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白銀妖精のプリエール  作者: 葵 嵐雪
第二章 戦場の白銀妖精
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第二章 第三話

 広大なタイケスト山脈に太陽のほとんどが沈むとタイケスト山脈の影がモラトスト平原まで伸びて,モラトスト平原に広大な影を落とすのと同時に太陽は黄色く輝き周囲の空気を赤く染めている空に対して地上では漆黒の暗がりが広がっていた。その為にハルバロス軍とディアコス軍は共に全軍を撤退させて,今では両陣営には篝火が焚かれて数多くの天幕で大勢の兵士や傭兵が休んでいる。そんな中でエランはというと。

 両軍が最後まで撤退するのをハルバロス軍本陣の近くにある丘の上で見続けていた。そして両軍が完全に撤退した今では漆黒の向こうを見ながらハルバロス軍陣営に次々と灯る篝火を待つかのように見ているのだった。そして漆黒が暗闇に変わる頃,エランはやっとハトリに向かって口を開いた。

「ハトリ,行くよ」

「はいですよ」

 ハトリの返事を聞いたエランは振り返ると背負っているイクスに巻かれてる鎖がお互いにぶつかり合って金属音を小刻みにならすが,そんな事を全く気にせずにエランとハトリは歩き出した。目指すのはもちろん傭兵隊に割り当てられている傭兵宿舎の天幕に向かって歩き出した。

 傭兵宿舎の天幕が近づくにつれ,宿舎の天幕が並ぶ一つの天幕から程よく良い匂いがエラン達の元にまで漂ってきた。今日の戦が終わって傭兵達も夕食を取っているところだろう。その為にエラン達も,まずは腹ごしらえとばかりに匂いが漂ってくる方へと向かうと一つの天幕に辿り着いた。

 外から見てもかなり大きな天幕である事がしっかりと分かる。そんな天幕の中にエラン達が足を踏み入れると食事を配っている列と天幕内の地べたに座りながら夕食を取っている傭兵達がエランの瞳に映るが,エランはちょっとそちらを見ただけで周囲を見回す。かなり大きな天幕なだけあって天幕を支える大きな柱が四本と小さな柱が数え切れないぐらい立ち並んで天幕を支えていた。そんな天幕内に夕食の配膳を待っている列に並ぶエラン。すると地べたに座りながら夕食を取っている傭兵達が一斉にエランに視線を向けて小声で囁き出す。

「おい,見ろよ,あれ,白銀色の髪と鎧だぜ。あれが噂の白銀妖精じゃないか」

「けど見た目はただの小娘にしか見えないぜ,髪と鎧の色が偶然重なっただけじゃないか」

「バカ,俺が聞いた噂だと見た目は少女に過ぎないが,戦場に出れば一万の兵を前にしても引けは取らないと聞いてるぜ」

「なら,あいつが噂になってる白銀妖精なのか?」

「俺が知るかよ,気になるのなら聞いてみたらどうだ」

「そんな事が出来るか,白銀妖精と言ったら機嫌を悪くすると残虐な戦い方をして敵味方共に目の前に居る奴らを斬り刻むって聞いてるぞ」

「ならどうするんだよ」

「知るか,まああいつが噂の白銀妖精ならハルバロス軍の勝ちは決まったな」

「あぁ,白銀妖精が噂通りの実力なら俺達もしっかりと報酬が貰えるってもんだよな」

 このような会話がエラン達の耳に届いてくるがエランは相変わらず無表情のままに,全く気にしていない素振りを見せ,ハトリは溜息を付いてから小声でエランに話し掛ける。

「なんか噂にヒレが付き過ぎですよ」

「噂は噂」

「はいはいですよ,分かってるですよ」

 ハトリがそんな返事をするとエランの耳に聞き心地が悪い会話が入って来るが,エランは全く気にせずに列に並んで食事を乗せる木製板を取ると真下から左手で支えると右手は木製板に添えるだけだった。

 ハトリの耳にもエランが聞いた聞き心地が悪い会話が聞こえていたのだが,エランが何事も聞こえなかったように食器を乗せる木製板を取ったのでハトリは両手でしっかりと木製板を取るのだった。すると最後方に並んでいたエラン達の後ろに二人の人物が喋りながら並んできた。

「あ~,やっと夕食だよ,今日も疲れた~」

「あんたは食事になると五月蠅くなるね,騒いでも早くは進まないんだから静かにしてな」

「そうは言っても団長,私のお腹が助けを求める悲鳴を上げてるんですよ」

「なら,その辺に転がっている石でもかじってな」

「石は食べ物じゃないよ~,団長が意地悪してくるよ~」

「さりげなくあたしの悪口を言ってるんじゃないよ」

「悪口じゃなくて真実ですよ」

「あんたね,このまま夕飯を抜きにしてやろうかい」

「あははっ,ちょっとした冗談じゃないですか。そんなに怒ると余計に老けますよ」

「まったく,あんたは疲れてると言っても変わりゃしないね」

「まあ,同じ人間ですからね~」

「はいはい,そうかい。とにかく五月蠅いから今は黙って並んどきな」

「はいは~い,わっかりました~」

 随分と賑やか会話がエラン達の耳にも届いてくるが,今は夕食を手に入れるのが最重要とばかりにエランは関わらないようしていた。そしてハトリもエランが何も言わないので黙って配膳される夕食を受け取る。全ての夕食を受け取ったエラン達は食べる場所を探すが,ここは既に他の傭兵で埋まっている為にエランは天幕の外に向かって歩き出した。そしてエランが天幕を支える大きな柱の横を通り過ぎようとした時だった。

