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白銀妖精のプリエール  作者: 葵 嵐雪
第二章 戦場の白銀妖精
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第二章 第十二話

 第三陣へと突入したエラン達だが先程まで破ってきたディアコス軍とは違って,なかなか前に進めない状況が続いていた。エランはもちろん先頭で宙を舞いながら敵を斬り伏せているが,それ以上に苦戦していると感じていたのが後続に続いたカセンネ達だ。特にレルーンはなかなか突破が出来ない状況に焦りを感じた為か自然と口が開く。

「斬っても斬っても全然敵が減らないよ~っ!」

 今の状況に愚痴を叫ぶレルーンの声が聞こえたみたいでカセンネが叫び返す。

「グダグダ言ってないで戦いなっ!」

「分かってますよ~」

 カセンネの叱咤を聞きながらもレルーンは迫って来たディアコス騎兵が突撃槍を突き出そうとするが,その前にレルーンがハルバートを騎乗している兵の胸に突き立てるとそのまま馬から引き下ろすように地面へと叩き付けて,それと同時に槍先で鎧を剥ぐかのように敵兵の胸に刺さったハルバートを一気に振るい剥がす。

 ハルバロス軍最前線の左側で戦っているレルーンに刺激を受けた訳ではないが,メルネーポも愛用のバルディッシュを剣を振り上げてきたディアコス兵の首に突き立てるとそのまま首を断ち切り,返すバルディッシュで反対から迫って来たディアコス兵の首に突き立てるとそのまま弾き返すようにバルディッシュを引き抜く。

 レルーンとメルネーポの背後が取られないようにカセンネは二人よりも少し退がった所で指揮と戦闘を行っていた。そんなカセンネが迫って来たディアコス兵を両刃斧の一撃で一掃すると刹那の間に考える。

 敵さんは随分と中央を厚くしてきたみたいだね。まあ,定石と言えば定石だけどこのままだとこちらが疲弊するばかりだね。とはいえ,それを踏まえてケーイリオン将軍は手を打ってくれるだろうけど……エランはどうするつもりなのかね。

 カセンネが戦いの合間に生じる刹那の休息にそんな事を考えていると,すぐにディアコス軍はハルバロス軍の最前線に割り込もうとしたので兵を動かして付け入る隙を作らないカセンネ。そして戦いの主役とも言えるエランはというと……ハルバロス軍の最前線よりも少し前の所で宙高く舞い上がって,空中に立っているような姿勢で戦場を見下ろしていた。そんなエランがイクスに対して口を開く。

「イクス,持久戦にもってく」

「ちまちまと敵を倒し続けるのかよ」

 エランの言葉に少し不満げな声を発するイクス。そんなイクスの声を聞いていたエランが会話を続ける。

「ディアコス軍が中央後続を前に出して中央をかなり厚くした」

「その分だけ抜けば一気に敵本陣に迫れるだろ」

「うん,だけど味方のハルバロス軍と一緒に行かないと後方が塞がれる。そうなると味方と合流するのが難しくなる,下手をしたらディアコス兵の流れに巻き込まれて戻れない。だから今回はそこまで無茶をやる必要が無い,確実に味方を押し上げる」

「なるほどね,言われてみればそりゃそうだ」

「だから中央の味方に合流する」

「分かったよ」

「うん。イクス,行くよ」

「おうよっ!」

 イクスの気合いが入った声を聞いてエランはイクスを左後ろに振ると,その勢いを利用して身体を下にする。そしてエランが完全に攻撃態勢に入った事を確認したイクスはオブライトウィングの加速を一気に発動させてイクスから生えている羽から白銀色の輝きが噴出されるのと同時にハルバロス軍の最前線に向けてエランが一気に急降下していく。

 レルーンとメルネーポの前に出るように空中から一気に地面に近づくとエランが着地する前に,フェアリブリュームで一気に体重を増加させるとそのまま左足で着地して自分を軸にするとイクスを一回転させて白銀の閃光が走った。するとエランの周囲に居たディアコス兵が一気に倒れた。

 エランが後退した事により,ハルバロス軍は中央を押し上げ易く成ったと思われたが違っていた。そもそもエランはディアコス軍の中央部隊に属している兵がほとんど第三陣に加わったと判断したが,それは間違いだ。ディアコス軍の総大将カンド=サトワサは中央部隊を全て第三陣に加える事で,両翼の撤退を悟られないようにしていた。

