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秘宝『掴む風』を求めて。

言われた部屋に行ってみると、動物達はマチルダの元に集まっていた。

それにしても随分増えたなぁ。

部屋の中の密度が凄いよ。

ウサギに似た『ルーン』を始め、真っ白で小さな鳥『雪鳥ユキドリ)』頭に林のような角を持つ鹿に似た『レンドル』鼠ほどの小ささでまん丸い『跳犬ハネイヌ』これは、犬と名前にあるけどどう見てもボールだな。

最後は手のひらサイズの亀に似た『甲来コウキ』小さいサイズが多くてひと種類につき数十匹いる。


「これから門を開きます。躊躇わず進んで下さい。」マチルダの言葉に振り返ると動物達の大合唱が沸き起こる。

なんちゅう声だよ。耳痛ー。


バン!

物凄い音と共に未だこの部屋に入った時に使った扉が開いているのを見て固まる。

廊下はどこ行ったんだ?

これって庭園に繋がる扉だったか?


アナベル達が躊躇わず進むのを見て慌てて後に続いた。

凄いよ。こんな森見たことない。

むせ返る樹々の薫りに圧倒されながら取り敢えず前へと伸びた道を進んだ。

一本道はどこまでものびて果ては見えない。

五人を守るように動物達も側にいるのを横目に見つつ細いまっすぐな道を進む。


しばらく行くと突如として樹々の壁は無くなり、視界が開けた場所に出た。

えー。一本道は?

こんな場所あったのちっとも気がつかなかった。

変だなあ。

目の前には、沢山の小さな泉が広がる景色。

あれ?

動物達の姿が見えない。キョロキョロ探していると突然頭の中に声が響く。


『よいか。この泉のいずれかに『掴む風』がある。泉の底に沈んだ秘宝を手にできるかはお前達次第。

ただし、制限時間が1時間のみ。

目で見ては分からぬ。よく考える事だ。』


また無茶を。

仲間達も同じように聞こえたようだな。


「なんて数の泉だ。これをどうやって。」

ドルーの呟きを聞いたかのようにまた声が響く。


『言い忘れたが、魔法は使えぬぞ。

1時間後には、すでにこの世界からお前達が放出される。残ることは許されない。』


またか。魔法無しとは厳しいなぁ。サーチ頼りと考えてたからな。

あっ。ライナスやアナベルはすでに使った後か。


「目を閉じれば良いのではないか。」

ゴウライの単純な答えにドルーが首を横に振り

「そんな事ではないだろう。単純過ぎでは。」

と呆れたように話す横でアナベルが目配せする。


そーです。もちろん目を閉じてチャレンジしてたのは俺ですよ。

気まずい雰囲気が流れる筈だったがライナスが一言。


「いやぁ、さすがラル殿。何でもやってみましょう。」

その一言で取り敢えず全員目を閉じたけど当然収穫はなかった。

誰も名案を思いつかないまま、とにかく色々チャレンジする事に。

瞑想する者。

耳を澄まし音を辿ろうと考える者。

覗いて中の違いを分析する者。

誰にも手ごたえがないまま。


「あと30分です。」の声。


落ち着いたアナベルの声に焦りは一層酷くなる。


泉に手を浸しながら暫し、沈黙。


俺はその場で服を脱ぎ出す。


「ラル殿。見つけたのですか?なら俺が。」

「どうやって。凄いです。」


話しかける言葉を全てシャットダウンして泉に飛び込む。

一心に底へ泳ぐ。



『掴む風』とは魔王復活を阻止する為のもの。

必要な者に与えられる筈ならば。


俺の思い付きは、この全ての景色はフェイクではないかと考えた。


何が何でも欲しい『気持ち』。

必ず掴めると『信じる心』。


ひたすら潜る俺の目の前に、小さな渦巻が発生する。

渦巻はどんどん大きくなってやがて俺を飲み込む。息が。

さすがに苦しさに気が遠くなる。


「ラル殿!ラル殿!」

揺さぶる誰かに「激し過ぎるよ!」と手を振り払いながら起き出した。


ライナスが目に涙を溜めて俺を見つめていた。

「良かった。一時は呼吸を感じられなくて。人工呼吸を必死にして。」

言いながら、思い出したのかまた泣き出す。


うーん。

助けてもらって、本当に有難い。有難いけど…

人工呼吸って。

まさかの初○○○が男なのか?

はー。


「ラル殿。今回は失敗に終わりましたがとにかく無事で何よりです。

秘宝はなくても仲間がいる。

もしかしてそれこそが大切な秘宝なのではないかと考えました。」ドルーの神妙な態度にどうやらかなり俺の命がギリギリの戦いだったと悟る。

心配かけたなぁ。


部屋には、他の仲間達も駆けつけてそれぞれがホッとした顔をしていた。


「ラル殿。エド殿がプラヌスについて有力な情報を得てきました。

秘宝はひとまず置いて、お体を直してエド殿に合流しましょう。」

リーヴァイの励ましに言い出しにくくなる。


「そうです。動物達は今だにお側におりますし、まだ種への希望もあります。」ゼノンまで励ましとか。


いよいよ言い出しにくい。


「あのー。」


おっ。一斉にこっち向いたよ。

。。


手のひらを表に向けて小さな渦巻の石の付いた指輪を見せた。


「いやぁ、帰りに声がしてさ。

『掴む風』貰ったんだ。

真っ直ぐもいいなぁとか言ってたみたい。」


目が点の仲間を見ながら最後のセリフを思い出す。


『プラヌスに急げ。間に合わなくなる。』と。



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