 ハトリの目にはしっかりとエランの右手が動いた見る事が出来たので次の瞬間に起きた事にも驚きもしなかった。そして何が起こったかというと突如としてエラン達から遠くに居る傭兵の食事に投げナイフが三本も飛んできて食事を駄目にしてしまった。その事に食事を駄目にされた傭兵は驚いたが,それ以上に驚いたのがその傭兵の隣に居る傭兵達だった。その傭兵隊の一人が思わず口に出してしまう。

「何で俺の投げナイフがそんな所に刺さってるんだ」

 その言葉を聞いたのだから当然のように食事を駄目にされた傭兵は立ち上がって怒り出す。

「この投げナイフはテメーのかっ! 俺に何の恨みがあってやりやがったっ!」

 当たったのが食事が入っている木製の食器だったから良かったものの,相手からしてみれば自分に刺さってもおかしくないと思い込んでも自然な状況だったので,かなり声を荒げて怒り出して投げナイフの所持者に絡む。

「俺の食事を駄目にしただけで済んだが俺に当たったらどうするつもりだったんだっ! それと俺の食事を駄目にしたのをどう弁償しやがるっ!」

 一方的に言われていた傭兵がやっと平常心を取り戻すと弁解の為に口を開く。

「違うんだ,俺が狙ったのは白銀妖精でお前を狙った訳じゃねえ」

「なら何でお前の投げナイフがここにありやがるっ!」

 証拠とばかりに木製の食器から投げナイフを抜き取って所有者に見せる怒っている傭兵。そんな怒っている傭兵に弁解する為に投げナイフの傭兵は更に口を開く。

「それは知らねえが,俺は白銀妖精を試そうと思ってそいつを投げただけだ」

「ほう,その白銀妖精ってのはここから離れている,あの白銀色の髪と鎧を纏っている奴の事を言ってるのかっ! そいつにこれを投げたとしても何で俺の所に刺さるのかキッチリと説明してもらおうかっ!」

「だから知らねえって,あの白銀妖精が何かやったんだろ」

「何かってなんだよっ! あそこの白銀妖精が何かやったという証拠があるのなら見せやがれっ」

「いや,それは……無いが」

「だったら,テメーの仕業だろ」

「だから違うって言ってるだろっ! 俺は白銀妖精を試そうとしたんだ」

「そうかい,そうかい,テメー,いつから誰かを試す程の権利を得たんだ,なあっ!」

「そんな事知るかっ! 文句だったら白銀妖精に言いやがれっ!」

「テメー,さっきから白銀妖精,白銀妖精とうるせえんだよっ! こいつがここにあるからにはテメーの仕業な事は間違いないだろっ! 誰かの所為にしないで素直に土下座して謝りやがれっ!」

「何で俺がそんな事をしないといけねえんだっ!」

 すっかり喧嘩になっている傭兵達を横目にエラン達は天幕から出て行くのだった。天幕から出ると空はすっかり暗くなり,無数の小さな輝きを放っている。そんな空に向かって天幕の周囲にある篝火の火の粉が天へと舞い上がるが途中で消える。そんな光景の中でエラン達はなるべく静かな天幕を探す為に耳を澄ませて居ると後ろから出て来た二人のうち一人がエランに向かって話し掛けて来た。

「なかなか面白いものを見せて貰ったよ,さすがは白銀妖精って事かい」

 そんな事を言ってきたのは大柄な女性で見た目は四十代後半ぐらいに見える程に顔に少しシワが目立つ。肩まで伸びた朱色の髪を垂らしながら紫色の瞳で微笑みながらそんな事を言ってきたのでハトリは思わず口を開いてしまった。

「エランの動きが見えたですよっ!」

 ハトリがそんな風に驚いているともう一人の人物,見た目からして若く二十代前半に見える女性で特に容姿は整っているように見える。青白い髪を腰まで伸ばしており,蒼い瞳をしている。そんな女性が笑顔でエランの動きについて口を開いてきた。

「なかなか見事だったよ。飛んできた投げナイフを右手の指で挟むように受け止めると,その反動を使って別方向に投げ返して,関係ない傭兵の食事に投げ込むなんて,見ていたこっちが清々しい気分になったよ」

 エランとしては大した事をしたとは思ってはいないが,ここまで細かく説明されては気にもなるのでエランはやっと振り向いて二人の女性と向かい合うと,早速ながらエランが口を開いてきた。

