消えない炎を掴むぞ!
意外な事にメンバー選出で揉めている。
エドが絶対に着いて行くと言うのに対して、リーヴァイが獣人で構成した方がいいと主張。
真っ向対決となってる。
「分かんねーやつだな。
俺は、こいつの副官なんだよ。
絶対に一緒に行くに決まってるだろ!」
エドにしては、珍しく冷静さを欠いてる感じ。
「ですから。何度でも申し上げます。
ラル殿の過去視のお話から、太古に魔人に対抗していたチームは、混成でした。
ましてや、鷹族は必ずとの忠告まで。
3人として、ラル殿・鷹族よりライナス。そして狼族のドルー殿で良いかと。」
意外に頑固なリーヴァイの言葉に先程体験した過去へのトラップを思い出す。
「エド。今回は留守番を頼む。
時間は限られている。万が一脱出できない場合に俺達を助けだせるのはお前だけだ。
後を頼んだ。ララも頼むぞ。」
俺の言葉に渋々エドが了承する。
過去視での、あの忠告は今だに耳に残ってる。
時間を忘れないでと。
。。
だからこそ、こちら側にエドがいれば安心なのだ。
さて。色々な物を空間魔法で収納していよいよ出発の時が近づく。
あっ!赤い月と白い月が近づいていく。
なんとも不可思議な風景だ。
つい、見入ってしまう。
「あと10分です。ララ殿 ネイサン殿準備をお願いします。」
天文学者の声がかかる。
意外にも鷹族参謀のネイサンは、光魔法を使えた。この光魔法と闇魔法の使い手は数が少ない。
リーヴァイ殿曰く良い腕前だとか。
2人はイーデンに特訓をして貰っていた。
イーデンは、様々な魔力に詳しいらしい。
「「行きます。」」
2人同時の掛け声で左右から光魔法と闇魔法が放たれる。一瞬、閃光が走り2人の身体が大きく傾いだ。
左右には、それぞれ隊員がいて2人を支える。
まだ、トビラらしきものは見えない。
とにかく、眩しいだけだ。
光の中央にゆっくりと穴が開きだした。
小さな穴は、だんだんとシミの様に広がりだし、その隙間からはとうとう見慣れぬ景色が見え出した。
「行くぞ。今だ!」
ドルーの掛け声で俺と鷹族のライナスが穴に転がり込む。
火の輪くぐりの要領だ。
パチン!
振り返ると既にシミの輪は閉じていた。
閉じた後は、鈍い光がまだぼんやり辺りを照らしているだけだ。
「さあ、行きましょう。」
この地点にマークをつけると早速出発となる。
さてと。ドルーの手を借りて起き上がりながらサーチをかける。
ん?
かけ…られない??
「おい、ここサーチが使えないぞ。」
俺のこのセリフを皮切りに3人はプチパニックに陥る。
試しにと次々と魔法を放つがまるで手応えのないまま、その場に立ち尽くす。
要するにこの世界は、一切魔法が使えないと言う事だ。
。。
これほどのショックも久しぶりだ。
なにせ生まれた時から使ってたから。
まさかこうなるとは。
「サーチも使えないが、前方に高い山が見える。
まずは間違いだろうから、とにかく前に進もう。」
3人は遥かにに見える山に向かって歩き出した。
ま、間に合わない。まだ遥か彼方の山に内心焦りが募る。
獣人の足は、俺とは違って優秀だ。
肩で息するのは、もちろん俺だけ。
「あのー。」
言いずらそうなドルーの声掛け。
「何?」息切れの合間にそれだけ答える。
「俺の背に乗せていいですか?」
え?
獣人って、狼の姿になれるの?
「いえ、ほんの一部の獣人のみです。
だけど俺は一応。」何か言いずらそうだな?
何でだ?
「いや、こちらこそ頼めるなら有り難い。
でも、結構重いよ。それに山までの距離があるし。」
遠慮がちになるよな。
「いえ、是非!」嬉しそうなドルー。
ドルーは、ブルンと身体を揺するとあっという間に狼に。
目が点になる。なんちゅう大きさ。
俺の知る狼ではなく、象より大きいし。
はー。登るのが大変。
「俺が手助けします。」ライナスは、既に鷹に。
こちらもサイズが。。
漸くドルーに跨り駆け出す。
風だ。風になったよ。
だけど、風になるとめっちゃ大変。
何せしがみつくのが死にもの狂い。ドルーが多少痛かろうと鬣をひっ掴みそのままあっという間に山に。
この荒野の世界にたった一つの山。
昔何処かで見た、登るのが全く無理 な岩壁だらけの険しい山だ。
ど、どうする。
しかもどの絶壁にその「消えない炎」があるやら。
疲れ切って山をぼんやり見上げるとドルーから声がかかる。
「やっぱり、僕の姿が嫌でしたか?