 ここまでハルバロス軍は中央突破をしてきたという事は,それだけ戦場は中央に注目せざる得ない,という事だ。ケーイリオンも両翼の動きには注意をしていたが撤退しているとは思ってはいなかった。それどころか中央が厚くなった事で自然と中央の前線部隊が包囲される危険性があるからこそケーイリオンを始め,ハルバロス軍の将は自然と中央にしか目を向けなくなっていた。もちろんながら両翼が動き出した時の為にしっかりと見張りの斥候を出しているが,その斥候も前線の熱とは正反対に冷ややさで見張りを続けていた。

 既に負けを認めて次に備えているカンドとエランの加入により勢いを得たケーイリオン,二人の軍略が今ここでぶつかり合ったが既に負けを認めているカンドに気付かないケーイリオン。今の時点ではどちらが勝利を得たのかを判断するのは無理だ。そんな中でエランは自分に与えられた任務を遂行する為に戦い続ける。



「ハトリっ!」

「ここに居るですよっ!」

「来てっ!」

「はいですよっ!」

 地面へと舞い降りたエランは真っ先にハトリを呼び寄せる為にハトリの名を呼んだ。エランにしては珍しく叫ぶとハトリはしっかりとエランの援護が出来る後方で戦っていたのでハトリは周囲の敵を一掃してから駆け出す。そしてエランはというとディアコス兵としては突如とした現れたエランに戸惑って動きが止まってしまい斬り込む時を狙うが,そんなディアコス兵の一角をハトリの髪が貫くとハトリがエランに合流したので,エランはハトリに向かって口を開く。

「私はなるべくハルバロス軍は突破出来るように前で戦い続ける。ハトリは後ろのレルーンとメルネーポの援護をお願い」

「前には出ないのですよ?」

「うん,さっき見たけどディアコス軍は中央は厚い。易々と突破は出来ないからこそ味方を押し上げる必要がある」

「それを聞いてこれだけの量なのは納得が出来るですよ」

「だからレルーンとメルネーポの力が必要」

「分かったですよ。けどエランも気を付けるですよ」

「うん,分かってる。ならハトリ,お願い」

「はいですよ」

 ハトリが返事をすると突如としてディアコス軍にはエランが消えたように見えたが,もちろんの事ながらエランは尋常ではない速度で移動しただけだ。そしてエラン達を取り囲んでいた後方の一部を白銀の閃光を残して斬り弾くと,出来た隙間にハトリが入り込んで残って居るディアコス兵を一掃しながら後方へと退がって行った。そしてハトリを見送ったエランが静かに口を開く。

「イクス,行くよ」

「あいよっ!」

 イクスの声を聞いてエランはイクスを左後ろに構えるとやっと状況を理解したディアコス兵達がエラン達に殺気を放ちながら,一部の兵達が剣や槍を手にエランに突撃してくる。そんな突出してきた兵達を見てエランは一気に動く。

 距離があるからこそ構えを取らずにただ剣や槍を手に持つだけで駆けてくるディアコス兵達,そんなディアコス兵隊中央のやや左側に向かってエランは右足で地面を蹴ると次の瞬間には駆けてくるディアコス兵達の少し前,イクスの間合いに入った所でエランは左足を地面に付けている。その直後にエランが一気にイクスを振り抜いて白銀の閃光は走る。

 一瞬にして五人程のディアコス兵が血飛沫を上げながら上半身だけを後方へと飛ばされた。動き続ける為にエランはフェアリブリュームで体重を増加させるのと同時に跳躍力を一気に上げて,イクスを振り抜いた勢いのままに回転しながらも次の行動に出る。

 身体を回転しているのにも構わずにエランは左足で地面を蹴ると左方向へと跳んで,右足で着地する頃には回転している身体が敵の正面へと向き,イクスを右後ろに構える状態と成った。そして再び白銀の閃光は走ると数人のディアコス兵が血飛沫を上げるのと同時にエランは右足で地面を蹴って身体を回転させながら移動する。

 回転の勢いで威力と速度を増しながらエランは次々とイクスでディアコス兵を斬り伏せていくと,突如としてエランが消えた,とディアコス兵には見えた。けど実際にはエランは体重を一気に軽くすると後方に向かって一回転しながら跳んだだけだ。回転してきた勢いがあるからこそ常人の目では追いきれない程の速度でエランは中央左側の攻撃から反対側とも言える中央右側の攻撃に移る為に後方へと跳んだ。