「エラン=シーソル,それが私の名前。白銀妖精と呼ばれる事も多いけど,その呼ばれ方はあまり好きじゃない。だから私の事はエランと呼んで」

 それだけを言って黙り込むエランにハトリが続けて自己紹介の為に口を開いてきた。

「私はハトリですよ,エランとは一緒に旅をしているですよ。そんな訳でですよ,こっちがしっかりと名乗ったからにはそっちもちゃんと名乗るですよ」

 ハトリがそんな事を言ってきたから,という訳ではないがハトリに促されたのは本当の事なので,まずは大柄な女性から名乗ってきた。

「なら,あたしからだね。あたしはカセンネ,ヒャルムリル傭兵団を率いている団長さね。そしてこっちが」

 カセンネと名乗った女性がもう一人の女性に目を向けると察したように口を開く。

「私はレルーン,ヒャルムリル傭兵団の副団長をしてるよ。そんな訳でエランにハトリ,よろしくね」

「うん,よろしく」

 そんな挨拶をしてきたカセンネとレルーンに対してエランは社交辞令的で相変わらず短い言葉で返事をするだけだったのだが,カセンネとレルーンはそんなエランの言葉に不快感などはまったく抱かず,特にレルーンは積極的にエランに話し掛けて来た。

「それはそうとエラン達はどこで夕食を食べるのか決めてるの?」

「まだ」

「探している最中ですよ」

「ならさ,私達の天幕で一緒に食べようよ。構わないでしょ,団長」

「あぁ,大歓迎さ。エランにハトリ,一緒に来るかい?」

「折角だけど」

 カセンネとレルーンの誘いに断ろうとしているエラン。なにしろ明日には赤き疾風と呼ばれているスフィルファを倒さなければいけないのだから,今夜は静かに集中していたいのだろう。だからエランは断る言葉を口に出したのだが,そんなエランの言葉をレルーンが遮って言葉を投げ込む。

「そうそう,うちでは独自の厨房があって食後の甘味を提供してるよ」

「言葉に甘えて,よろしく」

 レルーンの言葉を聞いてすぐに返事を変えたエランに隣に居るハトリは軽く息を吐いて身体から力が抜けると口を開く。

「甘味という言葉に釣られたですよ」

 そんな事を言ってきたがエランは既に甘味に興味を示しており,ハトリの言葉すら聞こえないようだった。そんな訳で話が決まったからには食事が冷めないうちにとカセンネが口を開く。

「なら,あたし達に付いて来な。客人として歓迎するよ」

「それじゃあ行こうよ」

 カセンネとレルーンがそんな風に促して来たのでエラン達は先に歩き出したカセンネの後に続いて歩いているとハトリが口を開いてきた。

「それにしてもヒャルなんとかという名前は覚えづらいですよ」

 そんな事を言うとレルーンが陽気な笑いを見せると言葉を続けてきた。

「あははっ,確かにね。けど,覚えづらいって事が私達の事を印象づけるんだよ」

「どういう事ですよ?」

「覚えづらい名前の傭兵団というだけで印象に残るし,大きな武功を上げれば雇い主は嫌でも私達の名前を覚えるしかないからね。その分だけ忘れづらいんだよ」

「なるほどですよ,確かにそのやり方なら一つの武功を上げても簡単に忘れられる事は無いですよ」

「でしょ,でしょ,傭兵団と言ってもいろいろな名前の傭兵団があるからね。私達の名前を覚えて貰うには効果はてきめんだよ」

「けどですよ,ヒャルム……何でしたですよ?」

「ヒャルムリル傭兵団ね」

「そのヒャルムリル傭兵団って名前は言い辛いですよ」

「あははっ,確かにね」

 ハトリの言葉を笑いながら肯定するレルーンに対してハトリは少し呆れた表情になるがレルーンは全く気にしていないどころか,それが普通だと言いたいように笑って流すのだった。ハトリとレルーンがそんな会話をしているうちにヒャルムリル傭兵団の天幕に着いたのだろうカセンネが天幕に掛かっている布をめくり上げるとエラン達に入るように促し,エラン達が入るとカセンネ達も入り,すぐに天幕内に居る団員達に向かってカセンネが大声を発する。

「皆,客人だよっ! 心配はしていないけど客人に迷惑を掛けるんじゃないよっ!」

 そんなカセンネの言葉を聞いていた団員達の視線が一斉にエランへと向けられると,すぐにそれぞれの口を開いて話し出す。

「ねえねえ,あの人って噂になってる白銀妖精じゃない」

「白銀色の髪と鎧を纏っているから,そうじゃない」

「それじゃあ,あんなカワイイ子が白銀妖精なの」

 すぐにエランの事で賑やかに為る天幕内に向かって,今度はレルーンが大声を発してきた。

「皆っ! すぐに分かったと思うけど白銀妖精で間違いないけどエランという名前がしっかりとあるんだからエランと呼んで上げてっ! それと一緒に居る子はハトリという名前でエランと一緒に旅をしている子だから仲良くして上げてねっ!」

『はーい』

 レルーンがエラン達を簡単に紹介すると団員達が一斉に返事をしてきたのでレルーンは満足げに頷いていると,カセンネがエラン達に付いて来るように言うとカセンネの後に続いて天幕内を進んで行きカセンネは丁度天幕の中心に腰を下ろしたのでエラン達も腰を下ろし,レルーンも座ってきたので丁度四人で円を描くように座る形と成った。

