沼地現るーベルン視点ー
あれから数ヶ月。
大森林は、既に全く形を変えてそこは森や草原が広がる未開発の土地と言うものに変化した。
ただ、中央部に誰も入り込まない魔法の掛かった場所があるが。
開発地帯に期待集まっていた。
最終調査が終わったら、と。
ヤーン様曰く、この世界が本来あるべき姿に戻ったらしい。最終調査は今日終わる予定だ。
たぶんもうすぐ。
トントン。
ぴったりだな。
あの叩き方はジェルドかな。
彼にも今回の植物担当として参加を頼んだからな。
振り返って驚いた。
獣人国側の代表であるバイロンまで一緒でしかもその表情はあまりに暗かったからだ。
「異常事態発生だ。」
頷きながらも、次の一言を待つ。
「腐り出した。
それはあちこちで地面そのものがだよ。
分かるか?
木々は立ち枯れその下の土地が沼地へと変わって
それは異様な光景だ。
それも驚異のスピードで広がりを見せている。
見たこともない風景だ。
『腐る』この言葉こそがぴったりの表現なんだ。」
肩を落とし疲れきったバイロンから、ジェルドが話を引き継ぐ。
「沼地となった場所には、一切の生命の兆しなし。しかも沼地は驚くべき早さで広がりを見てせている。」
この言葉が合図になったかの様に各地の密偵から各地で沼地現るの報が届く。
今はまだ被害は人里離れた場所のみだが、このスピードで広がったらしきどうなるのか?
俺とバイロンでラルの研究室へ急ぐ。
「た、大変だ。異常じた」
言葉はそこで途切れた。
「フィーリア。フィーリア!!
しっかりしてくれ。た、頼む。目を開けてくれ!」
そこには倒れたフィーリアを抱きしめながら叫ぶラルがいた。
ヤーン様は珍しく人型で側に付き添っていた。
「ラルよ。今のままでは精霊の身であるフィーリアには毒そのものだ。
せめて、あの場所があれば…」
振り返ったラルの形相は、鬼気迫るものだった。
「それは、どこ?早く。早く教えてくれ!」
「『秋の国』だ。そこへは私の力で次元は超えられるが、問題はそこではない。
実は『秋の国』からこそ、その毒が流れてきている様なのだ。
この異変こそが今の状況だとしたらフィーリアには致命傷となろう。
ラル。どうする?」
珍しく口を開かないラルは静かに立ち上がると
『創造』
『建設』
珍しい。
あんまり変化がない。
部屋の隅に見慣れない箱があるくらいで…
あっ!フィーリアが起き上がった?
先程までは、消えかけている様に見えたのに。
「部屋全体を清浄な空気に変えたんだ。
この装置があればフィーリアは安全だ。さあ、ヤーン。このまま『秋の国』へ行って原因を元から断とう!!」
あまりの行動の早さにバイロン殿と二人で止めに入る。
まずは準備がいる。
「今回はダメだ。
誰も連れてはいかない。そんな場所で行動出来るのは俺とヤーンくらいだからな。行くぞ!」
『オーーーーン!!』
ヤーン様の一言で二人は姿を消した。
あまりの展開の早さに驚いているとフィーリアが事情の説明を始めた。
それはこの世界の危機的状況だった。