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地下道の戦いーバイロン視点ー その頃砂漠では?

「散会!」短い指令を飛ばすと、狼族のドルーは心得た様に攻撃態勢に入る。


魔人への攻撃は、それぞれの特性を生かして戦いを展開している。

狼族は4人が感覚・視覚・聴覚を一致させ一体となる攻撃を得意とする。

これに『ラーラの魔糸玉』の改良型を合わせる形の攻撃スタイルを取る。

改良型は、拘束に加え魔虫の麻痺成分を配合。完全に相手の身体の自由を奪うものだ。


そして獅子族は、物と同化する能力を生かして死角を突く攻撃スタイルだ。

これは光魔法を魔石に込めるラル殿の発明に一手加えた『光球』で攻撃。

光魔法に加えて土魔法も加味。行く手を阻む攻撃で相手を翻弄しては光魔法が炸裂する仕組みだ。


それぞれの特性を生かして、戦線はこちらに勝利の兆しが見えたその時!

「地下道全域で魔人が毒を吐き兵士を始め土竜族も次々と犠牲者が続出。ラル殿への救援要請をしました。」とライナス殿。

鷹族は、連絡役として後方支援に当たり全体像を把握していた。何せ地下道は網の目。

もちろん、これを補助する形で土竜族も加わり戦いをしてきたのだ。


不味い。直感が叫ぶのを心の中に押し殺す。

指令となるからには、どんな時も冷静かつ打開策を見つけなくては。


「風魔法を展開して、毒を蹴散らしつつ固まれ。

今こそジジンゾンの攻撃隊を各部隊で仕掛よ。

奴ら(ジジンゾン)には一切毒は効かない。

また、毒を浴びたものは万能薬を飲用し土竜族にも配給の事。ライナス殿。補給線を頼みます。」


備蓄されてる万能薬を飲み下し戦いを展開するが、形勢は逆転され続けている。

あちこちで撤退を余儀なくされ、魔人の攻撃は更に強まる。

どうすれば。

私が、ドルー殿を振り返ったその時!

毒風が周辺に吹き荒れる。

モロに浴びた兵士が次々と倒れてドルー殿は、兵士達を庇いつつ戦闘を続ける。

これを好機と見た敵は、鋭い刃の嵐を浴びせ掛ける。ヒヤリとしたが、ドルー殿が必死にエデンバの盾で防ぐ。

不味い、次の攻撃がきたら。

倒れた兵士を庇いながらのドルー殿は、狙い撃ちとなる。

俺は駆け出しながら、光球を投げ込んでドルー殿の前に飛び込んだ。

その時!!

敵方はこれを見越して火魔法を仕掛けて来た。

地下道全体を焼き尽くす気だ。

不覚!!


「氷の盾」

突如、後ろから水魔法が展開され我々の前に分厚い氷の壁が立ちはだかる。

間違いなく一巻の終わりと思ったその時に援軍の到着だ。ハロルド殿!


「『解毒玉』を喰らえ!!」

聞きなれない声が聞こえ、何かが炸裂する。

目の前が光に満ちて、辺りの空気が途端に澄んだものに変わった。

辺りに清浄な空気が満ちる。

毒が…ない…


「これをお飲みください。」横手から現れたハロルド殿から丸薬を渡され飲み下す。


「『万能解毒薬』と言うか新しい発明です。ジェルドがこの度開発に成功したものです。

間に合って良かった。」

俺の聞きたい内容はすぐさま言葉となる。

ハロルド殿らしい。


後ろを振り向けば土竜族のゴウライ殿が皆に万能解毒薬を配っていた。

あの声は…そうか。


すでに敵は消滅していた。

この清浄な空気が逆に毒となったようだ。


その後は、あっけなくわが方の勝利。

万能解毒薬と解毒玉の威力は凄まじいもので、地下道を土竜族に取り返す力となる。

なんと凄い開発だろう。人族の凄さに感服するばかりだ。


「ハロルド殿助かりました。貴方がいなければ確実に命はなかった。」

俺が頭を下げると、あのハロルド殿が褒め言葉を口にする。


「いえ。バイロン殿の采配。お見事です。

単なる使いパシリの私とは違う。それぞれの特性を生かす戦法は恐れ入りました。」


素直に喜ぶか。ハロルド殿の賛辞だからな。

しかし、これも三国同盟があったからこそ。


「地下道は網の目。この後も油断なく防備を強化しましょう。」

続くハロルド殿の言葉に頷きながら、ラル殿達の情勢を尋ねた。すると…


「完全にお手上げ状態なのですが、ラル殿が粘ってて。何か掴んでいると良いのですが。」

珍しい。ラル殿にも行き詰まりがあるのか。

当たり前か。


相手は秘宝なのだから。






ーその頃砂漠ではー


今、俺の目の前にはシマシマ模様の岩がある。

何の変哲も無い岩。

それをジッと見つめる事1時間。


エド達が静かに見守る中、にらめっこ続行中。


確かにさっきニヤリと笑った。

俺は、今回こそハッキリと見たんだ。

だけど、話しかけても触っても魔力を込めても全く反応しない。


何が足りないのだ?

何が…



靄。

そうだよ、靄だ。

これが鍵に違いないんだから。

そこをなんとかすれば。


靄を作れば…

やる価値はある気がする。

ちょっと、しんどそうだけどジェルドの魔力補強剤もあるしな。(しかし名付けのセンスがヤバいよな。ジェルド。)


「皆んな、靄作るから手を出さないでくれ。」


一気に魔力を解放する。

上手くいかない。

砂漠に靄だ。水魔法をいくら展開してもほんの微かに霞むだけ。

靄どころか、霞もすぐに消え失せる。

諦めないぞ。

魔力補強剤をがぶ飲みして靄作りを続ける。

何度も。

何度も。


だけど、補強剤の飲み過ぎで、目眩や吐き気がこみ上げてくる。

けどここまでくれば意地が出る。

エドの止める声も無視して解放を続けた。


ダメだ。

靄は出来ない。

単にフラフラの俺が出来上がっただけ。

崩れ落ちる俺をエドが抱きとめる。


「もう諦めろ。違う方法しかない。」とエド。


そう言われると悔しい。

あと少し。

指先からポランと一雫。

げ、限界かぁ。



一雫は、岩の上に。


ピカーー!!!

ドドドーーン!!!

晴天の空に突如雷がいくつも落ちる。

エドが俺を庇って雷から身を守ろう屈んだその瞬間だった。


一面が靄に包まれた。

真っ白な視界にエドの呼吸音だけが耳に届く。


「馬鹿は馬鹿でも、大馬鹿は良いな。

よかろう。道を開くか。」


魔力放出が限界を超えた俺の耳にそう聞こえた。

だけど、身体を動かす事も目を開ける事も出来なかった。

限界だぁ。


そのまま、俺の意識は闇に包まれた。


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