 天幕内は未だにエランの事について話をしている団員が多い中でエランは平然と夕食を膝の前に置くと両手を合わせて呟くように口を開く。

「いただきます」

「いただきますですよ」

 相変わらずこういう事には行儀が良いエランとハトリ。そんなエラン達を脇目にカセンネとレルーンは既に夕食に手を付けていた。そしてエランとハトリも夕食へと手を伸ばす。

 配膳された夕食はパンにスープと肉料理が二品並んでおり,しっかりと食べ応えがある食事となっていた。エランがパンをちぎってスープに付けながら食べていると食事中にも関わらずにレルーンがエランに向かって話し掛けて来た。

「そういえば今日の戦いでエランの話が出て来なかったから,今日の戦いには参戦しなかったの?」

 食事中にいきなりそんな質問をぶつけてきたレルーンに対してエランは食事をしっかりと噛んで口に中を空にしてから質問に答える。

「ハルバロス軍と契約したのは夕暮れ近くだったから,無理をして戦場に出る事はしなかった。それに契約と一緒に直属の命令を受けたから,明日はその命令に従って戦う事になる」

 それだけ答えて再び食事を口にするエラン。そんなエランとは対照的にレルーンはすぐに口を開いて言葉を放ってきた。

「そっか~,そんな時間に契約したのなら参戦出来ないよね。それはそうと,契約と一緒に受けた命令ってどんなの? エランの噂はハルバロス軍の将軍も知っているだろうし,かなりの命令を受けたんじゃないの?」

 立て続けに質問するレルーンに対してエランはゆっくりと食事を堪能しながら口の中が空になるまで噛むと,やっとレルーンの質問に答えた。

「赤き疾風と呼ばれてるスフィルファ=ロッサの討伐」

 相変わらず短い言葉で簡潔に答えたエランだが,周囲を驚かせるのには充分な程の言葉だった。だからかレルーンはパンをかじりながらも驚きでパンを口から吹き出しそうになるほどだったが,置いてあった水で一気にパンを流し込んだレルーンが再び口を開く。

「スフィルファって,ハルバロス軍が最も厄介にしててディアコス国内では名を馳せていて,遊走騎馬隊の隊長をやってる,あのスフィルファの事?」

「随分と詳しいですよ」

 まくし立てるレルーンの言葉を聞いてハトリが横槍を入れてくると,またしてもレルーンはまくし立てる。

「だってだって,今日の戦いでも大活躍だったんだよ。その所為で私達が居るハルバロス軍はまともな戦略が立てられずに実質的に後手後手に回っているのが現状なんだよ。そのスフィルファを討てなんてエランは相当期待されてるよ」

「分かったからレルーン,あんたは少しは落ち着きな。食事中だよ」

 あまりにも喋りまくるレルーンに少しばかりやかましさを感じたカセンネが,そんな言葉を発するとやっとレルーンは冷静さを取り戻して大きく息を吐く。

「はぁ~,さすがは白銀妖精と呼ばれるエランだね」

「それは違うと思う」

 レルーンの言葉を否定する言葉を発したエランは肉料理にかじりつくとしっかりと味わって食す。そんなエランの言葉を聞いたレルーンもパンをかじった後に空になった口を開く。

「違うって,どういう事?」

 そんな質問をぶつけるがエランはのんびりと肉を噛んで染み出して来る肉汁ごと料理を堪能した後に空いた口を開く。

「ハルバロス軍の総大将から直々の命令だからこそ,その総大将はしっかりと私の実力を見抜いた上でスフィルファの討伐を命じたと思う」

「つまり噂を鵜呑みにしないで,直にエランと対面する事でエランの実力を知った上で討伐命令を出したって事?」

「うん」

 相変わらず短い返答をするエランはそのまま次の肉料理を口へと運ぶ。そしてエランの短い返答を聞いたレルーンは料理を口にしながら考える仕草をしている。そして再び口の中が空になると喋り出す。

「ふ~ん,なるほどね~。そうなると便乗するしかないですよね,団長」

 いきなり話をカセンネに振ったレルーンに対してカセンネはエランと同様にしっかりと料理を堪能してから口を開く。

「まっ,それも良いさね。それよりも今は食事中だよ,話は食事が終わった後にしな」

 釘を刺されてしまったレルーンは一笑いして話を流すと今度は黙って料理を堪能する事にしたみたいで,口の中に次々と料理をかぶり付くと頬を膨らませながら噛み砕いていく。その間にエランとハトリ,カセンネも夕食を食べ終わったのでエランとハトリは両手を合わせて呟くように口を開く。

「ごちそうさま」

「ごちそうさまですよ」

 と,夕食を食べ終えるとエランはカセンネに向かって口を開く。

「それで甘味は?」

 甘味好きのエランとしてはやっぱり気になるのだろう,食後すぐにカセンネに尋ねるとカセンネは天幕の右奥を見てから答える。

「今作ってる最中だから,もう少しだけ待ちな」

 カセンネの言葉を聞いてエランも天幕の右奥を見ると,微かながら厨房のような物が見えるが,それ以上に鼻を利かせると甘味ならではの甘い匂いが漂っている事に気付いたので大人しく待っているとレルーンが夕食を食べ終えたので再びエランに向かって話し掛けて来た。