 反対側に跳びながらもエランはしっかりと態勢を整えており,中央右側前方へ着地する前に一気にイクスを振り下ろして目の前に居たディアコス兵が縦一直線の白銀が走る。そしてエランは振り下ろしたイクスを左後ろに構えて静かに着地すると目の前に居たディアコス兵が二つに別れながら後ろへと倒れた。それが合図という訳ではないがエランは再び回転しながら移動と攻撃をするデスティブを繰り出した。

 エランにより次々と倒れて行くディアコス兵,そんなエランを意識的に見ていたレルーンとメルネーポは自分の近くに居る味方にだけ声を挙げてエランの近くに居る敵集団へと突撃した。エランだけでも打つ手が無いディアコス側なだけに更に突撃して来た少数とは言え二部隊に対しても対応が遅れて更なる被害を出した。そしてレルーンとメルネーポはエランに続けとばかりに自ら先陣に立って戦う。

 器用にハルバートの矛先で敵の喉を貫くとそのまま押し出し周囲の敵を巻き込ませて押し出すように遠ざけ,すぐにハルバートを引き抜くと左右に居る敵に斧で叩き伏せるレルーン。さすがは傭兵団の副団長をやっているだけあって実力は確かなものだ。槍斧とも言える槍よりも重い武器で的確に急所を貫くだけでも難しいが,そこから更に息絶えた敵を押し出して周囲の敵を自分から遠ざけて反撃を防ぐと,次は斧で左右に居る敵に叩き込むのだから戦い慣れている証だ。そして戦い慣れているのはメルネーポも同じようだ。

 片刃斧のバルディッシュで目の前に敵を叩き伏せると横から迫って来た敵に対して,柄頭つかがしらと言われる斧が着いている反対側で横から迫って来た敵の腹を突いて敵の動きを止めた。メルネーポはそこから器用に柄を使い敵が持っていた剣を落とさせるのと同時に態勢を崩した敵にバルディッシュを振り下ろした。これだけでも見事に使い熟していると言わざる得ないのは,片刃斧の戦斧は重心が斧が着いている方に偏っているから槍や短い斧のように素早い動きが出来ないうえ,重心が斧の方にあるからこそ遠心力を使って振るった時に高威力の攻撃が出来るが,どうしても次の行動が遅くなるのは必然だ。だからこそ柄を使って敵を止めたり,敵の武器を落とすという事をやってのけたメルネーポは相当な腕を持っている証だ。そんな二人に続くかのようにエランに続いた二部隊も活躍する。

 ヒャルムリル傭兵団は主に槍と軽装甲の鎧を使っているので素早い動きで敵を近づけずに槍で貫き,メルネーポが率いているヘルメト隊は重装甲の鎧を纏っているので動きは遅いものの,両手剣や片手剣と大楯を使っている。なのでどっしりと構えながら迫って来た敵の攻撃を受け流したり,弾いたりした後に的確に敵を斬り伏せていた。そんな両部隊の活躍する中でハトリも素早く動いていた。

 動きは速いが敵に致命傷を与えづらいヒャルムリル傭兵団と動きは遅いが確実に敵を斬り伏せていくヘルメト隊の足並みを揃える為に周囲の状況を見ながらハトリは動く。ヒャルムリル傭兵団が前進するのに手こずっているのならハトリは素早く合流してマジックシールドで自分の身を守りながら髪を操り,マジックシールドで硬化させたハトリの髪が次々と敵を貫いてヒャルムリル傭兵団を前進させ。ヘルメト隊が遅れているのなら,ヘルメト隊の前に出て敵の数を減らして前進させやすいようにしている。そしてそんなハトリの活躍をレルーンとメルネーポはしっかりと見ていたし,後ろで指揮を執っているカセンネも目にしていた。

 ハトリの活躍もあってヒャルムリル傭兵団とヘルメト隊は足並みを揃えて少しずつ,エランが切り拓いた敵軍を掻き分けるように前進していく。そしてヒャルムリル傭兵団が少し遅れたのでハトリはすぐにヒャルムリル傭兵団と合流するとレルーンがハルバートを振るいながらハトリに向かって話し掛ける。

