックシールドが展開されると黄色いモノに身体を貫かれて血を吹き出している。そして引き抜かれるように身体から抜けるとディアコス兵は地面へ倒れ,壁のように展開しているマジックシールドに血が張り付くとハトリの髪は元の長さに戻った。

 いつの間にか駆ける速度を上げて一気にラキソスの陣形を駆け抜けたハトリならではの撤退援護と言える。そんなエランとハトリの働きもあってラキソスは速やかに陣形を整え終わる頃にはレルーンとメルネーポが率いる部隊が突っ込んできたので,ラキソスも自分が率いる部隊に速やかな後退を命じる。

「前は見なくて良いっ! 味方を信じて敵に背を向けて今は後退しろっ!」

 そんな声がカセンネの元にまで聞こえてくる程に近づくと,ラキソスも後ろを振り返る事無く後退する。そして味方と入れ替わったカセンネはすぐにレルーンとメルネーポに攻撃する箇所を指示すると,エラン達は再び激戦の戦地を抜ける為にその身を投じるのだった。

 そして後方で最初の指示を出したカセンネがエラン達の動きを見ていたので改めて思う。

 やっぱりエランが剣でハトリが盾だね……,と。




 さてさて……びっくりした。いやね,本当なら昨日更新しようとしていたんだけど,昨日は朝に起きたのは良いけど,いつの間にか寝てて,気付いたら夜になってたよ。いやはや,まさか本当にこんな事があるんだね~,と実感したよ。そして時間的にも更新するのはどうなのかなと思ったので更新予定日を一日だけずらしました。……告知はしていないけどね。

 そんな訳でいよいよ中盤の佳境へと向けて話が進んでいくのですが……第三章のプロットと同時進行だと国の名前とか方向とかを思いっきり間違えそう,ってか何度か間違えた。そんな中でお送りした第十五話ですが,まあ,これ位の文字数で,これ位の更新速度で今後もやって行きたいと思っている次第でございます。

 まあ,そういう事なので今月はもう一度程更新が出来れば上出来かなと思っているので頑張りたいと思っております。まあ,予定は未定とも言いますので,あまり期待せずに気長によろしくお願いします。さて,先に言い訳だけをしたので,そろそろ締めましょうか。

 ではでは,ここまで読んでくださり,ありがとうございました。そして今後も気長によろしくお願いします。更に感想もお待ちしておりますので,気楽に書いてください。

 以上,睡眠障害なのか体調不良なのか分からないけど,起きたら夜という展開に一番驚いている葵嵐雪でした。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