「そういえばエランってスレデラーズを持っているって噂だけどさ。その鎖が巻かれているのがそうなの?」

 レルーンがそんな質問をしてきたのでエランは背負っていたイクスを自分の前に持ってくると,まずはレルーンに向かって口を開く。

「うん,そう。けど今はお仕置き中」

「お仕置き中?」

「エランが持っているスレデラーズはやかましいつるぎですよ。そのうえ場の空気を読めないのと調子に乗りまくる癖があるからかなり五月蠅い剣ですよ」

 イクスがお仕置き中なのを良い事に好き勝手に言いまくるハトリ。そんなハトリの言葉を聞いてイクスが抗議を現す為に鞘の中で動くと小刻みな金属音が鳴りまくる。そんなイクスを見てレルーンが驚きの声を上げる。

「その剣,動いてるよ」

「うん,お仕置き中だから喋れない分だけ動く」

「喋るのっ!」

「うん,調子に乗って喋ったからお仕置き中」

「お仕置きって,鎖で縛る事が?」

「うん,こうすればイクスは喋る事が出来ないから監禁しているのと同じ」

「監禁してるの!」

「うん,お仕置きで監禁の刑」

「というか,エランの言っている事が分からなくなってきたよ」

「まあ,イクスの事は放っておいて良いですよ」

「その前に」

 エランがそんな言葉を発するとイクスを目の前にまで持ってくるとイクスに向かって話し掛ける。

「イクス,反省した?」

 エランがそう問い掛けるとイクスが頷くみたいに揺れたので,エランがイクスに巻かれている鎖を外し始めたのでハトリは仕方なく,いつも背負っている荷物を近くに置いてあったので手元まで取り寄せるとエランから鎖を受け取って,手際良く鎖を巻き取っていくとそのまま荷物の中に仕舞って行く。そしてイクスから完全に鎖が解かれると早速,イクスから金属音が鳴り響くとイクスの刀身が少し露わになり声を発して来た。

「はぁ~,やっと解放されたぜ」

 そんな事を言ってきたイクスにレルーンやカセンネといった天幕内に居るヒャルムリル傭兵団の全員が驚き,言葉を無くして静まるとエランはじっとイクスの刀身を見詰めて口を開く。

「イクス,反省してる?」

「してますっ! 反省どころか猛省しているのでご理解くださいっ!」

「次はもっと重い刑にするから」

「次なんて無いですっ! 本当に反省しているので,すみませんでしたっ!」

 お仕置きされた事ですっかり敬語になっているイクス。そんなイクスにエランは無表情ながらも瞳の奥では許すような微笑みを浮き出しているので,エランが頷くとイクスもやっと安堵したみたいで疲れたような声を出した。

 エランはそんなイクスを前に出してイクスに向かって口を開く。

「ならイクス,自己紹介」

「はいよ,俺様がスレデラーズの一本であるイクスエス様だ。まあ,気軽にイクスって呼んでくれや」

 本当に剣が喋る,というより剣から声が発せられている事にレルーンを含めて驚きを示すヒャルムリル傭兵団の団員達。けど,イクスの声を聞いていたカセンネだけは一笑いした後にエランとイクスに話し掛けて来た。

「はははっ! 本当に剣が喋るなんてね。これだけでもイクスがスレデラーズだって事が分かるってもんさ。それになかなか面白いじゃないかい,喋る剣なんてあたしも初めて見たからね」

 そう言ってもう一笑いするカセンネ。そんなカセンネを見ていた団員達も次第に驚きが消えて行き,レルーンに限ってはイクスに近づくと面白そうにイクスの柄を突っついていた。そしてエランが再びイクスを背負った時だった,天幕の右奥にある厨房から大きな籠を持った数人の団員が現れると籠を近くの団員に渡すと,受け取った団員も他の団員へと回していき,そのうちの一つがエランの前に置かれた。

 籠が回ってきた事で興味がイクスから籠に移ったレルーンは真っ先に籠を開けると,そこにはドーナツがふんだんに入っており,目の当たりにしたエランが真っ先に手を伸ばしてドーナツにかぶり付くと程良い甘味がエランの口内に広がり,無表情だったエランの顔がささやかながら微笑むように見えるハトリだった。そしてカセンネが既にかぶり付いているのに構わずに周囲に向かって声を放つ。

