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誘拐そして。

ようやく地上に降りたけど、まだ2人に運ばれてます。

「トイレ〜。」

青い顔の俺の用事を察した2人にそのまま抱えられてギリギリセーフ。

あ、危なかったよ。


「大丈夫ですか?お水をどうぞ。」

ふー。やっと人心地ついた。


そのまま丁寧な2人に広間のような場所に通される。


鷹族が数人集まっていた。

やはり、ゼノンの言った事が事実かも。

若者の姿がない。

サーチには傷だらけの人も数人引っかかる。

間違いない。魔人はここにも、たぶん。


「まずはお詫びしたい。

貴方のその力を貸して頂きたいと。

事は予断の許されないものでして、この様な手段しか思いつかず。

無論、言い訳です。

許される事ではないと理解しています。

その上で改めてお願いしたい。

我が一族をお救いください。」


リーヴァイ殿の悲痛な表情は言葉より事態の予断のなさを物語っている。

いるが。

それとこれは、別。

リーダーの責任は判断の重さにあるのだから。


「貴方は間違えました。

助けはこの様な手段では、あり得ない。

このまま力添えをする事は、出来ません。

とにかく、俺を皆の所へ戻して下さい!」


頭を下げる。

助けを求めるとは、それが最初の行動でなくては。


リーヴァイ殿と俺は、お互いを見つめたまま睨み合った。


「た、大変です。東の空のから何か見た事のない物体が近づいて来ます!」


飛び込んで来た叫びに全員で窓辺に。

窓から見た風景には、仲間達の怒りの顔が見える。

助けに来てくれたんだ。

良かった。

しかし奥の手を使ったのか。…成功して良かったよ。


「ラル殿。あの正体をご存知か?」

リーヴァイ殿の問いかけに胸を張って答えた。


「あれは、俺の仲間達です。

浮かんでいてこちらに向かってるのは、『魔球』です。気球と呼ばれるものを魔石を含くませて特別性に仕上げました。

あ、分かりにくいか。

とにかく、魔人対策に作った俺たちの新兵器です。」


絶壁とか言う場所に、どうやって行くかを考えてこんな案を出したら加工部が凄いのを開発したんだ。

俺は、今回は図案化しただけ。


乗り込んで来た仲間達は、あっという間に俺の周りを固めて、鷹族に睨みをきかす。


いやぁ、エドがめっちゃ怖いわ。

さすが、元暗殺部隊。

「参りました。その方等も刀を収めなさい。

我々は、この賭けに負けたのです。ラル殿の言われるように、やり方を間違えたのかもしれない。」

完治させたはずのリーヴァイ殿は、今までで一番疲れた顔を見せた。

それは、最初の頃の煌びやかな雰囲気のない年相応の姿に見えた。


「さ、まずは予断の許されない案件を片付けてそれから、それなりの落とし前をつけましょう。

怪我人ですか?いや、毒かな?」


驚きの表情は、肯定を意味する。


「ラル。人の良いのと馬鹿は別だぞ。

こいつ等はほっといて帰ろう。」


「エド。交渉のコツは主導権を握る事だよ。

この先の魔人との戦いに鷹族の協力は不可欠。

今は攻め時だよ。

さ、リーヴァイ殿。」



それから数時間は、目の回る忙しさだった。

予想を上回る人数が傷だらけで備蓄して来た大量の薬草と俺の治癒魔法で取り敢えず命の危険のある人は居ない。危機は去った。


落ち着いて周りを見ると、高山に穴を開けた様なこの都市も傷だらけであちこち壊れかけている。

バイロンやドルンは、痛ましそうな顔でリーヴァイ殿を見ている。


「まだ、余力はあるけど取り敢えず話し合いが必要だと考えます。

貴方の方から先に発言をどうぞ。」


「初めに私が話す事をお許しください。

鷹族参謀のネイサンと言います。

まずはこの作戦の立案を担当した罪。そして、この有様に鷹族を、追い込んだ作戦を立案した罪。

裁きは私に。

甘すぎると思われるでしょうが、私ひとりの命で贖いたいと。

何とぞお願い申し上げます。」

「ま、待て。勝手な事を

ラル殿。まずは鷹族を代表してお礼を申し上げる。薬草の効き目の凄さと備蓄の凄さ両方に驚きました。ましてや、初めて治癒魔法をこの身に受けて、改めて我が罪の重さに気づいております。

ネイサンの案を取り上げたのも、実行の命を下したのもこのリーヴァイ。

罪は我が身ひとつ。ラル殿始め皆様の温情を持って鷹族をお救い願います。」


2人の鷹族の土下座を見ながらため息をつく。

リーダーの責任の重さに。参謀の作戦の難しさに。


「2人の命は、正直いらないのです。

何の得にもならないから。言葉は時には重要ですが今回は行動こそが重要。

鷹族の皆さんのお力にはなります。対価は頂きますが。

対価は、俺からは二つ。

ひとつは、秘宝に関する情報の全面開示。いや、この国の情報は全て開示でお願いします。

もう一つは、鷹族の目です。

俺のサーチで特別な魔力を感知しました。

この目で魔人作戦への国を挙げて全面協力を求めます。いかがですか?」


チラリとエドの方を見る。

…大丈夫みたいだな。いつも、勝手ばかりで怒られるからアイコンタクトは重要なんだよ。


鷹族からは当然了承を得た。

バイロンとドルンも賛成のようだし、誘拐されて返って協力を確実に手に入れられてラッキーかも。



何て思ったのがいけなかったのか。

仲間達だけになったら不審な話し合いが始まった。


「やはり、ラル殿の危うさは実力とは別のようですな。」と、バイロン。


「だからガードがいるんだと、俺がずっと主張して来たんだ。全く!」やっぱり怒りのエド。


「常時二人体制で。獅子族と狼族から各1名が良いと思います。」あ、無口のナイゼまで。


その話し合いに俺の参加は許されず、結局3人体制に膨れ上がったガードは、寝る時までつく事になった。


寝れねーー!!

見つめるなよ。もうやだ。


あー。迂闊な誘拐は、ロクな事にならない。


それぞれの反省の夜が更ける。



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