夏の国?
そうだ!
そうだよ!
拾ったものは元の場所へ戻せばいいじゃん。
名案を思いついた俺は、カエルの首根っこを摘むとドアへと向かうと手元から焦った声がする。
「や、やめよ!
何ちゅう乱暴な決断しとるんだ。いいか、これでもワシはこの世界の神さまぞ。
捨てたらバチ当たるからな!」
なぬー。
そんな物騒なものは、皆んなの側には置いておけない。
やっぱ、初心貫徹で!
「ラル。
もうその辺にしてやれ。緑色のくせに青ざめてるぞ。
それに神さまと言うのは本当だ。」
ヤーンのやれやれと言う声に仕方なくテーブルへ。
「ラル殿。
何も我々に見えないからと言って捨てようとしなくても。」
珍しくゴウライの苦言。
ため息をついて捨てる作戦を諦める。
「俺、不気味なものって苦手でさ。
何かこれ、やな感じがして。」
俺の言い分にカエルが反論する。
「そりゃお前。この世界の消滅寸前だったのだ。
神さまと言えど怒りも湧くわ!」
消滅寸前?
怒りって何だ?
「いいか。この世界の真ん中にはそれは大きな泉があった。
その泉がある日一晩で枯れ果てた。
それからは、もう悪化の一途よ。水のない世界に、植物は存在出来ない。水も植物もないのだからこの荒れた大地以外何も残らない。
しかも、これが『冬の国』の責任ではないか!
あの世界の乱れが『夏の国』を枯れ果てさせたのだ。怒りも湧くわ。」
なんとー!
ここは『夏の国』だったんだな。
まぁ、そうかなぁとは思ったけどそれにしても暑すぎ。
「あっ!そうだ。
雨は降らしておいたよ。この辺り一帯だけど水場も出来てると思う。」
音がしたかと思う程、全員がドン引くって何だよ。
カエルなんて慌てて外に飛び出した。
やれやれ、信じてないのか?
神さまだから気がついてると思ったのに。
「ほ、本当だ。空に雲まで…」
絶句中のカエルはほっておいて、ヤーンに言う。
「な、これは本当の本当に神さま?
まさかの偽物じゃない?だってさ、雨の事も気温も気づかないなんて。」
犬の姿だけど、苦笑いが良く分かる程ブホッと声がして、ヤーンが答えた。
「あれは神さまとしての能力すら殆ど失う程の危機がこの世界に起こっていたと言う事だ。
それにあれは仮の姿。
だが、この雲や水場は私でも驚愕の事態だよ。
ラルは、全く規格外だな。」
「たぶん『無限大』に収納した『冬の国』の雪を利用してのですね。
それにしてもまさか、雲まで。」
おっ!ハロルド鋭い。
そこで雲の成り立ちや、雨の降る原理を説明すると余計にポカンとした表情になるし。
まあ、前世の記憶がこんなところで役に立つなんて思わなかったよ。
俺の理科の成績は、赤点ギリギリだったんだけど役に立って良かったよ。
部屋に戻った俺達は、とにかくこの世界の全貌を知ることか始める事にした。
「じゃあさ、俺が魔力で太陽から守るからライナスが鷹の目を使ってジオラマ作りをしようよ。」
不安そうな顔のライナスは久しぶり。
最近では、俺のやる事に何でも賛成でちょっと怖かったからな。
「ラル殿。では俺の背中に乗られるのですか?」
頷く俺に驚きの回答が!
「それではラル殿を守るのに不都合ですし、ラル殿を太陽により近づけるなんて俺には出来ません。少しの危険もして欲しくないのです。」
な、何言ってるの?
り、理解が出来ないよ。
「ライナス殿。ラル崇拝者としての意見には一定の理解はする。
であるならば、この規格外でお化けのラルの力を今一度考慮して考えて欲しい。
彼にはこのくらいは、危険ではない。
散歩感覚なんだよ。」
珍しくハロルドの優しい声が説得にかかる。
ん?と思うところはあるが、確かに散歩感覚だな。
ちょっとこの国を見てまわるのは楽しみだったりもするからな!
何やらハロルドに肩を叩かれてライナスが頷いてる?
よし!出発だな。
ドアから外に向かう途中で、頭の上にカエルが飛び乗る!
「あっ!なんでついてくるんだよ!」
「頼む。ワシの国が心配なんじゃ。連れて行ってくれ。」
路線変更とは卑怯な。
下手に出るものに弱いのがバレてる。
結局三人?で出かける事になる。
水魔法ヴォークでライナスの真上に霧状の水蒸気を発生させ薄い雲を作る。
ライナスは、鷹の姿の時は集中しているから俺は俺で勝手に色々やる。
ポイポイっと。
地表へ『氷の魔石』を投げ続けると同時に『無限大』からまた雪を降らせる。
今度はいっぺんだとライナスに負担が掛かるから、雪の精になった気持ちでフワフワと。
干からびた大地に氷の魔石が届くと、ブアッと靄が立つ。
地表が見えにくいから、ライナスの邪魔かと聞くと全く問題ないとの返事に感動!
『鷹の目』最高!
地表の温度は次々と下がり、やがて水魔法も必要なくなる。
飛んでいる間中、頭上からは呻き声が。
「あり得ない」とか「まさか」とか呟いてるな。
テントに戻った頃は、暑さも程々の夏本番の気温にようやく空を見上げる事が出来た。
真っ青な空にギラギラして太陽。
俺の大好きな『夏』がそこにはあった。
だから、気がつかなかった。
そこには、生き物がいない事に。
草も何も生えない事実に。