「さあ,別腹の到着だ。皆も遠慮せずに食いな」

 カセンネの言葉にそれぞれに返事をするヒャルムリル傭兵団の団員達。レルーンもドーナツをかじった後に再びイクスに興味を戻したみたいでイクスに向かって話し掛ける。

「イクスって,イクスエスだからイクスって呼ばれてるの?」

「まあ,そうだな。俺様達の正式名称は長いからな,だからそこは気にせずイクスで良いぞ」

「へぇ~,そうなんだ。というか,イクスは何で喋れるの?」

「そういう風に作られたからだ」

「そっか,確かに喋る剣と旅が出来るなんて楽しそうだね」

「そうか,まあ,俺様となら退屈なんてしないだろうな」

「あははっ,そうだよね。さすがはスレデラーズだね」

「ってか,俺様が喋れる事とスレデラーズという事は直結しないと思うぞ」

「そっかな,イクスは喋れるから凄いんじゃないの」

「いや,それもあるがな,それ以上の力があるからスレデラーズの一本なんだよ」

「へぇ~,どんな力」

「ってか,その前に良いか?」

「んっ,何」

「お前は順応するのが早いのか,頭が軽いのか,どっちだ?」

「ん~,両方かな」

「両方かよっ!」

「あははっ,うん」

「すっかり意気投合してるですよ」

 イクスとレルーンの会話を聞いていたハトリが呆れた顔でそんな事を言ってくるが,すっかりイクスと話し込んでいるレルーンには聞こえていないようだ。だからかハトリは少しふて腐れた表情になり,ドーナツの甘味を堪能する事にしたようだ。その一方でカセンネが甘味を堪能しているエランに話し掛けて来た。

「そういえばエラン,明日から戦場に出るからにはスフィルファとの戦いについて考えでもあるんだろ?」

 そんな事を聞いてきたのでエランはドーナツの甘味をしっかりと味わって,丁度三つ目を食べ終わったのでドーナツに手を伸ばしながらカセンネの質問に答えて来た。

「考えはあるけど,釣り上げる事と倒した後については少し大変かもしれない」

「ほう,まずどうやって釣り上げるつもりだい?」

 立て続けに質問をしてくるカセンネに対してエランはドーナツを一口だけかじるとしっかりと甘味を味わって口の中を空にしてから再び質問に答える。

「最初は左翼の最前線で暴れる。そうすれば敵が勝手に退却してくれるから,そこに救援として駆け付けた遊走騎馬隊に重い一撃を加えれば,後はあっちから勝手にこちらの網に入って来たところで斬り伏せる」

「なるほどね。けど,あの赤き疾風は部下にも大いに慕われているって話だよ。だから倒した後にスフィルファを慕っている奴らが仇討ちとばかりにエランを狙ってくるだろうね。そこはどうするつもりだい?」

「無視する,とは言っても走っても逃げ切れないから相手の馬を奪ってから味方の最左翼を抜けて後方へと回り込む。さすがに最左翼まで行けば味方の攻撃もあるし,下手に追い掛ければ孤立する事は分かるだろうから追いすがってくる敵も諦めるしかない」

「スフィルファの首を取ったのにかい?」

「わざわざ首を取ってる暇なんて無いから兜だけ貰っていく。そうすれば部下からの信望が厚い分だけ遺体を野晒しには出来ないから」

 エランがそこまで自分の考えを話すとカセンネは考え込むような仕草を見せたのでエランはドーナツを口にする。そしてしっかりと甘味を堪能していると,突如としてカセンネが大笑いしたのでエランは口の中に有る甘味をしっかりと堪能すると,ドーナツを口にする事なくて黙り込んでいるとカセンネが会話を再開してきた。

「はははっ! なるほどね,そういう事かい。レルーン,さっきの話を聞いてたね」

 今度はレルーンに話を振ってきたカセンネ。そして話を振られたレルーンはというと笑顔ながらもしっかりと答えて来た。

「あははっ,もちろん聞いてましたよ」

「途中で俺様との会話を止めて,すっかりそっちに耳を傾けたよな」

「うん,そうそう」

 先程まではイクスに興味を示していたレルーンだったが,さすがにエランがどうやってスフィルファと戦うかという話となれば,そっちの方に興味が移ったみたいでイクスとのお喋りを止めてすっかりエラン達の話を聞き入っていたようだ。そしてそれを示すかのようにイクスが言葉を発するとレルーンは笑顔で同意した言葉を出した。そんなレルーンの言葉を聞いたカセンネは一度だけ頷くとレルーンに向かって口を開く。

「ならレルーン,やるべき事は分かってるね」

「もちろん,エランが逃げる時に助ければ良いんですよね」

「その通りだよ。それとあたしは明日の戦いを特等席で見る事にするよ」

「はいは~い,分かりました」

「ってか,お前ら。既にエランが勝った事を前提に話をしてやがるな」

 イクスが話に水を差すような言葉を発するとカセンネが口角を上げるとレルーンは相変わらずの笑顔を浮かべたままに口を開いてきた。

「そうは言ってもイクスね,さっきエランが話してくれた話だって,どうやってスフィルファを倒すかは話してないよ。それってつまりエランがスフィルファより強いって事でしょ」

 確かにレルーンが言っている通りにエランはスフィルファとの戦いついて具値的には話していない。だからこそカセンネとレルーンはそんな推測をして話をしているのだが,話を聞いていたハトリがここで口を出してきた。

「確かにエランはスフィルファとの戦いついて具体的には話していないですよ,それでも既にエランが勝った事を前提に話をするのは気が早いですよ」

「けどエランが勝てないか引き分けに終わるかを前提にするよりかは現実的だと思うからね。それにイクスもハトリもエランが負けるなんて思っていないから,そんな事を言い出せるんだろう。違うかい」