「ハトリ~,全然前に進めないけどどうするの~?」

 愚痴とも問い掛けとも言える言葉を発してきたレルーンにハトリは前方にマジックシールドを展開して敵の攻撃を防ぐと,誰かが持っているかのようにハトリの髪が浮き上がり一気に伸びてマジックシールドを通過するのと同時にマジックシールドと同じ硬さに成ると前方に居た八人の敵を貫く。そしてハトリの髪が元の長さに戻って,マジックシールドを解除してからハトリは口を開いた。

「それだけ敵の層が厚いですよ。それと愚痴を言ってないで敵を倒すですよっ!」

 最後には叫んだハトリだが,ハトリの言葉を聞きながらもレルーンはしっかりとハルバートを敵の頭に叩き込んでいた。そのハルバートを引き抜くとレルーンは会話を続ける。

「なんでここだけ敵軍の層が厚いわけ~」

「エランが言うには中央の層が厚くなっているですよ,だからこれだけの敵が居る訳ですよ」

「む~,何か狙われてる気がするよ~」

「こっちが中央突破をしてるのは敵も気付いて当然ですよ,だから中央を突破されないようにするのは当然ですよ。それとレルーンを狙っている訳ではないですよ」

「最後に酷い事を言われたっ!」

「気のせいですよ」

「ハトリのいじめっ子っ!」

「いじめているのはディアコス軍だけですよ」

「ハトリはサディスティックだったんだね~」

「戦争を楽しんではいないですよっ!」

「冗談だよ」

「なら口より手を動かすですよっ!」

 会話をしながらもハトリとレルーンは着実に敵を次々と葬っていくが,二人の会話がヒャルムリル傭兵団員にしっかりと聞こえていたみたいで所々で一旦退がった団員達から軽く笑う声が聞こえて来た。まあ,戦争中でもこのような明るさがあるのがレルーンの強みとも言えるのでハトリは何事も無かったかのように戦い続ける。それはレルーンも同じで確実にディアコス兵を叩き伏せていた。

 後方でそんな事が起こっている事すら知らないエランはいつも通りの表情,とは言ってもエランが表情を変える事がほとんど無いので無表情だ。だからこそ冷酷に淡々と大勢の敵を倒しているようにディアコス軍には見えた。そんなエランを相手にしているのだからディアコス軍は主戦力とも言える部隊をエランに差し向けた。

 エランもディアコス軍が何かを仕掛けてくると感じたのは前方の部隊が三つに別れて二つの道を作った時だ。だからこそエランは一旦ディアコス軍との距離を取ると様子を窺うと,出来た道を疾走してくる騎馬隊がエランとイクスに見えた。騎馬隊は乱戦には弱いというのが定石だが,ディアコス軍は広大なモラトスト平原で屈強な馬と幾つもの戦術を得ている。つまり突撃だけが能だけではないという事だろう。その事を理解したイクスが声を発する。

「おっ,よいよ敵さんも全力を出して来たって事だな」

「うん,けどイクス,このまま行くよ」

「ぎゃはははっ! おうよっ! 相手は馬で駆けてきてんだから剣を入れ替えてる時間も無いからな。俺様もこのままで思う存分にやってやるぜっ!」

「ならイクス」

「あぁ,思う存分にやってやろうぜっ!」

 充分過ぎる気合いが入ったイクスの声を聞いてからエランはイクスを左後ろに構えて右足を前に出すように踏み込むと迎撃どころか攻撃態勢を取る。そんなエランを目指して騎馬隊の馬が力強い蹄で地面を蹴りエランを目指して駆け続けるが,騎馬隊は道を抜けると速度を落とすとエランを取り囲むように展開した。

 いつの間にかエランと戦っていた歩兵が後退した為にエランの周囲には充分過ぎると言える程の空間が出来ていた。更に言えば歩兵は屍と成った味方の身体を引きずって後退した為に,騎馬隊は充分に走れる程の距離を取って足下を全く気にする事なくエランを取り囲むように馬を走らせる。

 すっかり騎馬隊に囲まれたエランだが全く動じないのもいつも通りというべきか,それどころかエランの様子を見ていたレルーンとメルネーポの方が慌てていたのでハトリが制止する羽目になった。

「エランなら大丈夫ですよ」

 ハトリがこのように断言したからこそレルーンとメルネーポはエランが騎馬隊を撃破した後にエランの元へ行く為,しっかりと眼前の歩兵を倒しつつも前に進む準備に取り掛かった。そしてエランはというと未だに動かない。傍目からは囲まれて孤立したからこそエランから動くと思われていたがエランは一向に攻撃をしようとはしなかった。その為に遂に騎馬隊から数名の騎兵が向きを変えてエランに向けて駆け出す。