それとも、乗り心地が。」
何か引っかかる程の遠慮をみてドルーと向き合う事にする。
ちゃんと言わないとな。
「ドルー。本当にありがとう。
もし、ドルーがいなければ秘宝どころじゃなく作戦終了だっただろうと思う。
俺自身は、あんなカッコいい姿に憧れこそすれ、嫌がるなんて全く無い。
もちろん、ライナスの鷹の姿も同じく。
いやぁ、筋力不足でお恥ずかしいがドルーと一緒に風になれて楽しかったよ。」
おー、溢れんばかりの笑顔だ。
おっと、それどころじゃないよ。
「あの山に悩んでたんだ。
手掛かりがここで途絶える。全ての絶壁を見るなんて無理だしいい案があるかい?」
2人とも黙り込んだ。
しばらく黙っていたら、何か小さな音に気づく。
音のないこの世界に、何だろ。
(この世界は音も匂いもなく、風もない。味気ない世界だ。)
「もしかして、その耳飾りでは?」
と、ドルー。
「確かに。」とライナス。
耳いいなぁ。俺は聞こえるけど小さ過ぎて。
「もしかして、耳飾りが場所を知ってるのでは?
近づいたから、音がしてるのかも。」
なるほど!
ライナス凄いぞ。
俺は山に向かって歩き出すと音が強まる事に気づく。
「今度は俺の背に。」張り切るライナスの背に乗ると、ドルーに振り向きながら叫ぶ。
「麓で待っていてくれ。必ず取ってくる。」
と絶壁に向かって垂直に上昇。
おー。重力を感じるよ。
き、厳しいー。
チリン!
一際大きな音に、ライナスに声をかける。
「この辺りだ。」
ライナスには、何か見えたらしく俺をゆっくり降ろす。
絶壁に飛び出た小さな岩場に。
ひぇー。怖いよ。無理!
「俺まで降りると岩場が崩れます。お一人でお願いします。」
言い残して、少し距離を取るライナス。
岩にへばり付く俺には御構い無しに。
特に岩に変化はない。
消えない炎なんて、燃え盛る炎かと思ったがどこにもそんなものはない。
触りまくると凸凹の岩壁にすこーしだけツルンとした場所を見つけた。
手で探ると、岩壁に小さな凹みがあってそこに何かがある。
手を伸ばすが、身体が少し傾くので落下しそうだ。
ど、どうしたら。
覚悟を決めライナスに叫ぶ。
「今からそれらしきものを取るけど、落ちる可能性が高い。だから落ちたら頼むぞ。」
返事を聞く間も無く手を伸ばす。
反対されても困るから。
とにかく、ライナスを信じて。
つ、掴んだ。丸い何かだ。
落ちなかったよ。あー良かった。
体制を立て直そうとしたその時!
足場の岩場が崩れてもちろん、俺は真っ逆さま。
それからの事はあまり記憶にない。
人は恐ろし過ぎると記憶をぼんやりさせるらしい。
ライナスは、やった。
見事に俺をキャッチしてドルーの元に戻ってきた。
ドルーが焦った声で叫ぶ。
「た、大変です。もう時間が。」
そんなはずは無い。
確かに時間を見ながら…これは時の流れも違うってやつか!
よく見ればドルーとライナスが肩で息をしてる。
そうだよ。2人とも俺を乗せてたんだからな。
「よし、急ぐぞ。そうだ、万能栄養剤を飲んで。」あ!
体力回復にと取り出そうとして気づく。
空間魔法か。ダメじゃん!
だけどあの時確かポケットに。
万能栄養剤を噛み砕いて走り出すドルー。
俺も飛び乗って2人で風になる。
あと30分。
間に合うか!
時間ピッタリにララとネイサンにもう一度頼むように言ってある。
見えてきた!
息を切らしてひた走るドルー。
何かないか。
間に合うために。
もう一つの奥の手かな。
握りしめた「消えない炎」を飛び出して振ってみる。風鈴の形のこれを。そうすれば多分…
ドン!!
風鈴は、俺の思った通りに爆風を出して炎を吹き出す。
ジェット機のエンジンのように。
よし!
「熱い!」ってドルーが叫ぶが少し無視して。
転がり込むように、またシミの輪の中に入った。
ま、間に合った。
正真正銘今度こそアウトかと思った。
崩れ落ちる3人に皆んなが駆け寄る。
俺が「これ!」と差し出してみせる。
風鈴にポカーンとした仲間たちの顔に、大笑いしながら帰ってきたと実感して。




