講義の講師として。
「今日の講義は何と楽しみな。」
「いやいや、本当に有難いですな。」
騒めく会場に、ひとりの男性が入って来る。
興奮気味の会場に静けさが戻る。
司会の男性の声だけが響く。
「今日は特別な講師の登場です。
皆さまも色々とお聞きしたい事があると思いますがまずは講師の先生よりのご挨拶をお願いします。」
盛大な拍手に怯える素振りの純朴そうな男性は、ひとつ高い壇の上に登った。
「獣人国の皆さま。本日はお招きありがとうございます。
我々エルドの街を代表してご一緒に開発に当たる事に感謝申し上げます。
私は、エルドで薬草研究をしておりますジェルドと申します。」
会場のあちらこちらから、ジェルドに熱い視線が飛ぶ。
ジェルド自身は正直こんな事は苦手中の苦手。
だが、魔人との戦いが迫る中情報の共有は大切な事だとラルに言われて大量の研究成果を持ってきた。
「説明よりも資料をお配りします。
万能薬
万能肥料
魔力回復薬
他にも我が街の加工部からの攻撃用アイテムの作成の資料・材料の提供も併せてお配りします。」
動揺の走る会場に、助手のプリモナや加工部に所属するチル等が忙しく資料を配っている。
「こんな資料を外部に放出されて大丈夫ですか?」
聞いてきたのは、デジブルの研究所長だ。
他の国の研究者も同様に頷いて同意を示していた。
「もちろん大丈夫です。
私自身元は単なる薬草売りでした。正直、助けられない人も多かった。
力不足を呪った事も多いのです。
ですが、この薬達は沢山の命を助けられる。
それは薬草研究の一端を担う者としてこんな喜びを味わえた。
偶々、研究所長になっていますがひとつでもお役に立てる物をこれからも作りたいのです。」
小さな拍手は、やがて大きな歓声へと変わる。
研究者の共通の願い。
『命を救う為に薬草開発を。』
バタン!
そこへラルが飛び込んできた。
「あっ、間に合ったかな?」
赤い顔をして嬉しそうなラルの登場に全員の視線が集中する。
「ジェルド!
出来たんだよ。
こないだ、動物達が俺にくれた『能力の種』に似たものだよ。
『能力の種』程の力はないけど、訓練と噛み合わせればかなりレベルアップに役に立つって。
資料と『種もどき』を持ってきたから皆んなに配ってくれよ。」
ジェルドはこんな事は慌てない。
なにせラルと付き合うにはこんなビックリ情報なんてしょっちゅうだから。
しかし。
「『種もどき』って何ですか?」
「名前つけたんだよ。な、いいだろう。
ジェルドは、薬草のセンスはあるけど名付けのセンスはなぁ。
じゃあ、急ぐからよろしく。」
相変わらず台風のようだ。
会場は、喜びに沸いていて来て良かったと胸を撫で下ろす。
しかし…名付けのセンス
本当に俺の方がだめかな?
ジェルドの小さな呟きに会場中の研究者が首を横に振った。
ジェルドは、気がつかなかったが。
それから大量の万能薬などが獣人の国で作られ始めた。
交流は更なる開発促進に繋がる事になる。