 一気に距離を詰めた騎兵はエランの少し手前で駆ける馬の足を緩めると同時に突撃槍をエランに向かって突き出した。囲まれているうえ常に動き続け,更に上からの攻撃ともなれば確実にエランの方が不利なのだがエランはこの時を待っていたかのように一気に動く。

 エランの前方を左から右へ横切るように馬を走らせながら攻撃してきた騎兵に向かって跳ぶと,その騎兵が突き出してきた突撃槍に一旦足を付けた。それと同時にイクスを騎兵の首に向かって振り抜くと白銀の閃光が走り,エランは足場としていた突撃槍を蹴って左側へと跳んだ。

 今までのディアコス兵ならここで驚いて動きを止めたが,後ろで散々エランの戦う姿を見ていた騎馬隊はディアコス軍の主力とも言える動きを見せる。すぐに突き出した突撃槍を引くとエランから遠のくように馬を走らせた為にエランは一度地面へと足を付けると騎兵から距離を取る。そんなエランの動きを見て騎兵は再び距離を詰めて攻撃態勢を取り,いつでも攻撃が出来るように見せる。

 エランの動きに対応してきたディアコス軍の主力とも言える騎馬隊は流石としか言い様がない連携と動きを見せ付ける。だが,そんな動きを見てもエランは先程と同じ態勢を取りながらもいつも通りの口調でイクスに向かって言葉を出す。

「イクス,一気に行くよ」

「おうよっ! 今度はこっちの番だぜっ!」

「うん」

 イクスの言葉に短い返事をしたエランは,その直後に踏み込んでいた右足で地面を蹴った。左前に跳んでエランの前を横切ろうとした騎兵の首をイクスが通過すると白銀の光が残り,エランはイクスを振り抜いた勢いのままに身体を回転させ始めながらも馬の尻を蹴って続いている騎兵に向かって跳んだ。

 エランが迫って来ると思った騎兵は咄嗟に突撃槍を自分の前に立てて防御態勢を取るが,イクスが突撃槍に当たる事はなかった。なにしろエランは騎兵の更に後ろにまで跳んでいたのだから。もっと詳細を述べるのならエランは馬の尻を蹴る時に一気に体重を軽くして馬に刺激を与える事なく一気に左上空へと舞い上がった。だからエランは騎兵の前ではなく後ろへと舞い降りようとした時に回転し続ける勢いを利用して,そのまま騎兵の頭を胴体から斬り離した。

 三人もやられてこのままではエランの勢いに成ると思った騎兵隊の隊長が一気に乱戦に持って行く為に騎兵隊の全員にエランへの突撃命令を出す。一気に動き出した騎兵隊に対してエランは先程よりもより高く舞い上がる。このエランが行った動きには微かに騎馬隊の動きを鈍らせた。なにしろ騎兵の利点は高所からの攻撃,つまり下に向かって攻撃する訓練はしていても上に向かって攻撃する訓練どころか想定すらしていなかったからだ。

 空中で一回転して態勢を直したエランが下に集結した騎馬隊を見ると,すぐにイクスを右上に構えると重力に従って舞い降りる。既に狙いを付けていたエランはその騎兵の首に向かってイクスを振り抜くと白銀の一閃が走って,今度は馬の首を強く蹴り馬に衝撃を与えながら再び空中へと舞い上がる。そして蹴られた馬は強い衝撃を受けたかのように前足から崩れて地面へと倒れたのはエランが馬の首を蹴る瞬間だけ体重を一気に数倍にしたからだ。後は跳躍力を一気に上げて空中へと舞い上がるだけ,という事だ。

 エランが今まで歩兵を相手に地面に足を付けている時間が多かった為に騎兵隊も自分達も上を取られるとは思っていなかった。それでもディアコス軍の主力としての意地があるのか騎兵隊は上空から降りては騎兵を斬っていくエランに向かって突撃槍を突き出そうとするが,突撃槍が持つ特有の重さが徒となって槍先を上に挙げるだけで一苦労を強いられている。その間にも次々とエランは騎馬隊の数を減らしていく。

 デスティブ,または死落舞と呼ばれる特有の戦い方をするエランにとってはこうした戦い方の方が慣れているので特に苦も無く敵を減らしていく。だがエランとイクスはこの時点で読み違いをしていた。だからこそエランが空中に舞い上がった時にイクスがエランに向かって声を発する。

