表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/100

『魔人対抗隊』入隊式にて。

「では、これから『魔人対抗隊』入隊に関する儀式を行います。」


ベルンの言葉に整列して立ち並ぶ面々は緊張の面持ちで背筋を伸ばした。


「まず、第1条で何より大切な事。

魔人より逃げる事が最大の目的。言い換えれば身を守るですが。」


「ちょっと待って下さい!!」

整列した中の冒険者風の中年男性から怒気の篭った声が響く。


しかし驚くにあたわない。

ここまで言うと必ず反論が来るのはいつもの事だから。またかとベルンは反論を待つ。


「俺が冒険者としての活動を中断してもここへ駆けつけたのは、アンタ達の魔人に立ち向かう態度に共感したからだ。

それを第1目標が『逃げる』だと。

そんなものなら俺は降りる!」


やれやれ、血気盛んな冒険者ほど扱いにくいものはない。


「どうぞ。

ここまで聞いた段階でこの活動に参加する意義を感じない方はあちらのドアからどうぞ。

ただし話はまだあります。最後まで聞いてからでも脱退は簡単です。」


さあ、今回はどうかな?

おっ。周りの目を気にして踏み止まったか。

誰もドアから出てはいかない。


「これまで、エルドの街では二度の魔人来襲の危機があり、1回目は私も傷を負いました。

二度目は街の姿は全く無く完全に破壊。地下街がなければ助からなかったでしょう。

その時。逃げ延びた住人の皆さんが集って始めたのがこの『魔人対抗隊』です。

どうやって生き延びたか。激しい意見交換が行われ今後の方針が決まりました。

それが先ほどの第1条です。」


ここまで話したところでザィラードが割って入ってきた。


「話の途中だが、私の話も併せて聞いて欲しい。

まずは自己紹介からだな。

この隊の隊長を務めさせてもらっているザィラードと言います。」


さすがザィラード。

勇者は有名人だから歓声に似たドヨメキが上がる。彼の存在そのものがこの隊に力を与えているのだろう。


「私は、幾度か魔人と戦って来た。

魔人は強い。幾度命辛々の戦いになった事か。

本当に紙一重などザラだった。

ましてや逃げ延びる住人の為に踏み止まり戦う冒険者達が幾人犠牲になっていったか。

今でも思えば思うほど悔しさが胸にこみ上げる。

そんな我々のランクは全てSランク以上だ。

だからこそのベルン代表の言葉だ。

今一度考えてくれ。

自分自身を守れぬ者に他者はとても守れない。と。」


静まり返る中で続きを話す。


「第2条は『惜しみなく』である。物品はもちろん、アイデアなど皆さんの得意な分野で構わない。どうすればいいのかを常に自分に問いかけて貰いたい。

今まで入隊した中にはまだ10才にならない子もいる。決して無理はさせないのでどうか力を貸して欲しい。」


真摯に頭を下げる。

ひとりで出来る事が何と限られているだろう。

二度目の来襲で否応無く実感したから。


顔を上げると、毎回心強く思う風景がある。

決意と硬い覚悟を持った新隊員の顔触れがこちらを見て頷いているから。



やがてその他の諸注意の後、各々の希望や能力に合わせた部署へ配置される。

彼らの食い扶持は、エルドの街の仲間が請け負っている。

もちろん、物品や攻撃アイテムもそれぞれが力を貸してくれるからこそだ。




この様子を傍らで静かに見ていたグレタが動いた。

部下に小さく指示を出す。

隠密と書かれた紙は、ラルの発明品で自分の思う相手にのみ開示される極秘扱いの書類にのみ使用するアイテムだ。

今回、グレタの使用したアイテムはその隠密用紙。

指示はこうだ。



『今回の新隊員の中に、二人の要注意人物がいる。ひとりは『蛇の穴』関係。もうひとつの所属は不明。

監視の隊員を増加せよ。』



ベルンから、隊員章を貰い喜ぶ若い男性と可愛らしい小さな背の女性の名が記されていた。


男性の名はルーティ。

女性の名はフィーリア。


かつてエドに厳しい特訓を受けた隠密部隊は指示書を胸にしまって静かに動き出した。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