供物は重要!
ーヤーンの呟きー
蹲り(うずくまり)その時を待つ。
我に出来る事などもうそう多くはない。
所詮神という名があれど、端の端。風の神などとは格の違いがあり過ぎて。
いったい、何を間違ったのやら。
そんな時間を鬱々と過ごしていると、突然世界の破れを感知する。
この封印されし世界を破る者とは。
久しぶりに興味を持ち頭を擡げ(もたげ)た。
あれは何だ?
見たことのないモノだ。
興味が増すが、我の時はいよいよ迫って来ていた。
ー一人になったラルー
あれ?
何で誰もいないのか?
皆んなを探さなきゃいけないと分かっていたが、遠吠えが止んだその事がどうしても気がかりになり先を急いだ。
この先で何が待っている。
そう思った。
いつの間にか鬱蒼とした木々が並木道へと変化していた。
そして、訥々に少し広くなった場所へでた。
そこにいたのは、『で、デカイ犬』。
魔獣の域でしょ?
3階建てくらいの大きさとかちょっと引くよ。
恐る恐る近くが全く動かない。
たぶん、あの遠吠えの主に違いない。
やはり予感は的中した。
色艶の悪い毛並みや、乾いた鼻。
具合の悪いのだ。
万能薬を差し出すがピクリともしない。
困った。
解決策がないよ、どーする?
これがあの本の『嘘つき神さま』なのかなぁ。
ひとりぼっちの神さまだと書いてあったし、あの子が神さまが呼んでるって言っていたのに間に合わなかったとか?
神さまを元気にするとかちょっとハードル高すぎるよ。うーん。
そうか!!
そうだよ供物だよ。
俺ははりきって、ポケットからララのお菓子を出す。
クッキーに、飴玉(この間、リクエストしてたら発明してくれた!!)お煎餅。
「神さま。めっちゃ美味いです。捧げますから起きてください。
これ食べれないのは人生の損です!!」
柏手を打ち、お祈りを捧げる。
食べないよー。
あっ、毒味かな?
そうか、そうだよな。
毒味・毒味と。
うっまー。さすがはララだよ。
オレンジ味の飴とか、俺が一番好きなの知ってて作ってくれるララ最高!!
『あり得ないとはこの事か。
このまま朽ち果てるのも良しと定めておれば、供物を捧げるフリしてバクバク食うとは。
何という食い意地。
我は動けぬ。それを我の口まで運べ。』
薄ーく目を開けて、頭に直接話しかけて来た。
弱ってるのかな?
飴よりクッキーと、横3mくらいの大きな口に小さなクッキーを押し込む。
涎!!
『もっとだ。』
催促とは…やはり神さまでもララのお菓子には目がないな!
それから次から次へとお菓子を口に、やがて起き上がり自分で食べ始めた。
おっきいなぁ。改めて驚くよ。
あー、空間魔法が使えればもっともっと美味しいものが出せるのにーー!!
『良し。少し力が戻ったから空間魔法を限定的に解除しよう。』
そこからは、宴会となりました。
いやぁ、供物と言えば御神酒。
樽で入れてたから差し出すと、そりゃ凄い食いつき!あっという間に3樽飲み干しましたよ。
一ヶ月分の食料を食べきったところでまた無茶振りをして来た。
『歌って踊れ。奉納舞をせよ。』
俺は自慢じゃないけどカラオケのお笑いパートよ。俺が歌えば皆笑う。
風呂場の歌以外は、滅多に歌わないのに。
やめろ!その犬の縋るような目でこっちを見るな!!
仕方なく『炭坑節』です。
盆踊りが限界だから。
えっと。手を挙げて下げてと。おっと足が絡まるーー!
突然神さまは、立ち上がると空を向いて遠吠えをし始める。
それは今まで聞いていた遠吠えではなく、力強い身体の芯に入ってくる遠吠え。
『ウォーーン。』
あれ?風が。めちゃくちゃ風が吹いてくる。
立っていられない!!
飛ばされた!!
身体が吹っ飛んだその時エドとドルーとライナスが三人で俺を受け止めてくれた。
どこ行ってたと聞きたいが、風で口が開かない。
後ろのアナベルと五人で踏ん張っていたら、突然無風となる。
『ヤーンよ。久しいな。
『春風の鉾』の行方を捜していたら、お前を見つけたよ。あの泥棒の一味に封印されたのだろう。
しかし、それにしては色艶が良いではないか?』
光る存在があるとしか我々には分からない。
目さえ開けられないとは。
それ程風の神さまとは、凄いものなのだろう。
自然神の凄さは古来から変わらないな。
『春風の鉾』・泥棒・ヤーン??
意味のわからない単語が来たよ。
そして俺たちは、あの本に隠さられ真実を知る事になる。
だが、説明より樽。
説明よりご飯の精神で根こそぎララのご飯を捧げる事になる。
とほほ。
ご機嫌の風の神さま『ゼン』が真実を話してくれた。




