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『迷いの森』へ。

極小にしたジオラマと拡大した祠のジオラマ。

並べてみるとハッキリ分かった。


「この山に見えていたものは、祠のだまし絵だな。

じゃあ、この六個がキチンと並んでるのは街で間違いだろう。

中央にある広場のような場所の真上にあるのが月か?だとするとここからが難問だ。」

エドの話に何回も頷く。


「じゃあ、この犬の絵は何でしょう?」

ライナスの疑問も最もだ。

色々とこの世界の縮小図がだまし絵に隠されている中で、犬の絵と月の絵の二つの意味が分からない。


「あのー。」アナベルの声で振り返ると何と客人がいた。


「初めまして。僕の名はジルと言います。」

可愛く頭を下げる犬に思わず癒されてニヤけていたらエドに肘鉄を食らった。


「うっ、コホン!

は、初めまして。ラルと言います。

ようこそ、我々の家に。」


挨拶はしたけど、大切な会議室に入れて大丈夫か?


「僕はアガタ様とは反対の立場を取っています。

だから、安心した下さい。」


な、なんとー。

アガタ派以外がいたなんて!


「ラル。この人の話を聞いた方がいいと無理にお連れしたんだ。ジル殿お願いします。」

ドルーの態度でかなりの無理をして来て貰ったと理解した。


優しげな笑顔で彼は、爆弾発言をした。


「ええ、ですから我々は別の場所から飛ばされたのです。その理由こそがあの絵本にあります。

実際にあった出来事を歪めて書かれている。

だからこの世界には月がないのです。」


なんとー!でも続きがあって更にびっくり。


「我々は秘匿の魔術によって、その名を縛られています。

我々の犯した罪によって。

ですが、ひとつだけ。月は空以外にあります。それは…」


あれ?た、大変だー!

ジルの顔色が真っ青に。急いで万能薬を口に押し込む。

2、3分して、ようやく顔色が戻る。

よ、良かったよー。


「あれ?何で?」

気がついたのにキョロキョロしてどした?


「秘匿の魔術に抵触した者にはその存在を消す。

そうだな。」エドの答えに目を点にしてると、

「そうです。なのに何で。」「簡単さ。ラルだからな。コイツは規格外だからな。」


なんだ?皆んなで頷いて。

とにかく、これ以上は危険とこのままここに匿う事に。

アナベルが別室に連れて行く間に、ジオラマをずっと見つめてたナイゼが一言。


「空以外にある『月』だろ。それってもしかしてこう言う意味なんじゃ。」

彼の説明に皆が頷く。




その夜、我々は『迷いの森』へと出発した。

空以外の月を求めて。


メンバーを更に絞る。


エド・ライナス・ドルー・アナベル・俺。


『迷いの森』に入った後、この世界から我々をサポートすることがあるだろうとエドの提案だ。

確かに…



真夜中に街の広場の真ん中に立つ。

「水魔法ヴォーク。」煉瓦には小さな水溜りが出来た。

もう一丁!

「光魔法バラエス。」水溜りに光を当てる。

人工の月だ。


あの時、ナイゼが見つけただまし絵は月は水に映った姿なのではないかと言う事。

だからその絵をここの地に描く事がヒントだと考えた。


しーん。


あれ?今回はダメか??

よし、諦めも時には肝心。


「まっ、気を取り直してまた出直そう。」

皆んなを励まそうとエドの肩を叩いて固まる。


エド達が空を見上げてるからだ。



なんとーー!!

空に。

月。

まさかの月?


その月明かりが眩しく輝きだす。すでに俺の作った人工の月の光などもう、何も見えない。

こんなに明るいなんてアガタ殿達一派に気が付かれる!!


予感的中。

やっぱ、来たか!!


バタバタと足音がする。

焦って探すが、どこにも『迷いの森』のカケラもないよ!


キョロキョロする俺の後ろでエドとドルーが戦闘態勢になる。


「お前たち。そんな事して許されると思うなよなー!!」

アガタ殿の怒声だ。

犬の姿の皆さんは、凄いスピードで近づいてくるのだろ。

足音が近づく。


やばいよ。俺も戦闘態勢を取ろうとしたら、

ライナスが俺を抱えてまた上空に逃げようとする。


やめろ!三人を残しては逃げないよ!


バタバタして暴れていたらバタン!と音がした。


見つけた!!


「エド!皆んな!!ここに飛び込め!!」


俺が指差したのは月明かりで出来た扉。


月影の扉が、そこにある。

その上…


「扉が開いてる今だ!!」


扉の向こうには、真っ暗な空間が。

ここに間違いない。

俺に続いて全員が飛び込む。



「「「やめろーーーー!!!!!」



アガタ殿達一派の声が響いた気がした。

だが、それも真っ暗な空間に消えていく。


俺達を飲み込んだまま。



そして、

扉は閉じられた。

月明かりも水溜りもそこにはもうない。


ただアガタ殿達一派の呻き声だけが響くのみ。

それも最早言葉になってはいなかったが。



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