 ハッキリとした確信があるかのようにカセンネはイクスとハトリにそんな言葉を放つとイクスとハトリは黙り込んだ。確かにカセンネとレルーンの話を聞く限りでは楽観的に聞こえるが,それはイクスとハトリと同様にエランが負けるなんて思っていない証拠とも言える。そこを突かれてはさすがにイクスもハトリも返す言葉が無いのも必然と言える。

 自分の言葉で黙り込んだイクスとハトリを見てカセンネは大声で一笑いすると再び口を開く。

「はははっ! 何も痛くない腹を探ってるワケじゃないからね。イクスもハトリも黙り込む必要は無いさ」

「そういう事ではないですよ」

「ハトリが言った通りだな,俺様達が気にしてるのは何でそこまでエランを信じられるって事だな」

「イクスの言う通りですよ」

 珍しく意見が一致するイクスとハトリ,そんなイクスとハトリの言葉を聞いていたカセンネは鼻で笑うと優しげな微笑みを浮かべながら口を開いてきた。

「一言で言ってしまえば,それだけあんたらを気に入っただけなのさ。だからあんたらがエランを信じるように,あたし達もエランを信じるだけだよ」

「そうだとしても信じるのが早過ぎないか」

 カセンネの言葉を聞いてすぐにそんな言葉を発するイクス。まあ,イクスとしてはここまですんなりと自分達を信じてくれるカセンネを逆に心配しているとも言える。そんな珍しいイクスの気遣いに気付いているのか,いないのか,まったく態度に示さないカセンネだけにイクスはそんな言葉を投げかけた。すると手にしたドーナツを平らげてしっかりと甘味を堪能したエランが次のドーナツに手を伸ばしながら口を開いてきた。

「イクスとハトリはカセンネ達を信じられない?」

 突如として投げかけられた質問にイクスとハトリはすぐには答えられなかった。だからかエランはドーナツを一口だけかじって,しっかりと甘味を味わうと再び口を開いてきた。

「私が白銀妖精と呼ばれてる事もあるだろうけど,それ以上に短いながらも心を開いた会話をすれば相手を信じられる。大事なのは早いか遅いかじゃない,相手が信じられるか,信じられないか,それだけ」

 そう言うとエランは再びドーナツにかじりつくとカセンネは面白いものを見ているかのような顔をしながら口を開いてきた。

「エランの言う通りだよ。あたしも最初は白銀妖精と呼ばれてるエランがどんな者か,興味が半分面白半分だったけど,こうして話してるうちにあんたらを気に入った。だから信じる,それだけだね」

「そうそう,団長の言う通りだよ。それに気に入らない相手ならまったく信じないけどね。エラン達は信じられるから気に入ったとも言えるよ,だから私達は明日からエランと一緒に戦おうとしてるんだよ」

 カセンネに続いてレルーンがそんな言葉を発するとハトリが呆れたような表情で溜息をつくと口を開いてきた。

「はいはい分かったですよ。今までこうもすんなりと私達を受け入れた人は居なかったですよ,だから両方とも少し心配しただけですよ」

「それにここまで言われからには俺様達も信じるしかねえだろ。まっ,そうと決まりゃあとことん付き合って貰おうじゃねえか」

 ハトリとイクスがそんな言葉を発すると笑顔でハトリに抱き付くレルーンに,イクスに向けて笑顔で親指を立てるカセンネ。そんな者達に囲まれてエランは瞳の奥で暖かい物に包まれたような温もりを示すのだった。

 甘味と仲間の存在をしっかりと感じていたエランは籠の中に手を伸ばすと残りのドーナツが少ない事を知ったが,もう満足するほど甘味は堪能しているが残してはもったいないのでドーナツを手に取るとレルーンが立ち上がってカセンネに向かって口を開いてきた。

「それじゃあ団長,行って来ますね」

「あいよ,任せたからしっかりとやってきな」

「分かってま~す。それじゃあね,エラン,ハトリ,イクス」

 そう言ってレルーンはその場から離れると他の団員に話し掛けて,そのまま十数人程の団員を連れて天幕の外に出て行った。そんな光景を見ていたイクスがカセンネに向けて声を発する。

「レルーンの姉ちゃんはどこに行ったんだ?」

「なに,明日の準備さ。ああ見えてもヒャルムリル傭兵団の副団長だからね」

「そいつはご苦労なこった」

「そんな事よりエラン,今日はどこかに泊まる予定でもあるのかい?」

 突如して質問を投げかけられたエランだが,満足はしていても甘味の方が重要なのだろう。口の中から甘味が消えるまで堪能してから質問に答えて来た。

「今日どころかハルバロス軍に参戦したばかりだから何も決まってない」

「ならうちの天幕に泊まってきな。ここなら何も気兼ねしなくて良いだろ」

 カセンネがそんな事を言うとハトリが気になっていた事を思い出したので,エランが答える前にハトリがカセンネに疑問をぶつけてきた。

「そういえばですよ,この天幕内に居るのは全員女性ですよ。何で全員女性なのですよ?」

 ハトリがそんな質問をした途端にカセンネは言葉に詰まったような仕草を見せると少しだけ考え込むとハトリの質問に答えて来た。

「まあ,うちはここだけじゃなく団員の全てが女性なのさ。こんな時代だからね,それぞれに理由が有るから詳しくは聞かないでおくれ。一つだけ言える事はうちに居る全員が戦う事を自ら選んだ。そんな者達を集めたら,こうなっただけさ」

