閑話 ひとりで散歩
このお話は、ストーリーの流れでは後々の事となります。
ですが、ラルの日常を少し覗く雰囲気をと、あげさせて頂きました。
もし、ストーリー展開に違和感を感じる方は、飛ばして次話へお進み下さい。
誤字脱字のご連絡を本当にありがとうございます。作者の力不足を補って頂き有り難い限りです。
「最近街で流行ってる服を知ってるかい?」
何気なく見ていた商店で、店のオヤジに聞かれた。
「いや、俺ひとりで街に来るのは初めてだからな。」キョロキョロしてお上りさん満載だから声も掛けられたんだな。
「そうかい。いやぁアンタはラッキーな人だ。
これはね。今話題のあの『秘宝特別部隊』の人が着ていた服ソックリに作った一品だ。
特にだよ。
あの隊長の『ラル殿』が秘宝を取るのに決め手となった一手がこの服には込められてる。
どうだい。」
どうだいとドヤ顔で言われても、どこが決め手なのか説明不足で分からない。
だが、向こうも商売人だ。
ここで決め台詞と来た。
「はは〜ん。どうやら兄さんは俺を疑ってるね。
いいかい。よーく聞きな。
この『ポケット』と言うやつがそれだ。
どうだい。見た事ないだろう。」
得意げなオヤジに、なるほどと納得。
確かにこの世界の人は、ポケットの布地は無駄と考えて作らない。
確かにな。
だけど、決定打だとか言ってたような。
「おや、まだお疑いかい。
ここだけの話をしてやろう。
いいかい。かの秘宝『消えない炎』を取って戻ろうとしたその時!体力の限界を迎えた面々。
正に諦めかけたメンバーを救ったのは、万能栄養剤だ。そう有名なラル殿特性万能薬。
だが、魔法が使えず取り出せない。
さて、どうしたものか。悩む面々を救ったのは、
そうだ!この『ポケット』だ。
この中にもしも万能栄養剤がなければ。いやいや、ポケットが存在しなければどうだ。
ここまで話せば分かったろう。
どうだい兄さん。土産に最高のこの服が今ならお買い得だ。この栄養剤も付けよう。
あ、もちろん万能栄養剤じゃないさ。
だが、この話をつけて渡そうもんなら、最高の土産になる事間違い無しだよ。」
もう、お買い上げ間違い無しと俺を見つめるオヤジに苦笑いがこみ上げる。
それにしても、ニュースソースが凄いぞ。
それに商売上手だ。
服を手に取ろうとしたその時、後ろから声がかかる。
「ラル殿。勝手に出歩かないで下さいよ。ガードを振り払うとエド殿に報告しますよ。」
ハロルドだ。
不味い。エドに報告されるとガードがまた増えるよ。
俺は、オヤジに挨拶もソコソコに急いで帰途に着いた。
ハロルドが、隣でがっちり確保したままだけど。
いやぁ、だけど久々のひとりきりの散歩は最高だよ。だから、ガードはイヤなんだ。
贅沢だけど。さ。
その日から、ある店で大きな看板が立った。
そこには
{ラル殿公認の店であのポケットの服をどうぞ!}と。
その後、公認に✖︎印をして、来店と変更したとか。
ポケットの服の流行はデジブルにとどまらず、獣人三ヶ国全てに広がった。
その話をラルは、とても楽しそうに聞いて周りを不思議がらせた。
因みに、ニュースソースは意外な事にライナスだ。ポケットに感激したらしい。