ひとりぼっちの少年?
あれから数日が経つが、手掛かりひとつ見つからないままだ。
街中に何度繰り出しても、我々の街と何ら変わりを見つけられない。
商店や学校などどこも違いはない。が返ってそれが気になるのかもしれない。
今日は手分けしようと、俺もひとりで街へとやって来た。
行き詰まりを感じてため息ばかりが出る。
ぶらぶら歩いていると、学校から賑やかな声が聞こえてきた。
学校へと目をやると子供達が校庭を元気に走り回っていた。何処も子供達は同じ風景だなぁと考えながら眺めていた。
犬だからか、めっちゃ凄いスピードでぐるぐる楽しそうに回っている。
そんな様子を塀から眺めていると、ひとりの子供が目についた。
友達と駆け回らずひとりぼっちで校庭の隅に座っているからだ。
いやぁ、ここでもあるのか『イジメ』。
自分の古傷を思い出しつつ、声をかけた。
「どうした。遊ばないのか?」
怪しむ目付きとはこの事か。
めっちゃ目付きの悪い顔で振り返られた。
「おーい。怪しい者じゃないよ。ついこの間ここに流れ着いたんだ。ラルって言うんだ。よろしくな。」
構う俺に、そっぽを向いて小さい声で
「煩いな。」と。
その間も校庭には、楽しそうな声が響き渡る。
羨ましそうなその視線に気づく者もいないが。
「なあ、名前なんて言うんだ?」
「う、煩い!!」
結局、怒らせただけで少年は駆け出していく。
切ない後悔が残ったが、これ以上は通りがかりの俺には手が出せない。
その日の調査は打ち切ってテントへと戻った。
興奮して新発見を語るのはラースだけで誰もが浮かない顔をしていた。
「明日はアガタ殿のところへ行って少し探って来る。このままじゃジリ貧だからな。
俺とアナベルの二人でいくぞ。」
エドの言葉に否やはないよ。頼りになるなぁ。
ライナスは相変わらず空から調査しているし、ドルーは図書館で調べ物らしい。
俺。最近役に立ってないなあ。
その晩もあの遠吠えは聞こえた。
毎晩だなぁとテントから出て空を眺めた。
月もないのに明るい相変わらずトンチンカンな空だ。
俺は油断をしていて遠吠えに耳を澄ます姿を見ている者がいるのに全く気がつかなかった。
だから、遠吠えがやんだので家に入るつもりで独り言を呟いた。
「いったい、何処で鳴いているんだろう。」と。
翌朝、皆んなが出掛けて一人出掛ける支度をしていると、テントを叩く音がした。
ここへ訪ねる者は今までない。
なんだろう?
外に出て、意外な姿に驚いた。
「俺、あんたに用があってきた。」
そうぶっきらぼうに言い放ったのは、あの時の少年?だった。
学校は?と考えたが黙って次を待つ。
学校をサボって来るほどの用事なのだろうから余程の事だろうと。
言い淀んだ後、決意を固めたように握り拳をグッと握り俺の目を見た。
震える足に睨む目…彼の悩みが深い事を知れた。
「俺。俺。
本当は大人達に止められてるんだけど、どうしても気になって。
あんた、あの遠吠え聞こえてるんだろ?」
必死の叫びの少年よりもその内容に驚いた。
遠吠えの話は、俺にとってもどうしても誰も相手にしてくれない事柄だったから。
「あの遠吠えを聞こえてるのは俺とあんただけなんだ。
ずっと俺、呼ばれてる気がして。だから思い切って長に会いに行った。
でもダメだった。
絶対に言うなって怒られただけで信じてくれない。友達も親も皆んな同じで誰にも聞こえないから嘘付きだって仲間外れにされたんだ。
そしたら、昨日の夜の鳴き声が変わってて。
鳴き声が俺じゃない誰かを呼んでたから。
見に来たら、アンタだった。アンタも聞こえてるよな?」
不安げな様子にこれまでの彼の孤独が滲み出ていた。
「ああ。聞こえてるよ。
でも、俺の仲間も誰もなぜか相手にしてくれないんだ。何でだろなぁ。」
「それは、神さまの声だもの。
俺の祖先は巫女の家系でだから特別なんだ。
でも秘密なんだよ。大人達は絶対にその事を話したらダメって凄く怒るんだ。」
よほど止められてるんだろ。それにしては、何で異邦人の俺を信用して…
「でも、神さま困ってる。
だからアンタを呼んだんだよ。『迷いの森』へ行ってね。色違いがヒントだから。
これ以上は、俺。」
涙を溜めた彼の走り去る姿を見ながら、小さな身体にいっぱいに詰まった彼の勇気を思う。
ひとりぼっちになって。
長に叱られ、親に叱られ。
それでも訪ねてくれた勇気。
色違い。
これは彼の精一杯なのだろう。
それから俺は、外へと飛び出して必死に色違いを探してたら、途中エド達と行き合った。
表情からアガタ殿からは何も探れなかったと分かった。
外で話す内容ではないと、話はせずに探そうと思った。
ん?
アナベルは、そのまま何処かへ調べ物で出掛けたのにエドが残ってる?
「何か見つけたな。一緒に探そう。
ラルだけだと、行方不明になりそうだからな。」
なんとーー!
俺は、そんな風に思われてたなんて。
だが、よーく考えるとこれまでの流れから仕方ないかと諦める。だけど、俺のせいじゃないから!
「クククッ。ラル。
顔に出過ぎてるよ。分かった取り消すから一緒に行かせてくれ。」
エドの苦笑いをお供にして、今一度探し物開始。
うーん。
家や、森の木。
街並みと、何処を見ても完璧に整った嫌味なほどの街しかない。
夕暮れが近づき、また遠吠えが聞こえる。
俺には、泣いてるように思えるんだが…
エドと帰途につこうと歩いてたら。
煉瓦の敷き詰められた道に子供心を誘われて足を色毎に歩き始めた。
こういうのは見ると子供心が疼くんだよな。
エドの含み笑いを無視してやがてケンパと飛び始める。うーん。やり易くて楽しいぞ!
スッゲー。まるで作られてるみたいだよ。
ん?
思いついた俺は、突然駆け出す。、
エドが何か叫びながら後を追いかけて来るが気にできない。
頭の中から、思い付いた事が消えそうで。
走り込んだその足で会議室のジオラマへ。
駆け込む俺を見て皆んなが集まってきた。
構わずじっと見つめてしばらくして、笑顔で振り返った。
「分かったかもしれない。
煉瓦の色が違うのがヒントだった。入り口は、この色違いの煉瓦のパズルを解けば。」
キョトンとした顔。
ひとり、ライナスだけが理解してくれたみたいだ。
「確かに上空から見るとこの煉瓦の色の組み合わせは、何か意味がある気がします。」
味方を得て、今日の出来事を話す。
テントには、完全防音が掛かってるから安心だし。
「俺も今日、図書館に行って変わった本を借りてきたところだ。不思議に本棚の隙間にあったからこっそり持ち出した。隠されてるように感じて持ち帰ろうと思ったんだよ。
これだ、見てくれ!」
ドルーの差し出した本の題名は…
『嘘付き神さまと約束の日々』
中身を見て、俺は悲しそうな遠吠えを思い出していた。