「なんとなく分かったですよ」

 それだけ言って口を噤むハトリ。まあ,ハトリとしても察しが付いたからこそ,これ以上の事は聞かないし,聞きたくもないようだ。それも仕方ない,この世界ブレールースではほとんどの各地で争いが起こっている。タイケスト五国を見ても分かる通りに小競り合いを繰り返し,時には大きな戦争に発展するのが日常茶飯事だ。そんな時代に家族を失い,友を失い,全てを失う者も居るのが必然。そんな時代に若い女性が一人きりになれば選択肢は限られてくる。

 文字通りに身を売るしか手は無い,その限られた選択肢の中で身体を売るか,身体に傷を付けて戦うか,のどちらかだ。だからカセンネが率いているヒャルムリル傭兵団には女性しかいない。身体一つで稼ぐ為に傭兵という道を選んだ者達をカセンネは集めたからだ。そもそもカセンネも一介の傭兵から成り上がって今では傭兵団を率いている身だからこそ,同じ境遇の者達に手を差し伸べて同じ戦場で戦い,同じ戦場で生きる。それがヒャルムリル傭兵団だ。

 エランが白銀妖精と呼ばれるまで戦場に出てるからこそ,ハトリもエランと同じ数の戦場に出ているので,そう言った事情に察しが付いたという事だ。だからと言ってハトリは同情もしなければ,悲観もしない。ハトリも同じくエランと一緒に戦う事を決めているからこそヒャルムリル傭兵団に属している者達の覚悟を分かっているからだ。そんなハトリが黙り込んでいると手に取ったドーナツをしっかりと堪能したエランが口を開く。

「じゃあ,カセンネの言葉に甘えて厄介になる事にする」

「そうしなそうしな。それじゃあ皆っ! 聞いての通りだ,しばらくはエラン達と一緒だからね,しっかりとエランを補佐しな!」

『はい』

 カセンネの言葉にヒャルムリル傭兵団の団員達が一斉に返事をするとカセンネは少し嬉しそうに頷くのだった。

 こうしてエラン達はヒャルムリル傭兵団と共に行動する事になったのだが,今のエランは目の前にある籠に入っているドーナツにしか目と興味が行っていない。それでも白銀妖精と呼ばれるエランと共に戦える事にヒャルムリル傭兵団の団員達は嬉しかった。エランの噂だけを聞いただけでも心強い味方なうえ,このようなかわいらしい少女とは思っていなかったから余計にエランがかわいく思えたみたいだ。

 エランとしても不満は何一つ無かった。カセンネの言葉を聞く限りでは,ここに居るだけで団員達がいろいろとやってくれるだろうし,エランはケーイリオンから与えられた命令に集中が出来るだけではなく,もれなく甘味が付いて来るのだから断る理由などが有る訳がない。

 こうして希な縁でエラン達はヒャルムリル傭兵団に身を寄せる事に成ったのだが,今のエランは最後のドーナツを手に取るとしっかりと甘味を味わう事に夢中になっているのだった。




 さてはて,何とか予定通りに更新が出来て一安心している今さっき。まあ,復帰してから,かなりの時間が経ってますからね,それなりに書く速度も上がってると思いたい今日明日。何にしても無事に更新が出来てなによりです。

 さてさて,今回から新たに登場してきたヒャルムリル傭兵団ですが……言い辛いし,書き辛いし,読み辛い名前ですねっ! まあ,自分で考えておきながら何を言ってるんだとなりますが,私的には気に入っている団名だったりもします。その理由として字面からも何一つとして意味が分からねえから(笑)

 いやね,このヒャルムリル傭兵団という名前にも最初は意味はあったと思うんですよ。けど……忘れた。まあ,忘れるぐらいだから大した意味は無いよね~。と勝手に思い込んでおります。

 何にしても,これからエランは戦場に立ちますが,そこでヒャルムリル傭兵団がどう絡んでくるのか,カセンネとレルーンはどのようにエランと共に戦うのかは次回どころか,それなりに話が進めば分かるので気長にお付き合いくださいな。

 最後にここまで読んでくださった方にお願いがあります。感想の欄に読み易いのか,読み辛いのかだけで良いので意見を頂けたらありがたいです。私としては読者の方に読み易いように書いているつもりですが,具体的な意見でなくて良いので読み易いか,読み辛いか,だけでも書いてください。ここまで書いてて,思いっきり読み辛いとか言われたら修正しますし,なにより意見を頂けないとこのままの形で書いてて良いのか迷っている部分もあるので,是非ともお願いします。それではお願いも終わった事ですし,そろそろ締めましょうか。

 ではでは,ここまで読んでくださりありがとうございました。そしてこれからも気長なお付き合いをよろしくお願いします。

 以上,久しぶりに午前中に更新した事に少し喜んでいる葵嵐雪でした。



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