「どうやら退く気は無いみたいだぜ」

「そうみたい」

「ならどうすんだ?」

「全部斬る」

「ぎゃはははっ! そうこないとなっ!」

 空中でそんな会話を交わしたエランとイクスが再び騎馬隊の一人へと襲い掛かり,白銀の閃光を煌めかせたのと同時に馬は地面に倒れて騎兵は血飛沫を上げる。それでも退く事をせずに留まり続けるディアコス兵を見て空中に舞い上がったエランは思う。

 何かある。ディアコス軍は何かをしているからこそ騎馬隊が留まって時間を稼いでるのかもしれない。……後でイブレに聞いてみれば分かるかな? それともケーイリオン将軍なら察しが付いているかもしれない。けど……このままだと敵の総大将を討ち取れない可能性がある,先に逃げてればだけど。だからと言って孤立する訳にもいかない,私とイクスだけでも一気に行ってカンドを討ち取っても仇を取れとばかりに敵が来るから。そこから逃げられない訳ではないけどハルバロス軍との合流が難しい。だから……今は味方を押し上げるしか手はない。

 空中に舞い上がってイクスを構え直し,再び降下する合間にそんな事を考えたエランは気を取り直して騎馬隊の掃討に取り掛かる。ディアコス軍の思惑は未だにエランには分かっていないものの,エランとしても今は他に打つ手が無いからこそやるべき事をやるだけどエランはイクスを振り抜いて白銀の一閃を残した。

 ディアコス軍の騎馬隊はエランによって次々と倒れて行く。そして残りが一騎になった時にエランは再びイクスに向かって話し掛ける。

「イクス,決めるよ」

「あいよ」

 残ったディアコス軍騎馬隊の一騎も最後まで戦い抜く姿勢を見せたので,既に上を取っているエランは空中に立つかのような姿勢で真上にイクスを構える。そして一騎に体重を増加させるのと同時にイクスがオブライトウィングの加速能力も加わって一気に落下してくるエラン。そして残って居る一騎に迫るとそのままイクスを振り抜いて白銀の閃光を走らせるとエランはやっと地面へと足を付けた。

 着地の衝撃を和らげる為に屈していた膝を伸ばして,しっかりと立ち上がったエランの左前方では騎兵と馬が前後に別れて奥に向かって倒れて行く。騎兵隊を全滅させたエランの元へ早速とばかりに集まるハトリにレルーンとメルネーポ。エランの周りには打ち棄てられた騎兵隊の屍が多数有るが,そんな事を気にする事なくエランに駆け寄り声を掛けようとする。だが,そんなエランの元に集まった者達より後ろから大きな声が轟いた。

「ヘルメト隊にヒャルムリル傭兵団は一時撤退せよ」

 そのような号令が飛んで来たのだった。




 さてさて,早速ながら……すみませんでしたっ!! いやはや,自分で周一ぐらいで更新すると言っておきながらも,この遅さですからね。何と言いましょうか,体調不良と集中が出来ない時間が長続きしてすっかり書けない時間が多くなってしまいました。まあ……私のやる気が少し停滞したのも要因ですけどね……。

 それはさておき,やっといろいろと整理が出来て再び書き続ける状況に成ったので,今後も周一ぐらいの更新を目指してやって行こうと思います。それと,この白銀妖精のプリエールは第五章までは一応ながら書くつもりです。その後は皆様の反応を見てから決めます。なので第五章で区切りを付けて,また別な物を書き始めるかもしれません。もちろん,反響が大きければ続けて書いて行くので,まあ,私なりに区切りを付けたいと思ったからこその決断であり,続きを読みたいと思わないものを書いててもしょうがないと思ったからです。

 さてさて,今後の展望はこんなもんでしょうか。ってか,この第二章もまだまだ中盤,なんだか話数が凄い事に成りそうです。百話とは言わないけど五十話ぐらいまで使いそうな勢いだと思ってしまった今現在です。まあ,私が読む方でも読み応えがあるページ数が多い小説ばかり読んできたから,その影響が出たんだと責任転嫁をしたところでそろそろ締めましょうか。

 ではでは,ここまで読んでくださり,ありがとうございます。そして,これからも気長によろしくお願いします。更に感想もお待ちしておりますので,気楽に書いてください。

 以上,今現在とあるゲームにハマっている事を内緒にした葵嵐雪でした。



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